【実行・後編】4日間で25フライトした話
読まなくても困らない準備編
さすがに読んだほうが良さそうな前編
3日目
RAC最長路線はソーメンのお味
オタク(クソデカ主語)の朝は早い、2日連続始発のゆいレールご乗車である。日曜日から月曜日に変わったことでどうなるのか、平日には休日との違いがあるのか…と考えつつホテルをチェックアウトしておもろまち駅に向かう。今日は5フライト/日のおとなしい日程なのだが、朝は昨日と同じく朝イチの飛行機で西に向かうので結局早い。
駅には既に20人程度が待機していて、混み具合は昨日と同じようなものだ。やってきたモノレールは既に概ね満席でそこから乗り込んできたので立ち客が1両あたり20人程度居るからおそらく100人以上が既に乗っている。
県庁前で乗客の入れ替わりがあったが立ち客が更に増え、いよいよ那覇空港が近付いてくると降車客を通すために一旦降りる朝ラッシュのような有様、繰り返すがこれは始発列車である。早朝から確かな移動需要がここにはあるのである。
空港ターミナルに着いたらやらねばならないことがある。荷物をコインロッカーに放り込むのだ。昨日まではホテルに連泊していたのだから部屋に投げ込んでおけば特段の問題はなかったが、今晩はホテルが変わるどころかそもそも那覇に戻らない。そんなわけで関東の寒さに堪えるためには必要だが沖縄や鹿児島ではお荷物にしかならないダウンや使いもしない着替えを放り込んで荷物の軽量化と物品そのものの減少を図る。次取りに来るのは旅程の殆どを終えて羽田行きのフライトに乗るべく保安検査を受ける直前だ。
さてもう慣れっこになった保安検査を通って搭乗口に向かう、今日は階段を下ってバス搭乗になるがその前に機内で軽く食べるためにとソーメンチャンプルーを買い込む。
とここで搭乗口への階段を降りる前に興味深い並びが、JTA唯一(なのもJA348JがJTA入りするまでの僅かな期間だが)の非スカイインテリア機材であるJA350JとANAの鬼滅の刃ジェットだ。どちらも昨年見たことがある機材だがこうして並ぶのを見たのは初めてだ、面白い巡り合せもあったものだと思いつつファインダーに収める。
さて、今日の最初の目的地は日本最西端の島にして東京どころか那覇よりも台北がさらに近い与那国島。実運用では台湾側が防空識別圏から外していたとはいえ「台湾当局に通達しておかないと、旅客機が台湾空軍にスクランブルされる」というような話がまことしやかに言われていた時期もあった。
(元記事リンク切れによりInternet Archiveより)
そんな与那国空港だがメインは石垣発着の便で那覇発着の便は1日1~2便しかなくそんな珍しい那覇与那国便は同時に509kmの道程を持つ琉球エアーコミューター最長路線でもある、時刻表上での所要時間も1時間半に迫り道中ではドリンクサービスもある。
早朝の直行便ということで搭乗率はかなり高い、今回の旅程全体俯瞰してもプロペラ機の便だと隣に人がいるということ自体がそこそこ珍しかったのだがこのフライトがその1つであった。おおよそ日常利用であろう地元の方、作業着を着た出張と思しき男性陣、そしてどうやら「同業者」…そのような30人強程度の旅路である。
流石に1時間半弱もあると機内サービスにも余裕がある。ドリンクを受け取って、飲み干してカップを回収されてそれでも着陸までしばらく時間があるというのは前日のソラシドエアがあるにせよかなり久しぶりな気がした。
前日の宮古経由での多良間行きよりも更に遠い石垣島、更にその先が目的地だと思うとやはり遠い、この後は石垣まで飛んで宮古に行き、陸路で下地島空港に移動してから那覇行きに乗り、しかも最後はジェット機という多彩な行程がアイランドホッピングの面白いところだ。
ずっと続くかに思えた旅路もいよいよ終わり、与那国島に向けて高度を下げていく。後もう少しで台湾まで届くような場所ということは有名だが、機内ということと空模様から流石に見えるようなものではない。
ともあれここは日本最西端の島、与那国である。
この機体にそのまま戻って次の目的地に向かうので滞在時間はわずか、ひとまず来た証拠だけはと言わんばかりに空港ターミナルの入口だけ撮影する。普通の人ならセルフィーをするのだろうけれど、言うまでもなく自分は入れない。オタクは旅行先で自分の写真を残さないのである。
南ぬ島の青い空の港
ここからは石垣行き、今度は130km弱のかなり短めのフライトになる。この後の石垣発宮古行きは更に短い116kmで、おそらくどちらもシートベルトサインが消える暇もないだろう。周りの乗客はやはり先程と似たような層で買い物に行くような感じの人も居たのが印象的だった。
