【小説】女子工生⑪《恋の自覚(1)》
男の子達の買い物
クリスマスパーティーは、当初の予定通り、
真白(ましろ)の家でやることになった。
女子3人は 朝、荷物を持って登校する。
終業式なので、着替えを持ってきても 大した荷物にはならない。
いつもは自転車の3人も その日は歩きか、親に送ってもらうかの登校だ。
帰りに真白の母が、車で学校に迎えにきて、そのまま買い出しに行くらしい。
3人でなにかを作る相談をしている様だ。
男子参加者の ロボ研1年4人と清文(きよふみ)は3時過ぎに、それぞれ自転車で真白の家に
集合だ。
クリスマスらしくプレゼント交換をするので
当日までに1000円くらいで用意しておく様にと
お達しがあった。
土曜の午後、ロボ研男子4人プラス清文は 市内のショッピングモールに来ていた。
プレゼント交換様用の品を買いにきたのだ。
渡す相手が決まっていたり、男ばかりなら考えもつくが、今回は 男女混合で渡る相手も分からない。
1人で考えていても埒が明かないので、連れだってやってきた次第だ。
「なー、何にするー?男でも女でもいい物ってなにー?」
勇介(ゆうすけ)が、もう飽きていた。
「俺、もうよく分かんないからお菓子でいいや。サービスカウンターの横に チョコ売ってたよな、贈答用の。それ買ってくる。みんな 買い終わったらラ○ンして。」
と 言うと、とっとと行ってしまった。
すると広樹(ひろき)も
「俺もわからん。無難にノートとかシャーペンとか1000円くらいでセットにして包んでもらってくる。」
小走で文具店のテナントの方へ 行ってしまった。
徹(てつ)は歩いていて、ふと目についたハンカチを眺めて言った。
「俺、これにするわ。柄選べばどうにかなりそうだし。」
「僕、さっき通りすぎた雑貨屋にあった、雪だるまの小物入れにしようかな。ちょっと見てくる。」
と聡(さとし)が言うと、清文も
「あ、俺も雑貨屋行くわ。そこで探す。」
聡について雑貨屋に向かって歩き出した。
徹と別れて 2人で歩き出すと、ふいに聡が
清文に言った。
「で、清文は真白に何か買うの?」
「買わないよ。」
「テツは買うかもよ。」
「テツが買いたきゃ買えばいい。俺は買わない。」
「でも清文、真白の事好きだよね。」
聡は横目で 清文をチラリと見上げた。
清文は一拍おいて
「・・・・妹みたいなもんだ・・・」
「またまたあ。僕、そういうの結構鋭いんだよ。清文、割りと早い時期から真白の事気に入ってたよね。」
清文は、立ち止まって 少しうなだれた。
「お前は・・・」
呟いて、また歩き出す。
「ふっふーん。伊達に姉や妹に 気を遣ってませーん。」
清文も、聡の観察眼に観念した様だ。
「でも、見てりゃ真白が誰を好きかなんて、
丸わかりだろう。本人、自覚してねえみてー
だけど。」
「あー ニブいからねえ。それはテツもだけど。でもテツは この間の真白の告白事件で、
やっと自覚したみたいだよ。このクリスマスで何か動くんじゃない?」
「真白はその方がいいたろ。俺が動いたら真白が混乱する。俺が動くのは、真白に何かあった時だけでいい。」
「はー。優しすぎるんだよ清文は。損な性分だね。」
「うるさいな。お前はどうなんだよ。好きでもなきゃ俺の事まで気付かないだろ。」
「あ、あった。」
聡は目を付けていた、雪だるま形をした小物入れを手に取った。
「ぼくは、勝てない勝負はしません。さっさと土俵から降りさせて頂きました。」
「お前も損な性分だな。」
「お互い様でしょ?」
「あ、コレいいな。これにしよう。」
黒やグレー、赤や黄色のストライブのタオルが置いてある棚の前で 足を止めた。
どの色にするか選びながら話を続ける。
「真白も罪作りな女だな。無自覚なだけにタチが悪い。」
「仕方ないよね。中学3年間、人との交流ほとんど無かったみたいだし、友達できて、楽しくってしょうがないって感じだもん。」
「少しテツの背中、押してやるか。
あの2人じゃ 10年経っても進展しなさそうな気がする。」
「ん、真白の為にもね。清文男前ー。」
聡は小物入れを買い、清文は、ストライプの色がグレーとネイビーの物を選び、2枚セットで
包んでもらった。
聡が清文のタオルを指差して、優しく笑った。
「それ、真白に渡るといいね。」
「・・・・うん。」
「あ、珍しく素直。」
「誰にも言うなよ。」
「言いません。」
2人のスマホが同時に鳴って、グループラ○ン
が送られてきた。
【広】 (みんな、終わった?腹減った。何か食
おう)
【勇】 (終わった。マックでいい?)
【徹】 (了解)
【聡】 (OK)
【清】 (今行く)
「さて、行くか。」
「うん。」
⑪ー(2)に続く
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