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取材対象選びとタイトルが鍵。「人」を軸としたローカルメディアの事例から考える情報発信術。

こんにちは!
ブランディングテクノロジーの公式noteに寄稿をさせていただいております、山崎です!

今回は、全国にひしめくローカルメディアを切り口に、「人(ヒト)」から生み出されるコンテンツの制作、展開について書かせていただきます。

ローカルメディアの展開を考えておられる方や地域の「人(ヒト)」を活かした情報発信を考えておられる方は、ご参考にご覧ください。

全国に550存在するローカルWEBメディア

まず、冒頭でいうところの「ローカルメディア」は、地域のあらゆる情報・出来事を発信するWEB媒体・拠点を指して書いていきます。

現在、このようなローカルWEBメディアは全国にどのくらい存在しているかというと…

『全国ローカルニュースサイト名鑑』に登録されているだけでも、数えてみると550件以上。平均すると、1つの都道府県に約11ものローカルWEBメディアが存在することになります。

メディアの目的や掲載されているコンテンツは様々で、最新のイベント・飲食店情報を展開するものがあれば、話題になった地域のニュースを取り上げるものも。

それぞれのメディアが多様な情報発信を行う中で、今回着目したのが「人(ヒト)」にフォーカスしたコンテンツを掲載するメディア。「人(ヒト)」から生み出されるコンテンツの多くは地域の認知度に左右されることなくその一つひとつに独自性を宿すことができ、顔が見えることによって親近感の醸成にも繋がります。

こうした「人(ヒト)」コンテンツを制作・発信している地域は、移住・定住を促す取り組みに注力しているところに多く見られます。その狙いの一つは、「人(ヒト)」を通してターゲットとの間にブランド(=らしさ)を構築すること。

らしさを表す「人(ヒト)」コンテンツ事例

幾つかの事例を見てみます。

イン神山

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徳島県神山町で運営されている「イン神山」には求人情報が掲載されていて、その求人を出している職場の方のインタビューも掲載されています。インタビュー×求人というスタイルは「日本仕事百貨」でも見かけるものですが、求人概要だけでは見えない部分を知ることができ、より確かに、より身近に神山に住み、働く人たちを感じることができます。

求人をみると、掲載されているのは介護職員、郵便配達員など、どの地域にもある仕事ですが、一緒に働く人の顔が見え、大切にしていることがその人の言葉で語られ、毎日そばにある自然の景色を感じられることで、その中にいる自分、働く自分を想像しやすくなるでしょう。

つわのもよりみち

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島根県津和野町で運営されている「つわのもよりみち」では、津和野で過ごす中で見えてくる人や暮らしを発信しています。サイト内では津和野に暮らす人、働く人のインタビューが掲載されていて、農業、介護、教育など、その人ならではの視点から見たものが記録されています。

半農半X、薪ストーブのある暮らし…都会で暮らす人たちが興味を持っているけどできないことに取り組んでいる移住者へのインタビューが印象的。

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南伊豆新聞

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南伊豆町で暮らす人たちの営みやそのまちの風景を発信している「南伊豆新聞」。コンセプトとしては、地元の人に愛され、南伊豆を活気づけるきっかけであり、地元の人が南伊豆の魅力を再発見できるようなメディアでありたいと語られています。

飾らない、そのままの姿で映し出される登場人物や対話はどこか懐かしく、親近感を覚えます。地元の人同士でも話したことがない話題が飛び出してその後会話のネタになったり、観光客・移住検討中の方にとっては「この人に会ってみたいな。この人が作る料理ってどんな料理なんだろう」と興味を持つきっかけにもなるでしょう。

絶メシリスト

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群馬県高崎市の絶メシ(地元民に愛されながらも絶滅の危機に瀕している安くて、美味しい絶品グルメ)を発信している「絶メシリスト」。

個性豊かな店主とおいしそうな絶メシが好奇心をそそる記事ばかり。店主の自然な姿や絶メシをうつした写真はもちろんのこと、興味をひくタイトルが印象的。集客だけではなく、後継者不足に困る店舗からの後継者募集記事が掲載されていることも特徴です。