時刻表上での所要時間で30分、実際の飛行時間は更に短いとなるとシートベルト着用サインはほぼ消えないと思って問題なく、離陸してしばらくするとあっという間に着陸態勢に入ってシートベルト着用となる。この繰り返しの内にどんどん見える景色が変わっていくのがアイランドホッピングの面白いところだ。降り立つは八重山諸島の玄関口、石垣島。夏のような明るい日差しの歓迎はいささか熱かった。
さてこの新石垣空港、またの名を「南ぬ島(ぱいぬしま:八重山諸島の方言で「南の島」の意)石垣空港」と言い2023年3月現在定期旅客便で行くことが出来る日本で一番南の空港*である。
*:日本最南端の空港は波照間空港だが、定期便の就航はない。
旅行日時点で運航されていたのはタイガーエア台湾のチャーター便のみだったが、日本で最西端および最南端の国際線受け入れ空港でもある。設定としては香港エクスプレスの香港便およびチャイナエアラインの台北便が設定されている(運休中)。
国際線ターミナルビルは現状では人も少ないものの沖縄県では那覇に次ぐ利用が多い空港、台湾が近いという地理的な好条件もあわせて今後の成長に期待したいところだ。ターミナルビル内には土産物屋や飲食店も多く用意されていて散策しているだけで面白い。
そして石垣空港はやってくる機体も多様だ。JTAやANA、ソラシドエアのボーイング737やピーチのエアバスA320、そして琉球エアーコミューターのボンバルディアDHC8-Q400CCなどが飛んでくる。あまり広くはないものの展望デッキがあり、これらを眺めることが出来るのも楽しい。
ついつい飛行機を見すぎてしまった、次の宮古便があるのでそろそろ遅めではあるが朝食としたい。せっかくなら与那国のカジキとまではいかなくても旨いマグロをいただきたい…そんなわがままにも応えてくれるのがこの空港だ。国内線ターミナルビルの1階にはフードコートがありカフェから海鮮まで様々なメニューから選べる、その中で今回は「島料理 源」にてマグロ丼をいただく。すぐそこに飛行機があってそんなところでかぶり付くマグロの味、これはたまらない。
南の島から南の島に、そしてまた島に
午前中からこんな豪勢で良いものかと思うのだが、ここから更に旅は続く。石垣島を出て今度向かうは宮古島、この2島間を結ぶ空路というのも存在する、もうすっかりお馴染みの琉球エアーコミューターのDHC8-Q400CCだがこの旅程では乗るのはもう最後になってしまう。合計10フライト乗ったのだからたっぷり乗っただろうと言われればそうなのだが、それでも最後となるとなんとなく寂しい気になるのは否定し難い。もう一度この美しい島と海を巡るプロペラ機に乗る旅がしたい、そうしみじみと感じた。
誘導路をタキシングして滑走路に近づくも、しかしなかなか滑走路に入らない…どうしたものかと待っているとアナウンスが入り着陸機の到着を待ってから離陸するとのことだった。しばらくするとボーイング737の機影が視界に入ってきて、そしてあっという間に過ぎ去っていく。後で確認したところ那覇からのソラシドエアで定刻より10分ほど早く到着していたようだ。
この影響もあって離陸は遅れてしまい着陸も予定より8分ほど遅れてしまったが間近に降り立つB737は迫力満点、飛行機好きとしては良い時間になった。
人気の島2つを結ぶ空路だが1日数便のローカル線で本数はさほど多くない上に琉球エアーコミューターのみの独占路線で、しかも50席のプロペラ機なのでそれぞれの島の那覇便と比べると合計した提供座席数はかなり少なく1便のキャパが概ね1/3に加え便数がやはり1/3程度で1/10程度になるか。あくまでも雰囲気を掴むためのざっくりとした丼勘定で詳細な検証は割愛するとしても、どちらかに行った人がついでに行こうというようなニーズがあまりないということか。乗客も飛行機好きはともかく他県からの観光客というような雰囲気の人はほぼ見られず地元の利用に専念しているようであった。
そんな中で隣席の年配の女性とかなり多くの時間話し込んでいた。近隣の島から石垣島に出て、宮古島からまた移動するとのことだった。なんでも昔は波照間島からRACの通路のない小型機に乗っていた…とのことで、これはおそらくアイランダーのことだろう。旅行時には航空機の利用が必須の地域でもあり、路線の開設や廃止などの動きについて地元の目で聞く話は日頃メディアや事業者のプレスリリース頼りになりがちな自分としてはまた異なる角度からの時間となった。
