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リニア新幹線は自然大破壊の原因になるが,中部電力の浜岡原発は南海トラフ超巨大地震の予測を踏まえていえば日本列島を損壊する危険性あり

 ※-1 本日 2024年5月27日朝の報道「静岡県知事選結果」

 a) まず,本日の『毎日新聞』朝刊1面(紙面の中央あたり)に報道された,静岡県知事選の結果を報じた記事を紹介する。

岸田文雄はこの結果にともない
衆院解散総選挙ができなくなった

 この新聞記事のなかに言及がある「リニア中央新幹線は,本当に必要か?」『公益財団法人日本野鳥の会』https://www.wbsj.org/activity/spread-and-education/toriino/toriino-kyozon/linear/ という議論がすでになされていた。日本野鳥の会によるこの記事:主張は後段に c) として引用することにし,さきにこういう議論をしておきたい。

 b) 静岡県知事選でも実は非常に重要な争点でもあったはずの,このリニア中央新幹線の是非については,先般「失言⇒市民差別的な発言問題」を機に,任期途中で辞めていた同県知事の川勝平太(第17-20代知事,2009年7月7日から2024年5月9日)が,いままでそのリニア問題に対する疑念を呈しつつ,反対の立場を採っていた。

1948年8月16日生まれ 76歳

 本ブログ筆者の理解でいうと,静岡県の北部,そのごく一部分を通過するだけのリニア中央新幹線は,未知に属する自然破壊の可能性が危惧されているが,

 半世紀先の交通経済的な予測をろくに事前評価もせずに,「金食い」の,そして「エネルギー大食い」のこのリニア中央新幹線を建設するという “大の付いた愚” を,現在「衰退途上国」になりはて,しかもすでに「後進国諸群の一国」に「出戻りしたこの日本」においてとなれば,実際に完成させ運行を始める時期には,すでに無用とはいえないまでも,

 きわめて非経済的でかつ路線の維持やその運行上の安全性に関して,非常な困難が予測されざるをえないこのリニア中央新幹線は,完成させて営業運転を始めることになっても,今世紀:21世紀が終わる以前において「無用の長物」化するおそれ「きわめて大」だとしかいいようがない。

 現状を観ても分かるように,既存の東海道新幹線でたいした不便はないはずである。航空機を利用した交通手段もある。

 リニア中央新幹線が計画どおりに列車の本数を走行させるためには,76万キロワットもの電力を毎日使用するとされ,このために「原発の再稼働・新増設が必要だ」と高唱する原子力ムラ側の強引な主張を惹起させる一因まで提供していた。

 c)「リニア中央新幹線は,本当に必要か?」『公益財団法人日本野鳥の会』のまっとうな議論と批判を,以下に紹介する。

静岡県北部の地下を横断するだけのリニア中央新幹線である
静岡県にとってなんの利点もない超高速鉄道の建設
地下の部分が9割近く占める

  1) 南アルプスに囲まれた長野県・大鹿村(赤石岳を背後に控える地)の直下にリニアが通る。

 このリニア中央新幹線のルートは,前掲の図解に示された「黄色で示した部分が地上を走る区間」であり,残りの86%は地下トンネルとして建設される。

 東京(品川)⇔ 大阪間を走る「リニア中央新幹線」の本格的な工事(事業者:JR東海)が,年内にも着工される。〔2014年12月17日,首都圏⇔中京圏間の2027年の先行開業をめざし,同区間の起工式がおこなわれていた〕。

 品川⇔ 名古屋間が最短40分,品川⇔ 大阪間を最短67分で結び,東海道新幹線「のぞみ」の半分以下の時間で走行させる計画である。車両を地上から10㎝浮上・推進させる「超電導磁気浮上方式」で超高速での走行が実現させており,この方式の世界初の実用化となる。

 しかし実用化にあたっては,さまざまな問題が起こることが予想されていた。そのひとつが,走行ルートとその工事に伴う環境破壊である。リニア中央新幹線は,東京⇔名古屋間の86%が地下トンネルとなり,

 その一部は,国内有数の原生環境を保ち,昨年「ユネスコエコパーク」にも登録された南アルプスの地下を25㎞にわたって貫く。南アルプス一帯には,中央構造線と糸魚川-静岡構造線という大断層帯が通っている。

 そのため,掘削には大変な困難がともない,地下での湧水が起こりやすい地盤である。掘削で大量に発生する土砂の処分や,それが及ぼす動植物・生態系への影響も懸念されている。

  2) とりわけ『水資源への影響』が懸念されている。

 南アルプス一帯の地下水脈が分断されることで,地下水がトンネル内に湧出し,地下水や河川流量の減少・枯渇を招き,河川の生態系に影響が出る。トンネル内で発生した湧水を放流するにも,周辺の河川にはヤマトイワナのような希少種が生息しているため,場所や水質,水温に配慮が必要となる。

 なかでも問題になるのが「土砂の処分」である。

 東京⇔名古屋間の掘削だけでも5680m³,東京ドーム45杯分の土砂が発生する。JR東海は発生土を公共事業などで利用すると説明しているが,処分先が決定しているのは全体の2割でしかなく,かなりの土砂をどこかに仮置きせざるをえない。仮置きの土砂が南アルプスの景観を損なうだけでなく,大雨で流出や土砂崩れを起こし,人の暮らしと環境に被害を与える懸念がある。

