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第8話 アロマオイルテロ
母が病気になりました。
病名は急性骨髄性白血病です。
自宅に戻った母は、やはり家が一番といった感じで少し表情が明るくなりました。まだ電車に乗って買い物に行くのは怖いと言い、一人では行くことはないのですが、お料理も、お片付けも、お風呂も、お洗濯も自分のことは自分でやり、私には迷惑をかけまいと頑張っているのがよくわかりました。
私は、お買い物や、お風呂掃除はもちろん、ゴミ出しも、お片付けも手伝うのですが、お料理だけは相変わらず「いい(NO)」と自分でやりたがります。
そんなある日のことでした。
母が調子が良い日は、断りを入れて友達と食事に行ったりするようになった私は、久しぶりに友人と時間を過ごした後で家に帰宅しました。
玄関を開けると、鼻がもげるのではないかと思うほど強烈な、ものすごい匂いに驚きました!
すぐに家中の窓を開け、換気扇を回し、母を探しました。恐る恐る母の部屋をノックすると、母はまだ起きており、返事がありました。
ドアを開け中に入ると強烈な匂いで、頭がおかしくなりそうでした。
何事かと思って母を見ると、ニコニコしながら私に言いました。
「乾燥するからオイル塗ってるの♬」
私は、咳き込みながら、母の持っていた瓶のラベルを見ました。
!
!!
!!!
それは、アロマオイルだったのです。そう、それもデフューザーに数滴入れるタイプでした!母は、それを手にとり、腕や足に塗りたくっていました。
数滴お水に垂らすとステキな香りを部屋中にもたらしてくれるアロマ。しかし、それを大量に腕や足に塗ると、その破壊力は・・・。
そうなんです、抗がん剤治療の影響や、病気の影響、そして、年齢からくる衰えで、母の嗅覚は、かなり衰えてるのです。
私は、母にこれは塗る用ではないと説明し、私にとっては具合が悪くなるくらいの強い匂いだと伝え、やめさせました。
母を責めることはできないので、お願いだけして、母の部屋をきちんとしめ、私は自分の部屋に向かいました。
母は、ラベンダーが好きで、元気なときは毎年富良野のラベンダー畑を観にいくのを楽しみにしていました。きっとそのオイルもラベンダー園でお土産に買ったものだったのでしょう。
数滴ですと、ラベンダーの良い匂いが広がるオイルも、大量ですと何の匂いかもわからないくらい強烈で、悪臭に変わってしまうのですね。衝撃でした。
幸い、腕も、足も、その後荒れることはなく、アロマオイルテロもおさまり、平穏な日が戻ったのでした。
そして、私もラベンダーの「淡い」香りでしたら、嫌いにならずにすみました。
(続く)
イラストは元吉茉莉花さんです。twitter(@marika_3o210 )
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