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2023年から9年前,2014年も5月5日に「こどもの日」が来ていたけれども,その後も少子化傾向は止まず

 ※-1 子どもの人口とその比率が減り,老人層のそれが増えているが,そのうち双方ともに絶対的に減少していく国になる

 a) 本稿は2014年5月5日の「子どもの日」に書かれていた文章であったが,それから早9年半が過ぎた現在であっても,少子化の傾向に変化はみられず,日本国の人口が急速に減少・縮小してきて,今後にもそうなっていくし見通しは,周知に属する「社会問題」であった。

 さて,10年近く前に迎えていたそ「の5月5日の〈子どもの日〉」から振りかえってみるこの国は,その後においてもあいもかわらず「子どもの数がドンドン減ってきている」。反面で高齢社会の様相をよりいっそう深めており,最近になるとくにこの世の中全体を動かすために必要な人材:労働力の不足が進行な問題となって現実化している。

 2023年の時点になって,日本の労働経済がどのような人材不足に陥っているかについて,ここでくわしく議論するつもりはないので,ただつぎのような実情のみ指摘しておく。

 「人手不足解消のために企業が取り組むべき対策」は,一般論として「業務の効率化」だとよくいわれるが,その前提条件としてとくに「人手不足の原因」となっている経済社会的な基本要因は,「少子高齢化による労働人口の減少」とともに顕著になっている「人材の不適合(ミスマッチ)」もある。

 とりわけ,若者世代の減少が日本社会全体に対して大きな影響をもたらしているなかで,国家全体の見地からどのように総合的な政策を立てて対処していくのか,この国においてはいままで確たる,実効性が期待できる施策がなかった。

 b) 日本における人手不足については,とくに以下の業界が深刻になっている。これは,厚生労働省が発表した職業別の有効求人倍率の一部である。

右側から2番目「卸売業・小売業」であっても
人材不足はめだっているが
労働条件の悪さが原因

 ・建設業 ……家の新築や補修に必要な人材が急速に不足しだしている。

 ・運輸業・郵便業 ……配達する人員の確保がいよいよ困難になりつつある。

 ・医療・福祉 ……これは地域ごとの不均衡も抱えながら,絶対数そのものに不足がある。これは先進主要国との比較でも自明な事実であった。

 順番としては逆かもしれないが,つぎの関連する統計を挙げておく。

日本の人口推移が高齢になるばかりの趨勢のなかで,2030年には7073万人の労働需要に対して,みこ込める労働供給は6429万人しかなく,644万人もの人手不足になると予測されている。

そうした予測のなかでもとくに,以下のごとき『人材のミスマッチ(不均衡・不適合)』がより顕著になっており,このような数値が提示されていた。人材不足と並べて人材過剰である職種も比較の材料として出してある。

人材不足の職業
  職業     有効求人倍率
  職業計(全体)  1.32倍
    土木の職業    5.60倍
    介護関係職種   3.38倍
    サービスの職業 2.82倍

 人材過剰の職業
  職業     有効求人倍率
  職業計(全体)  1.32倍
    一般事務の職業  0.35倍
    会計事務の職業  0.67倍
    運搬・清掃・包装等の職業 0.77倍

 出所)厚生労働省『一般職業紹介状況(令和5〔2023〕年4月分)について』
 註記)「【2023年最新】人手不足の現状と原因は? 効果的な6つの解決策を解説」『PERSOL』2023年6月19日,更新 2023年10月12日,
https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/337/

人材過不足の職業

 要は,日本の経済社会全般において少子高齢化とともに,これに対するいままでの自民党政権の無為・無策のため,以上ごとき半世紀前から分かりきっていた人口構成の基本的な変動から生まれことが事前に予測できていた「労働経済面」における諸問題発生に対処して講じておくべき「国策的な観点」など,もともとから不在だったというほかくらい,手抜きの対策だけでごまかしてきたと批判されていい。

 ところが,21世紀のいまごろになってだが,その労働力人口そのものの(内容的な変質も含めてだが)の,それも摩擦的な各分野ごとにおける急激な減少に対する対応が,まったく下手くそだったというか,まるで放置してきたかごとき,あるいはまた泥縄式にしか対処してこなかった歴代政権(民主党政権も入れて)の国家的次元における施策は,もしかすると(多分!)これからもあいもかわらずの要領で,ドタバタしながら手当していくしか能がないのかと心配される。


 ※-2「集団的自衛権」よりも「国家の人口統計」「子どもの数」維持管理をいかに自衛するのか?

