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GO WEST -早秋有明・西海路-

落ち着きのない行程

羽田T1スタバ

やれやれ、空港着直後からのT3→T1撮影ラッシュを一段落させてようやく朝食だ。今日は西九州3泊4日旅行の初日、同行者を早々に「先T1行って、何なら先に保安検査通っちゃって」とリリースして自分はというとモノレールをT3で降りてJALの国際線用ボーイング787-9やら撮影してからバスでT1に移り、とりあえず展望デッキから視界に入った機体全て撮ってからようやくいい加減朝食を摂らないとならないことに気付きダーティチャイとキッシュで朝食としたのである。

ボーイング787-9 JA871J
JA15XJ と…遠い…

2月の沖縄旅行でお世話になったJA15XJを再び撮れたのは良かったが、しかし展望デッキから割合遠いのでこれはまたいつかもっと至近距離でお目にかかりたいところ。X12コンフィグだから羽田以外だと千歳や那覇等だろうか…

JA614J TDL40周年塗装
JA615J ディズニー100周年塗装

こんな風にディズニーの特別塗装機なんかを見てはしゃいでいるが、先述の通り今回は同行者が居る。しかも飛行機は利用したことが何度かあるとはいえマニアというような程ではない、そのような人を展望デッキに連れ回してなんならノンストップ薀蓄披露なんてするのはいくら十五年来の付き合いとはいえ忍びない。そんなわけで筆者1人でよろしくやって、搭乗口前で集合としたわけである。

本日の搭乗は羽田発福岡行きのJAL311便、2023年夏ダイヤでは唯一のボーイング787-8(国内線用)での就航便である。実はこれ目当てで搭乗便をこちらから指定したようなもの、以後の行程からも無理なく選択できる候補であったのも魅力的。座席等の快適性はこの路線の主力であるエアバスA350-900と並び立つものだがこのボーイング787-8はJALに4機しかいない国内線仕様で、なおかつ多くは伊丹便に就航しているのでなかなかのレア運用でもある(とはいえ毎日運航なので狙いやすい)。
国内線用の787は一昨年の伊丹から羽田以来、しかも夜間のフライトだったのでまともに写真も撮れなかったのだが今回は昼前の福岡空港、折返しで自分が乗った機体をゆったり撮れそうなのも楽しみだ。

柱が惜しい緑ロゴ

保安検査を通っていよいよ搭乗、金曜朝の便なのでメインはビジネスパーソンだろうか。優先搭乗の列がかなり長いボーディングとなった、隣には緑のロゴも誇らしげなJA03XJが。なかなかしっかり撮れなかった機体なのでいつかはしっかり撮ってみたい。
そして搭乗機はJA846J、JAL国内線用ボーイング787の初号機である。全席にシートモニターがあり個人用電源完備、あとはWi-Fiに繋いでFlightrader24を開けば全身で飛行機を満喫できる。今回は曇りなので地上の景色を眺めつつその様子に思いを馳せるという楽しみが削がれたのは残念だが、GEnxエンジンの快い響きは何度聴いても素敵なもの。ドリンクサービスが終わって一息ついたあたりで琵琶湖上空、そこから中国山地を横断し高度を下げていったのだが…何かがおかしい、どうやら旋回しているようだ。FR24で見ていると旋回待機が始まった模様。

芦屋町上空でしばらく待機

目的地の福岡空港付近を見てみると空中待機している機体やゴーアラウンドした機体…これは良くないな、同行者にどうにもトラブルがあって福岡空港の滑走路が閉鎖されたようだ、その場合他の飛行機含めて着陸を順番にするのでしばらく到着が遅れるかもしれないと伝える。幸いにして行程にはそれなりに余裕があるのである程度の遅延は許容可能。そうこうしている内にどうやら着陸した機体もあって滑走路が再開されたようだと気付いたタイミングでアナウンスが入り滑走路に落下物があったようで点検があった、着陸はこれから行われるとの案内。結局少々遅れたが無事到着、それでも2時間程度あり、スポッティングと昼食の時間はたっぷり取ることができた。

J-AIRのエンブラエル170 JA211J
双日のガルフストリームG650ER N302TR
スカイマークのボーイング737-800 JA73NK 後ろにはJAL機も
アイベックスのCRJ700とANAウイングスのDHC8-Q400
JA211JとJA846Jの同時プッシュバック 後ろにはJA11XJも
JA846J×JA11XJ 次世代機ツートップの並び
JA11XJをアップで
続いてJA846J

さてここまで撮り終えるとお腹も減ってきたし何より次の時間がある。昼食を摂って列車旅の起点になる博多駅に向かうとしよう。

ラーメン滑走路「玉龍」にて

昼食は福岡空港名物のラーメン滑走路より「玉龍」にてラーメンと炒飯、実は日頃筆者はラーメンを食べることがあまりないのだが福岡に来たら話は別だ。これだよこれと言いつつ紅生姜をしっかり効かせてバリカタ麺を啜り込むのは何度やってもやめられない。
…ところでこの店、記事執筆時点(10月中旬)では公式ページが消滅しているということは閉店してしまったのだろうか。だとしたら貴重な体験だったということになるが。

洗礼を越えて

福北ゆたか線(篠栗線)快速

上の写真、実はこの時点で所定の予定よりちょっと遅れているのだが列車ではない、行程がだ。理由は最近話題になることが多い博多駅のきっぷ売り場、いやはやあそこまで時間が掛かるとは…十分問題なくリカバリが利くように行程を組んだのでさしたる問題ではなかったのだが乗車券のチケットレス化が進んでいない中でこれは考えさせられる。とはいえもう時刻表のピンクのページを暗誦できるような職員を始発から終電まで大勢貼り付けられる時代ではあるまい。結局オンライン決済及びチケットレス化のさらなる促進のみが現実解となっていくのだろう。

乗車予定の宇美行きの直前に香椎行きが

目的地は長者原、筆者としては4年ぶりそして同行者としては初めての香椎線である。4年前はこなれてきたであろう頃合いとはいえ最新型のBEC819系の実力やいかにというお手並み拝見という思いもあったが妹分が秋田に本格配属されてからも数年が経つ今となっては「いつもの電車」としての対面となる。ロゴや車内のモニタなどでの主張がなければこの車両が床下に大量のバッテリーを並べているだなんて気づく機会もあるまい。静かな走りぶりはこれまでの気動車に比べれば素晴らしいまでの快適さだと改めて思う。

