シナリオタイプ。スクランブルジャックin渋谷。


#創作大賞2024 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
●シナリオタイプ。2003年作。
●渋谷に理屈はいらなーい! この感染、この恐怖、誰も止められない。
止めてはいけない。
●一応映画用に仕上げたつもりの作品です。素人ですが、興味のある方拝読してみて下さい。
この作品はフィクションです、決して真似はしないでください。逮捕されます。

●あらすじ。
ふざけた彗星が、渋谷の交差点に落下した。
直撃を受けた巡査の宏(3役。歌手ヒロシ。黒子)が、交差点内で突然踊りだした。
周辺で就労している人たちが、理由もなく踊った。
ハチ公がタップダンスで踊りだし、飼い主の上野英三郎と再会する。
酔っ払ったホームレスが、酔拳を披露した。ロボットダンスで、マネキンが踊った。
信号機も踊った。信号機が赤に変わると、自動車たちが往来し始めた。
何事もなかったかのように、騒々しいいつもの町並みに戻っている。
しかし、信号が青に変わると今度は、女子高校生のチアガールたちが踊りだした。小学生が踊りだした。
北海道のよさこいダンサーたちが、踊った。制圧しに来た機動隊も踊った。外国人たちが踊った。
彗星の兄貴が、弟を迎えに来た。弟彗星は、交差点から飛び立った。
魔法を失ったにも関わらず、宏の恋人の博恵(2役。歌手ヒロエ)は、勝手に1人で踊り出した。
それは、新たな享楽であり、新たな恐怖の始まりだった。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 ●本文。
01 宇宙。
 クラシック調の壮大なBGMが流れる。
 画面右端上から、白く光り輝く彗星が現れる。
 次第に巨大化して、画面全体を真っ白に覆いつくす。
      (F・I。フェードイン)(画面がしだいに明るくなること)
   O      O         
タイトル
「スクランブル・ジャックin渋谷」
      (F・O。フェードアウト)(画面がしだいに暗くなること)
   O      O   
 タイトル文字が、薄れ消えていく。
 その画面の右上から宇宙が少しずつ見え始め、彗星の尾が現れ出す。
 彗星が、画面左下へと遠ざかって行く。
 遠ざかっていく、彗星。
  
02 宇宙。木星付近。
 横一直線になって、彗星が木星の赤道付近を通過していく。
 その彗星の頭部分を、無数の小さな光体が激しく動き回っている。
   
03 宇宙。彗星。
 宇宙空間を進んでいる、母彗星。
 その回りを白く光り輝き、ガスの尾を引いて飛んでいる子彗星たち。
 それらは、光る生命エネルギー体だ。
 2つの兄弟彗星が、互いにぶつかりあう。弾いては、また、衝突を繰り返  
 す。遊びでもあり、ケンカのようでもある。

 母彗星の回りを飛び回っている、無数の光る子彗星たち。
 
04 宇宙。地球。
 飛来している、母彗星。
 地球に向かって接近している彗星。
 兄弟彗星がぶつかりあい、弾ける。
 何度も激しくぶつかっては弾ける。本当に、ケンカしているようだ。
 兄弟彗星が、並んで飛んでいる。
 兄彗星、猛スピードで弟彗星に激突する。弟彗星が弾き飛ばされる。
 兄彗星から遠ざかる、弟彗星。
 弟彗星、母彗星からも遠ざかる。
 BGM、終了。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 05 宇宙。地球。
 弟彗星、地球に向かって飛んでいる。
 地球、太平洋・日本・関東平野・東京・渋谷に向かって飛来している。
 上空から望む渋谷の町並み。
 上空から望む、スクランブル交差点。
 
06 渋谷の交差点(午前)。
 宮益坂下通り。
 自動車たちが、赤信号で停止する。
 人型の信号機、赤から青に変わる。
 大勢の人々が、渡り歩く。
 各通りから、人々が往来する。
 ガラケーで話しながら歩く、女性。
 手をつないで歩く、若いカップル。
    O       O
 駅前ビル。
 2階のショーウインドー。4体のマネキンがある。
    O       O
 ビル111(ワンワンワン)(Sスクリーン)。
 愛する人への告白、電光掲示板に「愛の伝言板」が流れる。
S「由紀ちゃん、僕と付き合って下さい。隆弘」
S「朋美。お誕生日、おめでとう。大輔」
S「優ちゃん。俺が悪かった。家に帰ってきて。仁」
S「美里ちゃん。こんな俺ですが、結婚してください。康夫」
 などのメッセージが流れる。
 
07 ハチ公前広場。
 木立に囲まれた、ハチ公の銅像。
    O       O
 ハチ公前の地下道入り口。
 渋谷ハチ公前、仮派出所がある。現存の派出所は、只今修繕中だ。
 ビル111のスクリーンがよく見える。
    O       O
 9台の公衆電話、皆が電話をしている。
 その隣に、露店の本屋がある。非弱なおばあさん(74)が、本を売って
 いる。

    O       O
 渋谷ふれあいマップ。
 その下に居座って、6人の中年のホームレスが、昼間からアルコールを飲
 んで酔っぱらっている。

  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 08 広場前の仮派出所。
 
09 仮派出所内。
 ドアの内側から、カーテンが引かれている。窓には、「只今、外出中」と
 明記された貼り紙が貼ってある。

 巡査の宏(24)が、机に向かって、婚姻届に自分の部分だけ書き込んで
 いる。カップに、レモンを絞った水を入れて、飲んでいる。

 所内には、他に誰もいない。机には、パソコンとFAXがある。
 扇風機が回っている。クーラーはない。
 FAX電話から、着信音が聞こえる。
宏「はい、ハチ公前仮派出所」
 コードレスホンのようだ。
先輩の声「宏―。元気に働いているかー」
宏「先輩。現場検証、何時ごろ終わりそうですか?」
先輩の声「結構、長引きそうなんだ。しばらくの間、1人で留守番を頼む
 ぞ」

宏「先輩、それはないでしょう。本署からの応援は、どうなっているんです
 か」

先輩の声「本署も、事件が多すぎて、みんな出払っているらしい。じゃー
 な」

 早々と電話を切られる。
宏「先輩、ちょっと待ってよっ!」
 膨れっ面をする、宏。
 宏、立ち上がってドアの前に立つ。
 ドアのカーテンを開けて、貼り紙をはがす。
 日差しが暑く、タオルで額の汗を拭く。外の道行く人々を眺める。
 信号待ちをしている人々。
宏「(溜息をつく)何で、こんなに人が大勢いるんだー」
 交差点の中を、自動車が行き交っている。
 宏、腰ベルトの銃を素早く抜いては構え、しまっては素早く抜く。
 西部劇のマネをしているようだ。しまっては、素早く抜く。

 銃口に向かって、フッと息を吹きかける。違法行為だ。
 FAX電話から着信音が、聞こえる。
 コードレスのスイッチを入れる。
宏「(嫌々)ハイ、ハチ公前仮派出所」
 しまっては、素早く銃を抜く。
博恵の声「宏―。私―」
宏「何だ、博恵か。バイトはどうした?」
博恵の声「今、お店暇なの」
 しまっては、素早く銃を抜く。それを何度も繰り返す。
宏「お前な、勤務中に、電話するなと言ってあるだろう」
博恵の声「ネエネエ、今度の土曜日、クラブへ行かない。休日でしょ。近所
 に、オープンしたの」

宏「クラブは、嫌いだって言ってあるだろう」
博恵の声「いいじゃない、たまには。ダンスを教えてあげるから、行こう
 よ」

 宏、銃を人差し指で数回転させてから腰ベルトにしまう。
宏「いやーだ。土曜日は、朝から並ばないといけないんだから」
 宏、素早く抜いて銃口をドアに向ける。
博恵の声「まーた、パチンコでしょう」
 ドアを開けて、アメリカ人のピエール(27)が入る。
 銃口が、彼の腹部に当たっている。
 驚いて両手を挙げるピエール。
 銃をピエールに向けている宏。慌てて、腰ベルトにしまう。
博恵の声「宏―、聞いているの?」
ピエール「(怯えながら)あ、あの、インド料理のナンナンをご存知でしょ
 うか?」

 宏、冷や汗をかき、愛想悪く指をさす。
宏「あの道を右に曲がって、真直ぐ行って映画館の隣のビルの5階」
ピエール「あ、ありがとうございます」
 ドアを閉めて、走り去っていく。
博恵の声「ちょっとー、聞いてんのー」
 ほっとする、宏。
博恵の声「宏。土曜の夕方の5時、パチンコ店へ迎えに行くから待ってて
 ね」

宏「アホ、5時に終るわけないだろう」
宏、ドア越しから上空を見上げる。
 
10 上空。
 尾を引いた、小さな白い彗星が渋谷の交差点へ向かっている。
 弟彗星が、向かってきている。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 11 仮派出所内。
 降下して来る彗星を眺めている、宏。
博恵の声「ちゃんと、入店料稼いでてね」
宏「おい、博恵、仕事終わったらこっちに寄ってくれないか・・・」
 ガチャっと、一方的に、電話を切られる。
宏「ニャロー」
 宏、ドアを開けて外に出る。
 
12 ハチ公前広場。
 仮派出所のドアの前に立つ、宏。
 大勢の人々が、信号待ちをしている。
 宏、気になって上空を眺める。
 白く光り輝く彗星が見える。次第に大きくなり、接近してくる。
 信号機は、赤のままだ。自動車が往来している。
 宏、交差点の手前まで進んで止まり、また上空を見上げる。
 彗星が、渋谷の交差点に接近している。
 平穏に、信号待ちをしている人々。
 隣のギャルが空を眺めているが、気にしていない。見えていないようだ。
宏「(上空を指さす)君。あれ・・・」
ギャル「ハッ?」
 気持ち悪そうに、宏のそばから離れる。
 世界中で、宏だけが目撃しているのだ。
 信号待ちをしている人々。
 人型の信号機、赤から青に変わる。
 ハチ公前から大勢の人々が、渡り歩く。宏も歩き出す。
 各通りから、人の波が行き交う。
 交差点の中央まで進んで、立ち止まる宏。
 宏、人の波に揉まれながら、上空を見上げる。
 