 
 1)「子ども,33年連続減少 総人口の12.8%,世界最低水準」『朝日新聞』2014年5月5日朝刊

 15歳未満の子どもの数は1633万人(2014年4月1日現在)で,前年より16万人減ったと総務省が4日発表した。33年続けての減少。総人口に占める割合は12.8%と40年連続の下落で,世界でも最低水準だった。

 「こどもの日」にあわせ,国勢調査などから推計した。子ども人口は1950年に統計をとり始め,過去最低を更新。1981年の2760万人を境に減少,197年以降は65才以上の人口を下回っている。

 男女別では,男子836万人,女子797万人だった。年齢別では

   ▽ 12~14才が 351万人,
   ▽ 9~11才が 333万人,
   ▽ 6~8歳が 319万人,
   ▽ 3~5歳が 316万人,
   ▽ 0~2歳が 314万人

と,年齢が低いほど少なくなっている。

 全人口のうちの割合は,1974年の24.4%から下落が続く。都道府県別(昨〔2014〕年10月現在)では沖縄の17.6%が最も高く,滋賀14.8%,佐賀14.3%と続いた。低いのは秋田の10.9%で,東京11.3%,北海道11.6%だった。同省は「沖縄は子育て世代の人口の割合が高く,秋田は高齢者の割合が高い」とみる。

 子ども人口が前年より増えたのは,東京(9千人)と沖縄(1千人)の2都県のみ。福島は6千人減だが,一昨〔2012〕年の1万1千人減より小幅だった。福島県は「少しずつだが除染が進み,子どもを連れた避難者が戻りつつある」という。

 同省によると,子どもの割合は米国が19.5%,中国16.4%,韓国15.1%で,人口4千万人以上の30カ国で日本が最低だった。

 --以上の記事の中身は10年前の話題であった。関連する政府統計をあげておきたい。2022年時点で公表の政府統計「日本の人口推移」はつぎのように描かれていた。現状では高齢化率はほぼ3割であるものがいずれに4割になる。そもそも人口全体が,内容的に年齢構成別に適当に均衡状態とはいえない方向にドンドン進みつつある。

人口構成の推移


 最近(ここで2014年5月段階での話題だが),報道されていた(NHK総合テレビ,夜7時半からの番組『クローズアップ現代』)では,地方の若い女性層が,大都市部にどんどん流出しており,地方部における若年層(それも女性,それでなくとも少ないにもかかわらず)の人口比率が異常に低下している,という事実を問題にとりあげていた。

 補注)2023年時点の話題でいえば,地方の過疎地では子どもすらいない地域も増えており,都市部との歴然とした人口分布上の極端な違いもまた,現実的な様子として異様さを感じさせる。

〔記事に戻る→〕 この問題は,日本全体における人口統計的な変動そのものであるゆえ,当然,全国的な現象として観察すべき対象である。とはいえ,これは〈日本という国家が深刻に当面する大事な論点〉の実例を,より具体的に指示するもののひとつである。

 つづいて,同じ『朝日新聞』朝刊は,社会面のほうで同時に,つぎの ② のような記事を掲載していた。

 2)「『待機児童ゼロ』じわり 千葉市,入所決定まで紹介継続山形県,保育士の復帰支援」〔同上〕『朝日新聞』2014年5月5日朝刊

 「待機児童ゼロ」宣言が相次いでいる。市町村の担当者が親の相談にきめ細かく応じ,保育士の確保に努めた成果が表われはじめた。それでも,子どもを預けたい家庭は増加の一途。子育てしやすい環境をどうつくるか,自治体が知恵を絞っている。

