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【小説】女子工生④《ロボット研究部》

 ロボット研究部

 徹(てつ)、広樹(ひろき)、真白(ましろ)の3人で 隣の校舎(作業棟と呼ばれている)の2階へ上がって行った。階段のすぐそばの教室のドアに
      《ロボット研究部》
と書かれた紙が貼ってあった。
広樹が コンコン とドアをノックした。
キュキュと床を歩く音がして、ガラッとドアが開いた。

「うわっ!びっくりした!」

とガツシリした体格の 背の高い先輩らしき人が、のけ反った。
こちらの3人はびっくりされたことに驚いて、少し後ずさった。
どうやら ノックに気付いて出てきた訳ではなく、トイレに行こうとしてドアを開けたらしい。

「ビビった。なに?」

3人を見おろして 先輩らしき人が言った。

「あ、あの ロボ研に入部したいので、届けを持って来たんですけど。」

広樹が言うと

「全員?」

と 聞かれた。
3人が頷くと 大柄な先輩が部室に向かって

「部長!」

と怒鳴った。
え?ここ柔道部じゃないよね と思う程の声だった。

「部長!おい 大熊!入部希望だって。3人。まだ大丈夫?」

すると 奥の方から細身の ヒョロリとした これまた 背の高い人が出てきた。

「お前だって副部長だろ。対応しろよ。」

「俺、便所。」

そう言うと、大柄な先輩は バタバタとトイレの方へ走って行ってしまった。

「うるさくてごめんね。入部希望?」

3人は頷きながら 入部届けを差し出した。
部長で大熊と呼ばれていた先輩は 紙にさっと目を通すと

「電子が3人か。」

つぶやいて 考えた顔になった。
3人は不安になってきた。
もう、希望者がいっぱいで入部出来ないのだろうかとか考えていると、さっきの大柄な副部長が戻って来た。
4人が教室の前にいるのを見て言った。

「おい部長。1年が固まっちゃってるぞ。
人数、まだ大丈夫なんだろ。」

部長はハッとして顔を上げた。

「ゴメン。大丈夫、大丈夫。歓迎 歓迎。」

と、笑ったので3人は ほっとした。

「あの、そんなにたくさん 希望者がいるんですか?」

広樹が聞くと

「違う違う。まあ入って。」

と、部室に招き入れられた。
すると 数人いる部員の中に、見た顔があった。

「あれ?丸山君?」

真白が気付いて 声をかけると、教室の一角にある作業台で 何やらやっている丸山聡(さとし)が顔を上げた。

「あれ、皆もロボ研にするの?」

と、嬉しそうに言った。
部長が説明を引き取る。

「今、正式に届けを出しているのが君たち3人と この丸山君と あと電気の津田君。
本当は機械科の子も欲しいんだけど、人数的に これ以上いてもなーっと思ってさ。」

部長に続いて 大柄な方の先輩が 作業台に着きながら言った。

「ひと学年、5・6人がベストなんだよ。少ないと もちろん大変なんだけど、多すぎると 手持ちぶさたなヤツが出てきちゃって やる気無くなっちゃうんだよ。使える機械も限りがあるし、下級生に目が届かなくて 怪我しても大変だしな。」

「うん。まあ今年はこれで打ち止めでいいかな。皆、真面目そうだし。機械科は授業で製図をしっかりやるから都合がいいんだけど それは部内で教えれば何とかなるし。機械科程じゃないけど、電子科も授業にあるしね。」

とりあえず 入部は間に合った様だ。

「僕が部長の大熊。そっちのデカイのが副部長の小熊。」

「は?」

思わず徹が声を上げてしまい、慌てて口を押さえた。

「大丈夫。そのリアクション普通だから。時々 体格見て、逆に覚える人もいるし。」

気を悪くしていない様で ひと安心だ。

「今日はどうする?まだ1年はやる事ないけど
作業、みてく?」

3人はせっかくなので 少し見ていくことにした。三年生は他に あと2人。2年生は全部で6人いるらしい。
上級生達は それぞれ『よろしく』とか『途中で辞めるなよ』とか声を掛けてくれ、すぐに黙々と自分の作業に打ち込み始めた。
一年生が正式に加わるのは 週明けの月曜からだ。
授業も月曜からガッツリ始まる。
いよいよ本格的な高校生活のスタートだ。

                 ⑤に続く


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