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「響け!ユーフォニアム3」がやっぱり最高であったと叫びたい

2024年春アニメの中で丁寧な人物描写心抉る生々しい人間同士の関係性をこれでもかと描き切った作品「響け!ユーフォニアム3」に心を鷲掴みにされた。

これまでの1期、2期、劇場版も素晴らしかったが、3期はこれまでの黄前久美子の歩み成長を肌で感じることができる最高のフィナーレで目頭が熱くなった。
彼女の歩みをアニメという媒体を通して追体験していた視聴者は誰もが感動で打ち震えてしまうだろう。自分は全国大会でユーフォのソロを誰が吹くかオーディションを行ったシーンで自然と涙が零れてしまった。そこには、誰に対しても一定の距離を作り、傍観者を気取っていた彼女の姿はもういない。そんなことを考えてしまってより涙が滂沱の如く流れてしまった。

この3期の構成として、前半が黄前久美子部長として部員の諍いを宥め解決する部長奮闘記であったが、後半から彼女の内面にフォーカスを当てていく。
初心者と経験者、家族間のいざこざ、大会毎にオーデイションで生まれる不和、顧問への不信など今作もリアルな痛みや悩みが随所で描かれる。

しかし、3期は新キャラの黒江真由の存在が大きいだろう。彼女の包容力があって誰にでも優しいという評価と裏腹に真意の読めない行動で久美子を大きく揺さぶる。一目見て感じる彼女の異物感は本作をより面白く、複雑にしている。

新キャラ 黒江真由

「響け!ユーフォニアム」を見ると毎回思ってしまう。
誰も彼もが悩み苦しみ自分なりの考えを持って行動している一人の人間であると。
誰一人単純な人間なんていない、内に複雑なものを抱えていると改めて当たり前のことを再認識できる。
それはひとえに、ユーフォニアムに出てくるキャラクターたちの性格がデフォルメされ過ぎていないためであろう。アニメや漫画など創作物のキャラクターは多かれ少なかれ物語の舞台装置として都合よく感情行動を決められる。私たち一人ひとりの感情は相反する思いや複数の感情が重なり合った何とも入り組んで複雑さをともなう面倒くさいもの。そんな思いを分解してそれ単体で理解できる気持ちにパッケージングし、キャラクター毎に色を付けて付与する。それはキャラクターを理解しやすくし、特徴もはっきりとして受け入れやすいだろう。しかしそれは生身の人間の心の複雑さを排除することになり、キャラクターは架空の人物であると気づいてしまう。

そんな中、ユーフォニアムのキャラクターはそんなめんどくさい感情をそれぞれが解像度高く持っている。大小あるが皆、面倒くさいのである。そのキャラクターのめんどくさい感情に触れるたび生き生きとした躍動感を感じることができる。そういう所がリアルな心理描写に繋がり、私たち視聴者の共感を呼んでいるのだろうと思う。

京都アニメーションの映像美と表現力、それに丁寧で繊細なタッチで紡ぐ武田綾乃氏の物語が掛け合わされば凄まじい作品になるのは納得だろう。
是非、見たことのない方や途中までしか見ていない方は見てほしい。

そして感じてほしい、吹奏楽部による青春群像劇ここに極まれりと……


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