 千葉市中央区の自営業女性(32歳)は〔2014年〕4月,子ども2人を保育施設に預けはじめた。自動車通勤の途中で長女(3歳)は認可保育所,長男(1歳)は市の小規模保育施設に送り迎えする。

 昨〔2013〕年11月の申しこみで2人とも近所の認可保育所を希望したが落選。「待機児童になるかもしれない」。不安がよぎった今〔2014〕年2月,市から電話がきた。「あなたの通勤経路なら空きがあります。見学しませんか」。

 二つの施設は車で数分離れるが,女性は「通勤ルート上で,さほど苦にならない」と話す。「アレルギー体質の長男の保育に担当者が何度も相談に応じてくれた」。

 市によると,保育所の入所選考に漏れた人は568人。親の通勤経路や交通手段をパソコンに入力し,自宅から遠くても通勤経路にある施設や,キャンセルが出た施設を照合。職員60人が3月まで全世帯に電話し,マッチングを続けた。

 熊谷俊人市長は4月,3年前に350人いた待機児童がゼロになったと発表。3年で保育所を15カ所増やしたが定員が埋まらない所があった。市保育運営課は「周知が大切」とソフト面のとり組みを重視する。

 山形県も4月,待機児童がゼロになったと発表。子育て支援課の岡崎正彦・課長補佐は「公立保育所の増改築に加え,保育士の確保に力を入れた」。資格があるのに結婚や出産で職場を離れた「潜在保育士」の研修などを充実させ,昨年度は44人が再就職を希望した。

 昨〔2013〕年,全国2位の695人の待機児童がいた福岡市も今春ゼロになったと発表した。約83億円かけ,2354人分の受け皿を確保。「19人以下の小規模保育や幼稚園で長時間預かる事業を充実させた」という。

  a)「膨らむニーズ,対応苦慮」 待機児童ゼロを達成しても,課題はある。入所をいったん諦めた親がつぎつぎと申しこみ,ニーズに追いつかない状況が続く。昨〔2013〕年5月に待機児童ゼロを宣言した横浜市。今〔2014〕年4月の申込者は前年比で906人増の1万5413人で,3月10日時点で2953人(前年比621人増)の入所が決まらなかった。

 市保育対策課は「育児休暇を終えたばかりの1歳児の申し込みが急増している」とみる。林 文子市長は「2年連続のゼロ達成はきびしい状況だ」と話す。

 入所希望者が多い自治体は苦心する。昨年4月,884人の待機児童がいた東京都世田谷区。3年で定員を約2千人増やし,株式会社の参入も昨年認めたが,今年4月の待機児童は1109人。資材高騰などの影響で入札不調が続き,4月開所予定の保育所3カ所の工事が遅れている。

 待機児童が8千人以上になる東京都は民間との連携に力を入れる。モデルの一つが駅近くの保育所だ。

 JR西荻窪駅から徒歩5分の「コトニア吉祥寺」(東京都武蔵野市)。JR中央線の高架下に昨年3月に開設し,都の独自基準を満たす認証保育所に47人が通う。3歳の長女を預ける小松裕子さん(36歳)は「通勤途中に送り迎えができて便利」と話す。

 都市部は地価が高く,用地が足りないため,都は民有地活用に力を入れる。JR東日本は,駅近くの保育施設を100カ所に増やす予定で,関東の私鉄や東京メトロも増設に前向きだ。

 埼玉県は大規模マンションを新築する業者に保育所設置を求め,運営費を補助する事業を導入。4月,戸田市のマンションに第1号ができた。

  b)「質も忘れないで」 子育て世代の親らが参加する「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表の話。

