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SOLAR EHEMERIS #2 2022年獅子座の時期の惑星の動き「時代が作り出す集合意識を感じる」

「拾って、開いて、打ち出す獅子座」
蟹座で始まった夏は、獅子座で最盛期を迎えます。
季節の最盛期を迎える星座は「不動宮」と呼ばれ、春は牡牛座、夏は獅子座、秋は蠍座、冬は水瓶座です。それぞれの季節が極まるタイミングに、太陽はこれらのサインに入ります。北半球の夏季は、太陽の蟹座へのイングレスで始まり、獅子座へ移動するとピークを迎えていきます。

この蟹座と獅子座、つまり前のサインと次のサインは、常に有機的に連動しています。それは「前のサインに足りない面を、次のサインが補う」という関係性を持つことです。

12星座は、それぞれが単独で性質を持つのではなく、他のサインとの関係性の中で意味付けがされています。そのため、他のサインとの違いや共通点を探していくと、サインをより深めることができます。蟹座と獅子座もその例外ではありません。

蟹座は「集団主義」で「感受性が豊か」という特徴を持ちます。
そのため、感情を使って社会という枠組みに適応しようとします。集団と繋がるために、心を大切にするのです。心や感情というものは、一見、個人的で私的なもののように思われがちですが、実はグループと繋がることを重視した集団主義のための機能なのです。しかし、蟹座はそうした常識的な物差しを持つ心象の代償として「個人性」を心の奥底にしまう必要がありました。

それに対し、獅子座は「個人の衝動」を大切にし、「その衝動を外界に打ち出す」ことを重視します。そのため、蟹座の水底に沈んでいる「個人性」を引き上げ顕在化させていくのです。そして、その個人性に満ちた自我を外界に打ち出していきます。そのため、獅子座の季節は、集団生活によって閉じていた個の意識を「拾い、開き、打ち出す」という作業を、太陽は後押ししてくれます。

また、「個を打ち出す」というと、打ち出されたものに対する評判や成否に意識がいきがちです。しかし、そこはあまり意味を持ちません。獅子座は、「拾って、開いて、打ち出す」までが担当なので、その先はあずかり知らぬことです。ちなみに、その後の行方は、乙女座以降のサインがフォローしてくれます。

「火星の双子座入り」
さて、今年の獅子座の時期の最大の星の特徴ですが、それは火星が双子座にイングレスすることでしょう。火星はひとつのサインを約60日で経過し、2年で12サインを1周する天体です。しかし、実際の火星は2年に1度、ある特定のサインに半年以上滞在します。そして、そのサインで逆行現象を起こすのです。

今年は、獅子座の終わり頃の8/20に双子座に入り、2023年3/25までの7カ月滞在します(その間、10/30~1/13が逆行期間)。そのため、今年の火星は、双子座がメインでの活動領域となります。そうすると、双子座にとって、2022年は「自分自身を能動的に打ち出していくチャンス」、「挑戦意欲が掻き立てられる」「好戦的になりやすい」といったことが予測できるかもしれません。

●2022年から2023年にかけての火星の動き
3/25 双子座イングレス(双子座1度)
10/30 逆行開始(双子座26度)
1/13  逆行終了(双子座9度)
3/25  蟹座イングレス(蟹座1度)

また、出生図の火星では、自己を環境に打ち出すためのエネルギー源です。この火星が機能しないと、環境という大きな存在の中に、自分自身を割り込ませることができません。そのため、社会という大きな存在の中で生きる私たちにとって、重要な側面を担っているのは確かです。そういう意味では、今年の双子座は、内在するもの環境に打ち出す良い機会といえるでしょう。

しかし火星は、単独で読み解くよりも、外惑星との関係性を見ていく方が、よりダイナミックな影響を検証することができます。特に、トランジットから社会の流れや世の中の動きを検証していく際には、この外惑星と火星の関係性は非常の重要な配置となります。なぜなら、火星は動きの遅い外惑星の「トリガー」となるからです。

