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小説『闇の中の私』

もうすぐ私は、この世からなくなってしまうかもしれない

この小さな小さな命をただ…

抱き締める事しかできなかった。

姫  『ごめんね…助けられくて。。』

『ミャー』と小さく鳴いた。

今にも消えそうな声をだして、

辛そうな瞳で私を見てる。

溢れる涙が子猫に落ちる。

どうして…私は何も出来ないの?

こんな小さな命さえも救えないなんて。

絶望に飲み込まれ…暗闇が私を飲み込む。

『大丈夫ですか?』

車のヘッドライト越しの人影。

ゆっくり私に近づく。

姫   『あの…子猫が…』

消えそうな小さな命を抱き締めながら言う。

姫  『この子…私がたまにご飯あげててっ…

今日もあげようと来てみ…』

嗚咽を吐きながら…話す。


陽   『大変じゃないですか!

今すぐ、病院行きましょう』

私から子猫を抱き上げた。

姫   『あっ…はい。』

陽   『ほら、君も車に乗って!』

白いシャツが真っ赤に染まる

でも、彼はそんなことを気にせずに車を飛ばす。

陽   『助かります!

この子は、強いんだから!』

動物病院に着くまでの間、ずっと私と子猫に話しかけた。

漆黒の闇にのまれないように。

さっき、出会ったばかりの人なのに…

眩しく光って暖かい。

陽  『子猫を助けてください!』

病院に着くと すぐさまに検査や手術が行われた。

震えが止まらなかった。

お願いしますと祈り。

目を閉じる。

隣を見ると彼も同じように祈ってた。

陽  『大丈夫!

あのこは助かる!』

そっと彼の手をみると

その手も震えていた。

診察室のドアがひらく。

先生  『手術おわりました。

とりあえず、一命はとりとめましたが、

腰が砕けて内蔵は破裂していたため

血も足りなかったので輸血しました。

一生、介護が必要になるかも知れませんが、

きちんと家族として傍にいれるのですか?』

先生の鋭い質問に私は戸惑う。

陽  『はい、責任は取れます。

あのこが、天命をまっとうするまで…

俺と彼女で育てます。

先生、本当に助けてくれありがとうございました!!』

彼は私よりも涙し、喜んだ。

先生  『わかりました。

では、こちらを記入してください。』

問診票と誓約書を書く。

陽  『勝手に決めてごめんね。

でも、命助かってくれたからすっごい嬉しくてさ。

あっ、自己紹介まだだったよね?

俺、佐藤陽です(^∇^)』

笑顔で私を見る。

姫  『私は、中村姫です。

私もあの子が助かって本当に嬉しい…。

いつも一人で寂しそうで…

自分を見てるみたいで無視なんて

出来なかったんです。

ちゃんと覚悟のないまま飼って

あげられないからって

悩んでたらこんなことに…

でも、良かった…

本当にほんとうに良かった…』

ほっとしたら…また、涙が溢れた。

陽   『姫さん、、

あのこの名前…何にする?』

そっとティッシュを渡し、優しい声で

きいてくる。

姫   『うーん…そうですね。

元気でまた、走り回れるような名前がいいですね』

陽  『じゃ、ミライってのはどう?』

姫  『ミライ…?』

陽  『そっ、ミライ!

明るい未来とか

希望ある未来とか、

って意味を込めてさ(^-^)』

姫  『素敵な名前。』

陽   『じゃあ決まりだね(^-^)

俺さ思うんだ。

命って…

他人が勝手な判断で

奪ったり

壊したりしていいものじゃない。

でも、それをわからないやつだっているのは、現実。

ミライだって、

人間の身勝手さで命を奪われるのは間違ってる。

でも、こーやって1人でもいいから、

命を守りたいって

助けたいっておもって、

手助けできるのも人間。

だったら、やるしかないじゃん!

姫さんだって、

ミライを助けたいって

思ったでしょう?』

姫  『うん…』

陽  『だったら、ミライのために

何ができるか考えて

前向かなきゃね(^-^)

これから、たくさん大変なこともあるかも知れないけど…

ミライがそれを感じないぐらい幸せにしてあげよう?』

キラキラ輝く笑顔は、

私に覆い被さっていた

真っ黒な闇を消した。

陽  『これからよろしくね、姫さん(^-^)』

あなたのまっすぐな瞳には、光しかうつらない。

闇の中で埋もれていた、、私の心は…

救われた。

そして。

ミライの命までも繋いだ。

きっと彼から引き継いだ笑顔のリレーは

どこまでも途絶えないような気がする。

-end-

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