 待機児童問題が注目されるようになり,ここ数年で認可保育所の増設や職員のきめ細かい対応について真剣にとり組む自治体が増えたのは,評価できる。一方,待機児童数を減らすことだけに目を奪われ,保育の質を置き去りにする市区町村もまだある。利用者の目線に立った保育施設の整備を忘れないで欲しい。

 --以上は,地方自治体でも,保育所関係設備の整備・利用が比較的うまくいっている事例をとりあげている。だが,子どもの人口が顕著に減少しているというのに,子育てをするための環境は,総体的に観て以前から劣悪であった。このことは周知の事実である。

 さらにこの問題は,本日の『日本経済新聞』に目を通しながら,さらに考えてみたいことがらである。

 3)「子供,33年連続減 総人口比12.8%に 15歳未満1633万人,4月1日時点」『日本経済新聞』2014年5月5日朝刊

 総務省が「こどもの日」に合わせて4日発表した4月1日現在の15歳未満の子供の推計人口は,前年より16万人少ない1633万人だった。1982年から33年連続の減少で,比較可能な50年以降の統計で過去最少を更新した。総人口に占める割合は0.1ポイント低い12.8%で,40年連続で低下した。

 男女別では男子836万人,女子797万人。3歳ごとに年齢を区切って集計すると,中学生にあたる「12~14歳」が351万人で,年齢層が下がるほど少なくなり「0~2歳」は314万人だった。

 都道府県別(昨年10月1日現在)で,前年より増えたのは東京と沖縄だけだった。人口に占める15歳未満の割合は沖縄(17.6%)がもっとも高く,滋賀(14.8%),佐賀(14.3%)が続いた。もっとも割合が低かったのは秋田(10.9%)。ほかに東京11.3%,大阪と神奈川が12.9%,愛知14.1%,福岡13.5%など。

 子供数の減少は将来の労働力不足につながり,経済の成長を制約する大きな要因になる。政府は子育て支援など少子化対策に取り組むが,子供の減少に歯止めがかかっていない。

--以上が,人口統計問題の総論だとすれば,つぎは各論である。

 4)「保育所新設,1.4万人分 待機児童の6割強-主要4社 認可施設4年で160カ所」〔同上〕『日本経済新聞』2014年5月5日朝刊

 保育サービス大手が認可保育所(総合・経済面きょうのことば)の開設ペースを上げる。政府が「待機児童ゼロ」の目標としてかかげる2017年度までに,主要4社だけでも160カ所を新設。

 2013年4月1日時点で約2万3千人に上った待機児童の6割強に相当する約1万4千人分の利用枠を設ける。国が昨〔2013〕年,株式会社による保育所の運営を認めるよう自治体に通達を出したことなどが背景で,仕事と子育ての両立が図りやすくなりそうだ。

 厚生労働省によると認可保育所に入れない待機児童数の直近のピークは2010年の2万6千人。減少傾向にあるが高水準だ。受け皿となる認可保育所の新設を判断する自治体は,横浜市など一部を除き事実上,社会福祉法人にのみ認めてきた。しかし各法人とも財政余力に乏しく,営利目的で運営していないこともあり,新設は年1,2カ所にとどまる。

 昨〔2013〕年,政府は各自治体に,株式会社などが運営母体となる保育所も認可するよう促した。これを受け,社会福祉法人以外の運営者の認可申請に消極的だった自治体が方針を転換,株式会社にとって事業拡大の余地が生まれている。

 保育サービス大手のJPホールディングス(HD),こどもの森(東京都国分寺市),サクセスHD,アート引越センター系のアートチャイルドケア(大阪府大東市)の4社は3月末時点で合計約260カ所の認可保育所を運営する。ニーズの高まりを受け,2017年度末までに施設数を2013年度末と比べて6割増やす。

 保育サービス会社が運営する主要な認可保育所の規模は定員が90人程度。施設を増やすことで約1万4千人強の利用枠が生まれる計算だ。

 最大手のJPHDは首都圏を中心に約100カ所(3月末時点)を展開するが,2017年度までに約160カ所に増やす。同社の2013年3月期の連結売上高は137億円。経常利益は13億7500万円で,いずれも過去最高を更新した。認可保育所の新設を加速し,収益力をさらに高める。