「取材対象選び」と「タイトル」が鍵

興味をひくコンテンツは、その裏側でどのような工夫が施されているのでしょうか。記事を見て気づいた点をいくつか分析します。

①取材対象選び

様々な人が地域に暮らす中で、どのような人が取材対象になりうるのか。
「都会に住む人が興味はあるけどできないことをしている人」
地域の外の方が見ることを考えると、上記のような人物がいればぜひ取材をしてみたいですね。例えば、先ほど取り上げた「つわのもよりみち」に登場する男性は半農半Xを実践している方。

こうした方を取り上げる理由は、都会に暮らしながらも地方での生活をに興味を持っている人の多くが、「興味はあるけど、都会ではできないこと」を(いつか)してみたいと考えているからです。

地域内でそれらを実践している方をとりあげることで、すでに地方での暮らし・観光に興味がある方々に対して新たな地域のイメージを映し出すことができると思います。

②タイトル

魅力的な人を軸にコンテンツを制作できたら、次に重要なのはタイトル。
さきほど取り上げたメディアの中に登場する記事を参考にして、タイトルとそこから想像される読者にとっての印象を考えてみます。

『青汁の素を育てて、日本酒も造る?!半農半Xの若者・金田信治さんにインタビュー』

(読者が受ける印象)
え、青汁の素って何?というか、育てられるの?日本酒も?! 自分で作れるなら作ってみたいし、そこまで手作りできる暮らしがしてみたいな。

『30年間、客の“置き土産”で膨れ上がった3万冊のマンガ そして、珠玉の喫茶メシ!』

(読者が受ける印象)
客の置き土産だけで3万冊になる?!(いや、ふつうならないでしょ。)それだけ、来る人が居心地よくて、距離が近いお店なのかな。観光に行ってご飯食べるなら、こういうローカルなお店でその土地の雰囲気を味わいながら名物を食べたいな。

こうしてみると、中身を知らなくてもタイトルだけで読者のニーズをくすぐることができ、興味を地域に向けることができることがわかると思います。

タイトルを付ける際のポイントは、伝えたいことをものがたる一つのシーンを直観的に想い浮かべられるものにすること。

例えば、「アットホームな会社です」というメッセージがあったとして、これは伝えたいことをそのまま言葉にして伝えているものです。会社が増え、差別化が難しくなった今、このようなメッセージは「手あかのついた言葉」と言われるようになり、人の心を動かすことが難しい。

じゃあ、どうすれば伝えたいメッセージを届けることができるのか。まず、アットホームな会社であることをものがたる一つのシーンを思い浮かべ、次にそれをメッセージにするのです。


先ほど取り上げたタイトルは、まさにその好例と言えます。

『青汁の素を育てて、日本酒も造る?!半農半Xの若者・金田信治さんにインタビュー』
→自然の中でオーガニックな暮らしができる地域であることを伝えるために、金田さんの暮らしの中でそれをものがたるシーンをタイトルに。

『30年間、客の“置き土産”で膨れ上がった3万冊のマンガ そして、珠玉の喫茶メシ!』
→地元民に愛され続ける老舗店であることを伝えるために、顧客とお店の繋がりをものがたるシーンをタイトルに。

最後に

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今回は、いくつかのローカルWEBメディアを取り上げさせていただき、「人(ヒト)」から生み出されるコンテンツの制作、展開について書かせていただきました。
取材対象選びとタイトル以外にも、取り上げさせていただいたメディアから学べるところはたくさんあると思いますので、ぜひ一度のぞき見してみてください。

「人(ヒト)」を軸にした独自のらしさを形成し、地域の魅力創出、情報発信に取りくむ方を応援しています。

執筆者プロフィール

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山崎 貴大
1993年3月生まれ。文教大学 湘南校舎 国際観光学科卒。
旅行会社にて成田空港での訪日旅行業務に従事した後、経営者プラットフォームを運営するベンチャー企業へ転職。現在は、各社の経営課題の解決を目的としたコンテンツ企画・制作事業の立ち上げを経験し、同事業の責任者 兼 同社の編集長を務めている。
複業では、ブランディングテクノロジーの公式noteへの寄稿の他、経営者・起業家取材、採用広報コンテンツ制作等を行っている。