ここからはバスに乗って下地島空港に向かう…のだが少々面倒なことになった。この時間から下地島空港へ向かうにはバスとタクシーがあり、この後搭乗予定のスカイマークBC546便に乗り継ぐにはバス2便とタクシーから選ぶことになるわけだが前述の通り飛行機は予定より8分ほど遅れて着陸(13時13分)しており、そこからスポットインして降機し到着ロビーに出るとなると13時22分発の連絡バスはおろか30分のエアポートライナーすらもいささか心もとなくなる。普段なら乗ってきた機体を撮影しようかなんて考えたりもしているが流石にそんな悠々と構えている余裕もなく着陸後これは大丈夫かと心配になり、思わずスマホで空港間でタクシーを使ったらいくら掛かるかと確認を始めたりしつつ足早に飛行機の通路を歩く。
何しろこの筆者つい3ヶ月ほど前には能登空港に行った際にANAが神戸空港からの到着便遅れで遅延し、穴水駅までのバスに乗り継ぎしそびれた結果のと里山空港から穴水駅まで約10km強を雨の中歩く羽目になったという新鮮な悲劇を胸に秘めているのだ。これは焦らざるをえない。エアポートライナーに間に合うかどうか瀬戸際のタイミングでバス乗り場に来たところ…
22分発の連絡バスがちょっと遅れて走ってきた。
ということでなんとも竜頭蛇尾な旅程崩壊回避を経て乗るのがこの宮古空港から下地島空港までの連絡バス(宮古協栄バス)。空港間を約40分で結ぶバスだが途中20箇所の停留所を経由するローカル輸送も担当するバスだ。といっても筆者乗車時には合計数人しか乗っておらず、観光客らしき人は自分以外にはもう1人しか居なかったが。
観光客目線で見た場合この路線最大の見どころというと何と言っても伊良部大橋だろう。元々フェリーが運航されていた宮古島と伊良部島だが、戦時中の伊良部丸遭難事故が発端となりその後離島であることの不便などを理由に架橋計画が進められたことで2015年に開通した。日本国内で無料で渡れる橋としては日本最長(これより長い道路橋はアクアライン橋梁部、明石海峡大橋、関空連絡橋のみ)で約3.5kmもあるためバスの中から数分間宮古ブルーの海を楽しめる。
この日は好天にも恵まれ見事な青空青い海の中を疾走していた。しかもバスはガラガラで一般的な旅行者であればインスタ映えかあるいは友人に自慢するためか自分1人で愛でるためか、ともかく写真を撮らずにいられないだろう。といっても実際に写真を撮っていたのは自分ともう一人空港からの人だけだった、残り数人の地元の方らしき人は外を眺めるようなほどでもない、地元の人々にとってはあくまでも日常の何の変哲も無い風景なのだ。
もうしばらく伊良部島を走ると突如現れる短い橋と川岸のように見える場所に生えているマングローブ、ちょっとした川のようにしか見えないかもしれないが、ここはれっきとした海で伊良部島と目的地の下地島の間である。これを渡るとまもなく下地島空港、かつて大型旅客機の訓練用空港として名を馳せた伝説の名所だ。
新しい空港は南国リゾート気分
一般的な空港のイメージとは明らかに異なることに面食らった、ここはみやこ下地島空港の出発入口である。ターミナルビルに入るとすぐにスカイマークのチェックインカウンターがありその隣に土産物屋とカフェのみ、保安検査前にはこれしかないのは意外なくらいだ。しかしこの空港の真髄はその保安検査を通ったあとにある。検査を受けた後下のような景色が見られる空港がいったいどれ位あるだろうか。
2月とは思えない温かい風に吹かれながら搭乗口近くのカフェでフード・ドリンクをオーダーして屋外を含めた好きな場所で楽しめるのは空港にいるというよりリゾートホテルか何かにいるような感覚だった。2022-'23年冬ダイヤでの同空港の旅客定期便はスカイマークの発着4便ずつのみで空港内は空いていたこともあり上級会員用ラウンジのような感覚で寛ぐことが出来た(そういうところに入ったことは…数年前のイギリス旅行時にJAL41便で入った時しかないのだが)。フードはなまり節そば、カレーライス、タコライス、ラフテー丼、ハンバーグ、鳥唐揚げ、ポテトとしっかりとした食事を楽しめる。
食事を済ませると搭乗時間が迫ってきていたので搭乗口付近に、ただし人はさほど多くないので余裕を持って向かっていってから撮影などもする余裕があった。スカイマークは最近ポケモンジェットを運航したりポケモンをフィーチャーする機会が多いが、ここは搭乗口からポケモン一色で面食らった。いやはやここまでするとは流石のもの…(ANAのポケモンジャンボとかで刷り込まれている筆者には隔世の感)