宇美駅

ここからは香椎線を全線一気に走破、筆者としては2度目の乗りつぶしだ。そして終点の西戸崎からはそのまま電車で折り返してもいいが別途料金を支払ってでも使ってみるべき乗り物がある、その場へ歩いていくとしよう。

西戸崎駅から…
西戸崎旅客待合所へ

着いたは西戸崎旅客待合所、福岡市営渡船の待合所で博多港から志賀島までの航路が寄港する。西戸崎から博多港までは約15分の船旅で国際旅客船などの姿を見ることも出来る。博多港の港湾設備や後ろから続々やって来る福岡空港への着陸機を眺めるなんていう楽しみもあり短い乗船時間ではあるがちょっとした気分転換にぴったりの航路だ。今日の船は小型の「きんいん」。

渡船「きんいん」号
6倍近いトン数の双胴船「きんいん1」(2019年撮影)

香椎線から市営渡船で博多港は4年前にも乗ったことがあり、その際は大型の「きんいん1」だった。一般的な渡船のイメージと大きく異なる船に大いに驚き、空いているキャビンを大いに満喫したものだったが今回はうってかわっての小型船、これはこれで楽しいものでオープンデッキで風を感じつつ周りの景色を楽しむ。クライマックスは博多港、さてどんな船がいるか…

招商伊敦号
海上保安庁 巡視船CL122 ふよう

中国のクルーズ船「招商伊敦(Zhao Shang Yi Dun)」と海上保安庁の巡視船「ふよう」を船内から眺めることができた。クルーズ船としては小型とはいうものの近くを通る船から見ると迫力はバッチリだし、国際クルーズ船が日常の光景として居るというのもやはり活気を感じられる。

https://www.kaiho.mlit.go.jp/07kanku/aboutus/sentei/fuyou.htm

そこからはバスで移動し地下鉄に乗り換え、西鉄新宮駅に。ここも一昨年末に訪れたのだが明るい時間に来たのは初だ。また前回は西鉄線で来てJRに乗り換えるべく足早に立ち去ってしまったので駅舎内をのんびり見るのも初。

駅入口
渡船の案内も掲示

今回は訪れなかったもののこの新宮町には「猫の島」と知られる相島があり、町営渡船「しんぐう」によって結ばれている。「船旅」というと長距離フェリーがクローズアップされがちでもあるがこういった小型の船で渡るのもまた楽しい、いつか乗ってみたいなこれ…

さてここからは同行者初の西鉄線、と言っても筆者的には二度目の上に既に暗くなった夕ラッシュのためこれといった撮影などもできず…混雑がかなりのものだったが5000系のモータ音をたっぷりと堪能し到着するは大牟田駅、ここからはJRの普通で博多に戻る。そう、普通なのである。
何かの縛りプレイでもなんでもなく、単純に快速がない時間となってしまっていた。とにかく長い…雑談しつつ、居眠りし、更に今後の行程の調整まで行いようやく博多駅に。今日はここから最後にちょっと立ち寄るところがあった。

2人*往復となると壮観

筆者4年ぶり、同行者は初の博多南線だ。500系も乗るのは初めてとのことでなんとも貴重な体験となったようで…筆者も500系初体験はここだったななどと思いつつ乗りたかった区画に言葉巧みに誘い込もうなどと不埒なことを考えつつ新幹線ホームに向かう。

N700系のこの曲線が面白い
東京を夕方に出たのぞみ号

少しでも長く500系に乗りたく入線と同時に乗車、さすがに時間も時間な上に博多南駅の構造上出口からかなり遠いのもあってお目当ての区画に乗ろうという人自体片手で収まる程度、更にこことなるとだいぶ余裕がありあっさりと確保に成功した。

500系先頭部

独特の車体断面が最もよく現れた最前部、500系以外ではここと運転席の間に乗客向けのデッキがあるのだがそれを設置する余裕すらなかった(在来線特急車では見慣れた構造ではあるが)。独特の座席配列は東海道新幹線からの10年程度での撤退の遠因になったのではないかとも言われるが、その時自分たちを栄光の直通のぞみ運用から追い出したN700系初期車は次々廃車になる中でもいくらか勢力を削がれつつも置き換えなどの話が聞こえてこないあたりやはりこの車両は只者ではない何かを感じざるを得ない。

床置きの荷物棚
車体断面がはっきり現れる
最前列の棚はYS-11並?

がら空きなのを良いことにこの特徴的な区画を堪能、ゆっくり…といっても100km/h位は出ているわけで先程までの813系と比べると際立った静けさには驚かされるばかり。あっという間に博多南駅に着きひとしきり駅舎を撮影したらすぐに戻るとんぼ返り。

折り返し待ちの間にも入庫列車が

帰りはまたまた500系の魅力を楽しむ場所に、少し歩いて6号車に乗り込む。

これも特急料金100円
往時を思わせる車内

この車両は元グリーン車、座席はそのままなのでグリーン車時代の豪華な内装をほぼそのままで楽しめる。2+2シートの指定席車両は4,5号車も同じなのだがそれらはひかりレールスターの700系E編成と同じ座席、そのため元グリーン席を楽しめるのは6号車だけの特権だ。博多行き最終列車ともなると誰も他には乗っていないようで、ガラガラの車内を満喫して博多駅に。
そこからは櫛田神社前駅まで初乗車となる七隈線だが、ひとまず今日は挨拶程度に。すぐに降りてドーミーインに滑り込む。

こことあそこのショートカット

ドーミーインの朝食は何度いただいても満足するばかり、なかなかお値段が張るとはいえ朝からこれがあれば1日中満足できる。
さて、今日は少し歩いて祇園駅から地下鉄に。筆者初めての筑肥線(電化区間)に乗ってから松浦鉄道に向かう。乗り込むは福岡市営1000N系、設計には国鉄の車両設計事務所が関与し「理想の国電」を体現したとも言われるだけに乗り込むとなんとなくあの頃の国鉄電車らしい雰囲気がある。対する国鉄は103系、これでは比較するもあまりに酷な話で1980年代にもなったならせめて東京と同じ203系でも入れられていれば良かったのだろうが…

座席や木目が「あの頃の国鉄」っぽい?

