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アンコール 1 「彼」

 二人の出会いのきっかけと言うのは、ありきたりかもしれないけれど、僕がとあるバーに飲みに行き、彼女を見かけたことからはじまった。

― けれど、僕にとっては特別な出会いであったことは確かで、ありきたり、と言う言葉では到底片づけられないものとなった。

 入社したばかりの会社の忘年会に参加をして、その帰りに飲み足りないと感じたので、一人暮らしをしていたアパートのある駅までたどり着くと、どこか近くで、少し酒を飲めるような店はないかと散歩がてらにプラプラと最寄り駅付近を散策していた。

 仕事は早い方ではなかったかもしれないが、真面目に取り組むことと、正しい敬語を使うことが出来た為、頼れる上司に好意的に受け入れられて、職場には居やすく、この先人間関係で精神的に苦しむことはなさそうに思えた。

 都会の中に存在する田舎。
 新宿まで出るのに十数駅を通過する必要があるけれど、不便さは感じない程度の、そんなところに住んでいた。



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