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2010年代にこの日本国を衰弱・凋落かつ腐敗・堕落させた「悪い奴」はアベノポリティックスの総責任者安倍晋三とアベノミクスの采配者黒田東彦

 ※-1「世界3位〔GDP〕の経済大国から4位に陥落 日本の3分の2しか人口がないドイツが逆転 国民1人あたりなら1.5倍差」『情報速報ドットコム』2023年11月15日,https://johosokuhou.com/2023/11/15/70691/ の解説などから

 2010年代,この日本国をすっかり衰弱・凋落させ,かつ腐敗・堕落させもしてきた「悪い奴」がいた。その代表格が,アベノポリティックス(専制の強権政治)の総責任者だった安倍晋三,そして,アベノミクス(アホノミクス)の現場采配者黒田東彦 。

 この『情報速報ドットコム』に掲載された記事,2023年中に日本は,GDPで「世界3位の経済大国から4位に陥落 日本の3分の2しか人口がないドイツが逆転 国民1人あたりなら1.5倍差」になったという報道は,

 2020年代のいまとなっては,その衰弱・滅裂ぶりに注目して「衰退途上国」だとまで,自虐的に表現されているこの日本であり,その「経済の惨状」は「政治の貧国」とは裏腹の関係にあった。

 以前からもののみごとに体現されざるをえなかった,とくに安倍晋三の第2次政権以降はわざわざ,この日本国を完全に二流国(以下)の実力(体質)に引き下げるためであったかのような,政治の指導と経済の運営をつづけてきた。

 それでも2023年になると,日本経済に対してインバウンド発揚の景気をもたらす訪日外国人観光客が,この「10月の訪日客 251万人,初のコロナ前超え 観光も正常化」した,と歓迎する報道がなされていた 註記)。 

 註記)「10月の訪日客251万人,初のコロナ前超え 観光も正常化」『日本経済新聞』2023年11月15日 16:15,更新 11月15日 18:56,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA152AP0V11C23A1000000/ この記事に使われていた図表も紹介しておく。

訪日する外国人観光客統計
 

 補注)しかし,いまや貧国日本にとって観光収入は貴重な実質の国内収益源になっている。とはいえ,この事実がいまの日本経済にあっては,国際競争に耐えうるさしたる産業経営が,いよいよ影を薄めてきた実態を教示する。

 以下の記述では,しばらく『情報速報ドットコム』の記述引用には間が空くが,前段の話題をもう少し説明したい。

 『日本経済新聞』2023年11月16日朝刊1面はつぎのように報じていたが,同じこの朝刊の5面をめくると,つづけて画像資料で参照すると,こうなっていた。

『日本経済新聞』2023年11月16日朝刊1面
『日本経済新聞』2023年11月16日朝刊5面

 同じ『日本経済新聞』の11月7日夕刊には「実質賃金9月2.4%減 18ヵ月連続マイナス 基本給は1.5%増」という報道がなされていた。だが「消費支出も2.8%減」というのだから,「日本経済の一部は好調に映る」局面かもしれないが,「国民・市民・庶民」たちの生活経済が改善されるきざしは,いまもまだ期待にある。

『日本経済新聞』2023年11月7日夕刊

  以上の新聞報道が記している活字には,「増」だと書かれていても,その分を蹴飛ばすかのように「減」のほうの現象が止らないできた。片や海外進出割合の高い大企業中心の業績に対して,片や国民・市民・庶民のふところ具体をいきなり比較するかのごとき記事からは,日本経済の昂揚につなげられる材料は皆無であった。下手をすると誤解・誤導の種をばらまくような記事にしかならない。

 ここで『情報速報ドットコム』の記述に戻って,さらに引照する。

 国際通貨基金(IMF)は今年の時点で日本の名目国内総生産(GDP)がドイツに抜かれ,世界4位に転落したと発表しました。

 この日本のGDP転落は驚きをもって受けとめられ,日本の名目GDPはドルベースで前年比 0.2%減の4兆2308億円となり,ドイツの 8.4%増の4兆4298億円と逆転することが確定。

