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National Game ‼︎ 帯同・視察編

11月下旬、第3回となるカンボジアのナショナルゲームが開催された。
日本でいう国体のようなものだと思う。様々な競技で州の名前を背負って戦う。

私が日頃活動してる女子バレーチームが州代表として出場するということで、コーチとして帯同してきた。
ただ、州代表と言っても選考会や代表決定戦が行われた様子はない。チームとして参加できるのがうちのチームしかないんじゃないかな。

(カンボジアではバレーはとても人気なスポーツで、街中にもたくさんのバレーボールコートがある。家の庭に簡易コートがある場合もある。
ただ、女子のスポーツ参加はなかなか進んでおらず、各スポーツで女子のレベルは低いようだ。
それでも女性でスポーツ好きの人はたくさんいるだろうし、任地の川沿いでも毎晩エアロビやカンボジアの伝統ダンスをやっている人たちがいる。体を動かすことが好きな人も多い印象だ。)

普段活動する中で、感じていた疑問。


カンボジアの女子バレーのレベルが分からない。
ローカルルール?と思うことがたくさんある。
日本でやってきた、見てきたバレーとの違い。
カンボジアのバレーはこうだ!女子は下手だからこうなんだ!と説明されることに対する違和感・不信感?
大会に参加し、他チームを見ることでこれらの疑問が少しでも解消できるのではないかととても楽しみにしていた。

<自チームの状況>
・ローテーションはある。でも、ただローテーションしているだけなので選手たちは毎ローテポジションが違う。(バレーを知る人でないと分からないかな。うまく説明できない。日本でママさんバレーに参加した時、このようなやり方の試合もあった。)
・相手の攻撃に備える時は常に、”1・3・2”の守り方。”1”は常にセッター。
・セッターという役割の選手はいる。
・ブロックなし。
・バックプレーはお構いなし。でもセッターが後衛の時はちゃんと後ろからセットアップしている。
・3段攻撃はほぼない。バレーは、レシーブ・トス・アタックという3段攻撃を基本に攻撃するが、レシーブがセッターに返らないと2回目に触る選手が相手コートにパスで返球したり、ボールが高く上がっていたら2回目で打つ選手も多い。
・サーブの時、トスをとても高く放り投げる。
・カンボジアの街中で行われているバレーを見ていると、ほぼ100%1回で返球している。上でも書いたように、3段攻撃をしない。全てアンダーハンドパスで1回で返す。これが染み付いている選手たちはすぐ相手コートに返球しようとする。(ベトナム発祥の1回で返球するバレーボールがあるとも聞いた。2人対2人で行われることが多いよう)

挙げればキリが無いけれど、ローカルルールと思われるものがたくさんある。
どうしてこうなの?このルールでいいの?と聞いても、女子はできないから。男子はちゃんとしている。との返事が返ってくることが多かった。
なんじゃそれ。ナショナルゲームに参加するのにちゃんとしたルール教えなくてもいいのか?試合で困るのは選手たちなのに、と思って毎日イライラしていた。

でも、他のチームを見たことがないからカンボジアの女子バレーの試合は本当にこのような感じで行われるのかもしれない。
このモヤモヤを解消するために試合をたくさん観よう。と思っていた。


ナショナルチームでは女子バレーは8チームが参加していて、4チームずつの2グループに分かれて総当たりのグループ戦を行い、その結果各グループの上位2チームが決勝トーナメントに進む形式だった。

自チーム


自チームは予選グループ3戦全敗。しかもなかなかの大差での敗退だった。
バレーを始めて1、2年の子たちのチームと聞いていたのでそれも仕方ないかな。他チームはもっと長くバレーをやっているんだろうなと思う選手がたくさんいたし、そもそも年齢・体格が違う。
対戦したチームには全員大人のチームもいた。20代後半の人のチームもあるようだった。「女子バレー」という括りがあるだけで年代別に試合をすることなないようだ。出場できるチームが少ないことが原因かな。
ただ、他チームには10代前半でも上手な子もいた。年齢が違うから仕方がない、という言葉だけではすまされないと思った。もっと練習して上手にならないと!(コーチが張り切る。笑)

チームが予選敗退だったため予選終了後任地へ選手と共に戻ることになった。
選手たちは試合時以外はとても楽しそうにしていた。始めて首都に行った子もいたみたいで、目にするもの全てが新鮮。ましてやチームで遠征なんて経験ない。帰宅前日の午後は私服に着替えてお出かけしていた。
聞いたら、イオンに行くらしい。「何買いたいの?」と聞くと、「お金ないから何も買わないよ〜」だそう。「どうやって行くの?トゥクトゥク?」と聞いても、「分からない。歩いてかな?」と。いや、イオンまで歩くと1時間はかかるよ。。。
でも、とてもウキウキした表情で出かけていった。
遠征ではこういう楽しみもないとな!!