 補注)国家の社会政策領域に私的営利事業としての「保育所産業」が成立している。老人(介護)ホームの問題もしかりであるが,国家の関与の仕方について十分にまともな議論や対応がなされないまま,このように事業化する方途は,注意してとりくむ余地がある。国家側の指導・監督の姿勢も問題となっている。なんでも民営化すればいいというわけではないからである。

〔記事に戻る→〕 「待機児童解消ニーズは関西や中部圏など全国に広がっている」(山口 洋社長)。このためJPHDやこどもの森は愛知県などに進出。サクセスHDは「ミニ保育所」(小規模保育所)にも力を入れる。定員19人以下の施設だが,マンションの1階や駅の近くなどに開設する方針だ。

 政府の待機児童解消に向けたとり組みも加速している。2015年度から始める子育て支援制度に消費増税分から年間7千億円を充当。保育所の増加につながる施策に優先的に予算を配分する方針で,保育サービス各社にとっては追い風となる。

 ただ保育士不足は深刻で,厚労省は2017年度に7万4千人の保育士が足りなくなると予測する。有効な解消策は資格を持っていながら家庭の事情などで働いていない「潜在保育士」の活用。全国に60万人程度いるとされる。

  「なぜ保育士の人数は不足している? 5つの原因と解消に向けた対策を解説!」『ソラジョブ保育士』2019/01/25,更新 2023/08/07,https://solasto-career.com/hoiku/media/16600/ は,その「5つの原因」をつぎのものとして挙げていた。

 給料が低い。……とくに全職種の平均給与額は約34万円なのに対して,保育士は約26万円であった。その後,国の補助金が出ているものの,年収面でまだ不利がある。

 業務量が多い。

就業時間が不規則になりやすい。

人間関係の難しさを感じやすい。

責任が重い。……なんといっても,他人の大事な子どもを預かることが保育士の仕事である。そのプレッシャーは,日々の業務で感じる。

保育士という仕事

 アートチャイルドケアは4月から通常と比べ労働時間が2~3時間程度少ない勤務体系を導入した。サクセスHDは昨年,従業員の昇進制度を新設,待遇を改善している。

 

 ※-3「働きながら子育てできる社会に」『日本経済新聞』2014年5月5日朝刊「社説」

 「仕事と子育ての両立」が社会の大きなテーマになって久しい。女性の活躍推進のためにも少子化対策としても重要と指摘されながら,いまなお壁が低くなったとはいえない。実現にはなにが必要か,「こどもの日」を機に考えたい。

 両立支援のために,保育サービスを拡充することは大切だ。それと同時に,職場が変わっていくことも欠かせない。男女ともに働きながら子育てできるようにすることが,日本社会を活性化する力になる。官民あげて,今こそ取り組みを加速させるときだ。

 a)『欠かせぬ職場の改革』 両立支援の大切さは,政府が1年前〔2013年のこと〕に成長戦略として女性の活躍をかかげたことで改めて浮き彫りになった。女性の就労は,将来の労働力不足を緩和するだけでない。多様な人材が活躍する職場は,より柔軟で新たな価値を生み出しやすくなる。

 そのためには,クリアすべき条件がある。最大のカギは,企業が男性も含めた職場全体の改革にとり組むことだ。これまで職場の両立支援といえば,ともすれば女性向けの人事施策として限定的にとらえられがちだった。育児休業や短時間勤務などの制度が整備されてきたが,利用の大半は女性だ。

 しかし,真の両立支援のためには,職場を土台部分から変えていくことが大切だ。業務の進め方を見直し,無駄な仕事を省き,長時間労働にメスを入れる。フレックスタイムや在宅勤務など,多様で柔軟な働き方を広げる。管理職の意識を変える。

