マガジンのカバー画像

Utopia-理想郷-

6
夢。とあるお話の断片。
運営しているクリエイター

2024年6月の記事一覧

mundus-世界-

ひとつの世界が終わる。

またひとつ世界を知る。

それでもわたしの世界はちいさくて。

はやくはやくと広げたいと、

急くこころを宥め賺し、あやす。

また明日から、世界をひとつ進める。

盤上の駒を動かすように。

どこまでもいけるのだと、じゆうな心。

全てを流し去る、激しい川の音、

そんな形容をしたくなる雨の音。

きっと祝福にあふれる光が照らされる。

座り込んで落ち着く。

火を起こ

もっとみる

月と石の草原

月の光が煌々と照るなかで、草原で眠る。穏やかな星たちの歌に風が草を撫でていくのを感じながら、言語をコミュニケーションとする生物のいない世界の夢を見る。空には翼の獣と綿雲の獣が飛んでいる。地べたには炎を履く蛇が歩き回り、わたしは石の積み木であそぶ。この世界で暫くいい。いや、ずっとこれがいい、と、静かに思う。穏やかで、静かで、平和で、安心で、暖かく、安全で、幸せで、優しい。たまに雲の上で招待状を描いて

もっとみる

とある外套

王さまと私は相変わらず歩いている。外套がとても重そうで歩みを阻んでいるようだったので、わたしが持ちますよ、と、預かって差し上げた。私も外套を着ているのだが、そんな私を見上げて、なんだか落ち込んだような顔をされるのだ。気持ちはなんとなくわかる。分かるし、外套を着られたままでもわたしは一向に構わなかった。外套に押しつぶされて、わたしの王さまが歩みを止められたとしても、わたしも横に座って王さまが立ち上が

もっとみる