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カンボジアで監督をした話。

任地に来て1年が経過。
残り半年。
本当にあっという間だ。


全国大会出場!

先日、高校生の全国大会があり、女子バレーチームのコーチとして参加した。
州代表チームが戦う。
各州で3月頃に州大会が行われ、代表チームを決めていた。
(昨年11月の全国大会では、”高校生”というカテゴリーがなく、”女子バレー”だったので大人チームも出場していた。)


圧倒的な力の差で優勝した我がチームは、全国大会へ進む。
(まだまだ発展途上のカンボジア女子バレーなので、どんなサーブが入るかが勝敗を大きく左右する)

今回の全国大会では1日だけ監督をすることになった。
監督が仕事の都合で帰宅しなければならなかったからだ。


監督をする日の対戦相手はシェムリアップ州代表チーム。
前日にシェムリアップチームの試合を見て、我がチームの方が少し力が上のように感じた。他の人もコンポンチャムが勝つだろうと言っていた。
まぁ順調にいけばそうなるかなぁ、という感じ。


試合当日

しかし、順調になんていくわけない。
試合当日は屋内での試合。いつも屋外の土のコートで裸足で練習している選手たちは屋内コートでプレーをすることがとてもやりにくそうだった。(ちなみに屋内でも裸足)

高い天井。国際大会を行うような体育館で大会初戦ではなかったけれど、選手たちはいつも通り緊張していた。
試合になると顔が強張る。無言になる。これはいつも通りだった。


対戦相手のシェムリアップチームが前日よりもとても粘り強くバレーをしていたのが予想外だった。
決め手はなくてもボールを落とさないバレーを展開してきた。

そこで自らのミスで失点を重ねていく我がチーム。

監督の私にできることは、コート内の選手に励ましの声をかけること、選手交代、タイムアウトを取ることだけ。

本当の監督は試合中にあまり励ましの声をかけない。
私はそれがとても嫌なので、ひたすら声をかけ続ける。と言っても、言語の壁を越えられず、
「大丈夫」
「笑って」
「いいよ〜」
「もう一回だ〜」
という感じ。笑


1セット終了。25−27でセットを落とす。
頼りにしている選手が泣き出した。。。
彼女がいないとコート内がうまく回らない。
頑張ってくれ〜!!!!


私の考えは


選手交代については、できるだけたくさんの選手にコートに立ってほしいと思っていた。
技術の差があるので1セットを通して出続けるには厳しい選手もいる。そんな選手ほど経験が少ない。
でも、その選手は練習でたくさんサーブを打って来た。

私は監督よりも練習に参加してきた自負があるので、練習を積んできた選手には試合に出てほしい、自分が監督ならそうしようと思っていた。

しかし、選手たちの思いは違っていた。
「勝ちたい」とは思っているようだけど、自分が試合に出てミスしたり、負けたりするのが嫌らしい。この気持ちは分からなくはない。経験が少ない=成功の経験も少ない 彼女たちがそう思っても仕方ない。
でも、でもせっかく練習したんだから試合に出てほしい。

また、選手たちの中では序列というのか、この子は上手、この子は上手じゃない、という線引きがとてもはっきりしている。


期待の彼女

私は任地で練習している時から1人の選手にとても期待していた。
彼女は高校2年生。今まで試合に出たことはあまりない。レギュラーメンバーよりもバレーを始めるのが遅かったそうだ。
しかし、私が練習に参加するようになって約1年で一番技術の向上が見られた選手だった。(私が何か特別なことを教えたのではない。)
身長は低く筋力もないが、練習ではミスを恐れず持ち前の明るさで何度も挑戦していた。しっかり跳んでから打とうとする唯一の選手だった。
また、最近の練習もほぼ毎回参加していた。他の選手はレギュラーであろうとなかろうと試合前だろうと関係なく、忙しいという理由でよく休む。
彼女は最近の練習ではレギュラーメンバーと一緒にコートに入っていたので、ついに彼女もスタメンデビューかと思っていたが、大会初戦はベンチだった。

私は必ず彼女をコートに立たせようと思っていた。一番練習してきた攻撃で必ずチームの役に立つと思ったから。

そして、監督をすることになった試合。1セット目のスタメンは前日と同じにした。本当の監督に気を遣ったつもり。いきなり本当の監督と違うことをするのは選手たちの動揺が大きいと思った。

前述の通り1セット目は25ー27で取られる。
その後も苦しい試合展開となり、フルセットで何とか勝利。


5セットの間とても苦しかった。私。
とても暗い顔のコート内の選手達。
失敗しても成功しても表情は暗い。
ヤジとも取れる観客席からの声援。
選手交代を伝えると一気に表情のなくなるベンチの選手。笑


そんな5セットの中で私は期待の彼女を半分くらいコートに送り込んだ。
途中で交代のセットもあれば、スタートから出るセットもあった。

ところが、4セット目が始まる前、2人のレギュラーメンバーが私のところへ来て、「〇〇じゃなくて、●●を出して。」と言ってきた。
〇〇というのは、私が期待している彼女のこと。
まぁ大活躍したわけではないし、試合経験の少ない彼女が試合に出ることは他の選手にとって不安もあったのだろう。
代わりに●●を出して、と言ってきた●●は元々レギュラーメンバーで、主に守備的要員でコートに立っている。ただこの日は彼女の調子が悪い・・・。

私は、ここで選手達の思い通りにやる方が彼女達はスッキリとした気持ちでコートに立てるのではないかと思って●●を出すことにした。

両チームに疲れが見える中、何とか4セット目を取り、最終5セット目。
先に8点を取り少しリードしてコートチェンジを迎えた。

「今日サーブの調子の悪いあの選手の時に誰か選手交代しようかな」
と思って、ベンチメンバー数人に、
「あの子とサーブで交代しよう」
と言うも、全員に断られた。
最終5セット目にサーブで出て、自分が失敗してその後チームが負けたら。。。と考えたのかな。
「みんなコートに入りたくないの?私は入りたいよ!」
と言って少しの笑いを取ってみた。笑


あー疲れた。。。


その後チームは勝利!
勝利の瞬間ははしゃぎまくり、誰かに電話をし、抱きついてくる選手もいて、めちゃくちゃ嬉しいんやなぁと思った。
1勝することの大変さと楽しさを知ってくれたらいいな。


この試合、私の采配を見ていた配属先の同僚が、
「いい仕事をしたな。」と言ってくれた。
多分その話が本当の監督の耳に届いたのだろう。
翌日からの試合で私に大きな仕事が任された。


長いので
つづく。

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