総じてみやこ下地島空港はおしゃれなリゾートという趣で居心地良く感じられた。暖かな風に吹かれながら名物料理を味わうのも贅沢な気分で飲食店は保安検査後にあるため搭乗までの時間を気にする必要性が低くまた搭乗客しか居ない空間にあるので混んでいないのも良い。一方このような好天時になんとなくのイメージだけで難点になりそうな点を上げるのもナンだが、気になった点としてはターミナルの構造上ボーディングブリッジが無いため天候により大きく左右されそうな印象を感じた。これについては一年を通じ温暖でかつ海沿いのため暑さ寒さの影響は限定的か、それで台風の時はどうせ欠航なのでと考えるとそんなものなのかもしれない。ともあれ保安検査場を抜けた直後に池がある様子などは他の空港に慣れた身としてはただ感嘆するばかり、ぜひ何か理由を捏造ってでも行って見てほしい。
今日2つ目の「最南端」「最西端」
かくして下地島空港から那覇行きのスカイマークBC546便に搭乗し、再び朝以来の那覇空港に戻る。流石に搭乗率は低く3割程度といったところ、搭乗直前にチェックインで座席指定したのだが無理なく3列誰も居らず後ろにも人の居ない席を見つけ出せた。
これだけ空いていればフライトも快適そのもの、スカイマーク名物のキットカットも美味しく頂き愉快な南国アイランドホッピングを愉しむ。リクライニングは後ろの乗客に配慮をというおなじみのアナウンスだが問題ない、だって後ろ誰もいないもん。そういえば自分で買って持ち込むのでもない限りこの距離のフライトで固形物(言い方)が出るというのも割と珍しい。もうすっかり見慣れた美ら海を眼下にキットカットをつまみながら機内誌に目を通しているとあっという間に那覇空港、時刻表で45分のショートフライトだ。
着陸滑走路はこれもおなじみ18R、着陸まで海の景色を満喫できるが誘導路の位置の関係上駐機場に向かう過程で滑走路を1往復するのは長いといえば長い。そしてそんな普段は着陸用でばかり使った18Rだが離陸待機する飛行機が居た。なんとも珍しいな何だろうと見てみたら海上自衛隊のP-3Cだった、お勤めお疲れ様です。
さて、ここからがこの章の本丸で飛行機ではなくゆいレールが今回の目当てになる。那覇空港に併設されたゆいレール那覇空港駅は日本最西端の鉄道駅になっている(普通鉄道に限定するなら松浦鉄道たびら平戸口駅だが)のだが日本最南端の駅は実はその隣にある赤嶺駅である(同じく普通鉄道のみならJR九州の指宿枕崎線西大山駅)。そのため沖縄を観光で訪れて空港まで/からゆいレールを利用すれば日本の鉄道の最西端と最南端を一気に訪れることが出来るのである。最北端と最東端に比べると最果てという旅情はいかにも感じにくい場所と言えるが、沖縄旅行の豆知識として知っておくと面白いのではないだろうか。そういえば普通鉄道の最西端の最南端、まだ行ったことなかった…
実はこの日わざわざ行かずとも翌日に遅延バッファも兼ねてゆいレール乗車時間を最初から設定していた。次いつ来られるかも分からない以上行けるときに行っておこうと余裕を持って2019年に延伸されたてだこ浦西駅まで往復できる時間を持っておいたのだが、赤嶺駅だけでも行きたくなった。
というのも朝から与那国空港、石垣空港と訪れていて日本最西端・最南端の空港に行ってきた。それならばそのまま駅の最西端・最南端を押さえておきたいというものだ。
確かにモノレールの駅でもあり、(鉄道路線としてはむしろ望ましいことではあるにせよ)利用が多い都市らしい駅なので「最果ての駅」というような旅情は感じにくいかもしれない。しかしここまで折りに触れいかにこのモノレールが混雑しているか、すなわち人々の大切な足として働いているかということを伝えてきたつもりだ。そのことに敬意を表してぜひ訪れておきたい最果ての駅としてこの2駅への訪問をお勧めしたい。
薩摩への旅は名物とともに
今日はたったの5フライト、なんと次のフライトが最後のフライトである。乗るのはソラシドエア86便の鹿児島行きだがこの便鹿児島に着くと昨日鹿児島から那覇に戻ってきたときに搭乗した85便になるのである。那覇ベースでJTA/RAC/JAC乗り継ぎをしようとするとこのように使えるのはかゆいところに手が届く便設定と言える。
ところで那覇空港に戻った頃から度々猛烈な爆音がする。これは航空自衛隊那覇基地に配備された第9航空団所属のF-15戦闘機が離着陸する音で、アフターバーナーをふかして離陸する音が間をさほどおかずに複数回するのが特徴だ。任務としては領空侵犯に至る前にそれより外側に設定された防空識別圏に入った時点でスクランブル発進して接近してきた航空機の素性を確認する。昨今最も多いのは中国で、特にこの那覇基地からの発進が多くなるため注目されているがロシアも千歳や三沢基地からの発進が依然多い。
