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明治大正漂う ロマン映画 アニメ「クラユカバ」感想

巷では今年、祝日が重なり最大10日のゴールデンウィーク。
旅行日和だとかなんとか言われておりますが、私は大して変わらない毎日を送っております。人の往来が増える現在、人混みを避ける習性のある私はあまり外出に出向くことは少なくなっております。

それにしたってお天道様を久しく拝んで無いなと思い映画でも観に行こうと思った次第なのでした。最近観た映画と言ったら人でごった返すことを見越してゴールデンウィーク前に行った「名探偵コナン100万ドルの五稜郭」くらいでしょうか。今作は爆発やアクションシーンなどケレン味は抑え気味でミステリーというもとを前面に出しており、コナンがミステリー漫画であることを再確認させる素晴らしい作品でしたね。勿論、観ているだけで楽しくさせるエンタメ要素も満載。
しかし、何か物足りない。特にマニアック度が。

そんな訳で、今回それらとは違った作風、違うベクトルの面白さを求めて見つけたのが今回話したいアニメ映画「クラユカバ」という作品です。

元々、この作品を劇場の予告で見たことがあったのですが、画面の作り、漂う明治大正の香り、紙芝居を観ているかのような独特の作風に惹かれ、今回ちょうどタイミングが合い観てきました。ちょうどその作品のスピンオフ作品として「クラメルカガリ」も公開されていたので同じ日に楽しませてもらいました。

「クラユカバ」「クラメルカガリ」公式サイトより

どうにも、本作品の監督 塚原重義氏はインディーアニメという言葉が定着する以前から活動しており、長年これらの作品を作り続け今回、同時公開と相成ったというわけで俄然興味を引くでしょう。

クラユカバ

あらすじ

 時代は和服と洋服が入り乱れ、街並みは大正レトロを思わせる建物の数々が所狭しと並び、自社を示す看板、広告は左から右に文字が綴られている昭和を感じさせる世界。
 そんな世界で、探偵である宗太郎に集団失踪の謎を解明してほしいと話を持ち掛けられる。詳しく訊くに、どういうわけか失踪した人物の周りには不気味な轍が残されるという。宗太郎は手がかりを求めるため地上の下に大きな空洞があるとされる地下領域「クラガリ」へと潜入する。
 そこで謎の装甲列車と遭遇し、その指揮官タンネと出会い物語が急速に動き出していく。

感想

前情報は特に持たず、ほどほどの期待感を持って観に行ったのですが、そんな自分の気軽さを蹴飛ばしたい程すごく面白い作品でした。

上映時間は61分と映画としては短い部類に入ると思いますが、時間なんて目に入らないくらい没頭でき、映画後のエンドロール時には本シナリオをまとめるのにぴったりの時間設定であると理解することとなるでしょう。
それでも、その世界にもっと長く浸っていたいと思いましたが、それは次回作を待つべきでしょう(「クラメルカガリ」については別で話します)。

本作品の特徴として独特な映像でしょうか。画用紙の上でアニメを作ったかのような、公園でやっている紙芝居をアニメーションの力で動かした風な、どこか郷愁を誘う映像美。相似な作品としてアニメ「もののけ」を想像していただける分かりやすいでしょう。その絵作りは見るものすべてを惹きつける魔力があり、見ているだけでワクワクすること間違いなし。さらに、その映像美に乗っかる昭和時代の風景が作品のクオリティを相乗効果的に高めあっています。
本作を通して、映像と時代背景のマッチ具合で作品をより面白く華やかなものにできるのだと感じることができます。

映像もさることながら場面の転換の早さ、テンポの良さも面白さの一助となっています。常に何かしら動きが差し込まれ、瞬きするのもためらわれるほどひっきりなしに映像が挟まれます。その一瞬の場面しか使われないシーンも緻密に書き込まれていたりと情報量は上映時間以上です。カットカットの情報密度が高いからこそ上映時間が61分であり、満足度が高いのでしょう。

他にも、独特の色味で塗装され様々な荷物を搭載しているごちゃっとしているようでスタイリッシュな風貌をしている装甲列車や二足歩行の砲塔のついた機巧など出てくる機械がゼンマイで動いている風でロマンを感じます。
はたまた、キャラクターそれぞれに魅力があり、特にいつも飄々としているここぞというときに命を張れる主人公の壮太郎や銀髪ショートで目に鬼灯色を灯し、軍人のような口調の皆から頼られる列車長などなど上げたら切りがない。

終わりに

これまで述べた通り、数々の面白さが内在している作品で見て損しないと太鼓判を押せる作品であるのでおすすめです。上映時間61分と短いのも今の現代人にとってありがたいことでしょう。



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