 しかも,人口はドイツが日本の3分の2しかないわけで,1人あたりの数字ならさらに日本とドイツの差は拡大します。日本転落の原因は円安や賃金低迷,低物価などにくわえて,政府の増税政策も日本経済の成長率を大きく落とした要因となりました。

 長期的な日本経済の低迷を引き起こしたのは政府の経済政策の失敗であるともいえ,いまの日本政府が根本的な政策見直しを実施しなければ,この経済低迷はまだ継続する可能性が高いです。

 このような日本の作り上げたのは,長期政権を維持していた政府・自民党であり,日本経済を大きく改善するためには,彼らを変えることもセットになるといえるでしょう。(引用終わり)

 ネット上にはたとえば「日本のGDPが世界4位に転落へ… さらに落ちぶれる前に『主婦年金』『配偶者控除』を廃止すべき理由」『DIAMOND online』2023.11.3 6:00,https://diamond.jp/articles/-/331728 という記事があって再度,

 「日本がドイツに抜かれGDP4位へ転落」した「事態は想像以上に深刻」だといい,つまり,「もはや世界3位の経済大国ではなくなるということですが,問題はそれ以上に深刻です。なにしろドイツは日本の3分の2しか人口がない国です。国民当たりの豊かさでいえばドイツと 1.5倍の経済格差がついたというのが,このニュースの本質です」と強調していた。

 いまどきのこの国のなかで,国民・市民・庶民の平均的な生活者の立場にいわせるとしたら,以上の「もはや世界3位の経済大国ではなくな」ったという事実でさえ,自分の生活じたいとはかかわりが疎遠な話題であるか,あるいは,それが多少関係がありえたにしても,いまさらどうしようにもなくなっていた。

 

 ※-2「悪夢どころか悪魔を呼び寄せた」「アベノミクスと,このためのアベノポリティックスのその後」

 安倍晋三の第2次政権はそれ以前の民主党政権(2009年8月30日~2012年12月26日)を「悪夢のような」と形容詞し,なおかつそういいながら罵ってきた。

 だが,その民主党政権が存在したころの「円ドル相場」は,2011年8月20日になると「円ドル為替レートは,戦後最高値の1ドル=75円95銭」を記録していた。

 もっとも,そのように過度の円高が継続すると,輸出産業の収益力が弱体化するうえ,生産拠点の海外移転による国内雇用情勢の悪化等を通じて,日本経済に悪影響を与えるとの懸念が各方面から指摘されている」などと解説されていた。

 けれどもまた,円安と真逆であった当時の経済情勢は,むしろ現状のごとき1ドル=150円まで後退した状況と比較してみると,その「生産拠点の海外移転」においてならば,じっくり謳歌できている「海外進出率の高い日本企業」だけは,それこそウファ・ウファの業績を獲得できているかもしれない。

【参考記事】


 さてそれでは,その円高の時期と円安の時期の,いったいどちらかよしマシだったかいえば,「庶民の立場」からは前者にあった。

 つまり,いまの自民党政権はあの「悪夢のような(民主党政権)」の時代よりもさらに,もっとひどい,まるで「悪魔にとりつかれたかのような執権党」の時代を造っていったから,とくに安倍晋三が第2次政権を発足させてからというもの,庶民の生活水準は先進国とはいえない水準にまで低迷させられてきた。

 だから,よろず講義屋の先生である池上 彰がこう指摘していた。

 さて,これは論理的なやりとりになっているのでしょうか。

 「悪夢のような」と「少なくともバラ色ではなかった」はイコールではありません。「バラ色ではなかった」ということは,「とても素晴らしいとはいえない」という意味でしかなく,「悪夢のような」という強い否定にはなっていないからです。

 逆にいえば,「いまの自民党政権はバラ色です」といっているに等しいのです。これは,なかなか傲慢ですね。ご自分の答弁が,論理的にはどんなことを意味するのか,論理の勉強をされた方がいいのではないか。

