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「サピエンス全史」で読み解く現代世界の成り立ち(ただし上巻のみ)

約250万年前から始まる人類の歴史のうち、約15〜20万年前に登場したホモ・サピエンス(現生人類)の歩みを解説した良書。2011年の刊行以来、世界で累計発行部数2500万部、日本でも150万部を超えるベストセラー。著者はイスラエルの歴史学者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏です。まず、本書の紹介文はこちら。

アフリカでほそぼそと暮らしていたホモ・サピエンスが、食物連鎖の頂点に立ち、文明を築いたのはなぜか。その答えを解く鍵は「虚構」にある-。人類史全体をたどることで、我々はどのような存在なのかを明らかにする。

サピエンス全史 紹介文

私が本書を読んだのは3〜4年前。本屋で少し立ち読みした際、語り口の軽妙さと内容の密度に引き込まれ、即買いしました。本書の日本語副題は「文明の構造と人類の幸福」とあるように、単に歴史を解説するにとどまらず文化的背景を含めて哲学的な問いも投げ掛けてきます。

現代の話も絡めつつ、多くの興味深い事例や著者の考えが記されています。全体はとても紹介しきれないため、私が特に考えさせられた話を紹介。それは、「農業革命」と呼ぶ人類に起こった変化に関する考察です。農業を始める事で人類は豊かになったと考えられがちですが、著者は約1万年前に始まった農業は市場最大の詐欺と指摘します。なぜか。本書では下記のように分析されています。

人類は農業革命によって、手に入る食糧の総量をたしかに増やすことはできたが、食糧の増加は、より良い食生活や、より長い休暇には結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。
〜中略〜
では、それは誰の責任だったのか? 王のせいでもなければ、聖職者や商人のせいでもない。犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの、一握りの植物種だった。ホモ・サピエンスがそれらを栽培したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ。

サピエンス全史 5章

狩猟採集民族だったほうが、働く時間は短く、健康的な生活を送っていたとの事。農耕民族は人口を増やせたものの、それを維持するためにはさらに作物を育てる必要があり、人類は成長・拡大し続けるループから逃れられなくなった。小麦が最大の勝者、という刺激的な論です。

この流れは現代でも全く同じと感じます。機械化・デジタル化により仕事の効率が上がったはずが、こなす作業量はどんどん増加し、納期はどんどん短くなり、忙しくなる一方。チャップリンの「モダンタイムス」が思い起こされます。自動化で労働者も減り、利益を上げた会社では誰が喜んでいるか。現代の私たちは、既にデジタルの家畜になっているかもしれません。スマホに奪われている時間を考えても、もはや笑い事ではないですね。。。

という事で、長文でしたが「サピエンス全史」のご紹介。他にも面白い話がたくさん出てきます。私は上巻で満足し過ぎて、下巻は未読です。ご興味ある方はぜひご一読ください。


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