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安倍晋三の第2次政権以降,今井尚哉首相秘書官・補佐官が安倍晋三を操っていたかのような「この国の為政」は,その後に「現状のごとき惨状・体たらく」を残した(後編)

 ※-1 彷徨わされてきた原発事故被災者たち-「教えず・助けず・放置する」自民党政府のでたらめと東電の傲慢症候群-


 【断わり】 「本稿(前編)」は,つぎの住所(アドレス)である。できればこちらをさきに読んでほしいところである。
 ⇒ https://note.com/brainy_turntable/n/nfb5c9e0a9e43

「本稿(前編)」へのリンク指示


 東電福島第1原発事故の被災地,この「2020年3月11日」時点でみた実情は,間違いなく「3・11」から切れ目なく連続してきた。今日〔2020年3月12日〕の『日本経済新聞』朝刊の記事のほうでも,35面「東京・首都圏経済」は,見出し「震災9年,先見えぬ避難生活」と付けて,つぎのように報じていた。

 「もう住民票を移した方がいいのかな」。横浜市在住の矢内千恵子さん(49歳)は最近,悩んでいる。東京電力福島第1原子力発電所事故のあと,福島県富岡町から姉が住む横浜に着のみ着のままで避難してきた。最初は「2,3カ月で自宅に戻れると思っていた」。が,予期せぬ仮住まいは間もなく9年になる。

 横浜と福島の間で心が振り子のように揺れる。都会の暮らしは厳しい。3月末で借り上げ住宅の家賃補助が終わり,月9万円の負担増がのしかかる。しかし福島に戻っても仕事があるのか。住民もまばらな町で生活が維持できるのか。医療体制も心配だ。

 ゆく末を深く考えるようになったのは大学生になった息子のこんな言葉だった。「将来結婚する時に(住民票の住所が)福島だと困るかもしれない」。いわれなき偏見に胸を痛めつつ,子供のためにはふるさとへの思いを断ち切らなければならないのかもしれないとの思いが強まる。  

 矢内さんだけではない。同じ富岡町から横浜市に避難する今里雅之さん(73歳)も「富岡を忘れたことはないが,戻っても1人では仕方ない。お墓や自宅のことも考えるが,答えは出ない」という。

 復興庁によると,東日本大震災の被災地から首都圏への避難者は,東京都の 4290人を筆頭に埼玉県 3196人,千葉県 2454人,神奈川県 2039人(いずれも2月10日時点)。集計から漏れている人もおり,「実際は 1.5倍いる」との指摘もある。

 首都圏にいると実感しにくいが,被災地はいまも復興のさなかにある。それ以上に,被災地の外で「帰りたくても帰れない」と苦悩する人びとが忘れられかけている。神奈川県内の避難者の支援にあたってきたNPO法人「かながわ避難者と共にあゆむ会」代表の山内 淳さんは「『まだ活動しているんですか』といわれることもある」と明かす。

 会は月1回のお茶会や趣味の会を通し,主に精神面のケアにあたってきた。その役割はさらに重みを増す。「五輪を機に徐々に支援がなくなり,苦しい状況の人がますます苦しくなるのではないか」と山内さん。高齢者を中心に引きこもりや孤独死の増加も懸念されるという。

 ある日突然,災害で故郷を失うリスクは日本人誰もがもつ。自分ならどうするか。その立場に置かれた人をどう支えるか。3月11日はそんなことを考える日でもある。(横浜支局長 石川淳一)(引用終わり)

 

 ※-2 2023年11月3日における「補足の議論」

 前段の記事が報道された時点でいうと,そのときは,2011年「3・11」が発生してから「十年一昔」となるまでは,まだ1年先であった。しかし,現在:今日は2023年11月3日であり,その10年はすでに過ぎていて,12年と7ヶ月の時間が経った。このごろは,政府も東電もなるべく,原発の事故を「過去の出来事」化しておきたい,かなり嫌らしい心づもりである点は,すでに露骨に表現されてきた。

