おでんじじぃとおでんくん

おでんじじぃ、俺は勿論会ったことはない。
これは昭和の話である。俺が大学2年生の時の事。
友人のKが、家の近くのS11でアルバイトしていた。
今はレジ横におでん鍋置いてない店舗も多い。廃棄が多いからだ。
昭和の頃は、鍋で売っていた。
平成の終わり頃には、客が持ち帰り容器に詰めて、それで会計していた。だが、昭和は全部店員任せ。後に1品ずつバーコードでレジに入力していたが、まだバーコードは無かったし、POSシステムも無い単純に手動で入力するレジスターであった。
だからおでんの会計は面倒だったそうだ。何品かだけ買う人なら簡単だが、品数が多いと大変だったと言う。

さて、おでんじじぃである。
仕事は、俳優だったらしい。当時はウィークエンダーとかで、再現フィルムか全盛期で、ワイドショー番組では、必ず再現フィルムがあった。
おでんじじぃは、再現フィルムに良く出てくる俳優だったと言う。

なぜおでんじじぃなのか?
それは、彼のおでんの買い方にあった。
Kはちゃんと1品ずつ入れて売ろうとしていた。だが、おでんじじぃはせっかちらしく、「面倒だから、おたまでその辺を適当に入れてくれ」と言う。
言われたままにKが入れる。
すると「これは、800円くらいだな。もっと入れてくれ」
Kが追加で入れる。
「うん。これは1500円だな」
そう言っておでんじじぃは、1500円を置いて、おでんを持って出ていくのだった。
今ならこんなザルの売り方は出来ない。システム的に出来ない。
だが、POSシステムもバーコードも無い昭和では、それが出来たのだ。
尤もそんな事する客は、おでんじじぃしかいなかったらしいw

この話を俺はKから飲みながら聴いて、大笑いした。
そんな親父見た事なかったからだ。

うちのサークルにSと言う男がいた。
まだあだ名が無かった。そこで、俺が勝手にSはおでんじじぃに似てると言うことにでっち上げて、彼をおでんくんと呼んだのである。おでんくん、若しくはおーでんくん。
その後、彼にちゃんとしたあだ名が付くまでは、彼はおでんくんだった。

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