 補注)いまはもう故人の安倍晋三君であるから,死人に耳なしか……。もともと他者の意見を聞ける耳などもたなかった御仁であったが。

〔記事に戻る→〕 ただ,民主党政権が安倍首相をはじめとする自民党にとって「悪夢」であったことは事実でしょうね。政権を失って失意のどん底にいたのですから。

 註記)「池上 彰氏『悪夢のような民主党政権』発言からにじみ出た『バラ色の自民党』意識」【悪夢のような民主党政権】-池上彰「WEB 悪魔の辞典」『文春オンライン』2019/02/26,https://bunshun.jp/articles/-/10861

池上 彰が安倍晋三をおちょくった指摘

 『産経新聞』2023年11月11日の報道で,「世界3位の経済大国から陥落,『安い日本』定着の深刻さ」https://www.sankei.com/article/20231111-ZQHD5E6GUJNLZGL73DQBN5KPOQ/ という見出しをつけた記事は,

 訪日する外国人観光客が大喜びするほどに日本の物価水準は低い。ものの値段が安い日本社会経済内で外国人が観光回遊を堪能できている反面で,一般の生活者にとってみれば,2022年以降,日々の消費生活品が「ロシア政府」によるウクライナ侵略戦争の悪影響もあって急速に上昇しだしており,生活の台所事情は悪化一途になっていた。

 2023年における日本のドル換算での名目国内総生産(GDP)が前年を下回って,4位に転落する見通しとなった。もはや日本が世界第3位の経済大国ではなくなったという衝撃が生まれたのである。

 要は,そのGDPが人口が日本の3分の2であるドイツに抜かれた事実じたいが,「円安,低物価,低賃金」といった「安い日本」が定着してしまい,長期的な経済の低迷までも招いた深刻さを映しだしていた。

 ところで以上に参照してみた『情報速報ドットコム』の記事には,「一言物申したいカバさん」なる人物が,つぎのように関連する指摘:批判を駆使出していた。住所は, https://twitter.com/Cannot_Kaba/status/1722036899681095760?ref_src=twsrc^tfw|twcamp^tweetembed|twterm^1722036899681095760|twgr^5a56bc1e4f0764c002f9c903b5486fb14badf856|twcon^s1_&ref_url=https%3A%2F%2Fjohosokuhou.com%2F2023%2F11%2F15%2F70691%2F

その円安の時期に日本経済はすでに実力を付けはじめた

 この @Cannot_Kaba 氏 いわく,

 「『日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位に落ちたのは円安のせい!』とかほざいてる馬鹿の群ればかり」については,「いちいち言うも愚かしいのだが,日本経済がドイツを追い抜いて『世界第2位』となったのは『1957年』」であって,

 「当時は『1ドル360円』のいま以上の円安時代だろ」と説明したうえで,事情に不可通だった者たちの認識水準のことを,だからオマエたちこど「底なしの馬鹿野郎が」と罵倒・指弾していた。

 カバさんがの投稿中に添えていた統計図表をみると,その後「円ドル相場360円」だった時期が,さらに10年以上つづき,変動制の相場に移るやいなや「ドルに対する円の相場」は,一気に高まっていった。

当時に関連する事情を説明しておきたい。

 1973(昭和48)年2月14日,それまで固定相場制だった為替レートが,変動相場制に移行した。第2次世界大戦後,日本の円相場は,GHQ(連合国軍総司令部)が打ち出した物価安定・緊縮財政政策「ドッジ・ライン」によって,1ドル=360円に固定されていた。

 しかし戦後,日本が急激に国力を回復し,輸出によって多大な利益をえるようになった。一方で米国は,ベトナム戦争や貿易戦争で国力を失い,国際収支が赤字化し,米ドルの信頼も低下したため,米ドルを金に交換する動きが強まった。