 ここでは,廃炉工程管理の問題をめぐっては,政府と東電に対してまっこうから異論を提起し,ほかの工法を使用して廃炉問題を今世紀「以降」における難題対処として始末していく方途が起案されているので,この問題提起について,言及しておきたい。

 まず,前もって示しておくのが,『日本経済新聞』2023年11月2日朝刊2面に掲載の解説記事,「〈真相・深層〉福島原発,デブリ除去3度目延期か 廃炉に新たな壁 堆積物が塞ぐ炉内への道」である。ここでは,いちおう読んでこのとおりの中身ではあるが,そのなかからとくに色つきの枠で囲んだ段落付近が詮議の対象となる。

『日本経済新聞』2023年11月2日朝刊2面
 

 a) いずれにしても2023年度中の作業開始は間に合わない可能性が高い。専門家らは原発の建屋内にある推計880トンのデブリの除去を「廃炉に向けた作業の本丸」とみる。

 原子炉から溶けた核燃料が周囲の金属やコンクリートと一体化したものがデブリで,その放射線量はきわめて高い。作業員は近づけず遠隔操作が必要だ。雨水がデブリに触れ,処理水の発生源となる。デブリを取り出せなければ処理水は流れ続けることになり,廃炉のプロセスも永遠に完了しない。

 国は30年後の廃炉完了の目標をかかげるものの,これは一般の原発の廃炉作業にかかる30~40年を単純に当てはめただけだ。福島原発の廃炉の難しさは当然,一般のそれとは異なる。

 補注)この公式見解,「一般の原発の廃炉作業にかかる30~40年」という理解は,もともと現実的には妥当性を欠いていたものである。現時点まですでに実際にかかっている「廃炉工程の年数」は,絶対にけっして,その程度に短期間で完了させうるものではない事実を教えてきたはずである。

 専門家も指摘している条件であるが,半世紀,1世紀以上もの長期間をかけた大事業になるほかない事実は,まさに事実として示され,強調されていた。

〔記事に戻る→〕 1回で取り出せるのは「耳かき1杯」分にあたる数グラム程度。地道な作業となる。「デブリの取り出しは早くて50年,長くて100年をみこむべきだ」。日本原子力学会の福島第1原子力発電所廃炉検討委員会の宮野広委員長はこう指摘する。

 補注)よく考えみなくとも,この指摘も奇妙でありすぎた。「耳かき1杯」分にあたる数グラム程度」の「地道な作業」でデブリを取り出し,溶融した原子炉の底面からその全体を除去・始末していくといった「事故った原発」の後始末作業は,実際の工程としてだが,そのために必要な期間がいかほどになるかは,いまのところ具体的にはさっぱり分かりえない。

 そもそも,この記事がいったように「デブリの取り出しは早くて50年,長くて100年をみこむべきだ」といった期間で済むのかどうかさえ,どだい確証はない。もとより未知の難題であった。もっと長くなる可能性が大きいとだけは,いえそうである。

 b)〔記事に戻る→〕 村瀬佳史資源エネルギー庁長官は会合で「大規模な追加賠償などにより,交付国債の発行限度額に近づきつつある」との懸念を示した。

 廃炉じいたは安全かつ着実に進めなければならず想定外の事態もやむをえない。だからこそ原子炉内部でなにが生じているか,なぜ廃炉費用が膨らむのかについてより丁寧に説明しないかぎり,負担を背負う将来世代への責任は果たせない。

 補注)この指摘も謎だらけである。「想定外の事態」とはなんであり,どういうものとして現象してくるものなのか,この想定じたいの内容からして,ほとんどといっていいくらい,初めから全面的に “なぞなぞだらけの部類” であった。

 いったいぜんたい,現時点において「その想定じたいすら〈想定不可能〉であるゆえ〈予測不可能かきわめて困難〉である」として形容のしようがなかったのが,デブリの取り出しをめぐる超難関事業をかこむ付帯状況であった。