  3) なかでも「野鳥への影響」が問題となっていた。

 この工事の環境アセスメントで,リニア新幹線が通過するすべての県でオオタカの営巣が,山梨県,長野県でクマタカの営巣が,岐阜県でサシバの営巣が確認されている。

 その後,JR東海が地元知事の要請で行なった追加調査でも,ミゾゴイ,サンショウクイ,ブッポウソウ,イヌワシ,クマタカ,オオタカ,ノスリといった絶滅危惧種や,ミサゴなど,環境の変化に敏感な猛禽類が確認されている。

 これらのアセスメントは工事で直接環境の改変がおこなわれる場所だけの評価で,工事現場への道路や土砂の仮置き場は含まれておらず,10年にわたる広範囲な工事が,環境にどれだけの影響を与えるかは検証されていない。そして,南アルプスの山中にも発生土の仮置き場が設置される。

 自然環境に対して悪影響の発生が予想される諸問題は,より具体的な対象を説明するとしたら,絶滅危惧に関してはたとえば,以下のものが挙げられる。

  ▲-1 クマタカ/絶滅危惧ⅠB類。標高約300~1000mの発達した森林に生息
 
  ▲-2 ブッポウソウ/絶滅危惧ⅠB類。低~山地の林縁の里山環境に生息し,樹洞を利用して営巣

  ▲-3 ミゾゴイ/絶滅危惧Ⅱ類。繁殖地は日本のみ。低地の谷や沢沿いの広葉樹林と針広混交林に営巣

  4) なんといっても環境アセスメントと合意形成が不十分。

 「次世代の高速鉄道」として1962年に始まったリニア開発は,国民が環境問題や地球温暖化に関心をもつ現代では,時代錯誤の感が否めない。このような巨大プロジェクトでは,計画段階で環境アセスメントをおこない,複数のプランを比較検討し,より環境に影響の少ない事業計画を検討する「戦略的環境アセスメント」が重要である。

 そのさい「事業を実施しない」という選択肢も必要である。しかし現在の日本では,事業計画が決定したあとに環境アセスをおこなうため,重大な影響があることが判明しても,事業の中止や大幅な変更は不可能である。

 また,地元住民との合意形成のないままに,計画が進められたことも大きな問題である。JR東海は,住民説明会で「環境や生活への影響は少ないと考える」と述べるのみで,住民側の不安の声や質問に明確な返答を避けています。

 「日本最後の秘境」として,環境省が国立公園の保護地域の拡張を計画している南アルプス一帯。事業計画が具体的になるにしたがって,さまざまな問題がさらに明らかになってくると思われる(別表参照)。当会では地元の支部やNGOと連携して,自然環境や鳥類への影響を回避できるように取り組んでいきたい。(引照終わり)

  5) リニア中央新幹線の必要性が本当にあるのか?

 さて,21世紀の現段階に至ったところでは,すでに日本は本当は「貧国」になったのではなかったのか?

 バブル経済の時期があった歴史は20世紀後期における一瞬の〈思い出:体験〉でしかありえなかったし,現状のごとき「政治4流・経済3流」の「後進国へ再転落してしまった現状」が,もしかすると本来の姿であったのかとまで思いこまされる気分にまで落ちこむくらい,最近における日本の「政治・経済・社会・文化」は低迷状態を余儀なくされている。

 外国人観光客たちが一杯2000円のラーメンをウマいといいながらすすり,6000円の海鮮丼をヨダレを垂らしながら,これもワンダフルと絶賛しながら食する光景のすぐ脇にあっては,庶民のなかでもより貧しい人びとは3度の食事にことかくありさまである。

貧しい日本という印象は単なるイメージではない
エンゲル係数の1%単位の違いは大きい

 最近は,フードバンクへの需要もじりじりと上昇しだしているにもかかわらず,そのバンクに食料を提供してくれる篤志からの支援までがきびしい状況に追いこまれているというのに,

 「品川⇔ 名古屋間が最短40分,品川⇔ 大阪間を最短67分で結び,東海道新幹線「のぞみ」の半分以下の時間で走行させる計画」に執心する,実にノンキにも別世界に生きていられる財界・政界関係の者たちが居る。

  5) 人口が確実に大幅に減少している日本にリニア中央新幹線? 

 そもそも,日本の総人口はいまから四半世紀先となる2050年には,9515万人へと約3300万人も減少(約25.5%減少)する。 そのとき,65歳以上人口は約1200万人増加するけれども,生産年齢人口(15-64歳)は約3500万人,若年人口(0-14歳)は約900万人減少する。 その結果,高齢化率でみればおよそ20%から40%へと高まる。

 そういう人口構成の時代が来るというのは百も承知であるはずなのに,現状の東海道新幹線では速度が遅い,足りないといってリニア中央新幹線を並行させて走行させるという計画じたいが,時代の先読みをする基本姿勢において錯誤というか完全なる勘違いを犯している。

 現状の新幹線を走らせる走行速度を時速で50~100㎞に上げるほうが,より現実的かつ経済的であり,つまり合理性ある改善・向上の運輸政策の実現となりうると考える。現に,新幹線技術のパクリ国,中国では営業最高時速350㎞で走行させている。東海道新幹線の営業最高時速は285㎞である。

 285㎞ ÷ 350㎞ = 81.43%であるから,この速度上昇で現状の新幹線はその分の時間を短縮できる。現在「東京⇔大阪」間は〈のぞみ〉だと2時間30分であり,最高時速を350㎞で営業運転するとしたら,「東京⇔大阪」間を2時間2分(約2時間)で走行できる。

 シニア新幹線だと,品川⇔ 大阪間は最短67分でむすぶ予定であるが,ともかく「東京⇔大阪」間を1時間ほどでいったりきたりする必要が絶対的にある利用客が,はたしてリニア中央新幹線の計画(需要予測)として期待できるのか? 確実にそこまで十分に実現できると,誰が請けあえるのか?
 