 1971年8月,要求に応じられなくなった米国は,ドルの金への交換を一方的に停止し,いわゆる「ニクソン・ショック」を起こした。同年12月,「スミソニアン協定」によって,ドルは1ドル=308円に切り下げたが,1973年2月,再度のドル切り下げで固定相場制は崩壊し,変動相場制へ移行した。

 変動相場制へ移行後,ドル安(円高)が急速に進んだため,日本はそれまでのように,輸出で大きな利益をえることができなくなるという痛みを味わった。しかし,日本の輸出企業は,為替の影響を受けにくい海外へ生産拠点を移し,効率的な生産体制を築くようになった。

 変動相場制への移行は,現在のように,日本企業が真のグローバル企業として発展するための構造転換を果たす大きな引き金となった事実は銘記すべき出来事である。

 註記)「固定相場制が変動相場制に移行【1973(昭和48)年2月14日】『トウシル』2023/2/14,https://media.rakuten-sec.net/articles/-/40497

この引用は文体を変えた

 しかも,当時はまた,日本における人口は,ドイツの(東西を併せた)人口よりもより多い時代の話題であった。その後,経済大国になりアメリカにつぐ第2位のGDPを誇れる日本になっていたものの,その経済力を21世紀の礎石として活かす体力作りにつなげられないまま,いわゆる「失われた10年」の3周回までを漫然と経過させてきた。それだけでなく現在は,その4周回目を走り出した様相まで呈している。

補注)1957年,ドイツ(東西ドイツ合計)の人口は7116万人,2022年が8427万人ということで,両年の時点ともに,ドイツの日本に対する人口比は「2対3」。

 それでも岸田文雄君,すでにこの11月段階に至ってはすでにダッチロール状態になった「政権の主」として,いまだ自分のためしか考えない無責任の「脳天気な行動」,つまり「どうやったら自分ができるだけ長く首相の座にしがみついていられるか」といったごとき,「世襲3代目の政治屋」風の悪しきこだわりしか発露できていない。

「世襲3代目の政治屋」の程度の悪さは安倍晋三政権以降
ますます明快な事実

  

 ※-3 安倍晋三と黒田東彦というこの2人の「悪夢というよりは悪魔的なゾンビコンビ」が日本の政治経済を奈落の底に誘導した

 『日刊ゲンダイ』が「お気楽な黒田前総裁の日経連載 異次元緩和修正ならばこれだけの出血と覚悟が必要だ」2023/11/16 17:00,/11/16 17:04,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/332117 という記事を掲載していた。

 この記事がいうには,「 異次元緩和が招いた副作用で,止まらない円安と物価高に庶民が喘いでいる。そんななかで今〔11〕月1日から始まった黒田東彦・前日銀総裁の日経新聞の連載。後任の植田和男総裁が “負の遺産” の扱いに手間取るのを尻目に,退任からわずか7カ月で〔日経の連載記事『私の履歴書』〕に厚顔無恥にも登場したことに,驚きとともに注目が集まっている……」と黒田東彦の破廉恥ぶりを批判した。

 ところがその後始末がなされないまま,こんどはまたろくでもない「世襲3代目の政治屋」の仲間である岸田文雄が首相である。すでに2年以上総理大臣を務めてきたこの文雄に対しては,つぎのごときラップ調の歌が献上されていた。

 ◆ 日本語版 ◆ 
   https://www.youtube.com/watch?v=Y4azZe9jP4g

    https://www.youtube.com/shorts/hgMYrfGmAIA

◆ 英語版 ◆ 
   https://www.youtube.com/watch?v=olGcZ9AePJ0

◆ 類似版 ◆
   https://www.youtube.com/watch?v=mZVsD8m3Z58

岸田総理に◯される歌

 本ブログ筆者も11月入って数日が経過した時点で,この黒田東彦が日経「私の履歴書」に登場した姿をみせられて,その脳天気というにはあまりにも土砂降り的な無神経さに言及したことがある。

