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アンコール 4 「馬頭琴」

 「…ラーメン屋か、ベビーシッターにでもなるつもりなのかい?」
 「将来の夢は、強い奥さんになることよ」
 「…好きになった男性には、夢を言わない方がいいかもしれないね」
 「そうかな?でも、愛する人がいなくちゃ、あたしの夢は叶わないのよね」
 「恋でもしたら?」
 「あたしは、あのコに恋をしているの」

 あのコ、と言うのはきっと人間のことを指してはいないのだろう。

 頬杖をついた彼女が、空いている方の手でロックグラスの縁を指先で掴む。
 それを持ち上げると、左右にクワンクワンとゆっくり振りながら回すので、まだ大きな氷がカラコロと涼やかに鳴った。

 彼女が演奏をしていた楽器は有名なもので、小学生でも知っているだろうと思う。
 馬頭琴、だ。

 確か、小2の時の国語の教科書に「スーホの白い馬」と言う物語が載っていたと記憶している。
 その作中に出てくる楽器が馬頭琴であり、哀しいストーリーのラストをより心に深く刻むであろう役割も担っている。


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