「海王星のトリガーとなる火星」
2022年、火星がトリガーとなる外惑星は海王星です。
海王星は現在、魚座に滞在し、目に見えない形で影響を与えています。しかし、海王星の魚座での滞在期間は14年と長いため、その間、時間をかけながらゆるやかに海王星は影響を与えているのです。長いタームで滞在する外惑星は、基本的にゆっくりと少しずつ、着実に影響を及ぼしていきます。そのため、影響を受ける側としては、実感は持ちにくくなる傾向があります。

しかし、この海王星に火星が絡んでくると、海王星の散漫とした影響に、直線的な推進力が伴い、影響を実感できるようになります。惑星同志が絡むというのは、惑星同志が一定の角度で配置されることを表しますが、これをアスペクトと呼びます。今回の海王星と火星のアスペクトは90度という角度です。この90度はスクエアと呼ばれ、お互いが持つ力を鋭角的に刺激していくため、かなり強烈です。

そのため海王星は、火星が双子座に滞在する7カ月間は、エネルギーが集中的に発現れることになります。例えば、長期間に及んでいた霧雨がこの時期だけ集中豪雨になるようなものでしょう。近年は、「1か月の雨量が、平均的な1年間の雨量を超えた」というニュースを聞くことがありますが、現象としては、このような形に近いと考えられます。では、海王星に象徴される現象というのは、どんな現象なのでしょうか。

「海王星が引き起こすパラダイムシフト」
海王星は164年周囲で公転する惑星です。
魚座には、2012年に移動し2025年まで滞在します。外惑星は牡羊座に入るとアップグレードし、新しい影響力を持ち始めますが、海王星は2025年に牡羊座に入り、新時代を迎えます。そのため、海王星の魚座滞在は、これまでの150年間(牡羊座から水瓶座までの滞在期間)、継続してきた枠組みをリセットしていこうとしています。つまりは、パラダイムシフトのような現象です。

日本では、海王星が前回、牡羊座に入った1860年頃に、黒船が来航し開国へと向かいます。それまで国内に限定していた政策や経済を世界へ開くことで、現在のような西洋型資本主義へと広がっていきます。また世界では、日本の開国によってアジア圏での経済活動が活性化し、地球規模でのグローバルな経済活動に発展していきました。つまり海王星の今回の164年という周期は、世界的な資本主義経済の発展と連動しています。

しかし、海王星は実際に社会を動かし運営していく惑星ではありません。社会の中に漂うムードや空気感、流行、トレンドに影響を与える惑星です。(実際の社会の制度や運営を象徴する惑星は土星です)そのため、海王星の164年間は、資本主義社会の発展に伴って発生してきたムードや流行を表しています。

例えば、経済を中心とした社会システムが世の中に普及していく従い、私たちの価値観の中核は「お金」が占めるようになってきました。
「働かざるもの食うべからず」
「お金がないと生きていけない」
「仕事をしていないと、人として劣っている」
こうした考え方は、社会のルールではありませんし、法律で決められたものでもありません。しかし、私たちの脳内に根深く沁み込んでいます。

そして、このような考え方は、親や教師、あるいは会社の上司といった、個別の特定の人間の影響ではありません。マスメディアや世論の影響の方が感覚的には近いでしょうが、共同体の中で合成された集合意識と捉える方が、より海王星らしいでしょう。ゆっくりと、じわじわと与えられた影響は、無意識に刷り込まれ、いつのまにか個人の信念体験へと変化してきました。

しかし、海王星の魚座時代も残すところあと3年。そろそろ、こうした根深い価値観が更新されようとしています。

「風の流れを感じる」
海王星が魚座に滞在する2012年から今日までは、これまでの集合意識がもたらした信念体系が溶解されていく14年間です。専門的な見方をすると、2012年、2016年、2022年と海王星は段階的に、近代の集合意識にメスを入れてきたことになります。現在は、最終段階に入ってきました。

