メンヘラホイホイ-30 人妻

基本的にお客さんは一般家庭が多い。職場では自称モテる歯抜けが
「〇〇さんってとこの奧さんが美人で見つめられちゃったよ」
なんて言ったりしてる。いいと思う。どうでもいいと思う。

俺も綺麗だなって奥さんはいるけれど、何か行動を起こしたりはしない。借金もあったし、ちゃんと返さないといけない。それでも運良く彼女ができたりして散財してる。

俺はお店の抱える半分の顧客を一人で管理していた。年間休日は50日間。有給なんてものは無い。
人が辞めたり、突然姿を消したら俺が毎回穴埋めしていた。休みだろうが風呂に入らない従業員の代わりにクレーム対応して、そんなのが一年続いているが、頼られるのは嬉しかったから頑張っていた。


とある美人なお客さんの奥さんが、ある時配達中に声を掛けて来た。毎回この人は会うとジュースをくれる。優しい人だなと思っていたら、愚痴を聞いて欲しいという理由で飲みに誘われた。

飲みに行ったら旦那とうまくいっていなくて、数年間セックスレスだと言う。結婚するとこう悩みって男女問わずにあるんだなと思った。

そして肉体関係を定期的に俺としたいと申し出て来た。


きっと飢えているんだろう。お世辞にも俺はイケメンとは言えない。

断った。


しかし、毎回会うとジュースのプレゼントは終わらなかった。
おまけに、バレンタインデーにはお客さんがチョコを持って事務所に置いていく。数十個のチョコは俺は食べない。あまり好きではないんだ。

原材料と形状を見て、あとは風呂に入らない従業員や歯抜け達が食べている。

ちなみに歯抜けは妻子持ちだ。正確には結婚はしていない。内縁の夫で、内縁の奥さんはバツ3で、過去に結婚した男性と一人ずつ子供を作り、養育費と慰謝料と国の母子家庭手当てで数千万の財産を持っているらしい。

その歯抜けが、ジュースプレゼントの奥さんの対応をしたらしく(由香さんという名前だ。)、その時に別の奥さんが俺にバレンタインデーのチョコを届けに来たそうだ。

由香さんはあろう事か、俺と肉体関係を持ったと歯抜けに話したらしい。

いや、俺はボディータッチすらしてねーだろうが。

それ以来、職場で俺は人妻キラーなんて呼ばれる始末。不愉快だ。

おじいちゃんの水元さんは
「頭のおかしい連中は相手にするな」
と、またまた癒しの言葉をくれた。

「結局人間の男女ってのは、お互いが欲求の対象物なんだよ。セックスなんて飽きる。そんな中で親友みたいに一緒にいられる人がいいんだよな。俺とぼっちゃん(俺のこと)みたいにな。ハッハッハ!」

ちなみに水元さんは昔はかなりヤバい人だったと思う。写真を見たけど普通の人じゃない。

今はこんな優しいおじいちゃんになっててさ。

水元さんと会って思ったのは、人間って真っ暗な世界を見ていないと明るい世界を認識できないんだよな。薄っぺらい上部だけの偽善的な戯言を吐かすやつはなんとなくわかる。



そういや歯抜け達の仕事っぷりは口だけだし、俺は所長に直談判して給料形態を丸ごと違う企画書を書いて提出したら、その案が通った。そして、所長の次のポジションについて1カ月に動く金の計算なんかも任される様になった。


職場でも長老である水元さんに逆らう人は誰もいなかった。聞いた話しによると、水元さんが所長に俺をそのポジションを推薦してくれたらしい。水元さんに会えた事はココに来て良かったと思える最大の理由の一つだ。


ある時、俺は所長に呼び出された。
「もう1店舗出す話しが出ているんだけど、〇〇君(俺)を推薦しておいた。良かったら2店舗目の所長をやってみない?」

やってみます。
俺は即答した。

目の上のタンコブは、1番最初に配達を教えてくれた先輩。
スペックを書いておこう。

名前:ブタ
性別:女性
性格:可愛いキャラ物グッズを愛用する私って可愛い。私って巨乳。
身長150センチ
体重100キロオーバー
趣味:ギャンブル
必殺技:集金の金を使い込みしても止まらないギャンブル癖。従業員の陰口。風呂に入らないので臭い。

このブタの借金の計算が面倒くさいのと、先輩風を吹かすのがまたダルい。

歯抜けと組んで、俺が女性客と話してるのを見ると、すぐにその女性客の文句を俺に言ってくる。

まぁ、自爆するタイプだろうな。
多分ダンプカーに轢かれても平気だから内部から破裂させないと倒せないタイプのクリーチャーってのが厄介だ。


そんなブタさん、体臭がクソみたいになり、おまけに風呂に入らない。太りすぎが原因で便秘らしい。すごい臭さだった。


2週間ほど臭いに耐えた俺達だったが、

ブタは背中にまで出ないクソが回り込み、入院したらしい。手術でクソを取り除いたらしいが、手術に立ち会った医者はみんな臭いで失神したとかしないとか。


そして、すごく美人な人が入社して来た。
考え方や振る舞い。全てにおいて魅力的だった。


久しぶりに自分から恋をした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?