任地に戻ることになったけれど、今回のナショナルゲームに参加する個人的目的の1つが達成されていない。
「カンボジアの女子バレーのレベルを知ること」
決勝トーナメントを見たい。特に決勝はどんなレベルなのか。そのレベルを知ることで今後のチームに対する指導も見えてきそう。
配属先とJICAに話をして何とか決勝・3位決定戦を視察できることになった。
一旦任地へは戻るが、2日後にはまた首都へ移動した。

3位決定戦


3位決定戦はグループ戦で対戦したチーム同志の試合だった。
中学生のいるチームVS全員大人
予選ではフルセット(5セット)までもつれる接戦で大人チームが勝利していた。
中学生のいるチームもよく練習しているのがわかるチームだったし、コート内の役割分担がはっきりしていた。守る選手・つなぐ選手・攻撃の中心になる選手。ただ、大人チームには体格に恵まれた選手が何人もいる。攻撃面では圧倒的に有利だった。体力的にも大人の方が有利だと思う。涼しい時間に試合をするために試合開始は朝8時だけれど、コートは屋外。11月下旬でも太陽が出ているとまだまだ暑い。日本の夏と変わらない。
個人的に中学生のいるチームのプレースタイルが好きで応援していたけれど、接戦の末グループ戦と同じように大人チームが勝利。
確かに技術・パワー共に大人チームの方が少し上だったかもしれない。両チームお疲れ様でした。

決勝


3位決定戦の翌日、朝8時から決勝戦。
決勝進出チームはグループ戦で対戦していないので始めて見るチームだった。
どちらも10代の選手がいるようには見えない。
両チーム共に鋭角にスパイクを打てる選手が複数いて、エースと思われる選手がはっきりしていた。
セッターも大体同じ場所にトスを上げることができていた。
相手エースに対してブロックを跳んでいる場面が何度もあった。
サーブの威力もなかなか強烈だった。
コンクリートのコートだが、手や膝をついてでもボールを上げようとしている選手も多い。

やはり決勝だなぁと思うプレーがたくさんあった。(グループ戦と比べて)自チームとの一番の違いは、パスの精度だと思う。ボールの行き先はボールに聞いてくれーというパスでは試合は難しい。当たり前。何をするにも基本が大事だと再認識した。これをどうチームに持ち帰るのかが一番の課題。


上位チームの試合を視察し一番印象的だったのは、
「選手による審判への猛抗議」
一言で言うとあれはひどい。
特に優勝のかかった試合では選手たちの気持ちも熱くなり際どい判定に対してどちらのチームも猛抗議していた。少し試合が中断することもあった。
ある選手が主審に猛抗議し試合が数分中断したことがあった。他の選手の様子からこのまま試合放棄なんてこともあるのでは?と思うほどの空気感だった。納得のできない選手はずっと主審に抗議している。(抗議というより文句に見えてしまう)数分の猛抗議の後、主審は副審と線審を呼び何やら話している。その後、先ほどのジャッジはノーカウントになった。

「何でやねん!!!!!」渾身のツッコミを心の中でした私。
主審は最初は、自分の判定を譲らなかった。でも猛抗議を受け、審判団で話をした後に判定を変えた。
最初の審判の判定が正しかったのか間違っていたのかは遠くにいた私からは分からない。でも、主審は自信があったから抗議中も譲らなかったんじゃないのか、なのに最終的にはノーカウントに判定を変えた。これでは猛抗議をしたら判定を変えられると思われても仕方ないんじゃないかと思う。
頑張れ審判!選手側も審判に対する感謝の気持ちが足りないように思う。
来年、カンボジアではSEA GAMES(東南アジア大会)が開催される。バレーもあるので審判もたくさん派遣されるだろう。本当に頑張ってほしい!

猛抗議をしていたあの選手。試合後に話しかけてみた。(チームのみんなは何歳くらいなのか聞きたかった。)
まさかの私より1つ年上。そして体育教師らしい。衝撃。
勝利のために熱くなるのはわかるけど、試合中もマナーがあることも理解してほしいし、体育の授業でもそういうことを教えてほしいと思った。


まとめ・ナショナルゲームの前の疑問が解消された点


・ローテーションに関しては全チーム同じようになっていた。ローテはするけどその度にポジションが変わる。
・相手の攻撃に備えるときのフォーメーションは特にない。
・セッターは固定されているチームがほとんど。
・ブロックを跳ぶチームもある。
・バックプレーの反則はたくさんある。これに関しては審判もルールをよく理解して笛を拭くべきだと思う。
・3段攻撃を基本としてゲームが成り立っている。
・サーブのトスを放り上げている人はほとんどいない。低いトスを打っている。
・得点したらみんなで喜び、ミスした選手には手を差し伸べて声をかけている。
・どのチームも負けていて点差が開いてしまったら諦めモード。
・コート内の選手たちは試合中に試合球の行方を気にしない。誰かが拾ってくれるだろうという気持ちがある。
・初心者にはプレッシャーになるほどの観客の応援がある。


カンボジアのバレーはまだまだ発展中。これから東南アジア、アジア、世界へ進出していくための1歩を踏み出しているところ。
それを目の前で見れていることに感謝。
自チームから地道にコツコツと。

多くを求めすぎない!


自チームに対する考えは次回。

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