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「奈々子に」吉野弘

こんにちは。HSS型HSPのうららです。
私は今、HSS型HSPのカウンセリングを受けています。

カウンセラーではありません。
カウンセリングを受けている身です。

どんなカウンセリングをしているのかというと、
日常に起きた出来事で胸がざわついたこと
イラっとしたり、動揺したこと
などを書き出し、自分がそれをどう感じたか
なぜそう思ったかを書き出していく、という作業をしています。

なぜ、そんなことをするのでしょう?
ある人にとっては、異様にも思えるかもしれませんね。

私がそれをする理由は

「自分で自分の本音が聞こえない」

からです。

他人の目を気にして、他人の意見を自分の意見よりも正しいと思い、
それに合わせようとする。

そうしていくうちに、自分の感情にふたをし、放置し、無視をする
くせがついてしまったんでしょう。

人にもよるとは思いますが、HSS型HSPさんの中には
自分よりも他人に重きを置き、そうしていくうちに
自分の本心が分からなくなっている人が多いのではないかと思っています。

心身ともにズタボロだった私が、ある日出会った「詩」が
ありました。

それが
「奈々子に」です。

 
 お前にあげたいものは
 かちとるにむづかしく
 はぐくむにむづかしい
 自分を愛する心だ
 
この一文を見たときに、涙が止まらなくなりました。
ずっとずっと、そんなことを誰にも言われなかったし、
自分もそんなことを考えもしなかったからです。

今もこの一文を見ると涙が溢れてしまいます。
それは私が、まだまだ自分のことをないがしろに
しているという証拠でしょう。

もしあなたがこの詩を読んで、
心に何か響くものがあれば。

その時は
自分の心の声に耳を傾けることから
はじめてみませんか。


奈々子に

赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた

お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いが増えた

唐突だが 奈々子
お父さんは お前に多くを期待しないだろう
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう

自分があるとき
他人があり
世界がある

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた

苦労は
今は
お前にあげられない

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ

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