たとえば,『毎日新聞』2021年3月10日 12:00 の報道であったが,「福島第1原発,定義なき『廃炉』10年経ても手探り,遅れる作業」という見出しの記事は,その「10年という時間の単位」で具体的に考えようとするにさいしてする計慮の話題になるが,いったいその何回,あるいはその何十回を繰り返すことになりそうなのかに関してさえ,いまのところ,まったく予測不可能であった。すなわち,暗中模索どころか,雲をつかむごとき状況に留め置かれてきた。

 c) 原子力市民委員会特別レポート8「燃料デブリ『長期遮蔽管理』の提言-実現性のない取出し方針からの転換-」原子力市民委員会・原子力規制部会,2021年4月5日は,以上のごとき政府と東電によるデブリ除去計画はとうてい不可能であるとみなし,その代替案として,この報告書が提唱する『長期遮蔽管理』を提言していた。

 その報告書はかなり専門的な議論を展開しているので,ここではそのPDF文書を紹介しておくことにするの,興味ある人は自身で通読されることを勧めたい。専門知識がなくとも概要は確実に理解できるはずである。

 ⇒ http://www.ccnejapan.com/CCNE_specialreport8.pdf

ここでは,この報告書が「あとがき」で触れていた注意事項を紹介しておく。この「後書き」を画像資料にしてかかげてみたい。

ここに書かれている東電福島第1原発事故現場の状況は
いまも基本的になにも変化がない

「関連業界が主張しているような,事故対策を契機に開発した技術を
新しいビジネスにつなげて行くといった志向は,
正統な優先事項を誤る恐れがある」
という警告から耳を背けてはいけない

 小出裕章の寄稿は,以前から小出が明示してきた持論を,なんどでも再論するものであった。東電福島第1原発事故現場の問題はなにが基本にあるかといえば,

 「100年たっても取り出せない 福島原発事故の『デブリ』=小出裕章」『エコノミスト Online』2021年5月24日,https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210601/se1/00m/020/060000c

ということに尽きた。

 だからこそ,前段のごとき,原子力市民委員会特別レポート8「燃料デブリ『長期遮蔽管理』の提言-実現性のない取出し方針からの転換-」原子力市民委員会・原子力規制部会,2021年4月5日の提案がなされていた。

 以上の記述は,本日2023年11月3日に追論した段落である。ここからは,2020年3月12日記事に戻っての記述となる。原発事故に関しては,例のデタラメ発言「アンダーコントロール」を吐いて,大ウソをついていた,いまはなき安倍晋三君が「焦点の人物」となって登場する。


 ※-3 安倍晋三の原発関連・政治責任

 安倍晋三は,ある意味でというまでもなく,まさしく君(キミ)のせいで東電福島第1原発事故が起きたといってもいいくらい,きわめて重大な責任がいまは亡き君であっても「いまもある」。たとえ「墓のなかに入ってあとまでもその責任は着いてまわる」ものゆえ,けっして逃げ切れないはずである。

 補注)この記述は「2020年3月12日におけるもの」であったから,これにつづけて「墓のなかに入ってあとまでもその責任が着いてまわる」ぞと警告していた。この点はいまの時点(2023年11月3日)になって,まさしくそのとおりの状態になった。安倍晋三が山上徹也という「統一教会の信者2世」によって狙撃され落命したのは,2022年7月8日のことであった。

 安倍晋三のその死因がなんであれ,首相として原発体制の失策問題に根幹からかかわってきた経歴ゆえ,死後においても公人である職歴となって永遠に消し去ることができない。いうまでもないが,政治家であった安倍晋三は,そうした『政治責任』を永遠的に背負うほかない重大な仕事を,それこそ無責任にになっていたはずである。

 すなわち,いまの現在がこれからの未来に「切れ目なく」連続的に存在しつづけていくからには,安倍晋三が政治家として記録してきた「為政の歴史的な意味」は,根源から問われつづけるかたちでもって,未来永劫に語りつがれてていくに違いあるまい。

 なお記述は以下から再び,『朝日新聞』2020年3月12日朝刊12面コラム「経済気象台」に戻っているが,このコラムへの言及は「本稿(前編)」においてなされており,本日のこの「本稿(後編)」のなかでは,初めて出てくるコラムの記事であった。それゆえ,この途中の段落となっているが,ここから以降の段落における記述の「出所」として,その旨をあらためて再度,註記することした。