 なお,ここではつぎの記事も参照してみたい。


 さて,リニア中央新幹線はこの計画を諦めれば,前段に述べてきたごとき心配は不要となる。しかし,いまの日本,リニア中央新幹線の関連,つまりこの電力を大量に喰って走る高速電車のエネルギー調達問題については,それに関して当然の前提であるかのように,「だから原発が必要になる」という理由づけに「悪用」されてもいた。

 というしだいで,次項にもかかわる議論としてだが,その「リニア中央新幹線」をめぐっては,「水資源の問題」という自然環境保持の問題である以上にくわえて,「南海トラフ・超巨大地震」が発生した時,静岡県に立地する中部電力の浜岡原発が覚悟を迫られる「地震と津波の災害」の襲来を無視することができない。


 ※-2 原発:原子力利用にこだわる亡国・滅国のエネルギー政策

 原発(原子力)をまだ「電源構成の基礎部分」に置きたい日本は,いまや完全にお邪魔虫化した電源が原子力であり,エネルギー問題のなかでは「獅子身中の虫」(亡国の一因)となっている原発を,いまだに廃絶しようとする気がない。

 いつ襲来してきてもおかしくない南海大地震(これにともなう大津波)に備えて中部電力浜岡原発は,高さ22メートルの防護壁を建造した。しかしそれでも,いざとなった時には「恐ろしく脆弱な対応」になるという予想もありうるなかで,それでもなお,原発の再稼働にひどくこだわるこの国の愚かなエネルギー観が大手を振って闊歩している。

 とくに日本経済新聞社は,エネルギー問題の「なに」に関してでも,ともかく原発の問題を前面にもちだし,このエネルギー源が電源として〈格別な価値がある〉かのように報道する。それというのも,「原子力村」の一員である同社の立場は,原発に関した「虚偽のイデオロギー」を宣伝する報道機関の役割を担当してきたからであった。

 以下につづく記述の要点を4つにまとめておく。

  要点・1 2011年3月11日東日本大震災の大地震・大津波を忘れていたい中部電力は,浜岡原発としてまだ稼働できる3・4・5号機を保有している

  要点・2 南海トラフを震源地とする大地震が発生した時は,南海トラフの巨大地震による津波高(「政府資料」http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku/pdf/1_1.pdf )を想定に置き,中部電力は2011年に高さ18メートルの防波壁をつくる計画で着工した

  要点・3 その後,国の有識者会議が最大19メートルの津波が想定したことにともない,防波壁を4メートルかさ上げし,22メートル高の防波壁になっていた,もっとも,浜岡原発が立地する地盤に関してまた別の問題があることは,専門家が以前から併せて指摘してきた「浜岡原発に固有の危険な要因」である

  要点・4 「備えがあっても憂いて」いる最中にも,その大地震と大津波は発生するかもしれず,それによって発生するかもしれない甚大な被害は不可避ゆえ,ともかくいますぐに,いかに対処をしておくかが要求されている

要点4つ

 以上の要点のなかで触れてみた「中部電力浜岡原発の防波壁」は,東日本大震災級の大地震・大津波が再来するほかない「日本列島の地理的な宿命」をめぐり,それも原発に関する対策として「備えあれば憂いなし」の状態にできるかどうかにかかわって,大きな意味をもっていた。

 もしも,浜岡原発で過酷事故が起きたら,日本沈没に等しい事態が発生するおそれさえ覚悟する必要がある。中部電力の立場にとってみれば,できるかぎりより正確な予知が必要だとみなさざるをえない「重大な自然現象:南海トラフ超巨大地震」の発生可能性は,「3・11」がわれわれの体験として教えたその危険性に対する『事前の対策』として,絶対に回避できない近い未来のそれである。

 参考にまで,本日(2024年5月27日),中部電力ホームページをのぞいてみたところ,原発の稼働状況はつぎのように説明されている。

          ◆ 原子力発電所の運転状況 ◆
            (2023年4月1日現在)

   1号機 該当なし 運転終了(2009年1月30日)
   2号機 該当なし 運転終了(2009年1月30日)
   3号機 110万kW 定期検査中・安全性向上対策実施中                 (地震・津波・重大事故対策等)
   4号機 113.7万kW 定期検査中・安全性向上対策実施中                 (地震・津波・重大事故対策等)
   5号機 138万kW 定期検査中・安全性向上対策実施中                 (地震・津波・重大事故対策等)

註記)「浜岡原子力発電所 運転状況・リアルタイムデータ」『中部電力』https://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/hamaoka/hama_data/

中部電力原発稼働状況

 この浜岡原発は,静岡県御前崎市に立地する中部電力唯一の原子力発電所である。

 1号機(発電量54万キロワット)は1971年3月に着工,1976年3月から運転を開始した。その後,1978年11月に2号機(84万キロワット),1987年8月に3号機(百十万キロワット),1993年9月に4号機(113.7万キロワット),2005年1月に5号機(138万キロワット)が運転を始めた。

 だが,2008年12月に1,2号機は耐震工事に多額の費用がかかり採算が合わないとして廃炉を決めた。

 中部電力はまた,浜岡原発の再稼働についてこう説明している。つぎに引用するが,この答え方はある意味,ずいぶん慇懃無礼な声色にも聞こえてならない。

 運転再開につきましては,現在申し上げる段階ではございません。 当社は,原子力発電を今後も重要な電源の1つとして活用していくことが必要であると考えております。そのため,浜岡原子力発電所の安全性をより一層高める取り組みを着実に進めてまいります。