姪浜で305系に乗り換え、木張りの床をなるほどこれかと眺める。地下鉄車両でこれが導入できたというのもなかなかすごい話だな…と感心し海を眺めていると筑前前原。ここで折り返す列車は多く、福岡空港ー姪浜・筑前前原の6両編成から筑前前原ー西唐津の3両編成というのが基本的なパターンだ。

ある意味懐かしい車内?

時折車内から海を眺めているが、ここはあくまで通勤電車が行き交う路線。朝晩には福岡都心に直通する電車が走っているのにこの景色というのは山陽本線の明石付近などのような印象的な車窓となる。路線柄が路線柄だけにJR九州十八番のD&S列車運行などもおそらく難しく305系の先頭車でささやかながら雰囲気を盛り上げるまでかもしれないが、ちょっとした非日常感はいいアクセントになると思う。

国鉄色!
これも先は…?

MT55の音を楽しみ唐津駅に、ここから列車を乗り換えて山本駅に行くべく乗り継ぎ待ちだが時間調整のため停まっているところをパシャリ。この103系もそこまでこの先長い活躍が約束されているというわけではない、地下鉄直通が305系に替わってから一段落となってはいるがその先はどうなるだろうか。迷うくらいなら撮っておいて・乗っておいて損はするまい。

ロマンシングサガ ラッピング車

ロマンシングサガのラッピング車両で山本駅に、ここから伊万里に行きたいのだが筑肥線は次の列車が昼で2時間近く待つことになる。今後のスケジュールを考えるともっと早く行ける術はないか…ある、というか今回のスケジュールはこれを前提としたものだ。

11:07山本駅発のバス(博多BT9:33発)で移動すれば11:38に伊万里駅に到着できる、そうすれば12:40発の松浦鉄道線佐世保行きに余裕を持って間に合うという寸法だ。筑肥線は唐津発12:08が乗り換えできる最速の列車なのだがこれの伊万里着は12:57で間に合わない。この距離をショートカットできるバスは今回かなりありがたい存在となった。

環境啓発ラッピングのMR-612

ここからは松浦鉄道、伊万里から有田は一昨年乗車したがこちらの普通鉄道最西端駅のたびら平戸口駅を含む佐世保までの区間は初めてだ。国内最西端の駅(※ゆいレール那覇空港駅)は2月に行ったが、それに次いでの普通鉄道駅である。
しばらく乗っていると一つ気付いた、似たようなホームの駅がこの路線にはすごく多い。単式ホーム(おおよそ中央に黄色い点字ブロックがあり、簡単な待合室と柵が設けられている)の駅がいくつもあり、中には一部の交換駅でも片側のホームだけこの構造になっている。これはどういうことなのか、それを知るにはこの路線の歴史を紐解く必要がある。

旧国鉄キハ20形 茨城交通(撮影当時)に譲渡されたもので現存せず

元々この路線は私鉄として開業したものが戦前に国有化されて以降国鉄線として運行されてきたのだが、国鉄の経営が危機的なものになるにつれ鉄道である必然性が低い路線とみなされていった。この路線の佐世保側は石炭運搬を目的とした佐世保軽便鉄道をルーツとしていたのだが、同じ佐世保軽便鉄道が運炭路線として整備した支線である世知原線や臼ノ浦線、柚木線は特定地方交通線としての存廃問題にすらならずに1970年代初頭までに全て廃線となっている。
第2次特定地方交通線として廃止承認がおりて、協議の結果第三セクター鉄道への転換が決定。最後の1年間はJR九州の路線として運営され1987年5月の全国植樹祭で民営化後初のお召し列車運行を花道に(国鉄→)JR路線としての歴史を終えた。
なお第2次特定地方交通線は松浦鉄道の他にも伊勢鉄道やわたらせ渓谷鐵道等の第三セクター鉄道を生み出したが、北海道ちほく高原鉄道や高千穂鉄道は最終的にバス転換になってしまっている。その他佐賀線や志布志線など輸送密度で言えば当時の松浦線に匹敵する程度でありながらバス転換となった路線もあった。

だが地域の公共交通としての松浦線改め松浦鉄道西九州線としてはここからこそが本当の挑戦のスタートだった。同社はその後3年間で21駅、その後も駅新設を進め合計25駅(+博覧会に伴う期間限定の1駅)を設置した。現在同線の駅は合計57駅のため、実に半分近い駅が転換後に新設された駅ということになる。利便性向上のための新駅はよく聞かれる話だが、ここまで駅が増えた例は相当珍しい。
そして上記の駅新設が進んだ1992年に列車を大幅に増発した。こちらはその後の利用客減少に伴いある程度列車本数が減ってしまったものの、現在の運行体型の基礎に繋がった。増発に伴い真申・上相浦駅では国鉄時代に撤去された交換設備を復元させた。

この松浦鉄道ならではの事情により短期間に集中して駅・ホームの新設が行われたので乗っていると似たようなホームが何度も目に入ることになる。何気ない光景で見落としてしまうのも無理はない話だが、かつてのこの路線の試練とそれに対する挑戦の奇跡として印象深い光景となった。

車内・後ろ側から
車内・前側から
佐川急便の貨客混載スペース

松浦駅直前で乗客が自分たちのみになったと見るや車内を撮影…と同時に興味深いものを見つけた。松浦鉄道では2019年から松浦駅と潜竜ヶ滝駅の間で佐川急便の宅配荷物を輸送しており、平戸営業所近くの松浦駅から佐世保市江迎町向けの荷物を列車で送る。これによって朝平戸営業所を出た配達車両は午後営業所に一旦戻って荷物を受け取る必要性がなくなり、効率的な配達が可能になったとのこと。

松浦駅ではしばらく停車時間があったのでトイレに行くことができたのもありがたい。その次の駅で、転換後に新設された駅の一つでもある松浦発電所前は九州電力および電源開発の石炭火力発電所の最寄り駅。合計4機の容量は370万kWと東京湾内の主要な火力発電所であるJERA袖ケ浦火力発電所に匹敵し、1,2号機が運転されていた頃の玄海原子力発電所をも凌ぐ60Hz電源の重要な拠点となっている。