『朝日新聞』2020年3月12日朝刊12面コラム「経済気象台」

 さて,その『朝日新聞』2020年3月12日朝刊12面コラム「経済気象台」は,安倍晋三に向ける至当な批判を,つぎのように書いていた。

 唯々諾々と付きしたがう官僚たちもいい加減目を覚ましたらどうか。力のあるものがあからさまにうそをつき,法律をねじ曲げ,不祥事も不始末も強弁すればまかり通る。やりたい放題・なんでもありの姿を目の当たりにする国民や子供たちのモラルがどうなるか,もっと真剣に考えてほしい。

 日本は法治国家,権力は主権者からの預かりものであることを忘れたか。官僚が真に仕えるべきは時の権力者ではない。(呉田)

コラム「経済気象台」引用の残り

 このコラム:経済気象台が批判した「現状における日本の官僚体制」の問題のありかについていえば,その責任の大半は安倍晋三首相(当時)にあった。ところが,この首相の任期はまだ2021年の9月まで残っていた。衆議院の解散総選挙(自民党敗退)や安倍晋三自身がみずから辞任しないかぎり,全国民たちにとっての不幸・不運は,これからも確実につづいていく〔と思うほかなかった〕。

 補注)安倍晋三が首相を辞めたのは,2020年9月16日であった。それまでに彼のなしてきた為政は,この「美しい国家日本」をグダグダの為政を介してボロ雑巾のようにまで劣化させた。結局,国家の態様を根っこの部分から完全に腐食させ,まわりの環境も泥濘状態にした。彼はなによりも,ウソだらけ(ばかり)がまかり通させる「虚偽繁栄の国家体制」を造成してきた。

 ところで,この「本日の記述」は『日本経済新聞』2020年3月12日朝刊の4面「政治」面の記事に着目していたが,安倍晋三「首相の通算在職日数3000日」というベタ記事も掲載していた。この記事は小さな記事であったけれども,「現実のもの」になっていた「この国の現状=悪夢」(悪魔と同居させられていたかのような日々)を,いまさらのようにわれわれに思いおこさせてくれる。

 「安倍晋三」は首相として,3月「12日」で「第1次政権からの通算在職日数が3000日になる」。「歴代首相で3000日を超えるのは初めて」だというけれども,実は,この点は自慢にもなにもならない。国賊とまで蔑称されるに至った自分の為政であった。まったきに国恥の「世襲3代目の政治屋」であった……。

 すでに,日本歴代の首相のうち安倍が〈最悪・最凶の政治屋〉であった事実は,日本の社会のなかでは認定済みであり,完璧に保証つきである。最近は,海外でのアベの評判もほぼ定まっており,実際,彼の「切れ目」のない本質的な素性,つまり,政治家としての「ウソつき常習犯」性までバレるようになっていた。

 したがって,「首相は2019年11月20日,桂太郎氏の2886日を抜き,通算在職で歴代単独トップとなった。今年8月24日まで政権を保てば,連続在任記録も佐藤栄作氏を抜いて歴代1位となる」と報道されても,誰も喜ばないことは必定である。その任期は単に悪政の期間になっていただけなのだから,長ければいいというものではないことは,贅言の余地もない。

 本気で慶賀してくれている者など多分,安倍昭恵以外,1人もいないのではないか。今後における日本の政治にあってもしばらくは,「アベ的な剣呑かつ凶悪な迷惑・災厄」がつづきそうである。こうした展望だけは,確実に請けあえる政治状況となっている。だから「全国民たちにとってみれば,これ以上に本当の不幸・不運」はない。

 補注)確かに安倍晋三につづいて首相に就任した菅 義偉にしても,現在の首相である岸田文雄にしても,そのとおりに自堕落でなんら新味も独創もない為政がダラダラとつづいてきた。