13 渋谷の上空。
 直径50メートルの白く光り輝く彗星が、猛スピードで降下して来る。
 交差点に向かって飛んでくる。飛んでくる。
 
14 交差点。
 上空を見上げている、宏。
 大きな口と目を開けて見る、宏の顔。
 ふざけた彗星が、交差点に落下した。
 彗星が、直立不動の宏を直撃する。
 宏の身体全体が、白い光に包まれる。
 閃光が、宏の全身を覆いつくした。
 周囲の通行人も、光に包まれた。閃光は、交差点をも包み込んだ。
 光に包まれる、2期のスクリーン。通りのビル全体をも、包み込んだ。
 駅前ビルのマネキンも光に包まれる。
 ふれあいマップの下に居座る、ホームレス6人も、光に包まれる。
 ハチ公が光に包まれる。仮派出所が光に包まれる。
 9台の公衆電話、露店のおばあさんも光に包まれる。
 JR渋谷駅、渋谷百貨店が光に包まれる。
 交差点を中心に、半円500メートル付近が白い閃光によって街が飲み込
 まれた。

                          (F・I)
 
●「スクランブル・ジャックin渋谷」
 15 1人だけの交差点。
 光が、いつしか消えている。
 信号機が、青になっている。
 1人で呆然と、交差点の中央に立ちすくんでいる宏。フと我に返る。
 周囲を見渡すと、通行人は1人もいない。自動車も1台もない。
 渋谷の交差点が、静寂に包まれている。
 ビル111のスクリーンが、稼動している。
 東京都のCMが流れている。BGMが流れる。
 今この交差点に、宏だけが存在している。自分の頬をつねる。
 とても痛い。夢ではなく、現実のようだ。
 腕時計を見る。10時16分。
 ちょっとニヤける。今、渋谷は宏だけの世界だ。
 この交差点で、手・腕・足・腰を動かして踊ってみせる。
 全然、様になっていない。踊りとは言えない。
 111から流れるBGMに合せて踊る、宏。
 腰を振り、片足を高く上げ、ぐるっと一回りしたり、両手を挙げて盆踊り
 みたいに踊る。踊りは下手だが、楽しく踊っている。

 ステップを踏んでいるつもりの宏の足。
 多少、疲れが見え始めてきた。さらに踊りが、だらしなくなっている。
 宏、ラストのポーズを決める。
宏「(喜んで叫ぶ)ヨッシャー!」
 信号機が、青から赤に変わる。
                        (F・I)
 
16 渋谷の交差点。
宏「(叫ぶ)渋谷、愛してるぜー」
 信号機が、赤になっている。車両が往来する。
 宏、交差点の中央に1人で立っている。
 宏の左右を、多くの自動車が往来する。
 歩道上では、大勢の人々が信号待ちをしている。白い目で宏を見ている。
 フと我に返る宏。周囲を見渡す。大変、恥ずかしがる。
 いつもの騒々しい渋谷に、戻っている。
 宏の周りを自動車が往来し、危険な場所に立っていることに気付く。
 やばい。つばを飲み込み、冷や汗をかく。
 宏、腕時計を見る。10時16分。あの時間は、止まっていたようだ。
 不可思議な出来事に、戸惑いを隠せない。
 大勢の人が、宏を変な目で見ている。
 宏、左右の手を振り出す。手と腕を振って、人間信号機になる。
 その場を、それでごまかそうとする。
 手と腕を振り、足を動かしステップを踏む。
 それは、ロボットダンスのようだ。
 信号の指示を出しながら踊る。
 次第に、手と腕と足が、自分の意思と関係なく勝手に動き出す。
 真顔で踊る宏。上手に踊っている。
 ハチ公広場前では、大勢の人々が信号待ちをしている。
    O     O
人型信号機(C・G)。
 赤(車両用)から青に変わる。青(通行人用)、突然踊り出す。
    O      O
宮益坂下通り。
 トラックや自動車が停車する。
    O     O
交差点。
 ハチ公前広場から、大勢の人が渡る。
 各通りから、大勢の若い男女が交差点を往来する。
 宏、通行人のために、人間信号機として踊っている。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 17 111(スクリーン)。
 ヒロシ、ABCDの5人が整列している。
 歌手「ワイルド・ジャック」(WJ)の登場である。
 ボーカルのAが前面に立つ。ミュージックAが始まる。
 
18 交差点。
 交差点の中央で、信号式ダンスで踊っている、宏。
 宏、踊りをやめる。
 往来している、数1000人の人々。
 100人の男女の若者だけが交差点内に残って、宏の後ろで横一列に整列   
 する。宏を中心に、全員が正面を向く。

 真剣な顔で立っている宏。強烈な突風が、宏の顔と全身に当たる。
 111のスクリーンから、WJの歌が流れると宏は、突然踊り始めた。
 100人の若者たちがぐるっと1回転すると、従業員の制服に変身した。
 渋谷百貨店、渋谷駅、ハンバーガー店、ドラッグストア、女性看護師、
 牛丼屋、銀行のOL、映画館、ピザ屋、区役所職員の制服を着用した各1
 0名、総勢100人が踊り出す。

 
19 111・222のスクリーン。
 ワイルド・ジャックのAが、歌っている。
 ヒロシとメンバーBCDが、バックで踊っている。
 踊っているヒロシ。
 
20 交差点。
 踊っている宏。スクリーンのヒロシと全く同じ踊りだ。
 魔法にかけられているかのように、突然上手に踊っている。
 100人が、踊っている。
 ミュージカル映画のような、ダイナミックなダンスが渋谷の交差点で理由
 もなく突然披露されている。

 踊っている宏。
 踊っている渋谷百貨店のスタッフ10人。
 踊っている渋谷駅職員の10人。
 踊っているハンバーガー店の10人。
 ビルの窓に映る、踊っている101人。
 宏を中心に、100人が踊っている。
 踊っている牛丼屋の10人。
 踊っているドラッグストアの10人。
 踊っている銀行のOL10人。
 女性看護師10人が、踊っている。
 楽しそうに踊っている、宏。
 区役所職員10人が踊っている。
 踊っている映画館の従業員10人。
 踊っているピザ屋の従業員10人。
 宏を中心に、全員が踊っている。
 メジャーを持って、宏の体格を測りながら踊る、渋谷百貨店の職員たち。
 笛を吹き、汽車ポッポの表現をする、渋谷駅の職員たち。
 札束を数えて踊っている、銀行のOLたち。
 エア・ハンバーガーを造りながら踊っている、店員たち。
 無表情で事務的に踊る、区役所職員たち。笑顔なし。
 上へ投げてピザ生地を広げている、ピザ屋の従業員たち。
 1人で踊っている宏。彼の踊りが、誰よりも一番目立っている。
 ドリンク剤を飲んで、元気を出して踊るドラッグストアの人たち。
 包帯と注射器を駆使して踊る、女性看護師たち。
 101人全員が、踊っている。踊っている宏。
 歩道上では、大勢の人々が楽しそうに彼らの踊りを見物している。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 21 駅前ビル。
 2階のショーウインドー。
 4体のマネキンがある。突然、ロボットダンスを踊り出す。
 踊っている、4体のマネキン。
 
22 ハチ公前広場(この作品は、2003年頃を舞台にしています)。
 9台の公衆電話がある。
 ドアを開けスーツ姿の男性4人、OL4人が同時に外へ出てくる。
 踊りだす8人。
 踊っている男性4人。踊っている女性4人。
 踊っている女性Aの笑顔。
 激しく踊っている、男性B。
 残る1台からはワンテンポ遅れた、中年男性Cが出てくる。
 一緒になって踊り出す。全然、踊りになっていない。
 男性C、8人とはテンポが1歩遅れて踊っている。
    O      O
 露天商の本屋。非弱なおばあさんが座っている。
 突然立ち上がり、元気に踊り始める。高齢さを全く感じられない。
 笑顔で踊る、キレキレのおばあさん。
    O      O
 上下2つの人型信号機。
 下の青色信号機が、踊り出す。
 上の赤は、テレビを見ながら、横になって鼻をほじくっている。
 青の信号機は、ダイナミックなダンスを踊る。
 ところが青は、早くも疲れが見え始める。動きが鈍い。
 赤の信号機は、バケツを持って、下の青信号に水をかける。
 水をかけられて、青信号は、見上げて怒っている。
     〇       〇
 ふれあいマップの看板前。   
 ホームレス6人が、飲んだくれている。すでに酔っぱらっている。
 一升瓶の日本酒を飲んでいる、ホームレスA。
 急に立ち上がって、踊り出す。
 5人も立ち上がる。フラフラと千鳥足で踊り出す、6人。
 それは、カンフーの酔拳のような踊りだ。
 鶴の舞いを披露する、ホームレスA。
 愚痴をこぼしながら踊る、ホームレスB。
 吐きそうになる、ホームレスC。だが吐かない。
 カクテルシェーカーを振りながら踊る、ホームレスD。
 ビールジョッキを持って踊る、ホームレスE。
 泣きながら踊る、ホームレスF。
 千鳥足で踊る、6人の足。
 華麗な酔拳の舞いを披露する、6人。
 AがBにぶつかると、1対1でケンカを始める。
 それは、互いにカンフーによる乱闘踊りである。
 巧みな技を披露し合う、6人。
    O       O
 ハチ公の銅像がある(CG)。
 突然、ハチ公は、台座に2本足で立ち上がる。
 両手を広げて背伸びをする。首を回し、肩の凝りをほぐす。
 ニタッと微笑む。
 横にある木立の枝をつかんでは、1本折る。
 それをステッキ代わりにして、踊り出す。
 軽やかな、足踏みのタップダンスだ。
 タップアクションを披露する、ハチ公。
 ステッキを上に放り投げたり、台座に投げてはその跳ね返りで受け取る。    
 ステッキの端を両手で握り、左右に振ってはニコニコと踊る。
 時には、ステッキを振っては指揮者のように振る舞う。

 周囲の木立は、その指揮に合わせ、揺れながら楽しそうに踊っている。
 ステッキダンスを披露する、ハチ公。
 軽やかな、タップの足踏みが快音する。
 ステッキを空に放り投げる、ハチ公。天高く舞うステッキ。
 ハチ公、右手を伸ばしてステッキを受け取ろうとする。
 そのステッキは、主人の上野英三郎に変身して舞い降りて台座に立つ。
 大喜びするハチ公。涙を流して英三郎に飛びつく。頬をなめ回す。
 英三郎、涙を流しながらハチ公を抱き締める。
 2人が今、長い年月を経て再会を果たしたのだ。
 