 註記)「浜岡原子力発電所・安全性向上対策全般-浜岡は運転再開の予定がありますか?」『中部電力』https://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/nuc_qa/

浜岡原発の再稼働

 要は,東京電力・福島第1原子力発電所の事故が発生した2011年3月11日から2ヵ月が経った同年5月,当時の民主党政府の首相菅 直人は,静岡県御前崎市にある浜岡原子力発電所全基の原子炉停止を中部電力に要請した。それからいままで,浜岡原発は原子炉を停止したままで来たのである。

 つぎの図解は『中日新聞』の記事から拾った関連の解説図である。

浜岡原発の立地場所


 ※-3「〈社説〉浜岡停止10年 災害念頭に脱原発を」『朝日新聞』2021年5月9日朝刊

 中部電力浜岡原発の問題は,この原発が立地する近くに御前崎という気象関係(天気予報)でも有名な岬があるが,南海トラフ小巨大地震がもしも発生したら,このあたりには20メートル近くもの高さの津波が襲来すると予測されている。

 つぎの画像資料は,南海トラフ超巨大地震の発生時,その予測なかでももっとも高い津波が襲来するという高知県黒潮町が建造した「避難センターのひとつ」である。

 「想定津波高 34 .4m」というのだから,海岸沿いに位置し,標高が海面に近い市町村の地域は,この大津波に直撃されたらひとたまりもない。

昔交通事故に対して「注意1秒けが一生」という用心が説かれたが
大津波を舐めていたら間違いなく自分の命は海底にまで掠われる

 この高知県黒潮町に対する「南海大地震の予測:震度7,津波 34.4m」という恐ろしい予測は,かつて東電幹部たちが「想定外」などといっていた時のように,その現実的な意味から逃避することは不可能である。つまり,いつか近いうちには必らず襲来してくる自然現象である。

 『朝日新聞』2021年5月14日「社説」から,その前部の5分の2ほどを引用する。

 東日本大震災を受け,南海トラフ地震の想定震源域内にある静岡県の浜岡原発が全面停止してから,きょうで10年になる。自然災害の常襲国で原発を運転するリスクを,みつめなおす機会としなければならない。
 
 運転停止は,2011年5月に当時の菅 直人首相が巨大地震の切迫性などを理由に要請,中部電力が受け入れた。中電は,津波に備えて標高22メートルの巨大な防波壁を建設,2014年に原子力規制委員会に再稼働に向けた審査を申請した。しかし安全対策の前提となる地震の揺れや津波の想定で,規制委の要求に応えられず,審査は進んでいない。
 
 浜岡原発の30キロ圏内の防災重点区域には80万を超える人が住み,東名高速,東海道新幹線も通る。災害で事故が起きれば,円滑な避難は困難で,交通網や産業の被害も甚大だろう。リスクも影響もあまりに大きく,浜岡原発は動かすべきではない。
 
 もともと原発依存率が低い中電は,経営資源を再稼働ではなく再生可能エネルギーの開発などに投入して,脱原発の経営モデルを示してほしい。

『朝日新聞』2021年5月14日「社説」


 ところで,瀬尾 健『原発事故……その時,あなたは!』風媒社,1995年,中部電力に関する原発事故として「浜岡3号炉」の事故を想定し,「首都圏,近畿圏および名古屋から避難が必要」な地域を分析・予測する解説を与えていた。

 また,瀬尾の同書は,東電関連については「福島第1・6号炉」の事故を想定し,「本州の半分以上が危険地域に」なると分析・予測していた。

 同書が公刊されてから16年後の2011年3月11日午後2時46分,理論的な想定にもとづく可能性としての警告であったものが本当に,東日本大震災にともなう大地震と大津波の発生した。

 それが「本当の現実」となって襲来したわけであったが,東電福島第1原発においては,なんと1・2・3号炉の3基もの原子炉が,同時に過酷事故を起こしたのである。

 北海道をのぞく東日本の各地においては,広狭・大小・濃淡の度合はいろいろであっても,なんらかの被害が出ていた。その後遺症的な放射性物質の拡散による被害は,いまもなお各地に残存しつづけている。


 ※-4 電力需給関係をピーク時の前提条件でしか語ろうとしないマスコミ・メディア側の意思薄弱,すぐに原発の必要をウンヌンする国家当局側のヘリクツ的なマヤカシを,真っ向から批判しない不思議

 たとえば,「夏冬の電力見通し『厳しい』」(小見出しにはさらに「相次ぐ火力廃止 供給力増対策へ」)と題した『朝日新聞』2021年5月15日朝刊7面「経済」欄の記事は,経済産業省・エネルギー資源庁の主張を鵜呑みした報道をしていた。

 梶山弘志経済産業相は〔5月〕14日,この夏と冬の電力需給の見通しが近年で最もきびしいとして,5月中に緊急対策をまとめる考えを示した。東京電力管内では,需要のピーク時における供給力の余裕度を示す予備率が,来〔2022〕年2月にマイナス0.3%となる見通し。マイナスになるのは異例で,電力会社として供給力を増やす取り組みが求められる。
 
 経産省によると,中部や関西,九州など6電力会社の来年2月の予備率は3%で,安定供給に最低限必要とされる水準にとどまる。今〔2021〕年7月の予備率も,北海道と沖縄を除く全国8電力会社で3.7%ときびしい。

 供給力不足の背景には,大手電力会社が期待するほど原発の再稼働が進んでいないことがある。電力小売りの自由化で経営に余裕のなくなった大手電力が,運転にコストがかかる古い火力発電所を,相次ぎ休廃止していることも要因だ。
 
