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【小説】女子工生⑫《女子トーク・恋バナ》

初めての恋バナ

 月曜日、真白(ましろ)達女子3人は、朝から
キャッキャしながら ノートに何か書いている。
徹(てつ)が近くを通った時、何気なく覗いたら

 ●クリスマスケーキ
 ●飲み物
 ●唐揚げ
 ●焼きそば
 ●お菓子

と書いてある。
徹は(あっ)と思って 3人に言った。

「ねえ、もしかして それ金曜にやるやつの
用意するもの?」

咲良(さくら)が、持っていたペンを 器用にクルリと回しながら答えた。

「うん。私らじゃ、あんまり凝った物、作れないし、無理して失敗しても やだし、こんな物かなって。」

「それ、お金どうするの。皆に言って割り勘にした方が・・・・」

て徹が言いかけると、真白が手を顔の前で振りながら言った。

「大丈夫、大丈夫。コレうちの兄ちゃん達の
クリプレだから。」

「え?」

「私ね 大兄ちゃんが仕事始めて、ちい兄ちゃんがバイト始めて、クリプレ貰うようになったのよ。今まではバッシュとか、洋服とかだったんだけど、今年は 大兄ちゃんがケーキとジュースで、ちい兄ちゃんが その他の食材とお菓子に してもらったんだ。唐揚げと焼きそばは、私らで作るよ。味は保証しない。」

ケラケラ笑っている。
続けて鈴音(すずね)も笑う。

「平気だよ。焼きそばはソース付きだし、
唐揚げは市販の唐揚げ粉使うし、何とかなるでしょ。」

真白が重ねて言った。

「そう言う訳だから、お金の心配はしないでね。」

「そうなんだ。じゃあ、お兄さん達にも よろしく言って。」

「うん。」

そしてまた、3人は 女子トーク(?)に戻ったので、徹も席に戻った。
徹が離れるのを見てから、鈴音が声を押さえぎみに言った。

「それで真白は 久住(徹)に何かあげるの?」

咲良も頭を寄せて 押さえた声で言う。

「え、内田(清文)じゃないの?」

真白は首をかしげた。

「何、話が見えない。何の事?」

鈴音が更に頭を寄せた。
3人は頭がくっついた状態で続ける。

「だって、クリスマスだよ。久住も内田も 仲いいじゃん真白。大下(広樹)と丸山(聡)は違う感じだけど、久住と内田は真白の事、狙ってるんじゃないかな。あの2人、真白に対して出す空気、明らかに他の人と違うよね。」

咲良も同意見の様だ。

「そうそう。真白に対して 男らしいって言うか、優しいって言うか、私らと話す時と、何か違うよね。」

「真白が機械のやつともめた時、内田、カッコ良かったじゃん。久住も真白の事、ガードしてたし。」

「久住も、行事の時とか部活とか、真白の事
気にかけてる風だし、真白もクラスの男子の中じゃ 1番仲いいじゃん。」

2人がヒソヒソ、どんどん 話を進めていく。
咲良が真白を、上目使いで見た。

「で、真白はどっちが好きなの?」

2人とも、目が少女漫画の様にキラキラ、ウルウルしている。

「ちょっと待って。2人も知ってると思うけど、私 ここへ来て初めて 友達付き合いが本格化したんだよ。」

「「うん。それは知ってる。」」

2人の目はキラキラしたままだ。

「で、工業は、周り 男の子ばっかりじゃん。うちのクラスは鈴音と咲良がいてくれるけど
最初に声かけてくれたヒロとテツと友達になって、いろいらあって、聡とか、清文とも仲良くなったけど、好きとかって・・・・」

真白が言葉を濁すと 鈴音が

「よく分からない?」

と 引き受けた。

「・・・・うん。」

「じゃあさ、これから少し考えてみなよ。
久住と内田だけじゃなくてもいいから。部活の先輩とか、他の科の人でも。」

「何を考えるの?」

「誰といると1番楽しいかとか、ドキドキするとか、頼りになるとか、考えて心構えしとかないと。」

「何の心構え?」

「いきなり誰かに告られて、ビックリして断わっちゃって、落ち着いて考えたら そいつの事やっぱ、好きだったー。とかだったらだめじゃん。」

咲良が思い出して真白を指差した。

「そう言えば、この前 機械の子に真白、告られてたじゃない?あれ、ビックリしなかった?」

「した。私 この人の事、名前もよく知らないのに何でって。」

「でしょ?今まで100%友達って思ってた人から、いきなり告られたら、真白 驚いて断わっちゃいそうだもん。」

鈴音も腕を組み、うんうんと頷いた。

「そうそう 真白、頭もいいし、見ように  よっちゃ可愛いし、球技大会の時も目立ってたじゃん。真白の事、いいなーって思ってるやつ いると思うよ。」

「見ようによっちゃって・・・・。んー 自分じゃよく分かんない。よく分かんないけど、考えてはみる。」

そうしろ、そうしろと2人は笑った。
真白は真剣な顔で、鈴音と咲良を見た。

「でもさ」

「うん。」

3人はまた、頭をくっつける。

「私、こんな 恋バナらしき事をしたのは、
2人が始めてだ。」

2人は揃って爆笑した。

「そ、そんな真剣に・・・ブハハ・・そうか
初めてか!アハハハハハ!」

「らしきって、らしきじゃないよ。恋バナだよ~。アハハハハハ!」

腹を抱えて笑っている2人に、真白はプンプン
怒っている。

「しょうがないじゃん。初めては初めてだもん!」

咲良がヒーヒー言いながら、笑いすぎて滲んだ涙を 手の甲で拭っている。

「そっかあ、真白、初恋もまだ?もしかして。」

「うるさい、うるさーい!そう言う咲良と鈴音は、うちらとクリパしてていいの?好きな人に、告ったりしないの?」

その言葉に咲良が(うっ)と詰まった。
鈴音はピンと来た。
真白は(?)だ。

「何?何かあった?」

「・・・先週、3年の先輩に告って、・・・
断わられました!」

「何それ!詳しく!詳しく!」

話題は、咲良の告白話しに移っていった。
真白はホッとして、咲良と鈴音のやり取りを
聞いていた。
頭の中では、さっき2人が言っていた 徹と、
清文の事が ぐるぐる回っていた。

                 ⑬に続く


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