●「スクランブル・ジャックin渋谷」
 23 JR渋谷駅の渡り廊下。
 外から廊下の窓を見ると、左からバレエダンサー10人が踊りながら走っ
 てやってくる。クルクルと回り、足を高く上げたりして踊っている。

 そのまま右の方へと去っていく。
 この時だけ、「白鳥の湖」の音楽が流れた。
 
24 交差点。
 101人全員が、踊っている。踊り続けている、宏。
 踊っている渋谷駅の職員たち。
 渋谷百貨店の人たちが踊っている。
 踊っているハンバーガー店の人たち。
 踊る銀行のOL。
 宏が踊っている。100人が踊っている。
 踊っているピザ屋の店員たち。
 踊っている区役所の職員たち。
 特別に参加して、都知事が踊っている。
 踊っているドラッグストアの人たち。
 映画館の従業員が踊っている。
 踊っている牛丼屋の人たち。
 101人が踊っている。
 宏が踊っている。
 
25 人型信号機。
 青が踊っている。点滅を始める。
 赤信号に、変わろうとしている。
 
26 交差点。
 宏を中心にして、全員が踊っている。
 宏だけ1人残して、100人は踊りながら走り去った。
 1人だけで踊っている、宏。フと我に返ると、誰もいない。
 宏、慌てて仮派出所の方へと走り去る。
 
27 111(スクリーン)。
 ミュージックAが終了する。
 ミュージックBが、開始する。
 ワイルド・ジャックのA、歌わずに踊っている。
 イントロだけで、歌なしだ。
 5人が踊っている。ヒロシが踊っている。
 踊っている5人。
 
28 信号機。
 青、踊りをやめて大の字で倒れている。
 赤が、気合を入れて踊り出す。
 自動車が、交差点内を走り出す。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 29 仮派出所内。
 踊り終わった宏、ドアを閉めて椅子に腰掛ける。
 疲労感・脱力感に襲われ、足を伸ばす。
宏「(ため息)はー、俺は今、何をしていたんだ?」
 
30 ハチ公前広場。
 自動車が往来している。平然とした顔で、人々が信号待ちをしている。
 カップルAが、イチャイチャしている。
 ガラパゴスケータイで会話している女性B。
 大声で笑っているギャル3人。
 何もなかったかのように、いつもの騒々しい渋谷に戻っている。
 誰1人として、101人の狂乱を自覚していない。
    O      O
 ふれあいマップの看板前。
 飲んだくれているホームレス6人。
 ハチ公の銅像。何故か、左目から涙をこぼしている。
    O      O
 9台の公衆電話。9人が電話をかけている。
 電話待ちをしている人たちが、並んでいる。
 露店の本屋。咳込みながら本を売るおばあさん。
    O      O
 駅前ビル。
 2階のショーウインドー。動いていない4体のマネキンがある。
 
31 信号機。
 点滅しながら踊る赤。点滅が終了し、代わって青が踊り出す。
 ミュージックBが終了する。
 赤、椅子に腰掛けて、タバコをおいしそうに吸っては煙を吐き出す。
 真面目に踊り続ける、青。
 
32 交差点。
 各通りから、セーラー服を着た女子高校生たちだけが往来する。
 総勢101人。女子高校生A子(18)が、歩いている。
 交差点の中央で、渋谷駅を背にして立ち止まる。微笑む。
 歩いている女子高校生たち、A子を中心に編隊を組んで整列する。
 A子が立っている。
 
33 111(スクリーン)
 ワイルド・ジャック(WJ)とA子(ボーカル)がいる。
 A子が歌い出す。踊り出すWJの5人。
 ヒロシも踊っている。
 ミュージックC、開始。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」
 34 交差点。
 笑顔で踊っている、A子。
 踊る、100人の女子高校生たち。
 歩道上で眺めている人々。
 笑顔で踊っている、B子。
 踊っているC子。
 腰を振って踊る女子高校生たち。
 足を高く上げて踊る、D子。
 腰をくねらせる、E子。
 踊っているF子。
 女子高校生たちの踊る足。
 101人が踊っている。
 踊って歌うA子。
 踊る女子高校生たちの手や腕。
 踊っているG子。踊るH子の足。
 全員が踊っている。
 A子を中央に配置して、100人が横一列に並ぶ。
 左右の端からA子に向かって、ウエーブが描かれる。
 A子が歌って踊っている。ウエーブが、中央のA子に行き届く。
 歌を止めて、ポーズを決めるA子。
 100人の女子高生が、ポーズを決める。
101人「(叫ぶ)渋谷―、大好きーっ!」 
 ミュージックCが終了する。
 
35 信号機。
 青から赤に変わる。座り込んでへこたれる青。額の汗を拭う。
 赤、灰皿にタバコを押し付けて火を消す。
 イヤイヤ踊り始める、赤。
 
36 道玄坂通り。
 停車している自動車たち。
 先頭の自動車。青年(27)が、発車しようとアクセルを踏む。
 突然、目の前に黒子A(宏)が立て看板を持って現れる。
 急停車する、青年の自動車。
 青年、ハンドルに胸をぶつける。
青年「(痛がる)いってー」
 気軽におじぎをする、黒子A。立て看板を、道路の中央に置く。
立て看板『本日、スクランブル交差点、歩行者天国につき自動車などの往来
 を禁止する。渋谷中央警察署』

 黒子A、一礼して踊りながら楽しそうに去っていく。踊りは下手である。
 口を開け、呆気にとらわれる青年。
 自動車等の往来が、一切禁止された。
 交差点内は、歩行者天国となった。
 
37 信号機。
 赤、突然、踊っている最中に光源が消える。
 寝そべっている青、いきなり光り出す。慌てて、立ち上がり踊り出す。
 赤、大の字で休む。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 38 交差点。
 各通りから男女の小学生たちが、母親に連れられて渡り歩く。
 小学生A子(11)、母親(35)の手に引かれて中央までやってくる。
 200名以上の親子たちで、交差点が雑踏している。
 A子の手と母親の手が、離れてしまう。母親、群衆の中に消えていく。
 迷子になって、立ち尽くすA子。思わず泣き出してしまう。
A子「(号泣)お母―さん、お母―さん」
 他の親子たち、A子を無視して交差点内を闊歩している。
    O     O
 111(スクリーン)。
 A子の背後に、111のスクリーンが見える。
 スクリーン中に、チルドレン・ジャック(TJ。A子・B子・C子)が登  
 場する。歌って、踊りだす。

    O     O
 泣いているA子。
 手を離し、踊りながら去る母親たち。
 100人の小学生(男女各50名)が、交差点に取り残される。
 その子供たちが、泣いているA子を中心にして、整列し始める。
 A子のズームアップした顔。
 突如、カメラ目線でカッと睨みつける。泣き止んでいる。
 
39 111(スクリーン)。
 A子を中心に、3人の女子小学生(TJ)がステージで踊って歌う。
 3人が歌って踊っている。
 ミュージックDが、流れる。
 
40 交差点。
 激しく踊り始める、A子。
 100人の男女の小学生たちも、踊り始める。
 小さいながらも、大人顔負け元気一杯の踊りを披露する。
 踊っている小学生たち。
 踊っている男子B。
 101人全員が踊っている。
 踊っている女子たち。踊っている男子たち。
 踊るC子。笑顔で踊る男子D。
 踊っているA子。
 全員が踊っている。
 踊るE子。踊るF子。踊っている男子G。
 踊っている男女たち。
 楽しそうに踊るH子。
 男子Iが踊っている。
 踊っている女子たち、男子たち。
 全員が踊っている。踊っているA子。
 女子たちが、一時踊りを止める。男子だけが踊る。
 次に男子たちだけが、踊りを止める。女子たちが一斉に踊り始める。
 笑顔で踊るA子。
 全員、ラストのポーズを決める。
 101人で、「シブヤ」という人文字を描く。
 
41 111(スクリーン)
 ポーズを決めるTJの3人。
 ミュージックDが終了する。
  
42 信号機。
 青は、踊り続けている。
 自動車の往来が禁止になったため、青はずっと踊り続けないといけない。
 赤、ハンモックの上で寝ている。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」
 43 交差点。
 各通りから1組20人、男女100人が交差点内に走って集合した。
 ハッピにスパッツ、浴衣、鉢巻きと夏祭りらしい服装をしている。
 渋谷駅を背にして、鳴子を手にして整列する男女。
 Aグループのリーダーa子(23)がいる。
 北海道(道産子)の「よさこいダンサー」たちだ。
 
44 111(スクリーン)。
 ワイルド・ジャックが、ソーラン祭りの歌を歌い踊り出す。
 歌うA。踊っているヒロシたち。
 ミュージックEが始まる。
 
45 交差点。
 全員で、よさこい踊りを始める道産子たち。
 踊っているAグループ。踊るa子。
 踊っているBグループ。踊るb男。
 踊っているCグループ。踊るc子。
 踊っているⅮグループ。踊るd男。
 踊っているEグループ。踊るe子。
 組ごとに、踊り方が違っている。
 歩道上では、大勢の人々が見物している。
 踊っているD・Eグループ。
 全員で踊っている。
 汗を流して踊るa子とAグループ。
 情熱的に踊るCグループ。
 楽しそうに踊る、Eグループ。
 踊っているDグループの手と足。
 キレッキレで踊る、Bグループ。
 踊っているc子。
 迫力ある踊りを披露する、e男。
 踊っているa子の影。
 傍観している歩道上の観衆たち。
 
46 宮益坂下。
 5台の黒い大型車がやってくる。機動隊だ。
 交差点の手前で停車する。
 
47 仮派出所内。
宏、ドア越しに立って機動隊の動向を眺める。
 
48 宮益坂下。
 先頭の大型車が、停車している。
 ドアが開き、地面に降り立つ足。隊長(48)である。
 続いて、隊員たちが降りる。
 全員が降り立ち、隊長の背後で整列する。総勢100名。
 隊長の目の前で踊っている、道産子たち。
 隊長、振り向いて隊員たちを見る。整列している隊員たち。
 額から汗を流している隊員A。暑いようだ。
 歩道上にいる、一般の観衆たち。
 不安げに、機動隊を見ている。
 隊員B、彼らを見て軽くリズムを取る。隊長に頭を度突かれる。
隊長「みんなー、連中を道交法違反および騒乱罪で逮捕しろーっ!」
隊員たち「おーっ」
 隊長が、先陣を切って走り出す。追って、100人全員が走り出す。
 
