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「積極的な失敗」のススメ

今回は、ジャーナリストであるマシュー・サイド氏が記した書籍「失敗の科学」(英文タイトル Black Box Thinking: The Surprising Truth About Success)をご紹介します。医療や航空、司法、スポーツなどの様々な業界において実際に発生した事故や誤りを取り上げ、それらが発生する具体的な要因を見ていきながら、業界の枠を越えて陥りがちな思考傾向や、どのようにして改善していくかを深掘りした本書。特に参考になった点のみ記載します。

まず、興味深かった事実。下記データによると、「医療過誤」はアメリカの三大死因の3位に入る(1位 心疾患、2位 ガン)との事で…怖すぎ。日本のデータは書いていないですが、イギリス・フランスも事故多数。何とかして…。

2013年に掲載された論文では、回避可能な医療過誤による死亡者数は年間40万人以上にのぼると算出された(医療過誤の内訳は、誤診、投薬ミス、手術中の外傷、手術部位の取り違え、輸血ミス、転倒、火傷、床ずれ、術後合併症など)。
(中略)
医療過誤による深刻な合併症で苦しむ患者の数は、死亡者数の10倍にのぼるという試算も出ている。

失敗の科学 第1章

本書では、失敗に直面した際の心理メカニズムとして「認知的不協和」を挙げています。これは、自分の信念と相反する事実が矛盾した際に、不快感やストレスを感じる状態を指します。これに対する人々の反応は、事実を受け入れる(自分の誤りを認める)、もしくは事実を否定する(事実の方が間違っている!)というもの。自身の評価を下げたくない、責任を取りたくないという思いから、多くの事例で後者の反応をとる傾向が見られ、失敗は繰り返されます。

しかし、組織や仕組みを改善するためには失敗が不可欠。では、どのようにして失敗から学ぶ組織を構築するか。非難や懲罰は、失敗を隠す動機となりかねません。本書では下記のように述べています。

問題は「誰の責任か?」でも「責任を追及すべきミスと、偶発的なミスとの境界線はどこにあるのか?」でもない。そんなことに一律の線引きは不可能だ。ここで問うべき質問は、「処遇を判断する立場の人間を、スタッフは信頼しているか?」だ。裁く側の人間を信頼することができて初めて、人はオープンになり、その結果、勤勉にもなるのだから。
(中略)
公正な文化では、失敗から学ぶことが奨励される。失敗の報告を促す開放的な組織文化を構築するには、まず早計な非難をやめることだ。

失敗の科学 第5章

まず大前提として、「罪を憎んで人を憎まず」な組織文化を作ること、と理解しました。失敗を受け入れつつ、そこから学ぶ風土。また組織としての公正なルール作り(個人を責めない)に加えて、上司・部下の信頼関係もとても重要ですね。言うは易し、行うは難し。管理者の皆さん、頑張っていきましょー。そして皆さん、どんどん失敗しましょう!


最後までお読みいただき、ありがとうございます!少しずつ想いを残していければ、と思います。またお越しください。