 そういえば,東電福島第1原発事故のさいには,つぎの※-3の不幸・不運も発生していた。本ブログ内では言及したことがある問題であったが,この説明にはとくに聞く価値がある。

 

 ※-4「『福島第1原発3号機は核爆発だった』」原発設計技術者が東電,政府を批判原発設計技術者が東電,政府を批判」『AERA dot.』2020年3月9日 8:00配信,https://dot.asahi.com/wa/2020030600008.html (『週刊朝日』では2020年3月13日号の記事)

 東日本大震災から9年の月日が経ったいま(あるいは当時)も,福島第1原発の事故には疑惑が残っている。ジャーナリストの桐島 瞬氏が取材した内容を以下に紹介する。 

 福島第1原発の事故では1,3,4号機が水素爆発を起こし,大量の放射性物質が大気中に拡散した。だが,3号機は核爆発だったのではないかとの疑惑がある。実際,3号機が爆発した瞬間には黒煙が舞い上がり,白煙が立ち上った1号機とは様相が違った。

東電福島第1原発事故
3号機の爆発光景

 「3号機で核爆発が起きた」と主張する原発技術者は何人かいる。そのなかでもっとも詳しく解説しているのが,三菱重工業で原発の設計技術者を務めた藤原節男氏(70歳)だ。

 「3号機の爆発では原子炉建屋南側で一瞬オレンジ色に光り,黒いキノコ雲状の煙が上空600メートルまで立ち上りました。これは温度が1万度以上の高温になる核爆発の特徴です。大きな被害が出なかったのは,爆発の規模が原爆の1万分の1から10万分の1程度と小さかったからです」

 藤原氏は3号機が核爆発した証拠として13個の根拠を挙げている。以下がそのうちでも主なものだ。

 ▲-1 屋根フレームの鉄骨が飴細工のように曲がった。爆発で建屋のスレート屋根が吹き飛び,圧力が外部に逃げたにもかかわらず曲がっているのは,核爆発で局所的に超高温部が発生したために起きた現象。

 ▲-2 使用済み燃料プールのある建屋南部を中心に屋根が破壊された。水素爆発なら最上階の5階に充満した水素が爆発するため,屋根はある程度均等に破壊される。

 ▲-3 5階の床付近に置かれていたクレーン用モーターなど大型瓦礫(がれき)がキノコ雲から落下したようだ。5階空間での水素爆発なら,5階の床付近に置かれたものを上空高く吹き飛ばすことはできない。

 ▲-4 プルトニウムが福島県飯舘村や米国まで飛散しているが,これは使用済み燃料プールの燃料の金属成分が蒸発したもの。水素爆発ならプルトニウムの発生源は格納容器内の炉心溶融物(コリウム)に限定されるが,その場合のプルトニウムは二酸化物のままの状態を保っていることから蒸発飛散しない。

 ▲-5 福島第1原発事故では,セシウムを含んだガラス質で,微小な球形をしたセシウムボールができた。これは高温高圧下で物質が蒸気とプラズマになり,冷える過程でできたもの。水素爆発ではできない。

3号機が核爆発した主な根拠

 それでは,どうして核爆発が起きたのか。藤原氏によると,最初に3号機上部で水素爆発が発生し,それから使用済み燃料プールで核爆発が起きたという。

 「まずすべての電源が失われたことで,使用済み燃料を冷やしている燃料プール内の水が沸騰を始めました。このとき,水中のボイド(気泡)が一定量に増えたことで安定した『遅発臨界状態』に達しました。本来,プール内で臨界が起きてはいけませんが,ここまでは原子炉の固有の安全性(自己制御)が機能している状態でした」

 水のなかにどれだけの気泡が含まれるかを示すボイド率は,核分裂制御と密接な関係にある。うまく調整できれば安定臨界状態を保つが,少しでも狂うと原子炉が暴走してしまう。このときの使用済み燃料プールも臨界したとはいえ,安定した状態を保っていたという。だが,ここで思いも寄らぬ事態が起きた。