た…立木が…

鉄道ファン的にはそこから少し進むといよいよたびら平戸口に着くのがハイライトになるだろうか。ゆいレール開業に伴い厳密な意味での日本最西端の駅というタイトルは那覇空港駅に譲るものの普通鉄道や非電化路線の駅としてはいまだ最西端のタイトルを保っている。普通鉄道については沖縄での鉄軌道整備が今後進展した場合そちらに譲る可能性が十分あるものの、非電化路線での最西端というタイトルを今から返上するというのは考えにくい。

ホーム真ん中に構内踏切

ここまで来ると佐世保に向いた移動が多いエリアが近づいてくる。海からは早々に離れて内陸を走る区間となり臼ノ浦線が分岐していた佐々駅まで来ると車両基地がある。ここの車両基地で松浦鉄道所属全車両のメンテナンスが行われており、また同駅から佐世保駅の折返し列車も多く運行されていて最盛期には20分毎の運行がなされていた。黒島天主堂で有名な黒島までのフェリーが出ている相浦駅を出ると海とは別れを告げ佐世保市街地の乗客をこまめに乗せながら市の中心部に走っていく。中佐世保から佐世保中央は道路一本を渡るだけとも言えるような駅間距離200mの区間で、もちろんこれは普通鉄道の駅間としては日本最短。街中とトンネルを行き交うような車窓を眺めているともう終点の佐世保駅だ。

江北行きYC1系

すっかりこの地域のヌシになったYC1系の普通列車で武雄温泉に向かう、佐世保線は有田から早岐を除いて初乗車となる。武雄温泉から江北はお預けとなるが、今日のハイライトが目の前に近づきつつあるという興奮でそれどころではない。心は既に武雄温泉駅に飛んでしまっていた。

見えてきた高架橋

いよいよ武雄温泉駅、この旅行の最大のポイントの一つが迫ってきた。ここまで来たらもちろん西九州新幹線に乗り込む、開業からちょうど1年を経て初めての乗車となる。乗り継ぎ用のホームを見ながら駅に降り立つと…えっ何この赤シャツの人たち…すごい人数…?

この日は1日限りで自由席乗り放題のフリーきっぷが3,000円(大人・小児半額)で販売されていたのだが、驚くべきはその券。最近のトレンドと言うと電子チケットなどだし、伝統的なものでは紙の切符だがこれはTシャツをきっぷにするというとてもユニークなもの。これで多くの人が訪れていたのだから駅構内も真っ赤に染まるのは道理というもので、駅前の催事会場なども凄まじい盛り上がりを見せていた。穿った見方をするならば昨年はまだ盛大に催事を催すのにも抵抗感が残っていたので、ここでリターンマッチともとれるかもしれない。とはいえここで名産品などの展示販売などもありこうして現地に出て本物を見るというのはやはり気分のいいもの。

新幹線を機に整備された駅舎
ロゴの貼られたかもめ号
先頭部も車両がよく見える

さて武雄温泉以東では新幹線整備の方向性が確定していないため、当面は賛否両論ある中だがここで乗り換える体制が続く見通しとなっている。そのため武雄温泉駅では博多からの特急電車と長崎への新幹線の乗り継ぎが重要なテーマとなる。JR九州にとってはこれは慣れた話で、2003年に九州新幹線がまず新八代から鹿児島中央まで開業した時に博多からの「リレーつばめ」と「つばめ」を接続させる際に用いられた対面接続方式を今回も採用。この対面接続方式は上越新幹線でも用いられE7系投入および275km/h化・新潟駅高架化に伴う対面接続導入・E653系投入によって東京対庄内の速達化にも貢献している。

乗り継ぎ先列車まで含めた案内
乗り換えホーム 左側に在来線特急が入線

同じ列車として案内しているため新幹線は長崎駅の時点で「博多行き」、在来線は博多駅の時点で「長崎行き」として案内しており、最終目的地が想起できるようになっている。といってもその接続列車により1本だけ西九州新幹線に「門司港行き」が生まれたのはご愛嬌。

指定席車両の座席
車内の様子

Tシャツきっぷは自由席のみのため指定席は嘘のような静けさだった。車両は最新鋭のN700S系で全座席にコンセントがあるのもありがたいところだが全駅停車の便ですら30分程度の乗車時間ではあくまでも本格的な充電は難しいと割り切ったほうが良さそうだ。テーブルも肘掛けの間に小型のものがあるばかりだがこれはそもそもあまり大きなテーブルがあってもお世話になる機会自体無いだろう。最新の線路だけに揺れもほぼなく快適そのもの、一昨年乗った長崎本線の有明海沿いの線路とはあまりにも大きな違いがある。

長崎駅にて
開放感のある長崎駅

開放感のある長崎駅は在来線と一体で整備されたもので、広々とした構内ながら屋根も大きく取られているので雨に濡れる心配もない。ここに新幹線とハイブリッド車が出入りするのが最新、そしてこれからの長崎駅になる。

YC1系の4両編成

せっかく来た長崎駅だが、早くも次のシーサイドライナーで移動することになる。すっかり慣れたYC1系で初めての長与周りルートに乗車する。このルートは元々長崎本線の「本線」だったものの1972年に電化を見据えた市布周りのルートが完成した際に優等列車が通過する路線の座を明け渡し、地域輸送のための列車が走るためのひっそりとしたローカル線として今日も役目を果たしている。シーサイドライナーといえば諫早から大村線を経由して佐世保に向かう長崎県の都市間列車だが、元々福岡から長崎を目指す路線はこの大村線周りで後に有明線として造られた路線が現在の長崎本線である。長与周りのシーサイドライナーは長崎県の鉄道の歴史を体現するような列車とも言えるのかもしれない。

長い構内はかつての栄光の証

そんな長与周りのルートだが、ただ単に余生を送るような路線というわけではない。西九州新幹線開業と同時に武雄温泉から長崎で運行開始したD&S列車「ふたつ星4047」では午前中の往路が長崎本線、日没時間帯にかかる復路が大村線経由となっているが諫早から長崎は往復ともこの長与周りとなっており大村湾の車窓を乗客に提供している。