49 派出所内。
窓際から、黙って眺めている宏。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 50 交差点。
 踊っている道産子たち。踊っているa子。
 彼らの間を縫って、突入する隊長と隊員たち。
 突入する隊長。突入する隊員たち。
 隊長、手錠を持って、踊るa子を逮捕しようとする。
 その隊長の背後に、黒子Aがいる。
黒子A「信じられない。おまえたちは障がい者を逮捕するのか?」
 隊長、a子をよく見ると彼女はチック症の障害者だった。
 驚く隊長。周囲を見渡すと、踊っているのは全員障がい者たちに変身して
 いた。

 目を疑う、隊長および隊員たち。
 障がい者100人。車椅子、知的障害者、片腕・片足、手話、盲目、難聴
 者、低身長者・ダウン症者などが一緒に楽しく踊っている。

 踊りとは言えないが、彼らは彼らなりの踊りを一生懸命披露している。
 踊っている車椅子の男性。踊る男性の知的障害者。
 義足をつけて踊っている女性。杖を使って踊る盲目者。
 笑顔で踊っているa子。
 隊長、逮捕することに多少戸惑っている。
 隊員たち、手錠を持って躊躇している。
 隊長、a子に手錠をかけようとする。
黒子A「おーい。逮捕するつもりか。道交法違反かもしれないけれど、こん
 なに楽しそうに生き生きと踊っているのに、少しぐらい大目にみてやれ
 よ」

 難聴の男性が踊っている。痴呆老人が踊っている。
 松葉杖をついて踊る、右足骨折の女性。
 片足のない車椅子の男性(糖尿病)が踊っている。
 イキイキと楽しそうに踊る、障がい者たち。
 歩道上の観衆たち、隊員たちを睨みつけている。
 彼らの視線に、良心を痛める隊員たち。
 踊っている、チック症のa子。
 a子に手錠をかけようとする、隊長。迷っている。
 隊員たちも、手錠をかけようとしている。
 黒子A、隊長を睨みつけている。
 楽しく踊っている障がい者たち。
 歩道上の人々、彼らの踊りを見守っている。
 隊長、覚悟を決めてa子に手錠をかける。
黒子A「(呆れる)あーあー。これで警察は、世間を敵に回したな」
 手錠をかけられても踊り続けるa子。
 隊長、観衆たちの目を気にする。
 隊員たちは、観衆たちを恐れて手錠をかけられないでいる。
 観衆たちが、少しずつ交差点の中に入ろうとする。威嚇している。
 一歩身を引いて、動揺する隊長。身の危険を感じる隊員たち。
 踊っているa子。
 黒子A、隊長たちを睨んでいる。
 怯える隊長の顔。
 群衆の視線に耐えきれず隊長は、a子の手錠を鍵で外す。
 安心する黒子A。
 ホッとして、歩道上に戻る観衆たち。
 安心する隊長。隊員たちも安心する。
 踊っているa子を見る、隊長。
 障がい者たちが、笑顔で踊っている。
 隊長、周囲を見渡すと黒子Aがいないのに気付く。
 歩道上で、障がい者たちの踊りを眺めている観衆たち。
 a子、隊長の手を握って笑顔で一緒に踊ろうと催促する。
 隊長、やけになって一緒に踊り出す。
 隊員たちも、障がい者たちと組んで一斉に踊り出す。
 隊長、笑顔で楽しそうにa子と踊る。
 隊員たちと障害者たちが、一緒になって楽しそうに踊っている。
 200人が、交差点内で踊っている。
 歩道上の人たち、彼らに拍手喝采を浴びせる。
 ミュージックEが終了する。
 
51 仮派出所内。
 窓際で、呆れ返っている宏。
宏「お前たち、職務を放棄するなー」
 机上のFAX電話で、本署へかける宏。
宏「署長。機動隊での鎮圧作戦、失敗に終わりました」
署長の声「うるさい。今、社交ダンスの特訓で忙しいんだ」
 受話器を手にしたまま、絶句する宏。
 警察署も、魔力に汚染されたようだ。
 
52 信号機。
 青、頑張って踊っている。バテてきている。
 赤、扇風機にあたりながら、おいしそうに生ビールを飲んでいる。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 53 道玄坂通り。
 テレビ局の中継車とワゴン車が、停車している。
 交差点では、道産子&障がい者とは代わって、別のグループの男女が乱舞
 している。テレビクルーたちだ。

 私服の者、背広を着ている者など、手に小道具を持って踊っている。
 
54 中継車の中。
 ディレクター、カメラマン、中継オペレーター、音声、運転手A、アシス
 タントディレクター(AD)がいる。

 カメラを調整している、カメラマン。
カメラマン「だめだ、壊れている。映らない」
オペレーター「ディレクター。計器類のハリが踊って、使用不能です」
 計器類を見る、ディレクター。計器類の針が左右に大きく振れている。
 針が、リズミカルに踊っている。
ディレクター「どうなっているんだ。中継が、全くできないなんて」
 
55 ワゴン車の中。
 女性リポーター久美子(24)、物理学の教授(56)、運転手Bがい
 る。

 マイクをいじっている、久美子。
久美子「あーん。マイクが使えなーい。なんでー?」
 フロントガラス越しから、交差点で乱舞している人たちが見える。
 小型の電磁波測定装置を操作している教授。波長が乱れている。
教授「凄い。交差点の下から、強力な電磁波が発生しているぞ。しかも、α
 波が異常に高い。きっと、快楽物質ドーパミンが大量に放出しているん
 だ」

久美子「教授。それで、皆が一緒になって狂ったように踊り出すの?」
教授「電磁波が脳内の細胞を活性化させては、運動神経に微妙な電気信号を
 送り、自分の意思とは全く関係なく勝手に作用しているのに違いない」

久美子「それで、どうなるんですか?」
教授「脳内物質の多量の分泌による、脳内電流の活発化。過度な運動能力に
 よる肉体的および精神的疲労。乳酸過剰による筋肉痛とビタミン不足、放
 心状態、虚脱感に襲われる。翌日には、筋肉疲労が起きて、ダウンだ」

久美子「それだけ?」
教授「まー、後は安静にして寝ていれば、2日~3日で回復するだろう」
久美子「教授。あたし、テニスした後の筋肉痛と全く同じなんだけど」
教授「あれ、診断を間違えたかな?」
 首をかしげる、いい加減な教授であった。
 
56 ワゴン車の外。
 ノートとペンを手にして、ドアを開けて外へ出る久美子。
久美子「(気合を入れる)絶対に、取材してやるっ!」
 踊り狂っている観衆たちに向かって走る、久美子。
 教授も降りてくる。
教授「久美ちゃん、いかん、行ってはいけない。危険すぎる!」
 群衆の中に紛れ込んでいく、久美子。
 追いかける教授。彼もまた、群衆の中に消えていく。
 
57 111(スクリーン)。
 歌手スクランブル・ピーチ(女性4人)が、歌って踊る。
 ボーカルのクミコ(2役)が歌っている。踊っている他の3人。
 ミュージックF、開始。
 
58 信号機。
 タオルで、汗をぬぐいながら踊る青。
 赤、サウナ室で汗をかき、ととのっている。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 59 交差点。
 踊っている、老若男女の群衆たち。
 彼らはテレビ局、新聞社、雑誌社、芸能レポーターのスタッフだ。
 総勢100人以上。
    O      O
 ナレーター(27)、使用不能のマイクを持って踊りながらアドリブで実
 況する。

    O      O
 久美子、ペンとノートを使って楽しそうに踊っている。
 彼女の背後にある111のスクリーンでは、クミコが歌って踊っている。
    O      O
 踊っている芸能記者たち。
 踊る有名女性歌手(17)に、マイクを向けて取材している。
 実況しているナレーター。
    O      O
 映画用のデジタルカメラを持って踊るカメラマン。
 踊る女優(21)を撮影している。それを実況している、ナレーター。
    O      O
 教授、重い頭痛に襲われてひざまずく。
教授「うわー、あ、あたまがー」
 ナレーターが、アドリブで教授の様子を実況している。
 踊る大勢の群衆が、教授を取り囲む。教授の姿が人ごみに隠れて見えなく
 なる。

 群衆の前で踊る、笑顔の久美子。
 踊っている久美子と群衆たち。
 久美子、笑顔で立ち去る。群衆たちも立ち去る。
 歌舞伎の「義経」に変身した、教授が現れる。
 変身した教授(義経)の顔。
 歌舞伎の音楽がしばし流れる。歌舞伎を踊り始める教授。
 踊っている義経教授。
    O      O
 男性芸能記者が、踊るワイルドジャックのヒロシを追いかける。
 ナレーターが、アドリブで実況している。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
  女優(49)が踊っている。踊っている照明係、その女優に光を当てるた
 めに追いかける。ナレーターが、アドリブで実況している。

    O       O
 踊り狂っている群衆たち。
 大道具5人、小道具5人、その他裏方たちが踊っている。
    O       O
 セクシーギャル(19)が、踊りながら逃げる。カメラ小僧10人が、踊
 りながら追いかける。ナレーターが、アドリブで実況する。

    O       O
 ニヒルなプロデューサー、隅っこで軽くリズムをとっている。
    O       O
 新聞紙で作ったカブトを頭にのせて踊っている、新聞記者。
    O       O
 新人女性歌手(16)が踊っている。そばで芸能記者たちが、彼女に見向
 きもせずに踊っている。歌手だとは、誰も知らないようだ。

 彼女に、同情しているナレーター。
    O       O
 ファッションモデル(18)が、踊りながらランウェイを歩いている。
 踊りながら撮るカメラマンたち。
 ナレーターが、アドリブで実況している。
    O       O
 久美子、歌舞伎役者の教授、ディレクター、中継オペレーター、AD、運
 転手2人、カメラマン、助手が踊っている。

    O       O
 男優(53)と一般女性(28)が仲良く踊っている。芸能記者たちが、
 踊りながら2人を追いかける。

 不倫の関係であることを暴露する、ナレーター。
    O       O
 全員が踊っている。
 久美子が踊っている。歌舞伎役者の教授が踊っている。
    O       O
 椅子に腰掛けた、監督がいる。
監督「カーット!」
    O       O
 群衆が、一斉に動きを止める。
 踊りを止める、笑顔の久美子。
 皆、不揃いな止まり方をしている。
 歌舞伎役者の教授、見得(みえ)・睨みながら踊りを止める。
 ミュージックFが終了する。
 
