見出し画像

テニス肘


概要

テニス肘は別名を上腕骨外側上顆炎と言います。
その名の通り、上腕骨の外側上顆に付着する筋の炎症症状と認識されています。
特に短橈側手根伸筋(ECRB)腱の微小断裂から生じる症状とされるのが一般的です。しかし、外側側副靭帯(LCL)・滑膜ヒダ・関節包などの損傷由来のものもあります。
好発する年齢としては、30〜50歳代の女性。
スポーツでは名前の通りテニスを趣味として行っている方が患い傾向があると言われています。
また、手の使用頻度が高い職業、趣味を行なっている方がなりやすい傾向があります。
しかし、現在ではテニスを趣味で行っている方よりもデスクワークを行っている方がなってしまう傾向が多いと言われてもいます。
そうなんです。私もテニス肘の方を初めて担当させてもらった時に「テニスやっていたんですか?」と聴取しても「いや、やってないですよ」と発言される方が多い印象でした。


図1.上腕外側部

上図の青く表記している部分は上腕骨となります。
キーとなる筋・靭帯が赤・青で示しています。
また、筋に関しても赤色で表記している筋は

  • 短橈側手根伸筋:上腕骨外側上顆、外側側副靭帯、橈骨輪状靭帯

  • 指伸筋:上腕骨外側上顆、外側側副靭帯、橈骨輪状靭帯、前腕筋膜

より起始しています。

外側上顆に付着している手関節、手指伸筋の起始は各々が分離することができない共同腱となっています。筋と同様に靭帯も互いに融合しています。それにより、一部の状態が悪くなることで連動してしまうことがあるとも考えられます。
靭帯をより見やすくすると、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、指伸筋、回外筋を除いた図が以下のようになります


図2.上腕外側側副靱帯、輪状靱帯

前途したように短橈側手根伸筋の微小断裂による影響が一般的ではありますが、他に滑膜ひだが関節に挟まり込んでしまうことで疼痛誘発していることも散見されます。
関節包とは、以下のようになっています


この滑膜が腕頭関節にはさみ込んでしまうことで疼痛誘発していると言われています。イメージ図は以下の図のようになります。


図4.滑膜ひだ

症状

肘関節外側部痛(動作時に増悪する)。
肘関節伸展、前腕回内、手関節伸展、手指屈伸動作時に生じる。
IADL動作に置き換えるとテニスのバックハンド、タオルを絞る、重量物の把持動作などの時に生じやすいです。

疼痛誘発テスト

一般的にテニス肘の評価項目として使用されるものとして以下のものが挙げられます。

  • Thomsen test:被検者が肘関節伸展位での手関節自動背屈を行い、検者が他動掌屈を行うことで疼痛誘発があるかどうか判断する。

  • Chair test:被検者にが肘関節伸展位にて椅子を持ち上げた時に疼痛誘発があるかどうか判断する。

  • middle finger extension test:被検者が肘関節伸展位での中指自動伸展時に検者が他動屈曲した際に疼痛誘発があるかどうか判断する。


図5疼痛誘発テスト(引用:日本整形外科学会/テニス肘)

Middle finger testについて;指伸筋が外側上顆に起始をもつことでテニス肘に関係があることは分かると思いますが何故、中指のみのテスト方式なのか疑問に思いませんか?私は凄く疑問がありました。
結果は、指伸筋腱の中でも中指の線維自体は外側上顆から起始していて、他の指はより遠位部より起始しているため一番外側上顆に近い中指が疼痛誘発しやすいらしいです。

治療法

  • 保存療法:患部の安静(テニスorエルボーバンドの装着、リハビリによる動作指導とストレッチング)内服、外用薬、ステロイド注射。

  • 手術療法:関節鏡などを用いて滑膜、筋膜の切除・切開を行います。

テニスorエルボーバンドについて;装着方法としては、外側上顆より2−3横指遠位にバンドを装着します。それにより、短橈側手根伸筋・指伸筋が圧迫されます。圧迫による伸筋群に掛かる牽引力を抑えることで疼痛の軽減を図ります。

リハビリ方法
・まずは患部の安静を図るため疼痛誘発動作をできる限り除外することを考えます。そのため、前腕回内にならないようにすること。特に肘関節伸展位での前腕回内動作は控えます。また、短橈側手根伸筋の停止部は第3中手骨になるため疼痛誘発を軽減するためにも尺側の第4、5指での握り動作に一時的に変更するようにします。

・疼痛自体がある程度落ち着いてきたら、ストレッチを疼痛範囲内で行います。

 ストレッチ方法の一例として:肘関節伸展位での手関節・手指の自動掌屈・手指屈曲です。この際に重要なことは最大伸長位を得るために手関節掌屈時にできる限り尺屈も行うことでよりダイレクトにストレッチが掛かると思います。また、自動運動ができれば徐々に他動運動へスイッチしていくことで負荷量調整ができると思います。


引用:日本整形外科学会/テニス肘


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?