コーポレートガバナンスとは?- 個人投資家・個人株主のための分かりやすい解説②


企業の稼ぐ力を高める

明日から1週間の夏休みです。この1週間は来週からの仕事に備えて、新聞や雑誌での情報インプット、読書、あと家族旅行の予定(3泊4日)です。東京は本日は曇りですが、天気が気になるところです。
さて、前回の続きです。コーポレートガバナンス・コードの目的は、上場企業の「稼ぐ力を高めること=攻めのガバナンス」であることを前回お話をしました。では、稼ぐ力をどのようにして高めることを想定しているのでしょうか?

企業の業務執行を決定するのは取締役会であり、日本企業は昔から大人数の取締役がいます。売上高が2,000億円程度の規模しかないメーカーでも取締役が30名近くいるなんてケースが多かったですけど、人数は多いけど、残念ながらこれがあまり機能していなかったのです。
取締役は、部長などの一般社員とは立場が異なり、会社との間に委任契約関係に立ち、善良なる管理者の注意義務を負い、企業ひいては株主の利益を優先する立場にあります(会社法で昔から規定されています)。けど、実務では、そういう意識もないし、そういう行動をしてこなったのです。どうしてでしょうか?

まず、取締役のほとんどは社内で昇格したプロパー社員です。つまり、新人として会社に入り、年齢とともに係長、課長、部長と昇格して、運良く役員になれたサラリーマンに過ぎず、取締役になったと同時に意識が変わることなど現実には期待はできません。取締役になっても、自分を引き立ててくれた常務、専務、副社長、社長の序列に下にいるのであり、上席役員の顔色を窺いながら仕事をすることは、一般社員と何ら変わることなく、自分の大胆な意見を口にすることはできません。
もし、大胆な意見をずけずけ言ってしまい、社長に「こいつ面倒なやつだな。邪魔だな。」と思われてしまったら最後、任期満了時に株主総会で会社提案議案で次期取締役候補から外れてしまい、子会社の役員あたりに飛ばされ、給料が激減してしまいます。

要するに整理すると、社内取締役なんてのは、会社法上の取締役などと言っても本人はそんな意識はあまりなく、上司の顔色を見て仕事をする部課長クラスと全く同じです。勿論、権限は部長よりも広いですが、本質においては、係長・課長・部長あたりと何ら変わることはないのです。私も長年、民間企業でサラリーマンをやっていますが、つくづくそう感じます。
取締役就任時に取締役の心得のような勉強会は社内の法務部門や外部講師がやるケースが多いですが、まあ、こんなことやってもまず意味はないですよね。私も過去に前職時代に社内研修で講師をやりましたが、だいたいにおいて、皆さんきょとんとした顔をしており、ほぼ理解ゼロの様子です。

典型的サラリーマンである社内取は役に立たないので社外取が登場

そこで、社内取締役には稼ぐ力を高める戦略、つまりこれまでの延長線を打破する、大胆な事業戦略を策定したり、実行することは期待できないということになり、そこで登場するのが社外取締役です。つまり、社内のしがらみにとらわれることなく、取締役会において経営トップの顔色を気にすることなく発言・行動することを期待されています。つまり「面倒なやつ」としての機能が期待されているわけです。
コーポレートガバナンス・コードでは、「企業の稼ぐ力を高めるには、社外取締役の存分に活用しよう」と金融庁、経済産業省はじめ政府は考えたわけです。社内取締役はあまりにサラリーマン過ぎるから、社長をトップとしたピラミッドの枠外にある社外取締役を活用しようということです。
では、次に社外取締役の機能をより発揮するためにはどういうことをコーポレートガバナンス・コードは求めているのでしょうか?続きは次回です。