大村湾の景色は諫早付近で主に見られる

大村湾の眺めをじっくり楽しんでいると市布周りの路線と合流して諫早駅に到着、こちらはトンネルが多く格段に線形が良いため新幹線開業までは特急列車が行き交う幹線らしい区間で普通列車の本数も長与周りより多い。また長与周りの普通列車が約45分程度掛かるのに対して市布周りの普通列車が約33分程度とより早い。同じYC1系で運用されているだけにルートの差がはっきりと現れる区間だと言える。

宵闇迫る諫早駅

諫早駅からは島原鉄道、現在鉄道博物館に収蔵されている1号機関車が後半生を過ごした場所としても有名だ。終点の島原は熊本と大牟田からフェリーで結ばれており筆者が一昨年長崎県を初めて訪れた際も熊本からフェリーで島原港に降り立って島原鉄道で長崎に向かっている。すっかり日は暮れたが車内は結構賑わっており最後部に陣取って後ろの景色を眺める。

列車はひた走る

外では花火大会が催されており夏の暑い中だったがこれには乗客も色めき立つ、見える時見えない時はあったものの車窓の合間に花火が登場する度に車内がどよめき明るいムードに包まれる。名残惜しい気もするが下車駅が近づいてきた、ここで降りよう。

花火大会はまだ続いていた

花火大会がクライマックスを迎える中での多比良駅、この近くの港から有明フェリーに乗って長洲港に向かい電車で熊本に向かうのが今日最後の移動だ。最終便が多比良港20時で日程の自由度が高い上にコストも掛からない。速く行くだけなら西九州新幹線からリレーかもめで新鳥栖まで行き、九州新幹線で行けば列車のタイミングによっては更に早く着くが7,500円程度掛かるのに対してフェリー代が500円。

今回利用したきっぷではJR私鉄とも普通列車乗り放題なので追加の出費がフェリー代のみで新幹線といい勝負ができた、使い方にもよるがかなり魅力的なルートの一つと言えるだろう。

徒歩乗船入口
フェリーターミナル、ただし営業時間外

穴場ルートの一つだが徒歩乗船の場合注意点が一つある、フェリーターミナルは夜間は閉鎖となっており乗船券を買う場所が無い。では料金をどう払うのかというと乗船後に船内の売店で乗船券を買い求め、下船時にその乗船券を係員に手渡すという形で運賃収受を行っている。

長洲港からのフェリー到着
到着直前に向きを変える
後ろを向いて到着

左舷が赤色灯、右舷が緑色灯…これは国際的に決まっている航海灯の配置なのだが航空機についてもこの原則が踏襲されている。航空機では一般的に左舷側から搭乗するのも含め船舶から引き継いだ流儀のものがかなり多いというのもポイントだ。船は下2層が車両用で乗客は一番上の層に乗る。
乗船するのは「有明きぼう」、就航から10年経っていない比較的新しい船である。

一般席
営業前の売店とグループ用の席
屋外の席

売店はすぐには開かず出航の頃に営業開始となるのでその前に船内をウォッチング、全席自由席でどこに座っても良いのだがとりあえずどんな席があるかを眺めて回る。前方を向いた席がメインだがグループ用にファミレスのような席もあり、また背中合わせのロングシート然とした席もある。ちなみに車いす用の席もこの付近に用意されている。しかしこの赤の座席、3-4-3ということ配列はなんだかボーイング777あたりのエコノミークラスを彷彿とさせるような…乗船客用のトイレは屋外席の画像でいうと右側にあり、自動販売機の近く。

銘板 これを探してしまうのもサガか…

あれこれ見て回っている内に出航時間となり、売店も営業を始めた。乗船券を買わなければならないのだがせっかくならちょっとつまむ物が欲しいし、御船印も欲しい。ということで早々に売店に出向きこの3つを注文、ちくわは地元の「みゆき蒲鉾本舗」が有明海の鮮魚から造ったもの。短い乗船時間のいいアクセントになりこれは是非乗船時に探してみて欲しい。

有明フェリー3点セット?

船は夜の有明海を進んでいく、夜の船旅ということでいかにもロマンチックな雰囲気だが、実際には街明かりなどが見えなくなるほどの沖合というわけではないので寂寥感などとは縁遠いのは否定できない。それでもエンジン音と波の音だけが耳に入ってくると船旅というものの面白さを改めて感じる。暗い中で船に乗った経験が実はこれまであまり無く、真っ暗な中の水平線の街明かり、足元の波濤、生ぬるいというかまだ暑さという言葉が適切な気温、新鮮な刺激をたっぷり楽しめた。まあその代償かほぼずっと外デッキにいたわけだが…ちなみに船内には筆者が見た限りコンセントなどはない。充電が欲しい方は注意されたし。

遠くですれ違う有明フェリー
長洲港フェリーターミナル

ここからは近くの長洲駅まで歩き、815系の普通列車で熊本駅に。駅前のスーパーホテルに宿泊して一夜を明かす。気がついたら旅も折り返し、さて明日の行程やいかに…

細かな塗りつぶし

割と爽やかな朝となった、気温もいい感じに下がってきて夏も終わりということを感じさせてくれる。今日は熊本電鉄の御代志まで乗りつぶしてから市電の健軍町まで行ってから佐世保線の残りを回収し、福岡県内の支線などを乗っていくプランだ。
御代志までは2回目なのだが、移設前と移設後を見比べられるのは僥倖なものでこの駅の使命を改めて見ることが出来る…ということでまずはJRで上熊本駅まで移動してから北熊本乗り換えで御代志を目指す。上熊本駅までは1区間だけの815系、昨日もお世話になった熊本のヌシだ。

815系…と背景の817系
何やら東京の後輩っぽいカラーリング
車内もくまモンがずらり

ちょくちょくXで話題になる「くまモンを見てはいけない熊本旅行」でなら即帰宅どころか数年間は出禁を食らいそうな()派手にくまモンがあしらわれたデザインの電車だがこれはデザインのベースがこの01系を置き換えた東京メトロの1000系カラーではないか。元の所属のイメージを踏襲しつつご当地を織り交ぜた面白いデザインの電車だ。車内はだいぶ余裕があり乗客は数人と言ったところ、日曜朝の郊外に向かう方向としてはこんなものか。ゆっくりと走っていって終点の北熊本で向かい側に走ってきた03系に乗り換える。

