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棄てられた神

ヒルコはイザナギ、イザナミの最初の子(『古事記』)でありながら、海に遺棄された。

『古事記』には、こう記されている。
「くみどに興して、子水蛭子(ヒルコ)を生みたもう。この子は葦船に入れて流し去りき」(*くみどは寝所のこと)

水蛭子という字面から蛭のように骨のない異様な肉体で、歩くことも立つことさえもできない不具者をイメージさせて、海に遺棄することで締めくくられる。

それをオマージュした作品が手塚治虫の「どろろ」であると教えてくれたのは大学時代、農業経済図書室の司書のYさんだった。
当時は「どろろ」を知らなかったので、その話を聞いてからネットや図書館等でソースを探った。

「どろろ」の主人公の一人である百鬼丸は、生まれる前に48体の魔物への生贄として差し出された結果、身体の48箇所が欠損した存在として生まれ落ち、父により川に流されてしまう。

百鬼丸は、体を奪った妖怪を1匹倒すごとに、失った体の部分を1ヵ所取り戻すことができ、もう一人の主人公どろろと共に自分を取り戻す旅に出るという筋書きだ。

海に遺棄されたヒルコのその後については『古事記』には記述がない。
だから漫画などのファンタジーの素材として用いられるのだろう。

ちなみに「どろろ」のオマージュが高橋留美子の「犬夜叉」やCLAMPの「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」でありそうなことは想像に難くない。

イザナギとイザナミがヒルコを海に遺棄した意図は定かではないが、障碍とはその人固有のものではなく社会が生み出したものであるとも考えられる。
(好きな言葉ではないが)健常者と障碍者が分断ではなく共生できる社会を目指して垣根を超えるような虹の架け橋を僕たちは作っていきたい。

そんなことを休日、障碍者スポーツ特集の番組を見ながら考えた。

明日も皆様にとって、よい一日でありますように。

参考文献
戸矢学「ヒルコ 棄てられた謎の神」(河出書房新社)

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