マガジンのカバー画像

俳句を読む

60
運営しているクリエイター

#寺山修司

俳句を読む 40 寺山修司 書物の起源冬のてのひら閉じひらき

書物の起源冬のてのひら閉じひらき 寺山修司

 意味はそれほどに複雑ではありません。てのひらを閉じたり開いたりしていたら、なんだかこれが、書物のできあがった発想の元だったんじゃないかと、感じたのです。では、てのひらの何が、書物に結びついたのでしょうか。大きさでしょうか、厚さでしょうか、あるいは視線を向けるその角度でしょうか。また、てのひらを開いたり閉じたりするたびに違う思いがわいてくる。そのことが

もっとみる

俳句を読む 1 寺山修司 胸痛きまで鉄棒に凭り鰯雲

 胸痛きまで鉄棒に凭り鰯雲   寺山修司

校庭の隅で鉄棒を握ったのは、せいぜい中学生くらいまででしょうか。あの冷たい感触は、大人になっても忘れることはありません。胸の高さに水平にさしわたされたものに、腕を伸ばしながら、当時の私は何を考えていたのだろうと、感慨に耽りながら、掲句を読みました。「凭り」は「よれり」と読みます。句に詠われているのも、おそらく中学生でしょう。いちめんの鰯雲の空の下、胸が痛

もっとみる