新しい御代志駅ホーム
駅舎入口
機能が増えた駅舎だが、それでもコンパクト
駅前広場
比較:2019年8月の旧御代志駅

御代志駅は昨年(2022年10月)に現在の駅に移設が行われ、同時に定期券などの売り場やトイレなどが設置され鉄道からバスやその他の二次交通への接続拠点としての設備が大幅に充実した。

元々熊本電鉄菊池線はその名の通り御代志から先の菊池駅に伸びていたのだが1986年にその区間は廃線、その際に御代志から菊池方面を中心としたバスへの乗り継ぎができるように駅構内が整備されたという経緯がある。今回の移設でもその役目は変わらず、それでいてシンプルでありつつも乗り継ぎが便利にできるような構造に生まれ変わった。

線路を増やせる準備がある
分岐点と思しき場所までは比較的距離がある

北熊本まで帰ってきたら今度は市電に乗るために上熊本まで戻る、ほぼ無人だった行きに対して帰りは休日朝の都心部に向かうだけあってそれなりの利用がある。交換するときの反対方向を見るとそちらとは大きな利用客数の差があり旅客の流れがわかる。北熊本では01系がもう1本、こちらは現役時代の銀座線カラーだ。

留置されている01系(ホーム通路から撮影)

上熊本からは健軍町まで懐かしいようなデザインの路面電車、1090形1096号車に乗っていく。1955年に導入された188形をワンマン化の際に姉妹車の190形と併せて改番したもので、市電廃止計画が撤回された時点で冷房化・更には10年ほど前にリニューアルが行われている。

1096号車

熊本市電は2025年度の上下分離化や延伸案など今後も注目すべき要素がいくつかある。折しも熊本という都市全体が地震からの復興の途上でTSMC進出に代表される半導体企業の進出による「シリコンアイランド」復権の流れの中で大きな変化のうねりの中にいる。鉄道で最も象徴的なトピックというと肥後大津で豊肥本線から分岐して熊本空港を目指す空港連絡鉄道だろう。もう少し広域に目を向けると肥薩線の今後というのもこのカテゴリに入ってくるかもしれない。熊本城が完全に地震に関する修復を終える頃、この街あるいはその交通網はどうなっているのだろう。

低床車9700形
1200形

帰りはこの後の移動のために熊本駅前に、乗車するは先の1090形の後輩にあたる1200形で地元信用金庫の広告電車でもある。吊り掛けサウンドをたっぷり堪能しながら現代的なサイドリザベーションおよび緑化軌道の熊本駅前に降り立つとこの路面電車の辿ってきた景色がますます長いことを願わずにいられない。

ここからは九州新幹線で新鳥栖まで行く…のだがこの先の新幹線と特急の乗り継ぎでどういうわけか乗車予定の列車のみがだいぶ混雑していて指定席が取れずに自由席を発券するつもりだった。まあしょうがない、どんな感じなのだろうとネット予約を見ているとあれっ、買えちゃうじゃん…ということで筆者1人のみ指定席と相成った、同行者すまん。

800系U006編成

800系の中でも新八代開業後少し経って増備されたU006編成に乗車、そういえば800系はここで初めてとなる。JR九州初の新幹線として大いに注目されたこの800系も気が付いたらはやデビューから20年、一般的な新幹線車両であればそろそろ置き換え車両などの話も聞こえてくる頃合いだがこの車両についてはどうなのだろう。

U008編成@新鳥栖

指定席で間違えた人が座っていたというちょっとしたハプニングもあったが特に問題なく解決しそこからはあっという間のつばめ号、トンネルが多い九州新幹線を北に駆け抜け新鳥栖駅に着くと向かい側には回送のU008編成が。少々異なって見えるがこちらは博多延伸時に増備された1000番台で車内の壁面に金箔を使ったことが話題になったもの。前頭部のライトが膨らんで見えるなどの仕様の違いを見つつ在来線に乗り換え、そこからは早岐まで885系「みどり」で移動する。名前がなんとも不思議な「白いみどり」だ。

「白いみどり」885系

コンセントはあるのだが形状がどうにもスマホ用の充電器には使いづらい、ちょうど設置された時代が時代なのでこれは今後のリニューアルに期待ということだろうか。一方大型荷物置き場がありここは時代を先取りしている。車内のデザインは登場20年を経た今もゆったりくつろげる空間という印象であり、今後の展開にまだまだ期待できるだろう。

青いキハ47

西九州新幹線開業に合わせて長崎本線は肥前浜から長崎まで非電化となったがそこで運行するために改修されたキハ47が入換を行っている。見た目は綺麗になったとはいえだいぶ年季の入った車両であり10年間は並行在来線をJRが運行するという方針のためその見直しのタイミングで今後どうしていくのかという協議などが行われるのだろう。明るい時間では初の乗車となる大村線、YC1系区間快速シーサイドライナーに乗って諫早を目指す。

早速見られるハウステンボス
小串郷駅の改札口
大村湾の眺めは格別

昨日の長与周りのルートと並びD&S列車「ふたつ星4047」のルートに選定されるだけのことはありこの路線も見事な景色を眺めることが出来る。運行時間からするとサンセットビューは難しいのだろうか、しかし黄金の陽光の中の大村湾や列車はさぞかし美しかろう。

新幹線諫早駅
入線してきた「かもめ」

諫早に着いたら即折返し、新幹線と特急を乗り継いで鳥栖まで向かう。滑り込んできた新幹線はなるほど確かに指定席が満員、その中で弁当をいただくが今日は様々な具が入っていてバラエティ豊かな「鉄道開業150周年記念 九州巡り旅弁当」。九州各県の名物が散りばめられていてボリュームも十分。

肉系のおかずが多く満腹感がある

食事をしているとあっという間に武雄温泉駅に着く、ここで「指定席 4号車」と書かれた券面に従いリレーかもめに乗り換えるのだが…

この高い天井は!?

