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正義感、権力、集団を持った人間の方が幽霊よりもよっぽど恐ろしいー『福田村事件』ー


簡単な物語のあらすじ

1923年(大正12年)に実際に起こった、関東大震災後の混乱、社会不安の中行われた村を守る自警団による惨殺事件である。

メディアによる、過剰な朝鮮人の恐怖像を報道しすぎた結果引き起こされた。

調べてみると、歴史の闇に葬り去られた出来事だったらしいです。1980年代後半からやっと世間で知られるようになったそうです。約40年間知られていなかった事実も恐ろしいです。

他にもまだまだ歴史の闇に葬り去られた事件がありそうな気がします。いつか、機会があったら調べてみたいと思いました。


感想

最近、YouTubeで心霊スポットの動画を見るのが自分の中で流行っていましたが、人間の心理の方がよっぽど恐ろしいと感じました。

自分が正しいと思う正義感、人を殺せる武器、自分の思想に共鳴する集団が集まると、これほど凄惨で惨たらしい事件が起きてしまう。

メディアによる過剰な報道、人づての噂話より怖いものはない。特に、噂話は本当に怖い。

現代は人と人との関りが少なくなり噂話が無くなったかもしれない。しかし、SNS上のオンライン空間がその役割を果たしている。

例えば、2019年に起こったあおり運転の”ガラケー女”の例が記憶に新しい。ガラケー女と勘違いされた女性はSNS上で誹謗中傷を浴びせられる事態になった。

テレビ報道も怖い。テレビの報道力も弱まったという意見もあるが一概には言えない。

特に高齢の人たちはSNSを利用しない分、テレビの報道を信じる。私もテレビで報道されている情報を鵜呑みにしてしまうこともある。

現代では大勢の人がスマホを持つことにより、各々が各々の基準で情報を加工し発信することができる。ネット上の炎上がその例だと考える。

私の叔母も噂話が好きな人かもしれない。「○○さんの息子はどこどこ大学に入学したらしい」「○○さんは離婚したらしい」「○○さんはどこどこに就職した」など身内の話を毎回している。私もこの「○○」に含まれて他の人に伝えられていると思うととてもうんざりする。

傍観者の存在も罪があると思う。噂を広げる人、自分が報道することでどのような事態が起こるか把握していない人も罪がある。

新聞記事でも○○人が死んだみたいな記事がある。しかし、彼らには名前がある。みたいなことを少年がラストに言っていた。ゴダールの『気狂いピエロ』にも似たようなセリフがあったような気がします。

どうでもいいことですが、風呂のシーンにエロスを感じました。


さいごに

エンドロールでクラウドファンディングの支援者の名前が載せられてた。このような、史実に基づいた、リアリティのある作品が製作されるなら、ぜひ私もクラウドファンディングで寄付したい。

客寄せパンダのアイドルが主演の毒にも薬にもない映画よりも、こちらの映画を応援したい。

陳腐なホラー映画よりもよっぽど恐ろしい映画でした。

ミニシアターで上映されたらしいので、機会があれば名古屋のシネマスコーレでこのような映画を見たいと思いました。

この事実を映画を通して伝えることで、私はこのような凄惨な事件が実際に起こったことを知ることができた。

欲を言うと、この事実がどのように掘り起こされたのか、被害者の救済についても見たかった。殺人を行った者への罪があまりにも軽すぎる。

現代でも殺人などの事件を犯した者の罪があまりにも軽すぎると思うこともあります。



映画情報

福田村事件
森達也監督作品
U-NEXTで視聴
136分

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