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光川てる/ミツカワテル
2023年9月9日 12:16
再会 その日 ミリーは急いで森の奥へ向かって飛んでいた。奥へ、奥へ、ミリーの管轄の花畑はとうに過ぎ大きく繁った木の葉が折り重なり、薄暗くなってもミリーはさらに奥に飛んでいった。奥の奥へ飛んでいくと、先の方に一筋の光が見えた。その光に向かってスピードを上げる。やがて森は終わり、明るい開けた場所に出た。川を挟んで左右は平らな地面が川に沿って続いている。平らな地面のさらに両外側は切り立
2023年9月16日 07:25
暁飛の寝床 滝の端の隙間からミリーは裏側へ入っていった。「あれ?明るい。」中はかなりの広さがあった。もっと暗い洞窟のような所を想像していたが思いの外明るかった。「日光苔だ。」「ああ、なるほど。」日光苔は ほんの僅かな光があればそれを反射して周りを明るく照らす苔だ。夜も、昼に溜めた光をボンヤリ発光する。中は何もなく、暁飛(こうひ)が体を休める場所にいくらかの枯れ草が
2023年9月23日 23:28
妖精達 自分の森に帰ってから、ミリーは友人達に声を描けた。清涼の谷に行かない?と。清涼の谷までは距離があるし、行ったことのある妖精はミリーだけ。なかなか誰も一緒に行ってはくれなかった。とにかく黒龍の谷をみんな怖がっていた。 ある日ミリーは、特別な花畑の管理人をしている《ユキマー》さんの所を訪ねた。新しい花を研究したり、古代の花を咲かせようと研究したりしている妖精だ。「ユキマー
2023年10月2日 05:59
空を駆ける妖精達「なあーんだ、たいして怖くないわね。」川縁で日向ぼっこをしながら、うつらうつらと昼寝をしていた暁飛(こうひ)を見下ろしながら、ゆみんが言った。両手を腰に当てて、何だか偉そうだ。○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ 3人は 先程、清涼の谷へやって来た。暁飛は寝床ではなく、日当たりのいい川縁で昼寝をしていた。昨日は隣の国との国境近くまで様子を見に行っていたの
2023年10月9日 07:19
5日ほど経ってミリーは暁飛(こうひ)の洞窟にやってきた。両手にドライフラワーにした花を抱えている。生花の方が美しいのだが、暁飛が手間を掛けずにずっと置いておけるドライフラワーにした。ミリーは時々持ってこようと思っていた。壁に吊るしたり、後で花瓶を持ってきて、テーブルも何とかして運んで、暁飛のねぐらをもっと暮らしやすいものにしてあげたかった。ミリーが森を抜けると・・・唖然とした。たくさ
2023年10月15日 17:41
カズミーさんの失敗 ミリーは数日に1度 暁飛(こうひ)の所へ行った。行く度、たくさんの妖精達が谷で遊んでいた。ミリーは暁飛と寝ぐらに入る時もあったり、外で暁飛や他の妖精と話して帰ることもあった。ただ、いつ行っても誰かいるので、1人で暁飛の寝ぐらに入ることはなかった。 花々の見守りも もちろん手を抜かずに行う。草花を食べてしまう虫が多く発生してしまった時には、鳥達に助けを求めたり、
2023年10月23日 06:49
ソラの暴走 ミリーが清涼の谷へ行くと 川縁で暁飛(こうひ)が休んでいた。相変わらず妖精達が遊んでいるが、以前ほど大人数ではなくなった。だが、入れ替わり立ち替わりやって来ているようだ。時折 パタパタと動かす暁飛の尻尾に掴まって遊んでいる者や、暁飛の頭の上に乗って寝転んでいる者もいる。ミリーが暁飛の鼻先に飛んでいった。「暁飛、ちょっとお願いがあるんだけど。」ミリーはワクワクを隠
2023年10月29日 16:34
プレゼント?「ソラ、大丈夫かしら。」ミリーが心配そうに呟いた。「何がだ?」暁飛(こうひ)は頭の上のミリーに聞く。「何がって、ソラは暁飛に失恋したのよ。まあ、ソラが先走って番(つがい)とか言い出したのはビックリだけど、たぶん前からソラは暁飛の事を好きだったのよ。」「・・・・・」「暁飛?」「よく分からん。」「え?あれだけソラが好き好き言ってたじゃない。」「我もミ
2023年11月5日 19:05
暁飛の気持ち ケンカをした日から、ミリーはぱったり清涼の谷へ来なくなった。以前は4、5日おきに来ていたのだが もう10日は姿を見せていない。暁飛(こうひ)は毎日 谷でミリーを探したが、今日も来ていないようだった。日当たりの良い石の上に、ゆみんが来ていた。「ゆみん。」暁飛は声を掛けた。「あら、暁飛。あなたから声をかけてくるなんて珍しいわね。」初対面の時あんなに怖がってい
2023年11月12日 19:16
ミリーの気持ち あれから何日経っただろう。ミリーは毎日毎日 花々を見て回っている。そんなに頻繁に見回らなくても良いのだが、ミリーはじっとしていられなかった。『施しなどいらん!』暁飛(こうひ)の声が繰り返し心の中に響いた。施しなんてそんなつもりは全くなかった。枯れ草を敷いてある暁飛の寝床。寒くないのかな、痛くないのかな、と思っていた。土の上に寝るより、空布を敷いて寝た方が気持ち
2023年11月23日 20:02
祝福 谷の1日はいつもの様に過ぎていく。幼い妖精達は暁飛の頭に乗って空の散歩に行く。時々 大人の妖精もそれに混じる。暁飛(こうひ)は、見回り見守りを兼ねて、あちこちへ飛んで行く。ミリーは谷で星の花の様子を見て回った。以前蒔いた種は芽吹き、蕾を付け、1/3程咲いている。日の当たり具合や 風の吹き具合で色を変える星の花。赤やピンク、黄色やむらさき等が咲き始め、優しい風に吹かれて シャ
2023年11月25日 21:43
暁飛(こうひ)とミリーは暁飛の洞穴で一緒に暮らすようになった。以前は何もなかったねぐらだったが、花が飾られ、テーブルが置かれ、その上にも竹を切った花瓶が置かれ 生花が挿してある。 空布も健在で夜は2人仲よく寄り添って眠る。最初の頃、暁飛がミリーを潰してしまうのではと気にしていた。最終的にミリーが暁飛の鬣(たてがみ)の中で眠ることにして、暁飛も安心して眠るようになった。 ある日、暁
2023年12月8日 21:05
風になってミリーと暁飛(こうひ)が番(つがい)になってから、500年程の月日が経った。人間の生活もずいぶん変わった。地面には車が走り、鉄道が敷かれ、空には飛行機が飛ぶようになったが、清涼の谷は変わらずそこにあった。暁飛が寝床で丸くなっている。その手の中に横たわるミリー。「逝くな、まだ逝かないでくれ。」大きさの違いゆえに、抱き締めることも出来ない。暁飛の、手の中で弱く微笑む
2023年12月10日 10:45
お礼 お陰さまで、最後まで書き切ることが出来ました。これも、ひとえに皆様の温かいスキやコメントのおかげです。 そして、KeigoM さんの寛大なお心に、本当に感謝致します。KeigoMさんのお描きになる絵の、「妖精の国」シリーズのみならず、日々投稿されている絵でイメージが合うものがあると、『昨日のあの絵、使わせてください!』と図々しくお願いしていました。すると、KeigoMさん、『いい