 それはいったんおき,ここではつぎに,大前研一の書いたある記事を紹介してみたい。これは面白い意見であった。なにがというと,本ブログ筆者なりの解釈だが,こういうことではなかったか。

 いまの日本全国各地の観光業者とこれにつらなる各商売は,訪日する外国人観光客のふところをあてにしながらそれぞれの仕事に従事する生活をなりたたせている。大前研一の意見は,それにくわえて,日本人自身がインバウンド需要側の創出者に直接なるように誘導したらよい,と語っていたのである。

 以下に,その論述を紹介する大前研一の意見は,今年(2023年)5月に書かれていた。

 ただし,その方向を実現するためにはなにかの確実なきっかけが必要であるはずだが,この肝心な点をめぐる議論は明確には語られない意見の開陳であった。ともかく,大前が論旨として主張しようとする要点:着想はとても面白い。

 だがまだ問題があった。その方向性に乗れる日本人は一部の(部分的)な富裕層と,それなりに余裕のある年金生活者層(貯蓄をかなり有している人たち)にしか求められないのではないか。

 このあたりに関してもっと緻密な議論を伴ったうえで,その需要喚起のための具体的な提議が必要ではないか。この種の注文を感じとれたのが,大前研一が提起した議論であった。

 

 ※-4 大前研一「『10年かけて日本を貧乏にした黒田日銀の金融緩和を検証する』岸田政権の “貯蓄から投資” はなぜ完全に間違っているのか」『PRESIDENT Online』2023年5月5日号,https://president.jp/articles/-/68525

 ▼-1 異次元緩和との決別が新総裁の試金石になる

 日本銀行総裁が10年ぶりに交代した。黒田東彦前総裁の任期は2023年4月8日まで。政府は〔2023〕2月,衆参両院の議院運営委員会理事会に植田和男氏の次期総裁起用案を提示。3月に承認され,4月9日から植田氏が新総裁として日銀の舵を取っている。

 これまで日銀総裁は,日銀出身者と財務省出身者が交互に務めるケースが多かった。植田新総裁は,マクロ経済学や金融論を東大で教えていた経済学者。戦後初の学者出身の総裁だ。

 注目は,安倍晋三元首相と黒田前総裁(アベクロ)が推し進めた量的・質的金融緩和,いわゆる異次元緩和を植田新総裁が引き継ぐかどうかだ。植田新総裁は2月の議院運営委員会で,「情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切」と見解を示す一方で,異次元緩和について「さまざまな副作用を生じさせている面は否定できない」とも述べた。ここで副作用に焦点を当てて大胆に政策転換できるかどうかが彼の試金石だ。

 アベクロの金融政策は,明らかに失敗だった。黒田前総裁は,2%上昇の物価安定目標を掲げて異次元緩和をした。しかし,物価が上がらない状況が10年続いた。直近こそ世界的なインフレで日本も消費者物価は上がっている。

 ただ,他の先進国とは実態が違う。たとえばオーストラリアは30年で家の価格が3倍になった。物価上昇で国民が苦しむかと思いきや,週末のレストランやショッピングモールはどこも盛況だ。物価と一緒に賃金が上昇しているからである。それに対して日本は物価に賃金が追いつかない。このままでは暮らしがきびしくなる一方だ。

 ▼-2 なぜ異次元緩和で経済が良くならないのか

 なぜ異次元緩和で経済が良くならないのか。異次元緩和とは,金利を下げ,市場に大量のお金を供給してデフレ脱却を図る政策であり,理論は20世紀の古いケインズ経済学にもとづいている。しかし,ケインズ経済学は閉鎖した空間における金利とマネタリーベースに関する理論であり,現在のような国境のない経済活動が当たりまえの「ボーダレス経済」のもとではなりたたない。

 たとえば日本が金利を低くしたら,機関投資家やヘッジファンドは「これほど低金利で円が借りられるなら」と,円を借りて外貨に替えて運用する円キャリーが起きた。一方,アメリカはインフレ抑制のために金利を上げているが,あれはケインズ経済学を逆に使ったイカサマで,経済の弱い国からお金を吸引しているから景気はいいままだ。