2012年 海王星/魚座 180度 火星/乙女座 
2016年 海王星/魚座 90度 火星/射手座
2022年 海王星/魚座 90度 火星/双子座

この海王星的な集合意識を認識するのは、空気(酸素)を感じるくらい難しいことですが、その一例をCMの例であげてみたいと思います。CMは集合意識を反映しやすい媒体です。

味の素CMで「日本のお母さん」というCMがありました。このCMのテーマはあるお母さんの一日。朝、子どもたちの朝食と弁当を作るところから、保育所に送り、通勤、就業した後、お迎えに行き夕食を作るところまで、映像が流れています。ご飯を作るお母さんの苦労に「ありがとう」とエールを送るCMでした。しかし、評判は共感と炎上で二分しました。

炎上意見としては、「母親に対する偏見」「お父さんは何をしているの?」「エールを送るポイントが古い」などなど。こうした批判は、確かに一部の前衛的なタイプの人に意見かもしれませんが、世の中の風向きがそっちの方向に流れていることは確かでしょう。30年前にはなかった発想です。

逆に思わぬ反響があったCMとしては、刃物メーカーである貝印の企業広告「#剃るに自由を」です。処理されていない脇毛を見せる女性の大胆なビジュアルと「ムダかどうかは、自分で決める」というキャッチコピーが話題になりました。かなり挑発的な打ち出し方をしましたが、おおむね好評で、業績にも影響したようです。この広告は広告電通大賞の「SDGs特別賞」を受賞しました。

何が古い価値観で、それがどのように変わっていくのかは多様な意見があると思います。しかし、この10年のトレンドとして、これまでの価値観に対するアンチテーゼが支持されやすい風潮であることは確かなようです。味の素も貝印も100年を超える老舗企業ですが、明暗を分けました。

海王星が作り出す時代の集合意識に抗うことはできません。そのための対策もたいした意味を持たないでしょう。ただ、風の流れを感じてみることはできます。「私たちの意識がどの方向に向かっているのか」こうしたことを感じ、検証していくことは占星術の醍醐味です。そのため、今年の夏以降は、世の中のムードや空気感の潮流を感じてみるのも良いでしょう。意外と身近なところにヒントがあったりしますし、それが思わぬ気づきになることもあるかもしれません。

それと、冒頭で獅子座は「拾って、開いて、打ち出す」と書きましたが、拾った自我や思いも、実はかなり大きく時代のムードの影響を受けていることもあるでしょう。もちろん、それは悪いことではありません。海王星は善悪や正誤という二元論を超えた惑星だからです。

東海 豊

占星術に関するコラム
SOLAR EHEMERIS
「毎月の太陽サインに関すること」や「その時期の星の配置から読み取れること」を書いています。基本的に1か月に1本。天体の配置全体を網羅するのではなく、興味深い配置に取り上げ、そこを掘り下げています。
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以前に某雑誌のコラムで掲載した「12サインの個性」をリメイクしたものです。テーマや題材は7年前のものですが、そのテーマを今のスキルや心象で加筆修正をしました。雑誌に掲載されたわりには、当時はあまり読まれませんでした。それでは浮かばれないので(笑)、リバイバルしてみました。こちらも太陽サインにあわせて掲載していきます。
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出生図の中の一定の箇所をピックアップして、その読み方を深堀りしていきます。例えば、「7ハウスの天王星と冥王星」や「12ハウスの射手座の金星」など。惑星、サイン、ハウス、アスペクト、それに時々サビアンシンボルを交えて読み解いていきます。また、サンプルは実際のクライアントさんです。多くの出会いに対する感謝の意味も込め、また、それぞれの方々の人生に対して敬意を払いながら書いていきたいと思います。1年に8本~10本、書けたら、いいな。

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