787系名物?の元サハシのビュッフェ区画に乗車することになった。この車両は元を辿れは博多から西鹿児島(現:鹿児島中央)までの特急「つばめ」に投入され、その目玉として導入されたビュッフェ車両だった。九州新幹線が新八代まで開業した時点で乗車時間が大幅に短縮されたのもあり営業を終えてその区画を普通席に改修したのだが、ビュッフェ時代の目玉だった独特の高い天井などはそのまま維持され今に至るまで独特のオーラを放ち続けている。いつかこの区画は乗ってみたいと思っていただけにこの思いがけない出会いには大満足、ただ網棚がないので大きな荷物を持った人は要注意。

ED76 81
783系ハウステンボス色
815系普通列車

鳥栖に着いたら同行者と合流ししばらく駅構内で写真撮影、その後は基山まで普通列車で移動…てっきり座席撤去の813系か817系ロングシート車両だろうと思っていたのだがここでまさかの811系原型車。思いがけずJR九州初期の特急と普通のイメージリーダーに連続でお世話になったというわけだ。こちらの811系は現在リニューアル工事が進行中でより長い活躍が約束されたが原型を見られる期間はおそらくあまり長くないだろう。「JR初期の快速電車」をじっくり味わえる貴重な機会を得られた。

811系原型

ここからは甘木鉄道の気動車(同社では「レールバス」呼びが根強い)から西鉄に乗り換え薬院駅まで支線を制覇しつつ西鉄完乗を目指す…といっても筆者的には2回目、ゆったりと周りを眺めて気楽な乗り鉄旅となる。

甘木鉄道「レールバス」

元々国鉄だったこの路線だが、末期の1日数往復という本数が示すようにその利用は低迷しており特定地方交通線の中でも最も早い内に存廃問題となった第1次特定地方交通線であった。ところが第三セクター鉄道への転換後に利用しやすい本数を求めて大増発が行われ、福岡都市圏近郊とはいえ廃線の危機にあった路線とは思えない概ね30分毎のフリークエンシー重視のダイヤを採って現在でも根強い支持を得ている。賑わった車内にこの鉄道の強かさを感じずにはいられなかった。

太宰府駅
参道は早くも眠りにつく

西鉄電車を乗り継いで到着するは太宰府、ここに来たらやはり菅公への挨拶は欠かさずにしておきたい。夕闇迫る中だが境内はまだ賑わいを残している。なお、訪問時は「令和の大改修」に伴い仮設の本殿となっていた。おそらく次に訪れるときにはすっかり綺麗になった本殿になっているだろうか。

太宰府付近は福岡空港から飛び立った飛行機が上昇していく最中にあるため飛行機の音がよく聴こえてくる。ふとFlightrader24を開くと中国に向かうエアバスA321が上がっていく途中。かつて遣唐使終了を決断した人を祀る神社でその国へ向かう飛行機を眺める、なんとも不思議な気持ちだ。

ガラガラな天神行き

日曜夕方の天神行き急行となるとそれは空いているのも道理だろう。快適な転換クロスシートに身を委ね90km/hで走る電車で一気に薬院駅を目指す。薬院駅からは七隈線を乗り潰すつもりだ、そしてそれが完了すると筆者は公営地下鉄全線完乗を成し遂げることになる。緊張感と興奮で少しこそばゆい思いを載せて急行電車は速度を上げていった。

七隈線車内

偶然乗っていた車両は終点の橋本付近でほぼ無人に、車内の様子を撮影するがやはりリニア地下鉄のコンパクトさが目立つ。なるほどこれは博多に直通したら混雑がクローズアップされるのも無理はない。一応現行の4両編成から6両編成への増結も可能な構造となっているが、さてこれはどうなるだろうか。一時期トレンドとなったリモートワークも既に往時の勢い・輝きは色褪せ七隈線も福岡空港国際線ターミナルへの延伸なども囁かれる状況である。人口減少社会といえど九州最大の都市である福岡市の地下鉄にはそれをするだけの魅力は十分あるように見えるがさて。

博多駅にて 3616号車

折返しの七隈線は博多駅に到着、厳密にはその2分ほど前の櫛田神社前駅到着をもって七隈線全線完乗となった。日本国内の公営地下鉄完乗も同時に達成となる、このタイトルは誇りではあるが同時に防衛になかなか手こずるようなそんなタイトルであって欲しい。

今回の旅行最後の夜はそんな博多の街のアパホテルで、夕食のバスターミナルでの牧のうどんも美味しくいただいて満足した。さて明日は泣いても笑っても最終日だ、悔いの残らない旅としたい。

https://www.apahotel.com/hotel/kyushu-okinawa/fukuoka/hakataeki-chikushiguchi/

結局スポッティング

JA03XJ

朝8時半の福岡空港、実にいい眺めだ。目の前には緑ロゴのJA03XJが鎮座して折返しの時を待っているが、最大のお目当てはこの機体のプッシュバックの時に思い切り撮ってやろうというものだ。

同行者は(もちろん事前にそうしようと決めた上で)平成筑豊鉄道等の乗りつぶしに行っているのだが、それらの路線は既に乗り終えている筆者は思い切り福岡空港でスポッティングをしてみようという狙い。しかしここでこれまでたっぷり撮る機会に恵まれなかった3号機が来てくれるのは予想外で嬉しいことだ…未明の内からFlightrader24で確認していて、それに間に合うように来ていたのはそうなのだが。

J-Air エンブラエル190 JA253Jと奥にはANAのA321
ANAのボーイング777-281ER JA715A
JAL ボーイング767-346ER JA612J
JTA ボーイング737-8Q3 JA08RK
FDA エンブラエル175 JA09FJ(ゴールド)
J-Air エンブラエル170 JA228J×JA212J

しばらく撮っている内についにお目当てのJA03XJがプッシュバックされてきた、折しもスターフライヤー機が2機やってきて賑わった雰囲気に。

プッシュバックされてきた
トーイングカーが離れてタキシング準備中
先刻のJA253Jと並んで
スカイマーク ボーイング737-86N JA73NJ
プッシュバック中に向き合うJA715AとJA08RK
到着したJALのエアバスA350-941 JA06XJ
ANA ボーイング737-881 JA59AN
J-Air エンブラエル170 JA223J
小型機が多数出発しつつある、滑走路には航空自衛隊のT-4!
ANA ボーイング787-9 JA935A
スターフライヤー エアバスA320 JA09MC
プッシュバックされてきたJA612J 後ろにはJA09MCとJA10VA
ANA エアバスA321neo JA144A
アイベックスエアラインズ CRJ-700 JA09RJとスターフライヤー
ピーチ エアバスA320 JA818P
FDA エンブラエルE175 JA05FJ(5月にここまで乗ってきた機体!)
ANA ボーイング787-8 JA824A
ジェットスター・ジャパン エアバスA321neo(LR) JA28LRと大韓航空A321neo
JAL ボーイング737-846 JA318J
ANA ボーイング787-8 JA809A
出発するJA06XJ
向きを変えて滑走路に、チェジュ航空のボーイング737と
ピーチ エアバスA320 JA821P
J-Air エンブラエルE170 JA228J
スカイマーク ボーイング737-8AL JA737X
ANA ボーイング767-381ER JA611A
AIR DO ボーイング737-781 JA14AN
スカイマーク ボーイング737-8AL JA73AC 後ろにはタイ国際航空のエアバスA330 HS-TEN
スターフライヤー エアバスA320 JA26MCと春秋航空のA320
離陸待ちのジェットスターJA28LRと春秋航空の前に降りてきたスターラックス
ピーチ エアバスA320 JA820P