 輪転機を回しつづけて刷ったお金は,もちろん国内にも流れている。アベノミクス2本目の矢は「機動的な財政出動」だったが,その原資は元をたどると「ヘリコプターマネー」だ。

 ヘリコプターマネーは日本中にばらまかれて無駄な道路や建物に変わった。業者は儲かったが,経済波及効果はそこまで。私は日本中をバイクでツーリングしているが,道路と道の駅など公共のものは立派である。しかし,脇に立つ家屋は建て替えが進んでおらず,いまにも朽ち果てそうだ。ヘリコプターマネーが全国民の懐を潤すところまでゆき渡っていないのだ。

 効果がないのにこのまま輪転機を回しつづけるとどうなるのか。日銀は異次元緩和で国債を買い入れつづけている。リフレ派は「満期がくれば繰り延べればいい」と主張しているが,そうしているうちに日本の政府債務(地方政府,社会保障基金含む)は対GDP比262%に達して,短期を除いた国債残高の半分以上を日銀が保有する事態になった。

 一方,少子高齢化で日本の労働人口は減少中だ。小学校で習う加減乗除を使えば,減っていく人たちに増える借金を返せないことはわかる。このままでは破綻するか,大増税するしかない。

 植田新総裁は東大を出た後,MITに進学して,イスエラル中央銀行総裁を務めた経済学者スタンレー・フィッシャーのもとで学んだ。フィッシャー門下生には,マリオ・ドラギ欧州中央銀行前総裁や,財務長官だったローレンス・サマーズ,ベン・バーナンキFRB元議長らがいる。

 世界の頭脳を多数輩出するクラスで学んだ人物ならば,小学生でも計算できることを理解できないはずがない。植田新総裁が本物の学者なら,黒田路線と決別するはずである。

 ▼-3「貯蓄から投資」ではなく「貯蓄から消費」が必要だ

 日本経済を良くするには,どのような金融政策を取ればいいのか。鍵を握るのは個人金融資産だ。1980年代後半に700兆円だった個人金融資産は,2021年末に2000兆円を突破。そのうち半分以上は現預金として眠っている。

 これは不思議な現象だ。日本は低金利で,定期預金にしても金利は0.01%。仮に1000万円の預金があっても利子は年にラーメン1杯分だけ。そんなところで資産を運用するのは世界的にみて日本人だけだ。

 日本人が貯蓄好きなのは終戦後の教育の影響が大きい。小学生時代,私はこう教えられた。

 「資源のない日本は,勤労が一番。海外から原料と資材を輸入して,一生懸命働いて付加価値をつけ,輸出して稼ぎましょう。稼ぎの半分はつぎの材料を買うために使い,残りは食べるための食料を輸入します。余った金はすべて貯金してください」

 このときの価値観がいまも日本人を支配しているのだ。当時をしらない若い世代にアンケートを取っても,「老後が不安」が必らず上位にくる。日本は安全で暮らしやすく,医療保険は世界一で充実している。

 しかし,それでも心配で貯蓄に走ってしまう。結果,日本人は死ぬときに平均3000万円も現預金を残していく。イタリア人が「自分が死ぬときにお金が残ったら人生失敗」と考えるのとは対照的だ。

 さて,政府は「貯蓄から投資へ」という方針を打ち出して金融市場を活性化させようとしている。しかし,NISAを拡充したところで日本人の貯蓄大好きメンタリティは変わらない。必要なのは「貯蓄から消費へ」。眠っている現預金を消費に充ててもらい,経済を直接回すのである。

 では,どうすれば現預金を消費に回してもらえるのだろうか。実は無理して定期預金を解約させる必要はない。金利を上げて,その利子を消費に回してもらえばいいからだ。

 高度成長期から1980年頃までの金利は5~7%。当時と同じ水準で金利を5%に引き上げると,個人の現預金1000兆円の利子は年50兆円になる。

 現在,利子には約20%の税金がかかるが,金利を引き上げれば受け取る利子の額が大幅に増えるので,そこから金利課税として半分を徴収しても文句は出ない。それで税収は25兆円増える。