 やるべきことはたくさんある。けっして女性だけの問題ではない。職場の誰もが改革の当事者だ。一見,遠回りのようにみえるかもしれない。しかしこうした土台があってこそ,働ける時間に制約がある人でも制度を適切に使いながら働きつづけ,力を発揮しやすい環境が整う。

 土台の改革が伴わなければ,制度を利用しにくかったり,過度に制度に頼ったりというマイナス面が強く出てしまうだろう。

 育児にもっと関わりたいという男性にとっては追い風になる。共働きの妻とうまく分担ができれば,女性の活躍を後押しすることにつながる。専業主婦家庭であっても,男性が育児に関わることで妻の負担が軽減されれば,子どもにもよい影響を与えるだろう。

 高齢化に伴い,今後は仕事と介護の両立に直面する社員が増える。職場を土台から変えておくことは,この新たな課題への対策にもなりうる。(引用終わり)

 ここでは下の図表を挙げておきたい。

 これは『内閣府男女共同参画局』「男女共同参画白書 令和4〔2022〕年版,11-3図「日本のジェンダー・ギャップ指数の推移」を挙げておきたい。

 この図表には出ていなかった「2022年の日本の総合スコアは 0.650,順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)」と,わずかだが上昇した。

 しかし,前回までと比べて,まだまだスコアも順位もともに,ほぼ横ばいが継続しており,先進国中では最低レベルである。しかも,アジア諸国のなかで韓国や中国,ASEAN諸国より低い結果となっている。

ジェンダーギャップは横ばいというか低迷したままの「日本」

 b)『両立支援のもう1つの柱が行政による保育の拡充』であることは,いうまでもない。

 保育所に入りたくても入れない待機児童の数は,2013年4月の時点で都市部を中心に約2万3千人と,高い水準のままだ。民間企業の力も活用し,地域のニーズに合わせたさまざまな保育サービスをどう整備していくか,自治体は一層知恵を絞る必要がある。保育士不足への対策も着実に進めなければならない。

 小学生の子どもを放課後に預かる学童保育を,もっと増やすことも大切だ。預け先がみつからず,親が仕事の量を減らしたり辞めたりしなければならなくなる。そんな「小1の壁」という言葉もあるほどだ。学校施設の有効活用などを考えてほしい。

 c)『再就職支援も大事に』  むろん,共働きを選ぶかどうかはそれぞれの家庭の選択だ。しかし働きたいという気持があるなら,それを阻む壁は低くする必要がある。子育てを機に家庭に入り,再就職先がみつからない女性は多い。再就職や学び直しの支援を充実させていくことは大切だ。

 若い世代では,収入が少なく生活が安定しないために,そもそも結婚や出産に踏み切れないという人もいる。非正規社員も育児休業は可能だが,その条件は厳しい。若年層の就労支援に力を入れていくことも必要だ。

 ここにきて,働きながらの子育てを後押しする制度改革も相次いでいる。2015年度から待機児童解消などをめざした新しい子育て支援制度が始まる。消費税増税分から約7千億円が投じられる予定だ。

 企業に子育て支援の行動計画づくりを求めた時限立法「次世代育成支援対策推進法」も,2015年4月から10年間の延長が決まった。長時間労働の見直しなどが進むよう,実効性を高める必要がある。

 補注)なお「次世代育成支援対策推進法」とは2003年7月16日に成立し,同日施行されていた。10年間の時限立法であったが,2014年の改正によりさらに10年延長されている。

 もとも「次世代育英を支援するための対策を推進する」とはいっても,その肝心の対象となる「つぎの世代」の人口構成は,毎年の出生数を念頭に置いて考えると,その対策・推進は「やや・大いに?」であるほかない。

 ここでは「本稿(3)」(昨日2023年11月9日の記述)で引用したつぎの図表を,再び取り出し,参考にしてみたい。

 人口政策の対象としてだが,次世代の育成支援のための対策推進だといっても,「2014年」以後も合計特殊出生率は沈滞しつづけ,もちろん出生数そのものも,このようにじわじわ減少してきた。

