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冬を表す

患者さんが「子どもの頃を思い出すような寒さだね」とポツリと言った。

寒さを表す言葉は色々あるが「子どもの頃を思い出すような」というのはなかなかに詩的な表現だなあ!と思った。

(ちなみに私は更衣室で「今日めちゃくちゃ寒くない!?ズボン履き忘れて来たかと思っったよ!正気の沙汰じゃないね〜」と詩的とは程遠い表現で寒さを表していた。)

一口に「子どもの頃」と言っても思い出す時代や風景は1人1人違うはずなのに「子どもの頃を思い出すような寒さ」という表現に共感を覚えることが面白いと思った。
私は友達と遊んだ帰り道の木々がたてるカサカサという音と、自転車をこぐたび頬を切る風の冷たさを思い出していた。

そしてついでに思い出したことがある。
学生寮で暮らしていた頃、友人が故郷のお母さんとの電話を終えた後に「山形はのしのし雪降ってるみたい。」と言った。

のしのし。

良い表現だ。
山形に行ったこともないのに雪が「のしのし」降るさまがハッキリと浮かぶようであった。
音のないまっ白な世界に次から次へと雪が「のしのし」降りつもる。
友人は「のしのし」という懐かしい表現で、遠く離れた故郷の風景や家族のことを思い出しただろうか。

ついでに私も福島の叔父に「へい、雪はどんなだい?」と電話で尋ねてみたが「雪?気ぃ狂っだみでぇに降っでるわ〜。いやいや寒いのなんの。気ぃ狂っちまうべな!」と1つの返事の中で2度も気が狂われてしまう結果となり少しガッカリした。

また、関西のお友達は細かな雪を「ホコリみたいな雪降ってるわ〜!ホコリと雪とどっちやねん!みたいな雪。」と表現しており思わず笑ってしまった。
その大好きな友達からも自分や叔父と同じニオイがして嬉しくなる私であった。

春はまだ遠いだろうか。
春が待ち遠しい。
春がやってきたなら色々な表現で春を語りたいなと思う。