60 信号機。
 踊り続けている青。
 赤、横になりポテトチップスを食べながらTVを見ている。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 61 広場前。
 ふれあいマップ周辺。
 汗をかいて休んでいる、久美子。彼女の背後に、111のスクリーンが見
 える。クミコも、休んでいる。

 大の字で倒れている、普通になった教授。
 久美子の隣で、6人のホームレスが飲んだくれている。
 缶ビールを飲もうとする、ホームレスA。
 その缶ビールを、強引に略奪する久美子。
 呆気にとらわれる、ホームレスA。
 美味しそうに飲んでいる、久美子の横顔。
 111のスクリーン。クミコが出演する缶ビールのCMが流れている。
 美味しそうに飲んでいる、久美子とクミコの横顔。
 飲み干す、久美子とクミコ。
久美子・クミコ「プハー。踊った後のビールは、最高!」
 缶ビールの宣伝のようだ。
 
62 広場前。
 仮派出所。
 ドアを開けて出てくる、宏。交差点に向かって歩き出す。
 彼の後を追うように渋谷駅構内から、地下道や周辺地域から体格の良いヤ
 クザ風の男性たちがやってくる。総勢51人。

 パンチパーマ、ちょび髭をはやし、いかついドヤ顔をした私服の警官隊
 だ。

 宏を先頭に、交差点の中を歩いている。
 歩道上の人たちは、怯えて不安げに見ている。
 
63 交差点。
 宏、交差点の中央で立ち止まる。その背後で、警官隊もまた立ち止まる。
 警官隊の背後には、渋谷駅が見える。
 宏の目の前に、各通りから集まってきたヤクザたちが現れる。
 渋谷組・組長(54)と子分50人が、勢揃いしている。   
 宏と組長、睨み合って対峙する。つばを飲み込み弱腰の表情を見せる宏。
 心配そうに見守る、歩道上の観衆たち。
 総勢102人が対峙している。
 組長、宏の後ろのヤクザ風の男たちを見る。
組長「おい、何やねん、こいつらは? この渋谷はな、渋谷組のシマだぞ。 
 さっさと出ていきな」

宏「(怯える)お、お前達が渋谷組か?」
組長「それがどうした?」
宏「恐喝、脅迫、強要、詐欺、痴漢、傷害、暴行、窃盗、売春、覚醒剤、都 
 迷惑防止条例、道交法違反などの容疑で、お前達全員を逮捕する」

 宏、胸ポケットから数十枚の逮捕令状を取り出しては見せる。
 組長、1枚の用紙を見る。婚姻届だ。一瞬、ホレる錯覚を起こす。
 宏、慌てて胸ポケットにしまい込む。
組長「お前らは、警察か」
宏「これでも、捜査4課の刑事だ」
 威風堂々としている、屈強な警官たち。
 一瞬たじろぐ、組長。互いに顔を見合わせる、ヤクザたち。
宏「みんなー、こいつらを逮捕しろー」
警官たち「おーっ」
 テンポある、ケンカ風のミュージックGが流れる。
 
64 信号機。
 ケンカダンスを1人でする、青。
 赤、ソファに腰掛けて読書をしている。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 65 交差点。
 一斉に格闘を始める、警官たちとヤクザたち。
 それは、ケンカのようなダンスでもある。
 宏、組長にケンカをしかけるが簡単に殴られる。大人と子供のようなケン
 カだ。あまりにも弱すぎる、宏。

 不適な笑みを見せながら手の指の関節を、ポキポキと鳴らす組長。
    O     O
 警官とヤクザが、1対1でダンス式の喧嘩をしている。
 綺麗に整列して、全員が喧嘩している。
 殴る、蹴る、避ける、回し蹴り、投げる、飛び蹴り、張り倒すなどのケン
 カが、ダンスとして表現される。

 警官A、ヤクザAを殴り飛ばす。
 警官B、ヤクザBに回し蹴りを受ける。
 警官C、ヤクザCと殴り合う。
 警官D、ヤクザDから頭突きを受ける。
    O     O
 倒れている宏、フラフラと立ち上がる。
 組長、足払いで宏を地面に倒す。襟をつかんでは、放り投げる。
    O     O
 警官E、ヤクザEを空手で倒す。
 警官F、ヤクザFに叩きのめされる。
 警官G、ヤクザGを投げ飛ばす。
 乱闘ダンスをしている、全員。
    O     O
 また立ち上がる宏。突進してくる組長。
 宏、拳銃を抜いて組長の眼前に突き付ける。
 立ち止まる組長。一瞬、ひるむ。
    O     O
 乱闘ダンスをしている100人。
 警官H、ヤクザHに往復ビンタをする。
 警官I、ヤクザIに蹴り飛ばされる。
 警官J、ヤクザJを3段蹴りにする。
 黙って傍観している観衆たち。
    O     O
 宏、拳銃を持つ手が震えている。
組長「どうした、手が震えているぞ。人を撃った事がことがないのか」
宏「(怯えている)ち、近づくと、撃つぞ…。当たったら、痛い目にあう
 ぞ」

 組長、薄笑いしながら突進する。
宏「(叫ぶ)うわーっ」
 引き金を引く、宏の人差し指。
 銃口から水が放出された。水鉄砲だ。
 組長の目に当たる。
組長「(叫ぶ)わーっ。何をかけたー?」
 両手で目を押さえながら、地面の上で転がる。
宏「ハハハ。これはレモン水じゃ。だから言ったろう、痛い目にあうぞっ
 て」

 人差し指で拳銃を回転させながら,カッコ良く腰ベルトにしまう。
 否、拳銃は地面に落ちてしまった。周囲を見渡しながら、恥ずかしそうに 
 拳銃を拾って腰ベルトにしまう。

    O      O
 乱闘ダンスをしている、警官とヤクザたち。
 警官K、ヤクザKを足払いで倒す。
 警官L、ヤクザLから回し蹴りをくらう。
    O      O
 宏、痛がる組長の胸元をつかんでは立たせる。
 警官たちも、相手のヤクザの胸元を掴んでは立たせる。
 警官M、ヤクザMの胸元をつかんで立たせる。
 宏と警官たち、一斉に背負い投げをする。
 背負い投げで組長を地面に倒す、宏。倒れる組長。
 倒れているヤクザたち。
 宏、手錠を持って右手を高く上げる。
 警官たちも、手錠を持って右手を高く上げる。
 宏、組長に手錠をかける。
 警官たちも、同時に彼らの手首に手錠をかける。
 目を痛めて観念している組長。
 歩道上から、観衆たちが拍手を送る。
 逮捕に酔いしれている警官たち。
 宏も、逮捕に酔いしれている。
 ミュージックGが終了する。
 
66 上空。
 兄彗星が、白い尾を引いて現れる。
 
67 信号機。
 青、フラフラしながら踊っている。
 赤、上から、バケツの水を青に向けて出かける。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 68 ビルの1室(インド料理店ナンナン)。
 レジで代金を支払うピエール。
 インドの民俗衣装を着てお釣りを手渡す博恵(23)。他にお客はいな
 い。

 ピエール、博恵に微笑んでドアを開けて出て行く。
博恵「ありがとうございましたー」
 入れ替わって、民俗衣装を着用した敏子(23)が入ってくる。
敏子「博恵。交差点が、大変!」
博恵「大変って、何が?」
敏子「よくわかんないけど、あそこに入るとみんな踊り出しちゃうみたい」
博恵「何かの、イベントじゃないの」
敏子「そんなの聞いてないわよ。ねえ、行ってみない。どうせお店も暇なこ
 とだし」

 しばらく考え込む博恵。
 ニコッと微笑む、敏子。
博恵「マスター。ちょっと休憩しまーす」
 その衣装のまま、2人とも楽しそうにドアを開けて出ていく。
    O       O
 廊下、エレベーター前。
 エレベーターのドアが開く。中に入る博恵と敏子。
 同時に、インド人男性5人が入って来た。
博恵「(驚く)マスターッ!」
 ニコッと会釈をするマスター(37)。
 呆れ返る、博恵と敏子。
 エレベーターのドアが閉まる。
 
69 111(スクリーン)
 インド人男性5人が、ステージでインド音楽(ボリウッドダンス)を歌っ
 て踊る。

 マスターが歌って、踊っている。
 ミュージックH、開始。
 
70 信号機。
 インドの踊りを踊る、青。
 机に向かって、インド料理のナン・カレーを食べている赤。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 71 交差点。
 民俗衣装を着たまま、敏子が踊っている。博恵はいない。
 インド人5人とマスターが、インドダンスを披露している。
 その横で、パキスタン人5人とそのPリーダー(34)が、現れて踊る。
 互いに牽制しあって、踊っている。
 大勢の外国人が踊っている。
 イングランド人と北アイルランド人、各10名が踊っている。
 ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒、各10名が踊っている。
 アメリカ人とロシア人、各10名が踊る。
 韓国人と北朝鮮人、各10名が踊る。
 中国人と台湾人が、各10名が踊っている。
 中東諸国のイラン・イラク・クウエート・アラブ諸国、計20人が踊って
 いる。

 対立する彼らは、一触即発の状態で今にもケンカしそうな雰囲気だ。
 フランス人、ドイツ人、イタリア人各10名(国連職員)が踊り狂ってい 
 る。

 中立国スイス人(10人)は、何事もないかのように平和的に踊ってい
 る。

 総勢183名が踊っている。
 全員が、チーム単位で独自の踊りを踊っている
 歩道上の観衆たちが、見物している。
 敏子とマスターが、仲良く踊っている。
 踊っているインド人たち。踊るパキスタン人たち。
 ユダヤ・キリスト・イスラム教徒たちが踊っている。
 韓国人と北朝鮮人たちが、踊っている。
 中東諸国の人たちが、踊っている。
 アメリカ人とロシア人が、踊っている。
 イングランド人と北アイルランド人が踊る。
 踊っている国連加盟国たち。
 踊っている敏子とマスター。
 踊っているマスター、パキスタンのリーダーの肩に触れる。
 怒りに駆られて殴りかかるパキスタンのリーダー。
 インド・パキスタン間でケンカが始まった。
 それは、ケンカのようなダンスだ。
 インド人B、パキスタン人Bに回し蹴りをする。
 後ろに倒れるパキスタン人B、アメリカ人Aにぶつかる。
 アメリカ人Aは、ロシア人Aにわざとぶつかる。
 アメリカ人とロシア人が、ケンカを始める。
 中東諸国が、ロシア人に加勢して、アメリカ人を叩こうとする。
 踊っている韓国人と北朝鮮人。その足元に、1本の白線(38度境界線)
 が現れる。韓国人、その白線を越えて踊る。敵意を感じ取り、ケンカをし
 かける北朝鮮人たち。韓国と北朝鮮が、ケンカを始める。