なお、スクランブルは自国領空に接近した軍用機のみに対して行われるものではないためトラブルが発生した民間機の支援のためや大規模な地震(震度5弱以上)が発生した際に手早く状況を確認するために発進することもある。地上の様子を詳細まで確認とはいかないにせよ大規模な火災の有無などの確認が行えるためだ。またこれについては最新鋭のF-35であればETOSやEO DASなどの高度な光学センサーによりより多くの情報収集が出来ると期待されている。
ここでソラシドエアの機体が2機おり、うち1機はこれから搭乗するくまモンカラーのJA805X、もう1機はANAからの転籍機であるJA67ANである。JTAのJA350Jと同じように大手キャリアから転籍してきた機体である上に、他の生え抜き機材がスカイインテリア仕様でありながら異彩を放っているところまで同じだ。JA805Xは2021年のGWに羽田から熊本で乗ったぶり、見るだけなら昨年7月に宮崎空港で会って以来になる。
本来鹿児島空港に着いてから夕食かなと思っていたのだがここで売店を覗いてみると「大東寿司」を発見したので思わず購入、大東寿司は大東諸島名産の寿司でそのルーツは八丈島の「島寿司」にある。醤油ベースのたれで漬けにした地元の魚を甘めのシャリで握った寿司…というところまで共通しており、大東諸島ではマグロやサワラが主に使われる。
古来大東諸島は「うふあがり(:はるか東にある)島」として沖縄で認知されていたものの無人島であり、明治以降八丈島出身者からなる開拓団が開拓して第二次世界大戦後米軍による軍政が敷かれるまで企業による統治がなされていたことでも有名だ。
そんな大東寿司だが、那覇空港においては朝と午後の1日2回品出しがされてその際にはJAL,ANA双方の売店で購入できるもののタイミングを逃すと品切れになってしまうことすらある。この旅程ではタイミングが宜しくなかったのと朝が早すぎたためこれまで品切れの告知しか見ていなかったのだがこのタイミングでついに購入できたという次第。
漬けマグロなどは自分自身割とよく食べる方だと思うが、この大東寿司の甘みは美味しいと感じた。島寿司はわさびの代わりに辛子が使われているが、こちらの大東寿司の場合はガリが添えられている。
寿司を平らげて飛行機が鹿児島空港に着いた時、日はとっぷり暮れていた。
鹿児島空港食べて見て泊まって
空港に着いたらまずは夕食、主食は先程摂ったのでここでは主菜副菜としてサラダとポークステーキをいただく。2日連続だが、どうしても鹿児島というと豚肉を食べたくなるのはおのぼりさんというかミーハー旅行者の性とでも言うべきものだろうか。
また鹿児島空港には航空機に関する展示があり、そしてこれがちょっとびっくりするくらい充実している。飛行機好きであれば展望デッキと併せて1日居られるくらい様々な内容があり面白い。パネル展示は鹿児島空港の過去の歴史や就航地の推移、また現在就航している航空会社や機種の模型があり、そういえばこの会社も就航していたかなど国際線が少し縁遠くなっていたこともあり改めて驚くようなこともあった。
ここでは客室モックアップを紹介したい。日本エアコミューターのATR機を模したもので客室乗務員の訓練にも使うのだという。そうなるとウィークデーの日中などは見られないようなこともあるのだろうか。元々はJACで運用されていたDHC8-Q400(RAC現用機のCCとは別)のモックアップをATR機へのリプレイスと同時に改修したものとのことで、前部の座席はそのDHC8の、後部はかつてJAC(およびJALグループではHACも)で運航されていたSAAB340の座席を使用しているとのこと。
気が付いたらもう20時半を回っている、翌日はいよいよ最終日で7時半に出発だ。鹿児島空港は市街地から比較的離れている空港だが徒歩圏内にも鹿児島空港ホテルがあるので今回はここに宿泊する。
日頃ホテルの予約はブッキングコム派なのでその対応がないのは残念だがロケーションは空港まで徒歩10分弱(実測)と最高、また現地入りして気がついたのだがホテルの建物は目で見えるような近いところにJACのATR機が数機並んでいるのが見えるような場所にあり、ATRのエンジン音の生ライブを堪能できるので見ていて面白い。最近ではそこそこの規模のビジネスホテルなんかも「トレインビュー」として線路沿いでは列車が見えることを売りにしているがここはさしずめプレーンビュー、鶴丸の描かれたプロペラ機を見ながら晩酌を楽しめるのはなかなかの売りになるのではないだろうか。
さて明日の朝の便は7時半頃、6時に起きて半頃に空港まで歩いていけば朝食をゆったり摂って保安検査を受け飛行機に乗り込めるという算段だ、それではおやすみなさいZzz…
4日目
スクランブル発進(人間)
スウっと目が覚めた、おっと今何時だ…?