2023年の上半期における出生数は約35万2000人で4.1%減
通年では70万人プラス数万になる
なお出生数は7月から10月が多くなる期間である点を
考慮した予測が必要である

 そもそも,支援すべき問題がなんであったかといえば,むしろ「出生数」そのものを増やすことのほうに重点があって当然である。こちらの対策が不十分なまま「次世代育成」が大事だ,必要だ,推進するのだといわれても,隔靴掻痒に感じられるのとは,そのまた以前の課題になっていたのではないか。

 要は,その支援対策推進の対象になるはずの「世代の誕生(出生数そのもの)」が先細りになっていっては,「元も子もない」というか,その「元」と「子」との識別とさらにはそのそれぞれの意味の関連づけができていない状態で,「特定の仮想話」が独立先行しているのではないか。

〔記事に戻る→〕 働き方を変えることも,保育サービスの充実も,けっして簡単なことではない。しかし子どもの健やかな育ちを支えるためにも,もはや一刻の猶予もない。

 d) さて,このような官民一体になる子育て支援の制度・枠組への構築努力は,いまごろになってようやく,このようにあわてて問題にとりあげられるようになり,対策が講じられているという実態からして,そもそも「問題があり過ぎた」というように理解しなければなるまい。

 最近の出生率がまだ,1.41〔この数字は2013年のもので直近の2022年には再び,1.26という過去最低のこの値が再び出ていた〕しかない日本である。1989年に1.57という「きわめて低い出生率の値」を示されたとき,社会はこれを「1.57ショック」として問題視した。

 だが,その後もつづいて少ないときは 1.26まで低下していた。この出生率は,いま〔2014年〕は,なんとか 1.41までは戻しているものの,人口そのものはいずれ近いうちに1億人を切る。その道をこの国は確実にたどっている。

2023年の出生数は上半期で35万2240人であった
単純に2倍すると70万5000人
なお統計上7~10月の出生数が多く1~2月は少ない傾向にあるので
下半期はもう少し増え合計もその分増える

 子どもをどんどん殖やしてほしいといっても,現状のごとくに女性がまだまだ働きにくい経済社会環境のままであれば,これからも日本の人口は間違いなく急激に減少していくほかあるまい。

 だから以前,外国人を一挙に大勢,日本に移入させよ,それも1千万人を,とまで主張した坂中英徳(元法務省官僚)のような「大胆な提言」も出ていた。しかし,この坂中の提唱がまともに相手にされ,実践にまで到達することはなかった。

 補注)2014年3月に,こういう報道があった。「毎年20万人の移民受け入れ 政府が本格検討開始」(『産経新聞』電子版,2014年3月13日 19:24,http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140313/plc14031319260010-n1.htm )。これは,あくまで「検討開始」に関するニュースであった。

 もともと大胆な政策は考え出すことすら苦手なのが,この国の政治家および高級官僚たちである。半世紀・1世紀さきのことよりも,いまの自分たちの立場・利害(いわゆる「省益」)のほうが,よほど大事な連中である。これらの人びとに対して,今後における「日本の人口統計的な課題」にとりくませたところで,画期的・革新的な方途を切開できるなどと期待しないほうが賢明なのである。

 e) 防衛省自衛隊という軍隊の「集団的自衛権」「行使力の実現」のために必死になってとり組むヒマがあったならば,この21世紀における目前の深刻な人口問題にとり組むのが,まさしく先決問題であったはずである。いずれにせよ,自衛隊員の確保すらむずかしくなるほど,「若者の人口」が減っていくこれからが待ち受けている。

 人口が著しく減少していく国家のことを「美しい国」とか「新しい国」とかいうのか? アホらしさ・バカらしさを通りこして,ただただ苦笑するばかりである。この国の,おろかな最高指導者であったあの人に向かい,このような議論をしたところで,詮ないことであったが。 