 ユダヤ・キリスト・イスラム教徒たちも乱闘を始める。
 イングランド人と北アイルランド連合人たちも喧嘩している。
 まじめに踊っているのは、敏子と国連加盟国とスイス人だけだ。
 他の人たちは、全員ケンカ式ダンスをしている。小さな世界戦争である。
 観衆たちは、楽しそうに喧嘩を見物している。
 ケンカしている諸外国の間に、国連加盟国が仲裁に入る。止めるどころ
 か、一緒になって喧嘩をする。国連は、至って機能していない。

 アメリカ対ロシア・中東諸国は、特に争いが激しい。アメリカ人が、やら
 れている。

 182人全員が、ケンカをしている。
 呆れかえって踊っている、敏子。内心、怒っている。
 喧嘩しているマスターとパキスタンのリーダー。その時、笛の音が聞こえ
 る。

 振り向くと、国連の制服を着ている敏子が、笛を吹いていた。
 人差し指で「チッチッチッ」と振り、ケンカをやめさせる。
 全員ケンカをやめて、敏子を見る。
 歩道上の観衆たちも、敏子を見る。
 敏子を見る、ユダヤ人・キリスト教徒・イスラム教徒・中東諸国たち。
 敏子、マスターとパキスタンのリーダーの手を握らせる。嫌がる2人。
 敏子、強引に、無理やり握らせる。
敏子「ハンド・イン・ハンド」
 ミュージックH、終了。
 フォークダンスの音楽が流れる。
 ミュージックI、開始。
 微笑む敏子。
敏子「イエス、ダンス!」
 皆、二重の円陣を組んで、フォークダンスを踊り出す。
 敏子、中心に立って1人で踊っている。
 マスターとリーダーも、手を取り合ってイヤイヤ踊り出す。
 踊るインド・パキスタン人たち。
 手を握ってしぶしぶと踊り出す、韓国と北朝鮮、イングランドと北アイル
 ランド、アメリカとロシア人、ユダヤとキリストとイスラム教徒、中近東
 諸国、国連加盟国、スイス人。

 円を描いて、全員が踊っている。
 観衆たちも、楽しそうに見学している。
 敏子とインド人Cが踊っている。
 仲良く踊るマスターとリーダー。踊るインド人とパキスタン人たち。
 踊るアメリカとロシア人。踊る韓国と北朝鮮。踊るイタリアとフランス。
 踊るイングランドと北アイルランド。踊る国連職員、スイス人。

 踊るユダヤ・キリスト・イスラム・中近東諸国。
 踊っている敏子とインド人C。
 全員が踊っている。
 踊りをやめて、右手を高く上げる敏子。
 全員、踊りをやめて右手を高く上げる。
敏子「(叫ぶ)THE WORLD IS ONE(世界は一つ)」
全員「THE WORLD IS ONE」
 敏子の右手の人さし指には、上空にある兄彗星を指していた。
 
72 上空。
 球体となった、兄彗星が滞空している。丸くなって、尾は引いていない。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 73 広場前。
 大勢の観衆が、彼らのフォークダンスを楽しそうに眺めている。
 
74 仮派出所内。
 ドア越しに立って、彼らの踊りを見ている博恵。
 踊りたくてウズウズしている。まだ、民俗衣装を着用している。
 椅子に腰掛けて、携帯電話で遊んでいる宏。左目に、青あざがある。
博恵「宏ー。何でみんな、交差点に入ると踊り狂っちゃうの?」
宏「多分、彗星が交差点に落下したために、異常な電磁波が飛び交って人の
 脳細胞や運動神経に影響を与えているみたい」

博恵「バカなこと、言ってんじゃないわよ」
宏「(呟く)信じてくれよー」
博恵「警察は何をしているの? 交差点を占領されて、黙って見ているつも
 り?」

宏「電磁波の根っこが、警視庁や都庁、国会にまで伸びて彼らの頭脳を支配
 しているんじゃないかな」

 呆れ返る博恵。軽くリズムをとって、踊っている。
博恵「宏―、私も踊りたーい」
宏「(愛想悪く)勝手に、行けば」
 携帯電話に、文字メールが流れる。
メール「母、心配している。早く帰ってこい。兄より」
宏「(涙ぐむ)母ちゃーん」
 博恵、宏の前に立つ。
博恵「(甘える)ねー、一緒に行こうよー」
 宏、我に返る。
宏「いやーだ。踊りは嫌いなの」
 ミュージックI、終了。
 博恵、外を眺めると外国人が立ち去り、浴衣を着たおばさん100人が各
 通りから交差点内に入ってくるのが見える。

 盆踊りの曲が流れる。ミュージックJ、開始。
 
75 信号機。
 浴衣を着て盆踊りを踊る、青。
 赤、露天風呂に浸かり酒を飲んでいる。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 76 111(スクリーン)。
 ステージで、オバサンズ(11人)が盆踊りの歌を歌って踊っている。
 歌って踊る、おばさんA。
 
77 交差点。
 円陣を組んで、踊っている。
 盆踊りを踊っている、おばさんたち。
 楽しそうに踊っている。
 広場前にいる人々、次第にいなくなる。おばさんたちには、興味がないよ
 うだ。みんな無視して歩いている。

 おばさんたちが踊っている。
 踊っているおばさんA。
 踊っているおばさんB。
 楽しそうに踊るおばさんC。
 踊るおばさんDの、笑顔。
 全員が踊っている。
 踊るおばさんたちの足。
 踊るおばさんたちの後ろ姿。
 円形に回りながら、踊るおばさんたち。
 踊るおばさんたちの手。
 踊っているおばさんE。
 
78 仮派出所内。
 ドア越しから眺めている、博恵。
博恵「(歓喜)見てみて、盆踊りだー」
宏「何―。盆踊りだとー。ここは、渋谷だぞ」
 宏、机の引き出しからテレビのリモコンを取り出して、ドアまで歩みよ
 る。リモコンを外に向ける。

博恵「なにするの?」
宏「おばさんの踊りなんか、見たくもない」
 「早送り」のスイッチを押す手。
 外で踊っている、おばさんたち。
 
79 交差点。
 踊っている、おばさんたち。
 全員が踊っている。
 踊っているおばさんA。急にその踊りが早くなる。音楽も早くなる。
 全員、早く踊る。
 おばさんたち、急ぎ足で踊りながら各通りに分散して消え去っていく。
 早々と、去って行くおばさんたち。
 交差点には、誰もいなくなる。
 ミュージックJ、終了。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 80 仮派出所内。
博恵「(驚く)信じられなーい」
宏「渋谷に、理屈はいらなーい」
 ドアの窓に映る、宏の不気味な笑顔。
 その宏を見て、多少怯える博恵。
 
81 111(スクリーン)。
 ステージに、11人のレオタード姿の女性が現れる。
 リーダー(25)が、高い声を発して踊ると他の女性たちも踊り出す。
 ジャズダンスのBGMが流れる。
 リーダーが踊っている。他の10人が踊る。
 ミュージックK、開始。
 
82 信号機。
 青いジャージを着た青が、踊り出す。
 赤、ベンチプレスで腹筋を鍛えている。
 
83 交差点。
 広場前から、大きなお立ち台を持ってやってくる黒子5人。
 中央に設置する黒子5人。
 黒子A、お立ち台に上って踊る。全然、踊りになっていない。
 広場前に向かって立ち去る、黒子4人。
 101人のレオタードを着た、若い女性たちが集まって来る。 
 お立ち台を中心にして円陣を組む。踊り出す。
 お立ち台に上るリーダーA子。蹴りを入れて黒子Aを落とす。
 落ちる黒子A。アッカンベーをして走り去る。
 渋谷駅を背にして踊る、女性たち。
 歩道上では、大勢の人たちが集まっている。特に男性が多い。
 ジャズダンスを踊る、リーダーA子
 ジャズダンスを踊り出す、100人。
 笑顔で踊るリーダーA子。
 踊る女性B 。
 セクシーに踊る女性C。
 踊っている女性たちの足。
 踊っている女性D。
 全員が踊っている。
 
84 広場前。
 大勢の人が集まって、彼女たちの踊りを見ている。
 
85 仮派出所内。
 ドアの窓から、背伸びをして見ようとする宏。
 目の前は人だかりで、女性たちの姿が全く見えない。
博恵「(ムッとする)何やっているのよ」
 ドアから離れて、椅子に座る宏。
宏「畜生、全然、見えやしない」
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 85 交差点。
 全員が踊っている。楽しく踊る女性たち。
 声を発して、踊るリーダーA子。
 腰をフリフリさせて踊る、女性E。
 踊っている女性たち。
 セクシーに踊る女性F。
 女性G、開脚して高く飛び上がる。
 足を高く上げる女性たち。
 踊っている女性たち。
 リーダーが踊っている。
 整列し右から左へと、腕のウェイブが流れる。
 全員が踊っている。
 笑顔で踊るリーダーA子。
 
86 上空。
 滞空している兄彗星。
 彗星の周りから、キラキラと輝く粉雪のような物質を放出し始める。
 彗星全体が、眩しく光り輝き出す。
 
87 派出所内。
 ドア越しから、背伸びをしてみようとする博恵。
 人が多く、人の頭しか見えない。
 博恵、踊りたくてウズウズしている。
 宏、椅子に座って携帯電話のメールを眺めている。
メール「早く帰って来い。母、心配している」
博恵「宏、私たちも踊ろうよー」
宏「絶対、いや」
博恵「いいじゃない。この交差点で踊れるなんて2度とないんだから」
宏「(小声で)もう、踊ったからいいのだ」
博恵「え、なんかいった」
 携帯電話のゲームで遊んでいる、宏。
 