 経産省によると,この5年で廃止された石油火力は原発10基分になる。東電管内では今年度,千葉県内の液化天然ガスの火力発電所4基が,建て替えに伴い休止する影響もあるという。
 
 太陽光など再生可能エネルギーは増えているが,天候次第で発電量が下がる。今年1月の寒波で全国的に電力需給がきびしくなったのは,太陽光の発電量低下も一因とされる。
 
 経産省は電力会社に,発電所の修繕時期をずらすなど,供給力の上積みを求める方針だ。家庭や企業へは省エネを促す。

『朝日新聞』2021年5月15日朝刊


 さて,この記事の論調は,原発さえ再稼働させれば,日本の電力需給に心配はなくなるという心証を,読者に与えるために書かれていたのかとまで感じさせる筆致であった。

 東電でも毎日,電力の使用率をこまかく公開しているが,季節や曜日や日付ごとによっていちいち異なる電力供給と需要の関係問題は,なかでもとくに問題となるそのピーク時に注目する必要があった。

 その時に電力需給関係が切迫する “わずか数時間の時間帯” を『絶対的な前提条件』であるかのように語りたがる大手電力会社側のいいぶんを,そのまま真に受けて話題にするのは,軽率のそしりをのがれえない。

 古い火力発電所の代替工場はしごく一時的な問題である。しかしながら,原発再稼働の問題は,中部電力浜岡原発のような危険の問題が抜きがたくまとわりついていた。

 再生エネによる電力供給の水準が変動するといった「天候しだい(お天気による部分多し)」という欠点を,原発じたいの「桁違いに異なる危険性の大問題」と同列に並べて,同質的に論じることじたいが,エネルギー問題に関する初歩的な理解に関して問題があった。それも意図的にもくろまれていると批判されていいものであった。

 再生エネを総合的な観点から,とくにスマートグリッド的な綜合体制をもって構成し,運営していくといった問題意識,あるいはその実際の様相などはそっちのけにしたまま,ともかく原発を再稼働すれば日本の電力事情に余裕ができるという発想は,稚拙な発想である。

 繰り返すが,電力需給関係はピーク時の問題である点を抜きにして語れない。それゆえ,この時間帯にどのように対処するか工夫のある対処が必要である点を,棚上げした記事は,ひどく片落ちの理解である。

 前段に引用した記事はその最後に「家庭や企業へは省エネを促す」とも断わっているのだから,電力需要がピークにさしかかる時間帯においては,とくに企業方面に対して強く節電を要請することは,当然の対策のひとつである。

 引用の記事のなかで一番疑問に思うのは,「経産省によると,この5年で廃止された石油火力は原発10基分になる」と書いている点である。なにゆえ,原発の「1基」という表現を,あえて「なにかを比較・計量をするための〈基準〉の単位」に当てて,経産省がモノをいっているのか,よく考えてみる(勘ぐってみる)余地があった。

 つぎに紹介するのは,「脱炭素,我が家も一歩 風力発電機や太陽光で充電 在宅で意識向上,機器も進化」『日本経済新聞』2021年5月15日夕刊1面という記事である。

 この記事も原発に言及しているけれども,再生エネとの対照関係のなかで触れており,前項の記事のように,いまどきになってもまだ「原発の再ルネッサンス的な新増設」を,それこそ虎視眈々と狙っているかのごとき経済産業省・エネルギー資源庁の立場とは,完全に逆方向の「再生エネの動向」に触れている。該当する3つ段落箇所のみ引用する。

  ★-1  脱炭素への試みが家庭でも広がっている。太陽光発電でスマートフォンを充電したり,風力発電機を自分で手づくりしたり。コロナ禍で在宅時間が増えて自宅での電力消費への意識が高まっているほか,機材の進化も後押ししている。東日本大震災を機に高まった自然エネルギーによる自家発電への関心は,世界のカーボンゼロへの取り組みを受けてさらに高まっている。
 
  ★-2 環境負荷が少なく,再生可能な自然エネルギーは2011年の東日本大震災による福島第1原子力発電所事故を機に注目が集まった。各地で太陽光や水力,風力,地熱など地理条件を活用してエネルギー生産量を伸ばすなか,蓄電池や部品の需要と供給も増え,製造コストも下がった。国内に海外の安価な機材が入り,競争の恩恵は家庭用の自家発電機にも波及している。
 
  ★-3 認定NPO法人「環境エネルギー政策研究所」所長の飯田哲也さんは「諸外国に比べ日本は電気事業のルールがきびしく,個人で本格的に自家発電に取り組みにくい。生活のインフラとして活用するには,社会の仕組みを変える必要がある」と指摘する。

『日本経済新聞』2021年5月15日夕刊

 最後に登場した飯田哲也が指摘しているのは,再エネの開発・導入・利用・拡大に向かい,実際においては水を差す役目を陰に陽にはたしている経済産業省・エネルギー資源庁は,いうなれば日本におけるエネルギー問題の前進に対して最大の妨害因子であった事実である。同省・同庁はもちろん,日本における原子力村の政治,その行政部門を担当している。

 だからというべきか,その村の一員である日本経済新聞社は,記者たちに原発に関連する記事にあっては,いつもつぎのように常用句的な表現を採ることを強いている。
 
 例をあげると,『日本経済新聞』2021年5月14日朝刊1面(の左上)に配置された記事,見出しは「アマゾン,日本で再エネ データ拠点用発電所 検討」は,なかほどでこう説明していた。 

