うま

深い森の中に一頭の馬。
湖は深く、湖面は深い緑色。

馬は今日もゆっくり水を飲みにくる。

悲しみの中で聴こえる慟哭は、救えなかったものを救えるように出来ることを探してる。

魂を売ったけれど、一欠片だけは残していて。全ては奪われなかったと少しだけ安堵する。
伸ばした手は伸ばしたまま。

金に光る瞳の奥で、光の届かない夜が続く森の中、嘶きの声が響き渡る。

確かにまだ忘れてはいないのだ。
そして仙となることをまた仙も望んでいない。

水浴びをして身綺麗にしてみる。
それでも何も変わらない。

立て髪は白く、賢き眼で全てを見通す。
筋肉は張り、美しい骨格は理を著す。

背に乗せてやろう。馬は云う。
そこで初めて暖かな温度と躍動する生命を知る。

幾つもの扉の中、開く一枚の握りに手をかける。
貴方の最後の一欠片、何に使う?

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