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ROEの低迷が続く状況下で会社が機関投資家の賛同を得るための方策


機関投資家の議決権行使基準に抵触するけれど・・

今年も残すところあと2ヵ月と少し程度です。年が明けると機関投資家が株主総会の議決権行使基準の改定をはじめます。今年は株価向上を東証が非常に強く要請していることもあり、機関投資家各社はROEの基準を上げるべきか否か、PBR基準も入れるか否かなどの検討をしていると思います。
企業で気になるのは、経営トップの取締役選任議案の賛成率かと思います。本日は、企業の業績が機関投資家の議決権行使基準に抵触する場合でも、機関投資家に経営トップの取締役選任議案に賛成して貰うには、企業はどうすべきかということについて会社側の観点から解説したいと思います。

機関投資家の議決権行使の流れ

まず機関投資家の議決権行使の流れから考えます。
まず機関投資家は議決権行使基準で投資先企業をスクリーニングします。例えばROE5%未満が3年続くと基準に抵触するとした場合、機械的にスクリーニングするわけです。つまり、不合格候補企業をリストアップするということです。
そして、次にその企業について、今後の業績予想や業績低迷の理由などを担当のアナリストに確認します。「ここ3年ROEが低迷しているけど、この先どんな感じ?」といったようなイメージかと思います。
そして、アナリストの意見も踏まえて、最終的に経営トップの選任議案に反対する否かを社内の議決権行使委員会などで決定するわけです。

機関投資家の定量評価を超えるため企業がすべきこと

つまり、その企業を担当するセクターアナリストの意見が重視されますのっで、アナリストが当該企業の今期の業績予想であったり、今後の見通しや会社の姿勢をどう考えるかが肝になるわけです。例えば、この企業は最近はROEが低迷しているが、これから上向くということをアナリストが判断すれば、議決権行使で賛成となる可能性もあるということです。

では企業は何をなすべきかといいますと、アナリストが前向きの心証を持つように今後の自社の事業の方向性、考える施策などについて非財務情報を交えて、詳しく説明することが大事になります。勿論、文章で開示するということもあるかとは思いますが、文章での開示では詳細は難しく、またそもそも文章では伝わりにくいところもあります。従い、機関投資家と対話する、つまりエンゲージメントで十分に説明したり、深い意見交換をすることが大事になります。
ただし、機関投資家も議決権行使結果については、最終的にはアセットオーナーに対する説明義務があるわけですから、議決権行使基準の例外的扱いをする場合は限定されることは忘れてはいけません。そもそも議決権行使基準は、機関投資家が企業に求めるミニマムの要請であり、それをクリアーしていない企業を救うわけですから、かなり例外的扱いになることは念頭において、この前提の下で、真摯な説明を継続するのです。

機関投資家との対話をするのは誰?

ところで会社側の説明者は誰がやるべきでしょうか?これは機関投資家に確認したわけではないですが、経営トップ(社長又は代表)が行うことが大事かなと私は思います。通常のIR取材はIR部長あたりがやるのだと思いますが、部長クラス、または役職のない執行役・取締役あたりでは役不足かなと思います。というのも、業績が悪い中、アナリストに会社の方向性等を説明すして、将来に期待して貰うわけですので、経営に責任を負う立場の高いクラスにある役員でないと投資家の納得を得るのは難しい気がします。

まとめ - 機関投資家を大事にする努力が大事

2Q決算が終わると、今期の最終着地も見えてくる会社も多いと思います。今期もROE5%が難しく、機関投資家の議決権行使基準に抵触して、来年の社長の選任率をどうしかものかと気にする会社も多いと思います。そういう企業は、機関投資家と早めに対話をすることを検討した方がよいかと思います。