 「3号機の5階に大量にたまっていた水素ガスが爆発したことで急激な圧力が使用済み燃料プール水面にかかり,水中のボイドが消滅したのです。急速にボイドが減ると激しい核分裂反応が起き,危険な『即発臨界状態』になる。自己制御が利かなくなり,ついには核爆発が起きたのです」

 使用済み燃料プールの水は本来,燃料の冷却のために使われる。だが,安定して臨界状態を保っていたボイド率が一定以上低下すると,中性子の速度を抑える減速材としての役割が増加し,核分裂を促進してしまう。

 ほんのわずかな反応度の違いで,即発臨界点に達してしまうのだ。3号機はプルトニウムを再処理で取り出した(プルトニウムとウランを混ぜた)MOX燃料を使う原子炉だったことも,核爆発を起こしやすくしたという。

 一方,こうした核爆発説への異論も少なくない。

 たとえば,東京電力が公表した3号機の写真には使用済み燃料プールの燃料ラック(収納棚)が写っている。爆発したのなら残っているはずがないとの見方だ。また,原発で使う核燃料はウラン濃縮度が低いため,核爆発が起きないのではとの指摘もある。

 藤原氏の反論はこうだ。「核爆発したのは局所的な場所で,被害のない部分を写真として公開しています。また,低濃縮ウランで核爆発が起きないというのは安全神話にすぎず,実際に爆発を起こした実験結果が米国にあります」

 そのうえで,3号機は水素爆発だといいつづける東電や政府をこう批判する。

 「小規模な核爆発だからといって,事実を隠していいことにはなりません。環境中に放射性物質をまき散らしたのだから,飛散した破損燃料や爆発時の環境中性子線の数値など核爆発の証拠となるデータを明らかにすべきです」

 以上のとおりであるとすれば,安倍晋三君が第1次政権時,2006年12月のことであったが,衆議院における国会の質疑で,日本共産党の吉井英勝衆議院議員に対して,わめき立てるかのようにして答えた文句,「海外とは原発の構造が違う。日本の原発で同様の事態が発生するとは考えられない」とまで断定したセリフは,この首相が生涯を通して「数多くウソを大全したごとき記録集」のなかでも,最悪の迷文句であった。

 なんといっても,嘘つきは安倍晋三の始まり……。


 ※-5 安倍晋三君が「日本の国と民たち」に対してもたらしてきた最大・最強の「不幸と不運」は,早くはすでに2006年に始まっていたが,いまもなお,その最悪・最凶の条件・態勢,つまり東電福島第1原発事故現場の状態は,いまもそのまま維持・存続されている

 「この国の現状における不幸・不運」が ,きれいに“アベとともに去りぬ” にしえないかぎり,とりわけ被災民が悲惨な目に遭わされてきた境遇は,彼ら全員がこの地上からいつかいなくなるときまで,ともかく忍従を強いられていくだけなのか 
 
 日本列島の国民・市民・庶民たちは,東電福島第1原発事故現場という世紀の記録に残る大災害の被害・損害のツケ回しをされたまま,我慢を強いられつつけてしていくのか?

 最後に参考記事としてつぎの記述を引用しておきたい。さきにつぎの画像資料,『日本経済新聞』2011年3月12日の報道をかかげておく。

本当のことを語ったら即「更迭」された
中村幸一郎審議官

    ◆「メルトダウン隠ぺい枝野氏の安倍独裁法への協力」◆  
 =『植草一秀の「知られざる真実」』2020年3月11日,           http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-fda563.html =

 〔2011年〕3月11日夕刻にはメルトダウンに移行することが明確に認識され,3月12日正午のNHKニュースがメルトダウンの事実をいったん読み上げながら,その原稿を封印しようとした。しかし,電波で流れてしまった事実を消去することはできなかった。

 経済産業省原子力安全・保安院がメルトダウンの事実を認めたのは同年6月6日のことだ。政府の緊急災害対策本部の震災当日3月11日深夜の文書には,福島第1原発2号機で22時20分ころから炉心損傷が始まるとの予測結果を記載されていた。