ベッドの横にはビジネスホテルにありがちなアラーム付きの時計がある。
0649
次の瞬間私のリアクターは出力を一気に増した。
やべえ、急がんと
直後冷静な分析が行われた、いやいや急げば間に合う。鹿児島空港での朝食やら全部吹き飛ばして保安検査に飛び込むだけに絞れば十分挽回可能だ。それでも頭の片隅では乗れなかった場合に備えてプランB,Cの構築を急速に進めていた、どこからなら挽回可能か、今日は最悪羽田行きの帰りの便までに那覇空港に着ければいい、候補になるような便はだいたいこのあたりだと候補に並べていく。
荷物を整理し極力コンパクトに纏めるのはまさにこういうときに備えてだ、使ったのは初めてだけど。寝る時点で荷物だけ持って飛び出せばOKとすることで寝坊したとして即座に挽回できるのはまさに今日この日のためにこそ習慣化し続けてきたのである。
こうしてATR42の離陸滑走の如き勢いで突っ走った結果、めでたく保安検査の締め切りまである程度の余裕を残した時間に到着することが出来たので何ら問題ないかのような面をしてくぐり抜けシップまでのバスの運転手さんに「よろしくお願いします」と挨拶しながら乗り込めたという次第である。
この時間帯は朝一番のラッシュで複数の便が並んでいるのでもし歩きで自分が乗る便に向かえと言われたらどの飛行機に乗るかというのは分かりにくい、40分間に日本エアコミューターのプロペラ機による運航便だけで以下の便が並んでいる。
7:25 奄美行き
7:35 喜界行き
7:40 沖永良部行き
7:45 徳之島行き
8:05 種子島行き
もちろん搭乗時に確認は行われるはずだがそれでも時折ミスが発生しうる。それを防ぐためにもバスで対象の飛行機の目の前に案内するのは良いやり方だろう。
これは望外の絶景だった。先述の通りこれから鹿児島空港から朝の出発ラッシュが始まる。そのために並んでいる飛行機と美しい朝焼け、これからの旅に大きな期待を感じさせるような景色となった。
そんなところに蛇足を挟むと、一番手前のATR72であるJA08JCだがこの機には2019年5月のデリバリー時に組立工場のフランス・トゥールーズからギリシャのクレタ島に向かう最初の区間で機械トラブルにより管制機関との通信が途絶したためイタリア空軍の戦闘機がスクランブルし状況を確認したというエピソードがある。もちろん今日では何ら問題なく日々のフライトをこなしているが、なかなかダイナミックな旅立ちになっている。
私が乗るのは喜界行きのJA09JC、少々小型のATR42でJACのフリートではむしろこちらの方が主力である。
島の朝
搭乗率は約半分でほぼ時間通りの出発、まず北に向かって力強く離陸して然る後に旋回して桜島を横に見ながら高度を上げていく。離陸時にたった1時間前には部屋でまだ寝ていたホテルが見えた、もう少し体内時計が狂っていたらあの窓から乗るはずだったこの便を眺めていたかもしれないと思うと大事に至らず何よりとしか言いようがない。
安定してくるとサービスとしてチョコレートが配られた。朝から全力疾走した身にありがたい糖分のサービス…この日は2月14日、製菓会社の陰謀(笑)とかなんとか言われるあのバレンタインデーだ。JALグループ運航便ではこの日搭乗した全乗客にチョコレートのプレゼントが行われたとのことだがこのような日に飛行機に乗りまくるとどうなるか、今日筆者は合計7フライトの予定で全便JALグループ運航便だ…結論、ガーナのチョコ5つとチョコ味のちんすこう2つをこの後もらったわけである、ごちそうさまでした。
フライトは至極順調で時間通りに到着、鹿児島空港付近は快晴だったものの喜界島付近は曇りで着陸時に少々揺れた程度のものだった。
さて、喜界空港入口だが空港建屋の右側の柱付近に何か積まれているのが見えるだろうか、これは新聞で直前までここに郵便車も来ていたのである。朝イチの航空便にはその日の朝刊と郵便物という乗客にも負けず劣らず大切な「お客様」が予約している。またJACのATR42は医療用のストレッチャーを搭載して飛ぶことで離島の医療事情を改善するという使命も課せられている。飛行機がなければ離島の交通は船に頼らざるをえないが、フェリーでこの間は約11時間掛かる上に毎日運航というわけではなく毎日数便がある飛行機とは大きな違いがある。もちろんプロペラ機では重量貨物の運搬は難しいため相互補完して交通網を形成するのが基本的な在り方なのは言うまでもない。
さて喜界空港ではそれなりに滞在時間があるのでさっき鹿児島で食べそこねた()朝食としたい。喜界空港ターミナルビルには土産物屋があり飲食店も併設されており地元の名産をいただくことが出来る。せっかくならとお土産を眺めるとここの名産はトマトのようだ、じゃあ主役はトマトジュースになる となると洋風ベースかなとメニューとにらめっこしつつトーストとコロッケをオーダーしモーニングと相成ったわけである。
