センスを共有することが堀口切子の魅力の秘訣...？

　前回に引き続き、堀口切子で働く三澤さん、坂本さんにお話を伺いました。内部の人だからこそ感じる堀口切子らしさとは、また、今後の目標について、坂本さん、三澤さんの順に別々に伺いました。 

三澤 世奈（写真左）
1989年、群馬県に生まれる。明治大学商学部卒業。大学在学中、三代秀石 堀口徹の作品に感銘を受け、門戸を叩く。2014年、堀口切子 入社。
江戸切子を継承する者となるべく、日々研鑽に努める。
坂本 優輝（写真右）
1998年、北海道に生まれる。留萌高等学校卒業。高校在学中、江戸切子に興味を持ち、堀口切子での職業体験を希望する。2017年、入社。
江戸切子職人では最年少（2017年当時）で、日々研鑽に励む。

■良いものを次につないでいく【坂本さん】

作業をするなかで、特に大切にしている教えはありますか？
　カットの加工をやらせてもらうときに教えてもらったのですが、親方が「これ受け売りだけどね」って前置きして言ってくれた、「神は細部に宿る」ということばです。地味で目立たないところを丁寧に加工することで、使い手にとって心地よく使ってもらえたりします。
　例にあげると、面取りの作業です。バランス感や細さに気を払って加工していても、指導されたりすることがあります。使い手のことを考えて、細部も丁寧に加工する。そういうところが一番大事なのかなと思います。「神は細部に宿る」ということばが「堀口切子イズム」の根底にあるんじゃないかなと思っています。中心は「堀口切子イズム」。そこからずれないことを意識してやっています。 

坂本さんが思う「堀口切子イズム（堀口切子らしさ）」とは？
　親方は江戸切子に限らず、自分がいいなと思ったいろんなことを教えてくれるんです。この前親方が言っていたのは、「俺の人生で学んだ100をお前たちにあげるから、そこに50、75、100と積み上げて次の人に伝えてよ」って。だから「良いことを次につないでいく／本質を残していく」というのが、堀口切子らしさなのかな、と。
　今っていうよりは、いかに未来に「堀口切子（堀口徹）」の本質を残していくか。そのために、「10年後、100年後に江戸切子が、堀口切子がどうなっているか」を常に考えているんだと思います。

今後の目標はありますか？ 
　僕自身は、職人というよりは作家寄りな性格だと思うんです。だから「かっこいい」とか「すごいな」と思える作品作りができたらいいと思います。ただマネするということじゃなくて、自分の中から出てくる「いいもの」を。誰しも思うことですけど(笑) 。もちろん、そこにいくまでのやらせてもらうカットがあってこそのことだと思うので、今は丁寧に加工することを意識してやっています。単純に技術不足なのでまだまだ先の話なんですけど、ゆくゆくはその経験が活かせればいいなと思っています。

■みんなで共有できているからこそ【三澤さん】

三澤さんの考える「堀口切子らしさ」はなんですか？
　「数字じゃ表現できないセンスをみんなで共有する」ってところが堀口切子かな、って思っています。切子ガチャとか、誰かが「やりたくない！？」って思うのを共有して、全員が「いいね！」「楽しいね！」と思えることが堀口切子の良さだと思います。

「堀口切子らしさ」を感じたエピソードを教えてください。
　堀口切子の強みは「精度」。１ミリ単位にこだわって作っていることが良さで。例えば、全ての素材に対して、１mmで作ることは簡単だけど、素材も一個一個手作りなので、この素材にちょうどいいのは１mmだけど、あの素材にちょうどいいのは２mm、っていうちょうどよさが違っていて。そのそれぞれの「ちょうどいい」が社内で共有できているんですね。それが一番の強みですね。自分達でも大切にしているし、誇りに思っていることでもあるので。親方が良いと思う感覚が自分たち（三澤さん、坂本さん）もわかっているんです。「親方だったらこうするだろうな」って。もともと、堀口切子の作品・センスが好きで入っているから、多分そのテイストに自分の好みが合っているんでしょうね。

■今後に向けて【三澤さん】

三澤さんが仕事をするうえで大切にしていることはありますか？
　自分の基本的な仕事に求めるものというのは、「自分が得意なことで、お客さんに喜んでもらえることをやりたい」ということですね。そこは最初からずっと変わっていないと思っています。

では、今後の目標はありますか？
　親方からは「プレイングマネージャー」みたいな感じと言われているんですけど、今、加工だけでなくオンラインショップの運営や、広報、お客様対応など、様々な仕事をさせてもらっていて。何でもできる人を目指していますね。特にSNSでは、インスタから不意に問い合わせがあって、来てくださる方もいて。地道なものですけど、コツコツやることが大切で。２年半くらいやっていて、やっと効果がでてきました。オンラインショップの売上にも繋がっています。

堀口切子ならではのやってみたい遊びはありますか？
　可愛い女子を集めて堀口切子パーティーみたいのをやりたいですね（笑）「インスタ映え～」みたいな（笑）圧倒的にみなさんのような若くて可愛い女子が江戸切子を使ってくれているシチュエーションがないので（笑） 

■おわり

　堀口さん、三澤さん、坂本さんの話を伺い「３人の話のつながり」「３人の共通認識」を感じた旨を、取材後坂本さんにお伝えしました。すると「そのつながりを重要視しているので、無意識にそれがでていたのなら、僕も堀口切子イズムをちょっとは継承できているのかな、と安心しました(笑)」とお話ししてくださいました。
　堀口切子らしさを共有しつつも独自の色を持たせた作品をつくるであろう、今後のおふたりの活躍がとても楽しみです！