ここでやってきたのはスターフライヤーの最新鋭機材、Wi-Fiアンテナが特徴のエアバスA320neo JA28MCだった。せっかくの嬉しいチャンスにシャッターを押す指に意識を集中して撮影する。

スターフライヤー エアバスA320neo JA28MC
プッシュバックが始まったJA849J
後ろにはエアバスA350が
羽田空港からやってきたJA13XJ
スポットに滑り込む
スターフライヤー JA22MCおよびJ-Airエンブラエルとピーチ
滑走路に向かうJA849J

行きに乗った便の折返しを見届けるともう楽しかったスポッティングの時間も終りが近い、主要空港の展望デッキの中でも特に飛行機が身近に感じられる素敵な空間に長時間いられるのは改めて思うと実に贅沢な話。

JTAのJA09RK
ANA エアバスA321neo JA140A
スカイマーク ボーイング737-86N JA737QとJACのATR
那覇に向かうJA09RK
ソラシドエア ボーイング737-86N JA804X
プッシュバックを終えたJA610A

JA610Aを見送ると福岡空港を出る時間だ、ちょうど空港乗り入れに合わせて導入が始まった2000系電車で博多駅まで向かう。そこからは新幹線、在来線なら特急でも50分弱かかり普通列車だと1時間を超える福北で20分かからない速さは何度乗っても衝撃的。

2000系
入線してくるN700系「のぞみ(東京行き)」

そういえばこのN700aもN700Sの導入が進むことでどんどん廃車が進んでいる、東海道新幹線の世代交代の早さと一定のペースが保たれた進行は気が付いたら路線の様子が大きく替わっており驚かされる。概ね14年程度で廃車、車両はコンスタントに入り続けると考えると平均車齢は概ね7年程度ということになるだろうか、鉄道会社としては異例なくらいの若い陣容で航空会社でもシンガポール航空や中東のメガキャリアのような新機材導入に極めて積極的なところ並ではないだろうか。

813系日豊本線

ここからの帰りは北九州空港から飛行機、スターフライヤーの拠点となっている空港だが今回はJALのクラスJを利用する。小倉駅から連絡バスもあるのだが今回は日豊本線で朽網駅まで向かって、そこから路線バスだ。座席撤去車の813系に乗って普段ソニック利用が多い路線を一駅ずつ停まっていくのもちょっと新鮮。

朽網駅から更に南に

朽網駅に着くと橋上駅舎の階段を上がって海側の階段を降りると既に空港行きのバスが待機している、バスはおなじみ西鉄バスで交通系ICカードが使えるのもありがたい。とここで平成筑豊鉄道を乗ってきた同行者と合流、いよいよ家路につくことに。

ロータリーには空港行きバスが
北九州空港連絡橋から見える海
北九州空港入口

北九州空港は先述の通りスターフライヤーの本拠地であり同社の本社もここに所在している。また都市中央部にあり卓越したアクセス性を誇るものの運用時間には制約がつきまとう福岡空港を補佐する地位を確立し、国際貨物便の積極的な受け入れや早朝深夜便が運行されている。最新のトピックとしてはJALの福岡便が「門限」に間に合わず代替着陸先として選定したこともあり福岡県がこの2空港をどう扱っていくか、また佐賀空港と含めて北九州地域の空港の勢力図や役割分担が今後も注目される。

UPSのボーイング767
沖合に停泊しているフェリー

展望デッキではUPSの貨物機や沖合のフェリーなども眺めることが出来る。そうこうしている内に搭乗機のJA302Jが降りてきた、さて保安検査を通って搭乗の時間だ。

着陸したJA302J
スポットインした、この後各種車両がやって来る
隣に到着したスターフライヤー JA05MC

保安検査を通ると搭乗まではもう少し、今回搭乗するJA302Jは2020年から導入された電源付きの新仕様の座席となっている。この座席の機体は普通席にも電源を設置しており羽田発の地方路線で遭遇することが特に多いボーイング737で電源の整備が進むのは心強い。

新仕様クラスJシート(降機時にCAに許可を取り撮影)

ここからはもうあっという間だ、帰りは概ね晴れており眼下の景色や見事な日没を眺めることができた。

DEP:KKJ/RJFR
RWY36
ARR:HND/RJTT
RWY34L
JAL JL376(HA5174)
Planned:1620-1800
Actual:1629-1743
Japan Airlines
Boeing 737-846 B738
JA302J 35331 /2162

香川県高松市付近
知多半島上空 中部国際空港・碧南火力発電所付近
日没の三浦半島・富士山

着陸するとスポットからはバス移動、ならば急ぐこともないかとゆったりと降機すると見事な夕焼け空を見ることができた。旅の最後に素晴らしい景色、現実に戻る憂鬱をしばし忘れさせてくれる。

紺碧に溶けゆく搭乗機
バス下車時に、夕焼けのボーイング787

同行者と別れ、その後もしばらくスポッティング。時間を忘れてFlightrader24を見ながら撮影に夢中になってしまっていた…

ボーイング787が2機とJA02XJ
ボーイング777-246ER JA703J
ボーイング767-346ER JA658J

今回は北九州・西九州における路線の乗りつぶしを大きく進めることができた。いよいよ未乗路線が減ってきて、「最後に乗る路線をどこにしよう」と考えるようになってきている。最後にこんなめちゃくちゃな旅程に付き合ってくれた同行者に感謝を表して筆を置くこととしたい。

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