トマトジュースは期待に違わぬ絶品だった、甘さ控えめでドロっとした濃厚さ、程良い酸味は油ものを食べた直後に実に心地良い。予想外のハプニングから始まった1日だがこの朝食にたどり着くためなら納得だ。
ところでふと横の掲示を見るとサトウキビのジュースなんてものがあるとのこと、もちろんこれも名産だ…食器返却と同時に275円を持っていきオーダーしてしまったのである、サトウキビジュースもまた美味しくサラッとした甘みに植物のエキスといった風味が堪らない。
しかし目の前には奄美からのATRが降りてきた。いやいやこれは早すぎる、奄美-喜界は1日目に搭乗した北大東-南大東よりは長いにしろ時刻表で20分という超短距離路線であることは確かだ。とは言っても9時20分発でなんでその3分後にいるのか、結論定刻より4分も早く出られたため着くのも早かったという話だが少し焦る。飛行時間は7~8分というところか。
超短距離路線、そして鹿児島県最南端
喜界空港で最終目的地(羽田)までのチェックインをしてくれたのだが、このあとの行程を全て口頭で言う羽目になった。そうこれから奄美に行って与論経由で那覇に行き、久米島往復して羽田に戻るというルートをである。係員さんはしっかりと全便チェックインを済ませてくれて有難かったのだがなんとも手間を掛けてしまった…
多くの場で2位ではダメで1位を目指さねばならない理由として知名度が一気に下がるという事が挙げられる。日本で一番短い定期航空路線である北大東-南大東は有名だが、2位は奄美-喜界ということを知る人を探すのは九十九里浜に落としたスマートウォッチを探すより難しいと徒然草に書いてあるではないか(あるわけがない)。
ということで30kmに満たないこの短距離路線に乗ることにしよう。もちろん道中シートベルトサインが消えることはなかった。飛行時間はやはり12分程度、最短とはならなかったもののあっという間に着陸するスピーディぶりである。チョコレートは降機時に配布されたのでバッグに格納し、この後にいただくことにしつつ降りるとこの近辺の拠点ともなっている奄美空港だ。
この時の奄美空港にはJACのATR42が3機並んでいた、鹿児島行きと徳之島行き、そして与論行きである。1時間ばかりの間に鹿児島、徳之島、喜界から一気にやってきてそして散っていく。奄美空港をハブとしてこれだけの目的地に行きやすいように運航ダイヤが配慮されている巧い構成となっている。しばらくお茶を飲みながら待っていると与論行きの搭乗時間になり、飛行機に案内される…といってもさっきと同じJA10JCにリターンして乗るだけ、この先与論からの那覇便もこの便の機体がそのまま担当するので3フライト連続で同じ機体ということになるし、なんなら2日目に那覇から沖永良部まで乗ったのも同じ機体だから4フライト乗ったわけである。
離着陸時は雲の中ということで揺れが大きかったものの巡航中は雲の上なのでとても快適なフライト、静かなATRということもあって快適なフライトだと実感する。
那覇から反復横跳び
ここからは那覇まで120kmに満たない45分のフライトである。ちなみに与論-那覇はJACとRAC共に運航されているのだが往復ともにあるRACに対してJAC運航便は奄美に向かうので那覇からJACで与論に向かうことは出来ない。
そうして那覇に着き続いて久米島に向かうところで面白いものが、降機直後にボーイング777-200ER(JA702J)が来たのである。JALはエアバスA350でボーイング777を置き換える計画を進めており国内線向けに転用されていた元国際専用200ER型も2023年春をもって引退となる。おそらくこの並びを筆者が見ることが出来るのはこれが最後だろう。そんな思いを感じつつカメラに収める、いやはや良いものを見せてくれた。
さて久米島なら初日に行ったのだがRACだった前回と違い今度はJTAである。同じ路線でジェット機とプロペラ機がある路線は複数あるにしても、プロペラ機の方が早い路線というのはあまりないだろう。NU211便で久米島に行き、NU212便で帰ってくる行程だ。このNU211では今回の旅程で唯一のクラスJを選んでみた。基本的な座席等の仕様はJALと同じだが、JTAでは枕のリネンが独自のデザインとなっている。ちなみに筆者は復路で気が付いたのだがこの那覇-久米島という短距離便であってもWi-Fiを使用してFlightrader24を確認することが出来た。てっきり使用できないものと決めてかかっていたのでこれは驚いた。他の便は定員50人の機材を使用する路線に定員165人のボーイング737はハイキャパシティも相当なもので機内は往復ともガラガラ。
