忘れえぬ人 1

会ったこともなく、どこのどなただか知る術もない人が忘れられません。

昭和の高度経済成長に少し翳りを見せたオイルショックの頃の話です。その人は祖父が胃の手術をした時に輸血してくれた人。何故忘れられないかと言うと、手術後の祖父は祖母が言うには『エロジジイ』になったらしいからです。祖父&祖母の孫の私は「いゃいゃ、元のキャラが覚醒したんじゃね?」と内心思っていましたが、嘆く祖母には言えません。祖母にしてみれば献血者のエロが祖父の身体に入り込んだと見えたようです。しばらくして祖父が亡くなり、春画が見つかりました。いつから持っていたのかは分かりませんが、祖母にしてみればショックだったかもしれません。

大人になってから献血をするようになり、記念品の今治タオルをいただいたことがあります。せめて私の血液は私の性格を出すことなく輸血された方の生活が健やかでありますように。もっと言えば、輸血に使われることなく、研究用に使って欲しいです。


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