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人格否定

娘が高校1年生、息子が中学1年生の夏休み、事業も低迷状態、夫婦の仲も冷え切っていた。
でも、子供達には関係ない。特に自閉症の長男にとって、長期休み🟰家族旅行のルーチン行事を、しないとなると、毎日何十回いや、何百回も、旅行旅行と言い続ける。それもストレスなので、また長男のために、沖縄に行くことにした。

大吾には。こんな状態だし、私が1人で連れて行く事を話した。最初は、そうしてと言っていたのに、日にちが近づくと、俺もやっぱり行くわと言って、旅行に参加することになった。

1人で3人連れて旅行に行く大変さよりも、大吾と一緒に行く方が、気が休まらないが、何かあったときはやはり頼りになる。多少の不安は、さておき沖縄旅行が始まった。

沖縄旅行といっても、ほぼルーチンルートを辿る旅。
空港に着いてランタカーを借りて、その後首里そばという地元で有名な沖縄そば店に行って腹ごしらえをした後、北部の名護という地区のリゾートホテルに向かう。

なんとなーく気まずい雰囲気が流れていた。旅の中心はあくまで長男なので、長男のために頑張るしかない。でも、楽しくなさそうにしていたら、こちらも少し頭にくる。お金を払ってきているのに楽しまないのであれば、来た意味って何と思って、気を使うというよりは、あまり自分からは関わらないようにしていた。

それが、大吾には気に食わなかったようだった。
3日目の朝最後の日と言うことで、朝早めに行動することにした。大吾を起こすがなかなか起きない。
その日は台風も接近していて、雲行きもあやしいし、早く長男をプールに入れて観光に出掛けたかった。

呼びかけても起きなかったので、足先でねぇと体に触れた途端、「お前、今足で触ったな!!」と飛び起きて怒り出した。大声を上げるだけならとにかく、部屋の家具を蹴ったり、電灯を倒したり暴れた。

それ位で、怒りあらわに暴れ出す姿が、逆に滑稽に思えたが、平謝りしその場を収めた。
怒りを抑えるのに時間がかかり、朝食ブッフェの終わる時間が迫っていた。
急いで、会場に行くとファミリー連れで賑わっていた。

私たち家族も側から見たら、家族旅行に来た普通の家族に見えていただろう。でも、実際は違う、一触即発のピリピリした朝食ブッフェ、取り敢えず子供たちにご飯を食べさせなければと、席を立った時、大吾が突然大声で、「お前なんで蹴ったとやー」と言った。「蹴ってないし」そういっても後の祭りで、どんどん声を荒げて、机を蹴りながら攻め立ててくる。

周りのファミリーも異変に気付き、こちらをみている。目線が痛く突き刺さり、とうとう私よりも先に娘が泣き出した。
次男も出来立てのオムレツを持って上機嫌で戻ってきて異変に気づき、うつむき加減で机に座って、オムレツを見つめていた。

人前で大きな声で机を蹴り、怒鳴り散らされていると、かえって冷静になる。
でも涙は自然出てくる。自分という人間を罵られ、人格否定されているからだろう。

私より先に泣いた娘が、私より先に、「もう、パパ辞めて」と言った。それを聞いてまた涙が止まらなくなった。
怒鳴られている悲しみではない、なんとも言えない情けない気持ち、そして怒りと共に込み上げてきた言葉は、「もう、嫌、離婚しよう。」だった。

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