出発時にJA04JCを見つけた、先程奄美で見た機体なのだが徳之島行きとして離陸した後こちらは徳之島から沖永良部を経由して那覇に飛んできたのだ。自衛隊機のハンガーの近くに停まっているさまはアウェー感があって興味深い、折り返しは与論発のような三角運航ではなく2日目に乗った沖永良部行きになって折り返していく。
この短距離でクラスJはどんなものかというインプレッションだが機体前方の席ということもありとにかく静か。離陸時はスムーズに滑り出し空に上がったというような印象で、また揺れが予想されるとアナウンスであったがプロペラ機に比べるとその度合いは遥かに小さく感じられる。
久米島空港ではRAC便とは違ってボーディングブリッジを使用する。オフシーズンはこの那覇からの1日1往復のJTA運航便でしか使わないが、ピークシーズンには羽田からの直行便があるためその受入れに使用する。
さてこの211便は到着機材遅れのため延発したのだが、折返しの212便はフライト時間19分でむしろ早着。那覇空港着陸後のタキシング時に目の前の滑走路をF-15がスクランブル発進(本当にお疲れ様です)していっても時刻表の時間より5分程度早く降機に至った。
さて、この路線はどうしてプロペラ機の方が早いのだろう。おそらく2つの理由があり、まず距離が短くジェット機の速度を活かせない。FR24で高度と速度を確認すると巡航高度2,000mそこそこで巡航速度は560km/h程度とのことでプロペラ機とほぼ変わらない。そしてもう1つがプロペラ機なら自走で動き出してタキシングするところをジェット機ではプッシュバックで動き出してからトーイングトラクターを切り離し、それから自前のエンジンでのタキシングを開始すること。この2つによりこの100kmに満たない路線はジェット機のほうが遅い路線という珍しい路線になっている。皆様も時間があるならぜひ乗り比べてみて欲しい。短い離島間をこまめに飛び交うためのプロペラ機とそれよりは長い路線を飛ぶためのジェット機という対比は他の路線では味わえない面白さを秘めている。
ゆいレール完乗、そして帰り
最後の1フライトを前にもう一つ沖縄でやっておきたいことがあったため回収とする。向かうはゆいレール駅、てだこ浦西まで全線完乗してくる。日中でも利用はやはり多く座席は埋まっているのは流石というか、明るい時間にゆったり見る機会もあまり無かったためここにして初めて3両編成の車両を見ることも出来た。
こうしてゆいレール全線完乗と共に沖縄県の鉄道全線完乗および国内のモノレール全線完乗を同時に達成した。おそらくモノレールの次の変化はスカイレールサービスの廃線、そして大阪モノレールの延長だろうか。
那覇空港に戻り後はもう帰るだけなのだがここで夕食とする。19時過ぎに出る便で21時に着くとなるともう早く家に帰りたい頃合いだが帰宅は23時頃、それなら時間があるここでしっかりと食べて最後の沖縄を堪能したい。
航空マニア御用達とも言われる空港食堂、行程と営業時間がいまいち巧く噛み合わず今回の旅程では最初で最後の利用になってしまったがリーズナブルに地元の気取らない料理を味わえるのでコアな人気を博している。てびちそば用に豚肉の骨を置いておくことが出来る皿の用意があるのもありがたい。大満足の食事を堪能したらロッカーに預けていた服などを回収してダウンの暑さに辟易としつついよいよ最後のフライト、羽田行きのエアバスA350で一気に帰る。火曜の夜遅くの便ということで機内はかなり空いており自分の隣2席と後ろの席は空席だった。搭乗口付近にはものすごい人数がいてこれは大丈夫なのかとヒヤリとしたが、300人以上が乗れるワイドボディ機である。さっきまで乗っていた50人未満や150人そこそこの機材とは大幅に違うということを思い出した。
あとは機内電源でスマホを充電しつつ快適な革張りシートに身を委ねて、上昇していることすら感じさせないほど静かなトレントXWBエンジンの音を子守唄に寛いでいれば追い風の力を借りてあっという間に羽田空港。追い風が170km/h程度あったらしく対地速度は1,000km/hを超えていた。
筆者自身ここまで乗り継ぎなど含めて飛行機に乗りまくった期間は初であった。細かい失敗や未回収の乗ってみたい便なども残ってしまったものの、沖縄エリア全空港制覇および鹿児島エリアも多くの空港を訪れて様々な便を乗り比べて愉しむことが出来た。記事執筆に牛歩戦術を採用した結果もう1ヶ月が見えてきた今回の旅だが、この日以来やはり航空旅は良いものだ、もう一度どこかを訪れてみたいという思いは一層強くなっている。
時折しも旅に出ることを躊躇させるような様々な言葉は社会から日増しに消えつつある、さて今度はどこに行こうか。五感をフルに使う旅はきっと人生に新たな風をもたらしてくれる。
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