88 交差点。
 お立ち台で踊るリーダーA子。
 全員が踊っている。
 足を高く上げて踊る、女性G。
 踊っている女性たち。
 リーダーA子の足元から、結晶のような光り輝く物質が溢れ出てくる。
 路面で踊っている女性たちの足元にも、同じような物質が溢れでる。
 踊っている女性Hの足首が、光に包まれる。
 全員の足首が、白く光り輝く物質に包まれる。
 彼女たちは、光る物質の存在に全く気づいていない。
 光る物質は、交差点全体に広がった。
 光は、歩道上にいる人たちの足元をも包み込んだ。
 楽しそうに彼女たちの踊りを見ている、観衆たち。
 踊っている女性たち。
 光は、ひざまで覆い尽くした。
 笑顔で踊るリーダーA子。
 踊っている女性I。
 踊っている女性たち。その光は、彼女たちの腰まで覆った。
 踊る女性J。踊る女性K。
 踊っているリーダーA子。ひざぐらいまで、覆われている。
 光る物質は、女性たちの胸元まで覆い尽くした。
 歩道上で見物する群衆たち、彼らもまた胸元まで覆い尽くされている。
 笑顔で踊る女性たち。首元まで、光の物質に覆われる。
 光はついに、全員を埋め尽くした。
 渋谷の交差点一帯は、光に埋め尽くされた。
 お立ち台で踊るリーダーA子の顔だけが、見えている。
 踊っているリーダーA子。彼女の全身も、白い光に覆われる。
 キラキラと輝く白い光は、交差点を覆った。
 交差点の中央、お立ち台のある場所から白い光が盛り上がる。
 5m、10mと光は盛り上がる。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 89 仮派出所内。
 椅子に座って、携帯電話のゲームで遊んでいる宏。
 博恵、ソアを背にして、ムッとして立っている。
 彼女の背後にあるドアは、白い光に包まれて外が全く見えない。
博恵「宏、行こうよ」
 博恵、右手で宏の左手を掴んでは、強引に立たせて連れ出す。
宏「(怒る)何するんだよ」
 博恵、宏を引っ張ってドアを開ける。
 外は真っ白で、景色が見えない。
 博恵、宏を連れて白い光の中に消えて行く。
 ドアが閉まる。
 ミュージックK、終了。
 
90 交差点。
 渋谷の交差点全体が、白い光に包まれている。
 その盛り上がった白い光は、光る柱となって天高くへと放たれた。
 上空へと伸びて行く、巨大な白い光。
 
91 上空。
 兄彗星の横をかすめて、巨大な白い光は宇宙へと向かう。
 それは弟彗星が渋谷から、飛び去って行ったのだ。
 兄彗星は、あとを追いかけて飛び去る。
 渋谷から、魔法が消え去った。
                     (F・I)
 
92 信号機。
 青が立っている。踊っていない。
 赤、直立不動のまま光っている。
 自動車が、往来している。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 93 交差点。
 自動車が往来している。
 白い光は消えて、今まで通りの渋谷らしい騒々しさ、にぎわいに戻ってい
 る。

 大勢の人々が、信号待ちをしている。
 
94 広場前。
 信号待ちをしている人々。
 ふれあいマップ。
 その看板の下で、飲んだくれている6人のホームレス。
 博恵、嫌がる宏の手を引っ張って交差点の手前まで歩みよる。
宏「何で俺が、踊らないといけないんだよ」
博恵「いいから、たまには、あたしに付き合ってよー」
宏「俺は今、勤務中だぞ」
 頬を膨らませる、博恵の顔。
 
95 道玄坂通り。
 信号機の赤が点滅する。
 自動車たちが停車する。
 先頭の自動車には、あの青年が運転している。
 
96 111(スクリーン)。
 渋谷区のCMが流れている。
 
97 交差点。
 信号機が、青に変わる。
 各通りから、大勢の人々が渡り歩く。
 往来している人々。
 広場前から、宏を引っ張って歩く博恵。交差点の中央で立ち止まる。
 向かい合う2人。ふてくされている宏。
 渡り歩いている、人々。
 博恵、宏に微笑みかける。民俗衣装を脱いで、放り投げる。
 民俗衣装が宙を舞う。Tシャツにホットパンツを着用している。
 博恵は、交差点から魔法が消えたことを自覚していないようだ。
 
98 111(スクリーン)。
 スクリーンに、ピンク・ジャック(ヒロエとトシコ。2役)のプロモーシ
 ョンビデオが流れる。歌って踊る、ヒロエとトシコ。

 歌って踊るヒロエの顔。
 ミュージックL、開始。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 99 交差点。
 踊っている博恵。
 白い目でその博恵を見ながら歩く、大勢の人々。
 1人で平然と踊っている博恵。
 宏、周囲を見渡すと正常な渋谷に戻っていることに気付く。
 楽しそうに、踊り続ける博恵。
 腰を振り、足を高く上げたり、グルッと回ったり、その体の柔らかさしな
 やかさ、セクシーさ、ダイナミック、キレッキレの激しい踊りに周囲の人
 たちの足を止めさせる。

 10人の若い男女が立ち止まって、博恵の華麗な踊りに見入ってしまう。
 他人のふりをして、見ている宏。
 カップルAが、立ち止まって見る。
カップルA子「ねえ、交差点のど真ん中で、踊ってもいいの?」
カップルA男「まずいだろう。道交法違反で捕まるぞ」
 1人で激しく踊っている、博恵。
 大勢の通行人たちが、足を止め彼女の踊りを眺める。
 次第に博恵を取り囲むようにして、道行く人たちが群がって見物し始め
 る。その数、50人が見物している。

 大道芸人と思って、見ているようだ。
 宏、彼女を制止しようとする。
宏「君、君。こんなところで踊っちゃだめだよ」
 博恵、回し蹴りで宏を蹴り飛ばす。
 後ろに倒れる宏。
 見物している50人、嬉しそうに拍手する。
 ダイナミックに踊っている、博恵。
 カップルA、軽くリズムをとって踊る。
 他の50人たちも、軽くリズムを取る。
 踊っている博恵を見るために、大勢の通行人たちが足を止める。
 その数、100名以上に達した。
 華麗に美しく踊りを披露する、博恵。
 
100 信号機。
 青が点滅し、赤に変わる。
 通行人の歩行の終わりを示す。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 101 道玄坂通り。
 自動車たち発進しようとするが、交差点内で人垣ができているので発車で
 きないでいる。クラクションを鳴り続ける。

 自動車たちが、渋滞している。
 人垣が300人ぐらいになっている。
 先頭にある自動車、青年が乗る自動車。クラクションを何度も鳴らす。
 人垣は、全然動こうとしない。
青年「(ぼやく)どうなっているんだよー?」
 クラクションを鳴らす。
 青年の自動車を、5人のヤンキー兄ちゃんが取り囲む。
ヤンキーA「うっせーんだよ。俺たちの渋谷に、ケチつけんじゃねーよ」
 ビビッて小さくなる、青年。
 ヤンキー5人、背を向けて軽く踊りながら交差点の中央に向かう。
 
102 交差点。
 赤信号になっても、500人の人垣は交差点から出ようとはしない。
 みんなから注目されて、有頂天になって踊る博恵。
 博恵を傍観している500人。
 カップルの女性A、男性Aに『一緒に踊ろうよ』と目とアゴで誘う。
 男性A、微笑む。2人で一緒に踊り出す。
 博恵の芸術的なダンスに、見とれている大勢の人たち。
 5人のヤンキー兄ちゃんが、軽く踊り始める。
 周囲の人々も、連鎖反応で5人・10人と踊り出す。
 4人の女子中学生、OL3人、カップル5組も踊る。
 6人の男子高校生が踊る。女子小学生3人が踊る。
 100人が、個性的な独自の踊りを披露する。
 今、弟彗星の影響とは全く関係なく、自分たちの意志だけで踊っている。
 踊っている博恵。
 大の字で倒れている宏。
 踊り狂っている300人。
 
103 広場前。
 信号待ちをしている大勢の人々。
 交差点の中で踊っている、彼らを見ている。
 歩道上のカップルBが、軽く踊っている。
女性B「ねえねえ、踊っちゃおうか?」
男性B「捕まったら、どうするんだよ」
女性B「かまやしないわよ。ビビッてないで、踊ろうよ」
 女性Bに手を握られ、交差点の中に連れられていく男性B。
 信号待ちをしている人々、羨ましそうに踊る民衆を見ている。
 歩道上の人たち、青信号を待たずに交差点に向かって走る。
 一緒になって踊り出す。
 交差点が、多くの国民に占拠されてしまった。
 
104 交差点。
 踊っている600人。
 楽しそうに踊っている博恵。
 各通りから大勢の人たちが、交差点の中に入ってくる。
 800人が踊り狂っている。
 50代の会社員8人が、踊っている。
 ギャル7人が踊っている。
 周囲で停車している自動車たちから、クラクションが鳴らされている。
 無視して踊る1000人。
 噂を聞きつけた大勢の人々が、次から次へと交差点に集まって来る。
 渋谷駅から走ってくる人々。地下道から出てくる人たち。
 道玄坂から走ってくる人たち。渋谷百貨店の方から走ってくる人々。
 宮益坂下から、走ってくる人たち。
 2000人に膨れ上がった。
 ここぞとばかりに、皆が乱舞している。
 楽しそうに踊っている博恵。
 宏、ゆっくりと立ち上がる。狂乱した交差点に愕然とする。
 人が多くて、博恵の姿が見当たらない。うろたえている。
 5000人が、踊り狂っている。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 105 道玄坂通り。
 自動車たちが停車している。クラクションを鳴らすのを諦めている。
 青年が乗る、先頭の自動車。
 青年、「渋谷命」と明記した鉢巻きを頭に巻く。
 自動車から降りて、交差点へ走り出す。一緒になって踊る。
 後続の自動車たち、開き直って彼らも降りて交差点へ向かう。
 
106 交差点。
 8000人に膨れ上がっている。
 人が多く、激しい踊りはできない博恵。
 踊り狂っている人たち。
 携帯電話で、111にメールを送っている宏。
 宏を見つける博恵。
博恵「宏、踊ろうよー」
 宏、携帯電話をポケットにしまう。深呼吸し、怖い顔で彼女をじっと見
 る。