 翌12日には同院の中村幸一郎審議官が記者会見で「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発言したが,同日夜に更迭された。菅〔直人〕内閣の事実隠ぺいが明らかだ。

 コロナに伴う緊急事態宣言法定化は有害無益だが,原子力災害対策特別措置法第15条にもとづく「原子力緊急事態宣言」は発令されたまま,いまなお解除されていない。福島では強引に避難指示解除準備区域での避難指示が解除されたが,これは,年間線量20ミリシーベルトの地域への居住を強制するものだ。

 ありえない暴挙である。安倍内閣がイベント等の自粛要請期間を10日間ほど延長するとしたのは,3月26日から予定されている聖火リレーに合わせたもの。日本の感染確認者数は人為的にコントロールされている。感染が拡大するなかでの聖火リレーなどありえない。

 フクシマ原発事故は原子力緊急事態宣言がいまなお発令されたままの状況下で,まったく収束していない。東京五輪中止を速やかに決定するべきだ。原発事故の収束もできずに五輪で騒ぐべき局面でない。

植草一秀のブログから

 --以上の2020年3月時点に書いてあった植草一秀の文章は,原子力緊急事態宣言の発令が依然解除されていないこの国のなかで,わざわざ1年延長して2021年夏季に強行した東京オリンピックが,膨大な無駄づかいを招来させるほかなかった点にも関連させていたが,前もってきびしく批判していたことになる。

 そもそも2020年になると日本でも早々と新型コロナウイルス感染症が流行しだしていたが,これに対峙した厚生労働省の医系官僚たちの利権・エゴ丸出しの対応姿勢は,安倍晋三政権の不手際ともなって,コロナ禍の感染拡大を不必要に発生させる「その後の展開」しか生まなかった。

 国民・市民・庶民の生命と財産をまず最初に守護すべき国家の最高指導者が,自分:個人の欲望や私利のためだけに,つまり,私物化(死物化)した為政を推し進めるだけに生きていた「世襲3代目の政治屋」でしかなかったのだから,この国がよくなるわけなどもとより,なにひとつなかった。

 「ああだ,こうだ」といっては終始一貫,下手くそな国家の運営しかできなかった「安倍晋三から菅 義偉へ,また岸田文雄」へと自民党の政権つづいてきたがために,この日本「国」はまずもって「先進国落ち」したどころか,いまでは完全に「発展途上国」ならぬ「発展脱落国」に転落した。

 2023年10月になってから「ドル円相場」は150円台を割り,半世紀前の「1ドル=360円」以下の平価購買力しか「円の実力がなくなった」時期に移行した。これはアベノミクスの必然的な結末であった。「世襲3代目の政治屋」の「▲カ息子・ア▼孫」に国家の為政を任せるとどうなるかが,嫌というほど,われわれに向かい教えこんでいる。

 この記述(2日前の前編⇒本日の後編)に即していえば,安倍晋三は安全神話を「3・11」以前だけでなく,それ以後も堂々とかたくなに開陳していた「迷首相であった」。安倍はくわえて,その「3・11」以後,原発事故の被災者たちの存在を完全に無視したまま,東京オリンピックを開催する「場所」に関しては,東電福島第1原発事故現場が「アンダーコントロール」の状態にあるから,なにも問題がないとまで力説していた。

 これほどまで反国民的・非市民的,かつ国賊的・国恥的,そしてさらになおかつ「亡国志向をいたずらに最大化させた」日本の首相はいなかった。この「世襲3代目の政治屋」が統一教会の信者2世・山上徹也に狙撃され,落命したのは,2022年7月8日のことであった。

 しかし,安倍晋三の死とはひとまず無関係に,東電福島第1原発事故現場の事後処理=後始末というとびっきりの至難は,21世紀の今後に向かってそれもいつはてるのかの見通しがもてない状態,いいかえると「賽の河原の石積み」のごとき難業・苦行を,この日本国に生きる人びとに対して背負わせた。

 バカな大将,敵よりこわいって? そう,安倍晋三⇒菅 義偉⇒岸田文雄と,「どの人みても」「 🌑 🌑 だ 」♫ ……

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