 日本の人口が1億人に減少すると予測される2050年のころ,この国家は「醜い国」,かつ「古い国」になりうることだけは,人口統計の「質的な側面」からいえば,確実である。

 いまの日本にとって,守るべきものがなにかは,国外よりも国内にあるはずである。「美しい」という形容の鎧の下にみえ隠れするのが,むしろ「醜くい」政治家の姿容である。この様子をわれわれはみのがしてはならない。

 つぎの図表は参考にまで挙げておく。以上の議論にかかわる中身が提示されている。そういえば,日本は以前,人口が多すぎるといって移民政策を実施していた国であった。

日本の人口推移

 なお日本は,明治時代から第2次大戦後までは,労働力が過剰とされ,移民を送出する側の国家であった。

 

 ※-4「子は宝」(の国といえるか?)

 このことば:表現は,全体社会的な次元においていえば,確実に死語になりつつある。インターネットにたまたま,つぎのようなブログの記述をみつけた。生まれた子どもたちは「1人の人間存在」であることにおいて,みな同じに平等に養育されねばなるまい。

    『未婚出産 ☆ 子は宝 -お久しぶりに更新してみよう ♪-』

 未婚シングルママのぴのちゃんです。よろしくお願いします。

 交際7年程の彼とは不倫の関係にあり,現在も続いています。私たちの間には可愛い子供もいます。

 彼とは今後どうなるかわかりませんが,認知あり・養育費あり・子への愛情あり(私への愛情も???あり・・・かな (///∇//) テレテレ)で,いままでやってきました。

 同じ境遇の妊婦さん・ママさん,お友達になってください ♪ ファン登録の場合はゲスブにコメントお願いします。

 何もない場合は削除しちゃいます。

 註記)http://blogs.yahoo.co.jp/pinochanpino

このブログはその後の現在は削除

 もっとも,このような女性側への待遇を用意できる相手(男性)側の事情は,もとよりごく少数派に属するものに違いない。したがって日本事情の舞台では,こちらの方面での子ども誕生には,大きな期待をかけることはできない。ヨーロッパ諸国では,不倫というよりも,事実婚で生まれる子どもの割合が50%以上になるところもある。

 だが,いまの政権党の政治家たちは,いまだに事実婚でなければけしからぬという感覚の持ち主,頑迷固陋居士がたくさんいる。日本という国はいまだに,そういう古い民法的な特性を,これまでズルズルと引きずってきたまま,ろくになにも意識改革ができていない。

 以下の文章は法務省からの引用である。この程度の法律でも猛烈に反対していた自民党議員がいたのだから,その封建思想に関する盲信の根強さだけには感心する。

        

        ☆ 民法の一部が改正されました ☆

 平成25〔2013〕年12月5日,民法の一部を改正する法律が成立し,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。


 民法の改正の概要

 1 法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)を削除し,嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にしました(注)。

 2 改正後の民法900条の規定(以下「新法」といいます。)は,平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとしています。

(注)「嫡出でない子」とは,法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。

民法の改正

 「前段の女性」は「不倫の子」といった話題を,ブログ上で匿名だが告白していたけれども,この不倫の子の立場にとってみれば,「1人の人間」として価値になんら変わりがあるわけではない。男と女のあいだに生まれた1人の子どもに対して「不倫の子」などといって,第3者がどうだこうだといっていい筋合いも,まったくない。

 いまどき「子どもは宝だ」とか「国にとってだいじな人的『資源』」と思いたいのであれば,旧来の庶子的な感覚を引きずりながら,「子どもたち」に対して差別的な意味づけをする法的な処遇じたいが,この社会から一掃すされる必要がある。

 少子化の波はもう阻止できない潮流であった。それでも少しでも出生数を増やしたいのであれば,「不倫の妻」の存在はさておき,彼女〔とその不倫相手の男〕から生まれた「子ども」が,不倫だのなんだの呼ばれるのは,そもそもが「倫理的なあつかい」ではありえなかった。

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