キャッシュ(現金)の使途を投資先企業に質問してはいかがでしょうか? ー(前回の続きです) 次にキャッシュの使途を確認しましょう

前回、ネットキャッシュが多いか否かを確認することを書きましたが、今回はこの続きになります。投資先企業のキャッシュが潤沢なことが分かった場合、次に企業の考えるキャッシュの使途を確認することになります。通常、企業は、キャッシュについて大きく次の4つの用途を考えています。

1 成長投資・M&A
2 研究開発投資
3 通常の事業運営と有事の際のバックアップ
4 配当


まず1ですが、企業は持続的に成長します。ゴーイングコンサーンですね。メーカーであれば設備投資が必要になります。事業拡張させるには新たな工場の新設が必要になる場合もあり、また、工場を新設しないとしても(工場の新設は頻繁に起きるものではないです)使用している設備を更新したり、取り換える必要があります。そうしないと、設備で製品を作るのに時間がかかり、また、不良品が発生する頻度も高まり、生産性が低下します。また、M&A投資も将来の成長投資ですね。企業を買収する上で必要となる投資資金です。もっともM&Aは頻繁に起こるものではなく、また、そもそも自前主義でやっている企業も多いのですのでM&A投資資金がゼロという企業もあります。
 
次に2ですが、これも一定程度必要ですね。メーカーであれば、日本企業の場合、売上高の1~3%程度を毎年研究開発費としている企業が多いと思います。研究開発投資は効果が現れるまでに時間がかかりますが、これを怠ると5年後、10年後の企業の成長に大きな障害が生じます。

次に3ですが、これは通常の事業運営に必要となる運転資金や予期せぬ有事の事態の際に備えた資金です。不足の事態が起きた場合に企業にキャッシュがないと困ってしまいますね。

最後に4の配当です。キャッシュ全体から1から3に関する金額を差し引いた金額を株主に還元するわけです。

これらがざっくりと企業のネットキャッシュの使途になります。株主としては、投資先企業のキャッシュの使途について、上記観点から質問をするとよいと思います。この中でポイントは3あたりでしょうか。

結局、3の金額が多ければ、株主への配当は減ります。つまり会社に内部留保されるキャッシュが増えることになります。3の資金は多くとっているのであれば、「額が多すぎではないですか?3の資金を減らして、その分、配当を増やせないのですか」ということになります。
配当というと、「配当性向30%を基準にしています」という企業も世の中多いです。つまり、当期純利益の30%が配当総額であるという考えです。けど、この30%の根拠は正直、よくわかりませんし、企業の方も実は良く分かっていません。30%の基準を設定している企業が世の中多いから、日本企業の横並び思想で30%にしているのです。別に30%のルールが世の中で決まっているわけではないです。余ったキャッシュは株主に還元せよというのが基本であり、これは株主が企業に要求できる当然の権利といえます。

ということで、株主の方は投資先企業のバランスシート、キャッシュフロー計算書を見て、キャッシュが潤沢の場合、上記の項目を1つずつ企業に質問をすると良いかと思います。