 複数の関係者によると,アマゾンは日本の電力会社などに専用の再生エネ発電所を建設してもらい,長期契約で電力を調達できないか協議している。
 
 ある国内大手商社は,政府が2020年11月に公募を始めた秋田県沖などの洋上風力発電プロジェクトに応募する方針で,選定されればアマゾン向けに電力を供給することを検討している。
 
 同プロジェクトの最大発電能力は数十万キロワット。大型データセンターは1カ所で原子力発電所 0.1 基分の 10万キロワットの電力を消費するとされる。アマゾンは日本で7カ所にデータセンターをもち,いくつかの拠点で今回の案件を含めた再生エネルギーを活用するもようだ。太陽光発電所の建設も大手を含めた電力会社などにもちかけている。
 
 アマゾンは既設の再生エネ発電所から電力を購入するのではなく,同社向けに新設された発電所と契約することをめざしている。再生エネを使うだけでなく,電源を増やすことが脱炭素につながるとみているからだ。アマゾンと再生エネ事業者との建設運営費の負担は案件ごとに今後詰める。

『日本経済新聞』2021年5月14日朝刊

 原発が「脱炭酸ガスの排出」となるというのは,結論からさきにいえば,なんら根拠もなく意図的に創説された誤論であった。ここでは,「大型データセンターは1カ所で原子力発電所 0.1 基分の 10万キロワットの電力を消費するとされる」と書かれている点が〈ミソ〉であった。

 原発の再稼働がなかなか進まない「3・11」以降の「日本の電力事情」であったがゆえ,その再稼働をなるべく “うながせるための世論作り” に誘導されうるように,つまり読者の前意識のなかに,しかも “ひそかに,なるべくおだやかに,ごく自然に” 植えつけられるようにと,その修辞を入念に工夫した記事が書かれていた。

 引用・言及した記事そのものは,あくまで再エネ重視の中身になってはいるものの,前段で指摘してみたように,日本経済新聞の「編集上の基本方針」としては,この種の記事のなかには必らず「原発の重要性・有用性・必需性」を強調することを忘れずに添えている。日経の関係する記事は,嫌らしいと感じるほどに終始一貫,その種の一言・一句・一段を添えることを忘れていない。

 もっとも,日本のエネルギー事情においては,あらゆる意味をもって「原発の不要性」は明らかに認識されてきた。2011年「3・11」以後,電源比率において原発が1割を超えた時期がなく,それどころか,2年近く原発ゼロの時期もあった。

 原発なしでも日本のエネルギー問題はやっていける確証を与えた10年(以上)を過ごしてきた。ところが同時にまた,再エネの積極的な導入・利用を阻害するための原発政策を,政府の経済産業省エネルギー資源庁じたいが推進してきた。

 結局,日本経済新聞や政府・経済産業省・エネルギー資源庁が披瀝してきた原発に関する見解は,意図的にきわめて偏向したエネルギー観に固執していた。要は時代錯誤のエネルギー観に拘泥してきた。

 

 ※-5 原発の再稼働にどこまでもこだわる日本におけるエネルギー政策なりの「時代錯誤の徹底ぶり」


原発(原子力)は絶対にその比率を変えようとはしない


 a)『朝日新聞』2021年5月14日朝刊1面(紙面の左上に配置)に掲載されていた記事は,見出しを「再生エネ比率を倍増 エネ基本計画,30%台後半に 原子力目標,据え置き」と題しており,原発を全廃するのではなく,どこまでも維持していこうとしてきた政府・経済産業省・エネルギー資源庁の立場を伝えている。何カ所か引用する。

  ♠-1 経済産業省は2030年度の新たな電源構成の計画について,太陽光や風力といった再生可能エネルギーの割合を「30%台後半」とする方向だ。いまの目標は総発電量に占める割合を22~24%にするもので,大幅に引き上げる。2019年度の実績の約18%と比べると約2倍になる。

  ♠-2  経産省は原発を重要な電源として維持したい考えだ。2030年度の電源構成で2割程度を達成するには原発36基(建設中の3基含む)のうち,30基弱の再稼働が必要とされる。2011年の東京電力福島第1原発事故後に安全基準が厳格化されて長期停止や廃炉が相次ぎ,再稼働したのは9基にとどまる。電源構成の割合は2019年度で約6%だ。

 補注)「原発=重要な電源」という定義づけ(記事の表現)は,以前の「原発はベースロードの電源である」という立場を強くいえなくなったところから,登場した
物語っている。経済産業省・エネルギー資源庁の「第5次エネルギー基本計画(2018年7月)」は,つぎのごとき原発「観」を示していた。   

 わが国が,安定したエネルギー需給構造を確立するためには,エネルギー源ごとにサプライチェーン上の特徴を把握し,状況に応じて,各エネルギー源の強みが発揮され,弱みが補完されるよう,各エネルギー源の需給構造における位置付けを明確化し,政策的対応の方向を示すことが重要である。

 とくに,電力供給においては,安定供給,低コスト,環境適合等をバランスよく実現できる供給構造を実現すべく,各エネルギー源の電源としての特性を踏まえて活用することが重要であり,各エネルギー源は,電源として以下のように位置付けられる。

 1) 発電(運転)コストが,低廉で,安定的に発電することができ,昼夜を問わず継続的に稼働できる電源となる「ベースロード電源」として,地熱,一般水力(流れこみ式),原子力,石炭。
 
  2) 発電(運転)コストがベースロード電源のつぎに安価で,電力需要の動向に応じて,出力を機動的に調整できる電源となる「ミドル電源」として,天然ガスなど。
 
  3) 発電(運転)コストは高いが,電力需要の動向に応じて,出力を機動的に調整できる電源となる「ピーク電源」として,石油,揚水式水力など。

各エネルギー源の電源として位置付け

 こうした整理を踏まえ,日本のエネルギー需給構造が抱える課題に対応していくための「多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造」は,各エネルギー源の位置付けと政策の方向性を示すものとして説明された。