博恵「(ふくれる)何よ?」
 宏、胸ポケットから1枚の用紙を取り出して逮捕令状のように見せつけ
 る。

 宏の真剣な顔。
博恵「何よ、これ?」
宏「お前を一生、俺が逮捕する。黙ってこれに署名・捺印しろ」
 『逮捕令状』を博恵に手渡す。
博恵「これって、逮捕状じゃない」
 宏、慌ててよく見る。用紙が違う。
 胸ポケットから、「婚姻届」を取り出して博恵に手渡す。
博恵「これって、婚姻届じゃない」
 驚いて、宏の顔を見る博恵。
宏「署名・捺印したら、踊ってやる」
博恵「(呆れる)あのねー、結婚の申し込みって、多少順序っていうのがあ
 るでしょう」

宏「何だよ、順序って」
博恵「(困惑)順序って、あの、その、決まり文句があるじゃない」
宏「言っている意味が、よく分からない」
博恵「けじめよ、けじめ」
宏「(大声で)とにかく、署名するのかしないのか、どっちなんだよ。はっ
 きりしろ」

博恵「(渋々と小声で)・・・はい」
宏「良し。明日、一緒に区役所へ行くぞ」
博恵「(小声で頷く)・・・はい」
 宏、彼女の両手を握ってチークダンスを踊り始める。全然、踊りになって
 いない。博恵の足を踏む、宏の足。

 痛みをぐっとこらえる、博恵の顔。でも我慢して、宏に抱きついて踊って
 いる。平然と踊っている、宏。

 博恵、多少不満を残している。
博恵の心の声(普通は、僕と結婚してください、でしょ!)
宏「結婚指輪は、パチンコで稼いだら買ってやるからな」
博恵の心の声(もう、ムードがないんだからー)
 チークダンスを踊っている宏と博恵。
 博恵の目の前で、ピエールが華麗な踊りを見せている。
 ピエールと博恵、互いに微笑み合う。
 周囲の人々は、自分なりの個性的な踊りを披露している。
 踊っている1万人。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 107 周辺の道路。
 交差点以外でも、各通りの道路上まで踊る人たちで溢れ出し始めた。
 大勢の人たちが踊っている。
 
108 渋谷百貨店前。
 大勢の人たちが、踊っている。
 
109 ビル111の前。
 大勢の人たちが、個性的な踊りをしている。
 次から次へと、どこからともなく多くの人たちが集まってきては、踊りだ
 す。

 
110 ハチ公前広場。
 銅像のハチ公。その回りで、大勢の人たちが踊っている。
 踊り狂っている人々。
 ふれあいマップ下。ホームレス6人も踊りだす。酔っている。
 楽しそうに踊っているカップル。
 すぐ横で、携帯電話で会話しながら踊る女子大生2人。
 
111 交差点。
 大勢の人たちが踊っている。その数2万人。
 乱舞に酔いしれている、群衆たち。
 チークダンスを踊っている宏と博恵。
 宏の背後で踊っているピエール。
    O      O
111(スクリーン)。
 宏の背後、博恵の目の前に111が見える。
 ピンクジャック(ミュージックL)の音楽が、終了する。
 「愛の伝言板」と称したテロップが、スクリーンに流れる。
 BGMが流れる。ミュージックN、開始。
伝言板「陽子、お誕生日おめでとう。幸一」
伝言板「さゆりちゃん、僕と付き合ってください。明」
伝言板「道代ちゃん。結婚してください。俊介」
伝言板「博恵。俺と苦労を共にしてくれ。一緒になって下さい。宏」
    O       O
 その画面を確認する博恵。感激のあまり声を失い、涙ぐむ。宏を抱き締め
 る。

 ぎこちなく踊っている宏。
 111のスクリーンからは、しばらく「愛の伝言板」が流れる。
 踊っている、周囲の人たち。
 踊るピエールを見る、博恵。
博恵の声(宏、御免ね。あたし、ピエールと浮気しているんだ)
 博恵、踊るピエールに投げキッスをする。
 交差点には、約5万人に膨れ上がっていた。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 112 道玄坂通り。
 交差点は、踊る群衆に埋め尽くされている。
 交差点から、300m離れた通りに、パトカー・機動隊の車両が数台やっ
 て来た。

 停車車両が多く、機動隊等の車両は、これ以上先に進めない。
 100名ほどの機動隊員が、降り立つ。
 機動隊長もまた、降り立つ。
 パトカー2台から、仮派出所の署員5名も外に出る。
 現場検証から、帰ってきたようだ。
先輩(30)「おい、何だ、このバカ騒ぎは」
署員A「これじゃー、仮派出所には帰れないぞ」
 署員B、携帯電話で宏にかけている。
署員B「おい、宏・・・」
 プープープーとスマホが切られる。
署員B「畜生、切りやがった」
 マイクを持った機動隊長(39)が、群衆に向かって叫ぶ。
 この作品は、2003年に記載したものなので、当時DJポリスは存在し
 ていませんでした。

機動隊長「皆さん、踊るのをやめなさい。道交法違反で逮捕します。速やか
 にこの交差点内から、退去してください」

 隊長は、何度も何度も退去命令を叫ぶが、皆無視して踊り続けている。楽  
 しそうに踊っている人々。

 機動隊長、機動隊員、警官隊、署員たちは困惑するだけで何ひとつ手が出
 せない。

先輩「隊長。指示があれば、強硬手段に応じますよ」
 先輩、催涙弾を手にしている。
隊長「おいおい。乱暴なことはするな。来年は、総選挙があるのだ。首相も
 知事も追い込むつもりか」

 手荒なことができず、残念がる先輩のしぶい顔。
 踊っている5万人。
 
113 交差点。
 踊り狂っている、群衆たち。
 チークダンスを踊っている宏と博恵。
 ミュージックN、終了。
  
●「スクランブル・ジャックin渋谷」。
 114 111(スクリーン)。
 ワイルド・ジャックのプロモーションビデオが、流れる。
 ヒロシ、マイクを持って前面に出る。
 彼の背後で踊る、4人のメンバー。
    O      O
 交差点。
 8万人以上の群衆が、踊りながらモニターを見ている。
 人込みをかき分けて交差点内に入る、先輩とその署員たち。
 彼らもまた、モニターを見る。
 踊りをやめた宏と博恵も、モニターを見ている。
    O      O
ヒロシ「(叫ぶ)みんなー。渋谷、大好きかー?」
 
115 交差点。
宏と博恵「(叫ぶ)大好きー」
8万人の群衆「(叫ぶ)大好きー」
先輩「(思わず叫ぶ)大好きー」
 睨みつける署員たち。恐縮する先輩。
 チークダンスを踊り始める、宏と博恵。
 8万人の群衆たちが、また踊り出す。
    O      O
 111(スクリーン)。
 ワイルド・ジャックの5人が、「俺たちの街」を歌って踊る。
 ミュージックM、開始。
 
116 エンドタイトル。
 出演者・スタッフの紹介、並びに出演者のダンスの練習風景、NGも紹介
 される。

    O      O
 交差点。
 踊っている群衆たち。
 宏と博恵、互いに見つめ合い、楽しそうにチークダンスを踊っている。
 踊っている、中年のサラリーマン4人。
 踊っている女子高校生、6人。
 カップル4組8人が踊っている。
 踊る、ギャル5人。
 中学生男女、各4人が踊っている。
 踊っているOL3人。
 敏子とマスターが踊っている。
 ヤンキーの男女、10人が踊っている。
 10代のヤンママ5人と、その子供たちが踊っている。
    O      O
 ハチ公前で踊る、若者たち。
 渋谷百貨店前で踊る、群衆たち。
 ビル111前で踊る、群衆たち。
 渋谷駅前で踊る、群衆たち。
 地下道の出入り口付近で踊る、群衆たち。
    O      O
 交差点で踊る群衆たち。
 チークダンスを踊っている、宏と博恵。
    O      O
 117 111(スクリーン)。
 スクリーンの中で歌って踊る、ヒロシたち。
 
 ●「スクランブル・ジャックin渋谷」(最終話)
 118 上空から見た交差点。
 チークダンスを踊っている、宏と博恵。
 踊っている、8万人の群衆たち。
 交差点、渋谷の街、東京都、関東平野、日本。
 太平洋。そして地球。
 
119 宇宙。
 兄弟彗星が、地球から遠ざかっていく。親彗星に向かっている。
 また互いにぶつかり合い、ケンカしながら仲良く飛んでいる。
 その飛行は、ダンスのようにも見える。
 親彗星を追いかける、兄弟彗星。
 1つの子彗星とすれ違う。2つ3つ4つと、すれ違う。
 10個、20個、50個、100個の子彗星とすれ違う。
 子彗星たちは、地球に向かって飛んで行った。
 兄弟彗星は、親彗星に追いつく。
 自転している地球。
 世界各地に飛来する、子彗星たち。
 大阪市、ソウル、北京、香港、シドニー、モンゴル高原、ニューデリー、
 ローマ、カイロ、ギリシャ、モスクワ、ナイロビ(ケニア)、プレトニア
 (南アフリカ共和国)、パリ、ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、ロサン
 ゼルス、ブラジルなどに降下し、世界各地の都市をジャックしたようだ。

 親彗星に並んで進む、兄弟彗星。
 その母親と兄弟彗星が、仲良く悠然と地球の周囲を飛行している。
 飛行している、3つの彗星。
 ミュージックM、終了。
 
120 交差点。
 踊りをやめた、10万人以上の群衆が空を見て立ち止まっている。
 宏と博恵の笑顔。博恵の背後に、ピエールが立っている。
宏と博恵「(叫ぶ)スクランブル・・・」
10万人以上の群衆「(叫ぶ)・・・ジャック」
 
121 ニューヨーク(深夜)
 
122 自由の女神(リバティ島)
 1個の光る彗星が、自由の女神に衝突する。
 女神像は、閃光を放ち光り輝く。
 女神の目がある。
 その両目が、カッと見開いた。
 今ニューヨークに、新たな恐怖が巻き起ころうとしている。
 
123 渋谷の交差点(夕方)。
 渋谷は夕方になり、国民は踊りを止めて、いつもの日常をとりもどしてい
 る。

  その中で、数100人の若者が、ビニル袋を持って空き缶・ゴミなどを拾
 っている。    

 清掃ボランティアである。
 警官5人が、清掃活動に尽力している。
 宏、タバコを吸いながら、イヤイヤ、ゴミを拾っている。
 小さくなった、そのタバコをポイっと捨てる。
 宏をにらみつける、ゴミ拾いをしている博恵と敏子。
 博恵、そのタバコのポイ捨てを拾うのであった。
                         (完)
 
 


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?