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企業価値向上を投資先企業に促すためのコーポレートガバナンス・コードの使い方(第1回) ー はじめに


個人投資家はコーポレートガバナンス・コードを活用しましょう

10月も下旬に入り、2Q決算も来週から本格化します。2Q決算は通期決算の動向を把握する上で非常に重要であり、投資家の関心の高いところです。私も投資先銘柄の2Q決算概況、進捗、決算説明会資料はしっかりと分析して、不明点は各社のIR部門に結構な量の質問をする予定ですが(まずはメールをして、その後で電話)、その際にコーポレートガバナンス上の課題もしっかりと質問する予定です。

さて、本日から不定期になりますが、「来年の株主総会では会社に色々と質問をしてみたいな」という株主の方向けに、コーポレートガバナンス・コードをいかに活用するかという観点から記事を連載したいと思います。

プロの投資ファンドであるアクティビストが企業を攻める際のバックボーンの1つがコーポレートガバナンス・コードでもありますので、中長期での株式投資を実践する個人投資家や個人株主の方も自由に使えるようになると、IR部門への質問や株主総会での質問も非常に充実し、企業に行動の改善を促すものになります。

コーポレートガバナンス・コードの構成

本日は初回ということで、具体的な細目の説明に入る前にコーポレートガバナンス・コードについて全体的なところを説明したいと思います。コーポレートガバナンス・コードは、5つの基本原則で構成されており、各原則の下に数多くの原則・補充原則が規定されています。まずはこの5つの基本原則ですが、次のとおりです。

  1. 株主の権利・平等性の確保

  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

  3. 適切な情報開示と透明性の確保

  4. 取締役会等の責務

  5. 株主との対話

各基本原則の下にある原則・補充原則がアクティビストの材料になるわけですが、これは次回以降説明をいたします。ところで、コーポレートガバナンス・コードにおいて、次の記述があります。

本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。

つまり、このコードに規定した原則・補充原則を実践することは、会社、投資家、ひいては経済全体の発展に寄与するとされています。ですから、投資ファンド等の物言う株主(アクティビスト)が、コードを主張の拠り所として会社に様々な提案をすることは基本的に合理性があると言えます。日本企業の慣習に照らしてどうかという課題はありますが、いずれにせせよ、合理的か否かというと「極めて合理的」と言えます。

コーポレートガバナンス・コードを理解して投資先企業に深みのある質問・提案をしましょう

ということで、個人投資家・個人株主も中長期の機関投資家のように3年~5年といった中長期の期間を投資のタイムホライズンとして、投資先企業の企業価値の向上を目指すには、コーポレートガバナンス・コードの内容を十分に理解・活用して、投資先企業に提案・質問することがよいと思います。何故ならその提案は合理性のある提案と言えるからです。

コーポレートガバナンス・コードには、沢山の原則・補充原則がありますが、投資ファンド等のアクティビストが企業に提案するときに使う原則・補充原則とその使い方(=ここが個人投資家・個人株主にとっての武器になると言えます)を次回以降、解説をして行きたいと思います。