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銀河鉄道999 1巻 第2話 特徴がない地方都市の未来

「火星の赤い風」

停車駅 火星

 いよいよ鉄郎の旅が始まります。最初の停車駅は火星。馴染みのある惑星でホッとします。
「火星の気圧を人工的に地球なみにひきあげるのに1世紀かかったわ」
メーテルにより人が住める星になるまでの苦労が語られます。今読み返すとなんだかその当時を知っているかのような口ぶりですね。物語の最初、RPGで言えばはじめの町、ふつうならそこではアイテムをそろえたり、王様から激励されたりするのですが、この物語はかなり不穏な様子から始まります。
 火星が人類最初のフロンティアであった時代ははるか昔、今では単なる通過駅でありさびれたゴーストタウンです。こういう町、今ではたくさんありますよね。あんなに苦労して開発したのに、その恩恵も受けられず、かといってこの町を出ることもできない。そんな無力感漂う町が最初の停車駅とは少年漫画にはありえない展開です。でも安心してください。これからの星もこんな感じのところばかりです。(笑)
 火星の様子も西部劇仕立てとなっており古き良き忘れられた時代の雰囲気を出しています。そんな中ここから脱出したい若者が現れます。若者の名前は西部フロンティア時代の伝説的な酋長と同じゼロニモ。ゼロニモも以前の鉄郎と同じく銀河鉄道のパスを手に入れることを夢見ています。しかしそのためには非常手段しかありません。西部劇仕立てなのでここでは鉄郎とゼロニモの銃による決闘が行われます。ほんとは途中いろいろあるのですが、この星での最大のテーマは後程語られます。
 10才の子供と火星を生き延びてきた戦士では勝負はあきらかでしょう。しかし、いざ決闘の時に鉄郎が生身の体だとわかるとゼロニモはわざと撃たれます。ここからは火星に住む登場人物により機械の体や永遠の命に対して否定的な言葉がいくつも出てきます。

ゼロニモ「おれも昔はそうだった こんなところへ流れて来る前は・・旅に出たばかりのころはおれもそうだった 血のかよったほんものの心臓の脈うつ胸の中には夢や希望がいっぱいつまっていた」
酒場の親父「自然に生きて自然に死ぬのがいちばんいいような気がするよわしは・・死ぬべき時に死ねなかった人間は・・みじめなもんだよ・・」

 はやくも旅の目的である機械の体を手に入れる事に対して全否定です。しかしここで「限りある命」と「永遠の命」というふたつの価値観が明示される事でこの物語が単純な夢追いものではないこともわかります。今後鉄郎は矛盾する価値観の中で苦しむことになるでしょう。そして現代の私たちが読むと今問題になっている少子高齢化や老害の事を思い起こさずにはいられません。最終回までに何か答えが得られることを期待してしまいますね。

「火星に吹く赤い風の音は、その赤い砂の下で眠る者のすすり泣きだと人はいう
火星の赤い風は今日も明日も夢をはたせなかった者のためすすり泣く・・
だから火星はいつまでも赤いのだという・・」



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