まじょのなみだ(22)
まだ薬が効いていないようで、起きたり寝転がったりを繰り返す中、
「あんた、一生懸命なにを編んでたん?」と母。
数日前、寝ているだけと思っていた母の横で、娘の体操服のゼッケン付けをしていたのを実は見ていてくれたんだ!
嬉しかった。
「体操服にゼッケン付けてたんよ。
もうすぐ幼稚園の運動会の練習が始まるんだって。
おゆうぎのダンスがんばるって気合入ってるから本番見に行こな~。」
母「あぁ、あぁ、そうやったんね。孫ちゃんの運動会、見に行かなあかんね~。」
それからも何やらずっと喋り出し、
よく聞くと会社の同僚に引き継ぎの話をしていたり、父に話しかけている。
その時そこには私しかいなかったのだけれど。
「あの書類は右の棚の中よ。」
「お父さん、犬を病院に連れてきたらあかんってあれほど言ったでしょ。」
なんて。
きっと薬が効いてきたんだろう、横たわったままブツブツ言い続けている。
寝付く前に聞いた最後の言葉は
「孫ちゃん、そんなところにもぐったら頭打つよ。気をつけなさいよ~。」
それが、母の最期の言葉になるとは知らずに、
私はやっと薬が効いて眠った母を見て、安心して病室を後にしたのだった。
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