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#辻貨物船

俳句を読む 39 辻貨物船(辻征夫) 冬の雨下駄箱にある父の下駄

冬の雨下駄箱にある父の下駄 辻貨物船

玄関脇の、靴を収納する場所を今でも「下駄箱」というのだなと、この句を読みながら思いました。わたしが子供の頃には、それでも下駄が何足か下駄箱の中に納まっていました。けれど、マンションに「下駄箱」とは、どうにも名称がしっくりいきません。下駄というと、「鼻緒をすげる」というきれいな日本語を思い浮かべます。「すげる」というのは「挿げる」と書いて、「ほぞなどにはめ

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俳句を読む 20 辻貨物船 人参は赤い大根は白い遠い山

人参は赤い大根は白い遠い山 辻貨物船

辻貨物船は辻征夫さんのことです。かつて、新聞記事で辻征夫さんの死亡を知り、急ぎ通夜に向かった日のことを思い出します。辻さんとは若いころに、詩の雑誌の投稿欄の選者として、一年間ご一緒したことがあります。投稿の選評が終わった後に、小さな雑誌社の扉を開け、夜の中にすっくと立つ背筋の伸びた辻さんの姿を、今でも思い出します。「貨物船」から降ろされた多く

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