まじょのなみだ(24)
病室に飛び込んで、対面した母は
酸素マスクを付けて、顎を突き上げたり下げたりしながらもはや
「息をさせられている」ような感じだった。
昨日までのように、話しかけても返事はしてくれない。
なんとなく目がうっすら開いたような気はするけれど。
しばらくして家族や近所の親戚、母の友達のおばさんたちが駆けつけてくれた。
母は親戚や仲間たちと集まって旅行したり、にぎやかに過ごすのが大好きだった。
みんなが母の周りは楽しくて、家族親戚だろうが友人だろうが混ざって
結局大所帯でワイワイとパーティーみたいになる。
その時のようにみんなで話して過ごした。
夕方、親戚たちは一旦帰宅し、母と父と弟としばらく過ごした。
弟は数日前、母に「後はまかせたよ」と
銀行口座や保険証書の場所などを言付けられたらしい。
父には「私はまだ死にたくない、死ぬわけにはいかない。」
と話したという。
私には雑談しかしてないし、何も頼まれてないな。
そういえば、病気になるよりずっと前に冗談で
「もしおかあさんが死ぬときは、ほっぺたがげっそりしてたら綿でも詰めてふっくらさせといてね。
前歯の差し歯も付けて口元がへこまないように。口が空いてたら閉めといてや(笑)」
結構頼まれてたな。
口のことばっかりやん。
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