 そして,そのなかでとくに原子力の「位置づけ」は,こう定義されている。 

 燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく,数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として,優れた安定供給性と効率性を有している。

 運転コストが低廉で変動も少なく,運転時には温室効果ガスの排出もないことから,安全性の確保を大前提に,長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。

 註記)『エネルギー計画』平成30〔2018〕年7月,https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/180703.pdf,17頁,19頁参照。

原子力の「位置づけ」

 しかし,経済産業省・エネルギー資源庁の原子力に関する以上の「定義」的な説明は,すでに以前から破綻していた。

 まず,原子力は「発電(運転)コストが,低廉で,安定的に発電することができ」ていなかったと,事実をもって反論・批判しておく。前段で触れた中部電力の浜岡原発の場合,稼働が期待される3・4・5号機は「3・11」以来,未稼働の状態をつづけているが,その理由はなんであったのか?

 つぎに「数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源」だという定義は,実に奇怪な核燃料「準国産説」にもとづく,しかも「説明にならない説明」であった。

 いうところにしたがえば,「数年経過すると準国産ではなくなり輸入物資に戻る」のが核燃料だというのだから,ここでは抱腹絶倒しかねない珍説と受けとめておく。そもそも「核燃料の原料」が「準国産」という特性からして,初めから唐突に構想された奇怪な規定であった。

 さらに「優れた安定供給性と効率性を有しており,運転コストが低廉で変動も少なく,運転時には温室効果ガスの排出もないことから,安全性の確保を大前提に,長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」というのも,「ベースロード」だという主張を中心としつつ,すべてまともに妥当しない独断の説明であった。

 補注)いまどき,それも原発(原子力エネルギー)に関する理解としてだが,発電にとっては「ベースロード」の電源たりうると規定した見解は,スマートグリッド方式による電力の発電・送電・給電の体系全体を混乱させるだけでなく,その破壊までを狙ったかのような発想でしかありえない。しかし,その立場が堂々(!?)と披瀝されていた。

 ところがである,原発の熱エネルギー交換比率はあいもかわらず33%,運転時に炭酸ガスの排出がないというのも,現実には不正確きわまりない説明であった。

 すでに廃炉工程に入っている原発は「発電とは無縁の超有害なガラクタ」にはりはてているだけでなく,今後に向けてみると「廃炉会計の次元」において,ただ経費をドンドン膨らませていく〈やっかいモノ〉となっている。

 なかでも,原発の安全性に関してならば,いまも恐ろしいほどに不安がともなっていた事実は,チェルノブイリ原発事故と東電福島第1原発事故の過酷事故をもってたっぷり実証済みである。

 だからこそ,例の「安全神話」も〈虚言〉の言説イデオロギーとしてであったに過ぎなかったけれども,いまとなってわざわざ回顧するまでもなく,逆説というにはあまりにも噴飯モノ風に,つまり実は,苦しまぎれに要求されていたそれであった。

 以上の反論・批判は「原発の事実史」にもとづいてくわえてみたもの,ないしは復唱したみたものに過ぎない。

 日本国・経済産業省・エネルギー資源庁は,かつての専制独裁社会主義国家体制における技術「観」によく似た「イデオロギー的に硬直したエネルギー,それもとくに原子力に関した見解」を,披露しつづけてきた。

 すわなち,科学的な推論・合理的な判断の基準にはとうてい妥当しえない,つまり時代錯誤の技術観に,いまだにしがみついたままである「原発(原子力政策)の観点」が,まだ平然とまかり通っているのだから呆れる。

 「トイレのないマンション」状態が確定したも同然である現状の日本における原発を,いったいどのようにこれから維持していくというのか。説明にもなりえない駄論,有害なだけの贅説が陳列されるばかりで,実質がない空虚な主張が飛びかっていた。

〔ここで※-5『朝日新聞』の記事に戻る→〕 自民党内には再稼働の推進にくわえ,原発の新増設や建て替えをエネルギー基本計画に明記するよう求める声がある。政府は原子力についていまの計画では「可能なかぎり依存度を低減」としており,今回の改定でみなおされるかどうかも焦点となる。(引用終わり)

 以上の記述は,いまから3年前,2021年の5月段階における報道を材料にしていたが,最近(その後),それも2021年10月から日本国総理大臣になっていた岸田文雄が,トンデモナイ妄説を吐くことになっていた。これは,2022年8月下旬に彼が吐いた妄説である。

 いわく「原発の再稼働と新増設」である。この岸田文雄という「世襲3代目の政治屋」の,そして多分,原発の基本問題などなにひとつ理解できていないような自民党の頑迷な人物が,経済産業省エネルギー資源庁のいいぶんをオウム返しにしゃべっていただけであったが,それにしても本当に始末に悪い男である。

 岸田文雄は「世襲3代目の政治屋」としての固陋・頑迷を絵に描いたように体現してきた,いまどきの日本国の総理大臣であった。

 21世紀の中盤にかけてのこれからの時代は,すでにエネルギー源の大転換さえ予測されすでに議論されているなかで,なおも原子力という《悪魔の火》のこだわっているようでは,このままでは,時代に取り残されていくほかないエネルギー政策にしかなりえない。

 b) 以上の,本日『朝日新聞』朝刊の記事に対して,該当する『日本経済新聞』朝刊の記事は,「脱炭素電源 6割視野に 2030年度,原発比率は2割維持 実現へ国主導不可避」との見出しで報道されていた。

