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純文学かぶれの日記

 夏の朝は嫌いだ。閉塞感のある部屋に漂うどんよりとした暑さと体中を這うように流れる寝汗が私を不快な気持ちにさせる。さすがに少しの間は休んでいたいが、大学の講義に遅刻しないように重い体を動かさなければいけない。嫌な気持ちを抑えながら、朝の支度を機械のようにこなして外に出る。強烈に差し込む太陽の光が容赦なく襲い掛かり、視界が揺れるような錯覚さえ起こす。まるで白昼夢を見ているような気分だ。とにかく暑い。白く幻想的な世界に持っていかれそうになるが、足で地面を踏む感覚を強く意識して何とか耐える。
 10分ほどで大学についた。キャンパスには人が溢れ返っており、それを見ると溜まっていた疲れがどっと出た。情報をなるべく入れないために、下を向きイヤホンを装着して早歩きで教室に向かう。イヤホンは他人との間を隔てる壁がなくても、1人の世界を作ってくれるから好きだ。
 教室では、既にいくつかのグループができていた。そのグループから距離を保つようにして座る。1人の人間には親しみを持てるが、集団になると一気に鬱陶しく感じてしまう。これは自分が弱いからであろうか…。
 授業が3限目を迎える頃には天候が悪化していた。窓に映る灰色の雲、鳴り響く雨の音、湿気が鬱屈な気持ちにさせる。表情や声のトーンを何一つ変えずに淡々と講義を行う教授、学生、それを取り囲む教室に対して大きな苛立ちを感じた。このどうしようもない退屈な空間を壊したい。そう思った。手元に転がっていたボールペンを持ち銃に見立ててみる。手に収まった銃の感触を意識する。なかなか手に馴染む。黒のボディは深みがあり、憂鬱さえも飲み込んでしまうほどに感じられた。銃口を教授の頭に向ける。鼓動が徐々に早くなり、ジワリとした汗を感じる。敢えて表情を変えずに引き金の代わりにペン尻を押し込んだ。銃が鳴る。教授の額からは赤黒い血が噴き出す。銃弾が教授の皮膚に触れて、入り、後頭部から出てくる様子がスローモーションで目の前を流れた。一瞬の静寂ののち、教室中に悲鳴が飛び交う。悲鳴の中に、私の起こした小さな革命をたたえる歓声を感じた。どこか満たされたような気持ちになったが、それもすぐに退屈なものに感じ、2発、3発と続けて歓声をあげる者に銃を放った。一度撃ったことで自分の中のブレーキが壊れたため、何の躊躇もなかった。人間は慣れの生き物である。その銃はとても馴染み、まるで体の一部であるかのようだった。私は笑った。今日で初めてだ。
 チャイムが鳴り、教授が足早に去っていった。熱を帯びたボールペンをポケットに入れて、教室を出た。外に出たころにはもう雨がやんでいた。コンクリートに溜まった灰色の水たまりには色鮮やかな虹が映っていた。

 授業中に暇すぎて書いたけど、読み返すとあまりに痛すぎる…
 これから、授業は真面目に受けるようにします…

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