 一方,いまの日本の税収は50兆円前後。例外なく消費税10%という付加価値税をやればGDP500兆円の10%で50兆円になり,金利税と消費税を合わせて75兆円。現在の税収を大きく上回っており,これで歳入は問題がない。

 利子を半分徴収しても,国民の手元にはもともとの現預金と25兆円が残る。元金はそのままで,歳入に余裕があるから社会保障は削られない。これなら心配性の日本人も25兆円を消費に回せるはずだ。

 これが政府と日銀が取るべき財政金融政策である。〔ところが〕これと正反対の「アベクロ政策」が日本を奈落の底に突きやった,と私は考える。
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 ▼-4 日本ほどいい国はない! 死ぬまでエンジョイしよう

 金利を上げて眠っている現預金をキャッシュに化けさせれば,あとはそれをどう使うかだ。日本はいたるところにおいしいものと温泉があり,景色もすばらしい。それを求めて世界中から観光客がやってくる。それなのに家でテレビばかりみている場合ではない。

 実際,アクティブな高齢者にはJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」が人気だ。3泊4日の霧島コースで1人125万円(「スイート」に2名で宿泊)。けっして安くはないが,コロナ前は倍率100倍で,10人に1人は次の予約をして帰るという。

 自分で旅程を組めるなら,博多でハイヤーを雇って九州を周遊すればいい。3泊4日なら宿泊含めて2人で50万円ほど。夫婦で「ななつ星」に1回乗るお金で九州を5回は楽しめる。

 現役世代なら別荘をもつのもいい。アメリカやカナダ,オーストラリアでは,40歳前後で別荘を買う人が多い。購入資金は借金だが,別荘の管理をマネジメントカンパニーに任せると,自分が使わないときは貸し出してくれる。これを20年続けると貸し出しの収益でローンを完済できる。

 そして60歳で自宅を売却して,そのお金を運用しながら別荘で暮らすのだ。「アメリカ人は借金が多い」とバカにする人もいるが,別荘を買う借金は事実上貯蓄と同じで,家計を圧迫することはない。

 日本も40年前に別荘ブームがあった。しかし,マネジメントカンパニーがないため収益化ができず,いつしか廃れてしまった。もったいない話だ。

 もし私が一日署長ならぬ「一日首相」になったら,金利引き上げと税制改革をおこない,アクティビティーを紹介したうえで,「日本にはいいところがたくさんある。あとは天国しかいくところがないというくらいに,死ぬまでこの国をエンジョイしてください」と消費を奨励する。それが日本経済を救う唯一の道だからだ。(引用終わり)

 さて,この大前研一の建策であるが,どこまでどのくらいに経済効果が実際的に挙げうるのか,できれば経済計算のほども具体的に示してもらえるとよかった。日本の人口統計は少子高齢になっているが,提案した日本経済の高揚策に対して「貢献しうる」人びとは,いったいいつごろまで,どのくらいの規模でもって持続可能か,といった諸点も気になる。

 大前研一の提案はインバウンドに対して形容するとしたら,「in・インバウンド」ともいえそうだが,従来の「out・インバウンド」に対するその経済規模はいかほどにまで期待しうるか? 

 以上,大前研一の意見のうちから「死ぬまでエンジョイ」の項目だけ評言してみた。岸田文雄政権はブレーン集団を伴わない。例の,話題ならば豊富であった木原誠二だけが,文雄の知恵袋になっていたらしい。

 だが,一国の最高指導者がブレーンを1人しか置けず,集団体制としてのそれを擁していない,あるいは制度としてそのブレーン集団を確立させて活用できていなかった岸田文雄政権は,現状がはっきり披露してもいるように形成不全というよりは,はじめから起動不全で政権あったとみなすほかなかった。

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