 補注)なお「原子力用の核燃料」は,非化石というより化石の燃料源にかぎなく近い。鉱石から金や銀,銅,錫,鉛などの金属を取り出す精製のための工程と同じに,核燃料の原料となるウラン鉱石は,採掘されてから精製の工程にまわされる。これを非化石燃料とだけ形容するのは,ムリが過ぎるし,なによりもその毒性(放射性物質の特性)が強烈である。

 この※-5で最初に引用した『朝日新聞』記事の図表は,「2011年以後,10年間における原発の稼働実績」を完全に無視したうえで,その〈ムリ:原子力の電源比率2割の維持〉の復活に固執してきた「政府・経済産業省・エネルギー資源庁側の,依怙地な原発観」を表現している。

 その記事に連続した記事がつぎのように断わっていたとはいえ,もとからして一面的な報道の内容であって,報道の中身を中立・公平におこなうという点は,あえて無視していた。

 --原発のコストも福島の事故後に拡大した。福島の廃炉や除染などの対応費用が総額20兆円を超すとの試算がある。重大事故やテロに備える安全対策費なども膨らんだ。  

 再生可能エネルギーは世界で大量導入が進みもっとも安価な電源となりつつある。原子力のコスト競争力は低下している。  

 それでも国がかかげる2030年度に「2013年度比で46%減」という温暖化ガスの削減目標は原発抜きでは実現のハードルが非常に高い。米国やフランス,英国も原発を脱炭素電源と位置づける。  

 補注)この「米国やフランス,英国も原発を脱炭素電源と位置づける」といった指摘は,無理強いの原発観であった。本ブログはその点を繰り返し,事実をもって反論,批判してきた。  

〔記事に戻る→〕 原発2割をかかげる以上,国は交付金というアメで自治体の動きを待つのではなく,先送りを続けてきた廃棄物処理の問題で矢面に立って解決をめざす姿勢が問われる。(引用終わり)

 「先送りを続けてきた廃棄物処理の問題」という点は,長年の努力にもかかわらず,最近の日本では,完全にゆきづまってしまっていた「現実の問題(難題)」である。

 原発を以前廃止していたイタリアや,もうすぐ(ここでは2022年3月までに)全廃する予定を組んでいたドイツがあった事実に関して,いっさい触れようとしなかった以上の記事は,報道に関する基本姿勢に関して疑問があった。

 補注)だいぶ昔の話になるイタリアの原発廃止の話題はさておき,ドイツがほぼ予定どおり2022年4月15日に原発を全廃した件にかかわっては,つぎの記事を参照しておきたい。  

 この記事は,最後の項目「ドイツのエネルギーをめぐる現在の状況」において,つぎのように解説していた。

 ドイツは,2030年までに石炭火力発電からの脱却と再エネ電力を80%以上とすること,そして2035年までには電力供給を再エネ100%とすることを目標としてかかげている。

 ただし,リンゲンでの仏フラマトム子会社による核燃料製造やフランスやベルギーなど隣国の原発,そして放射性廃棄物の最終処分場選定など,原子力との対峙は今後も続いている。

 2022年,隣国のフランスが大きなエネルギー危機に直面した。複数の原発が危険な腐食損傷や,安全点検,猛暑による冷却水不足などの理由で立てつづけに停止し,数ヶ月にわたり約半数の原子炉が停止した。欧州の電力市場の価格も押し上げた状況のなか,ドイツからの電力購入がフランスの電力供給を支えた。

 ドイツの総発電量における再エネの割合は,2022年に47%であったが,2023年にはついに50%を超え,54.9%へと大きく伸びている。割合としては洋上風力が大きく,太陽光も着々と増えている。原子力から脱却したいま,地域に根ざした再エネをさらに増やし,化石燃料からの脱却を実現していけるのか,今後も注目される。

ドイツの脱原発

 日本の原発に執着しつづけるエネルギー政策の基本とは真逆の方途が,ドイツではすでに実現・実施されていた。

 いずれにせよ,『朝日新聞』2021年5月14日夕刊1面「素粒子」の寸評,「再エネ倍増の方針に期待する。廃棄物処分の見通なき原発維持は解せないけど」という疑問に,『日本経済新聞』の記事は,その論点に部分的に言及してはいるものの,その核心に控えている肝心の難題に対してはなにも応えていなかった。というよりは,とどのつまりなにも答えられないでいながらも,はぐらかした論調が目立っていた。 

 「〈ひもとく〉追悼・小沢信男さん 大震災・大空襲の記憶,手放さず 津野海太郎」『朝日新聞』2021年5月15日朝刊15面「読書」のなかには,

 「進歩する人類は,いよいよ剣呑(けんのん)になるばかり」

 「いまや天災といえども,地震 雷 台風 洪水 原発,かぎりなく人災へちかづいている」じゃないの。

という段落があった。

 原発の位置づけが《悪魔の火》なのでなければ,このような修辞にはなるまい。原発の事故の本質が「人災ではなく天災あつかいされる」のは,その有害・猛毒な放射性物質の特性に由来しているわけで,「原発という人災」が本来,天災であるわけがない。

 だが,当初は人災であった原発災害が,いまでは天災にまで格上げされてしまった,いいかえれば,そうなるようにまで “デッチ上げてしまった” のは,ほかならぬ人間の策であった。人災がまさしく天災を創造してしまったのである。

 その人災=天災の害悪は,いまではもう,とりかえしがつかないほどに,この地球上にばらまかれつつある。

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