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月光~妖精と龍~

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黒龍の暁飛(こうひ)と花の妖精ミリーの可愛いお話し。 少しずつ育む2人の思いは 友情?それとも・・・
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【お話し】妖精と龍~前編~

【お話し】妖精と龍~前編~

 妖精の世界では、月の光が一段と強い特別な夜があって、青く光る大きな花に「幸せの光」が注ぐらしい。
その光を浴びれば、身体の力がみるみるうちに回復するし、心には優しくて甘い感覚が湧いてくるらしい。

妖精のミリーちゃんは最近少しお疲れ気味。
羽が軽やかに動きにくいし あまり良い事もないなぁと思う。

久し振りに光を浴びに来た。
とても眩しい。
すぐに身体が軽くなってきて、それだけでなく心も柔らかく

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【お話し】妖精と龍~後編~

【お話し】妖精と龍~後編~

 傷を癒しながら2人は話をした。
主にミリーちゃんが質問して 龍が答える形だったが。

「そういえば龍さんは何て言う名前なの?」

「我が名はコウヒ」

「コウヒ?」

「暁(あかつき)を飛ぶと書いて暁飛。」

「暁?」

「夜明けの赤い色だ。」

「夜明け。」

「体は黒いのだがな。」

暁飛は自嘲気味に笑った。
本来龍は 金の瞳に腹はミルク色、その他は
艶のある深い緑色だ。
 暁飛は 背も腹も

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【お話し】月光~妖精と龍~(1)

【お話し】月光~妖精と龍~(1)

暁飛

 黒龍 暁飛(こうひ)が大雨による土砂崩れで 民を守り、怪我をおってから7日が過ぎた。

『幸せの光』で傷は癒え、まだ大雨の影響が残る土地土地を見て回っていた。
民達は、力強く荒れた田畑や家を直している。

暁飛が身を呈して流れを変えた土砂は 今もそのままだが、民の生活は戻りつつあった。

7日前、暁飛は風変わりな妖精と会った。
普通の龍は深緑色をしているが、暁飛は全身
真黒の黒龍。
他の

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【お話し】月光~妖精と龍~(2)

【お話し】月光~妖精と龍~(2)

再会

 その日 ミリーは急いで森の奥へ向かって飛んでいた。
奥へ、奥へ、ミリーの管轄の花畑はとうに過ぎ大きく繁った木の葉が折り重なり、薄暗くなってもミリーはさらに奥に飛んでいった。
奥の奥へ飛んでいくと、先の方に一筋の光が見えた。
その光に向かってスピードを上げる。
やがて森は終わり、明るい開けた場所に出た。

川を挟んで左右は平らな地面が川に沿って続いている。
平らな地面のさらに両外側は切り立

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【お話し】月光~妖精と龍~(3)

【お話し】月光~妖精と龍~(3)

 暁飛の寝床

 滝の端の隙間からミリーは裏側へ入っていった。

「あれ?明るい。」

中はかなりの広さがあった。
もっと暗い洞窟のような所を想像していたが
思いの外明るかった。

「日光苔だ。」

「ああ、なるほど。」

日光苔は ほんの僅かな光があればそれを反射して周りを明るく照らす苔だ。
夜も、昼に溜めた光をボンヤリ発光する。
中は何もなく、暁飛(こうひ)が体を休める場所にいくらかの枯れ草が

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【お話し】月光~妖精と龍~(4)

【お話し】月光~妖精と龍~(4)

妖精達

 自分の森に帰ってから、ミリーは友人達に声を描けた。
清涼の谷に行かない?と。
清涼の谷までは距離があるし、行ったことのある妖精はミリーだけ。
なかなか誰も一緒に行ってはくれなかった。
とにかく黒龍の谷をみんな怖がっていた。

 ある日ミリーは、特別な花畑の管理人をしている《ユキマー》さんの所を訪ねた。
新しい花を研究したり、古代の花を咲かせようと研究したりしている妖精だ。

「ユキマー

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【お話し】月光~妖精と龍~(5)

【お話し】月光~妖精と龍~(5)

空を駆ける妖精達

「なあーんだ、たいして怖くないわね。」

川縁で日向ぼっこをしながら、うつらうつらと昼寝をしていた暁飛(こうひ)を見下ろしながら、ゆみんが言った。
両手を腰に当てて、何だか偉そうだ。

○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○ー○

 3人は 先程、清涼の谷へやって来た。
暁飛は寝床ではなく、日当たりのいい川縁で昼寝をしていた。
昨日は隣の国との国境近くまで様子を見に行っていたの

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【お話し】月光~妖精と龍~(6)

【お話し】月光~妖精と龍~(6)

 5日ほど経ってミリーは暁飛(こうひ)の洞窟にやってきた。
両手にドライフラワーにした花を抱えている。
生花の方が美しいのだが、暁飛が手間を掛けずにずっと置いておけるドライフラワーにした。
ミリーは時々持ってこようと思っていた。
壁に吊るしたり、後で花瓶を持ってきて、テーブルも何とかして運んで、暁飛のねぐらをもっと暮らしやすいものにしてあげたかった。
ミリーが森を抜けると・・・唖然とした。
たくさ

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【お話し】月光~妖精と龍~(7)

【お話し】月光~妖精と龍~(7)

 カズミーさんの失敗

 ミリーは数日に1度 暁飛(こうひ)の所へ行った。
行く度、たくさんの妖精達が谷で遊んでいた。
ミリーは暁飛と寝ぐらに入る時もあったり、外で暁飛や他の妖精と話して帰ることもあった。
ただ、いつ行っても誰かいるので、1人で暁飛の寝ぐらに入ることはなかった。

 花々の見守りも もちろん手を抜かずに行う。
草花を食べてしまう虫が多く発生してしまった時には、鳥達に助けを求めたり、

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【お話し】月光~妖精と龍~(8)

【お話し】月光~妖精と龍~(8)

 ソラの暴走

 ミリーが清涼の谷へ行くと 川縁で暁飛(こうひ)が休んでいた。
相変わらず妖精達が遊んでいるが、以前ほど大人数ではなくなった。
だが、入れ替わり立ち替わりやって来ているようだ。

時折 パタパタと動かす暁飛の尻尾に掴まって遊んでいる者や、暁飛の頭の上に乗って寝転んでいる者もいる。
ミリーが暁飛の鼻先に飛んでいった。

「暁飛、ちょっとお願いがあるんだけど。」

ミリーはワクワクを隠

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【お話し】月光~妖精と龍~(9)

【お話し】月光~妖精と龍~(9)

プレゼント?

「ソラ、大丈夫かしら。」

ミリーが心配そうに呟いた。

「何がだ?」

暁飛(こうひ)は頭の上のミリーに聞く。

「何がって、ソラは暁飛に失恋したのよ。まあ、ソラが先走って番(つがい)とか言い出したのはビックリだけど、たぶん前からソラは暁飛の事を好きだったのよ。」

「・・・・・」

「暁飛?」

「よく分からん。」

「え?あれだけソラが好き好き言ってたじゃない。」

「我もミ

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【お話し】月光~妖精と龍~(10)

【お話し】月光~妖精と龍~(10)

 暁飛の気持ち

 ケンカをした日から、ミリーはぱったり清涼の谷へ来なくなった。
以前は4、5日おきに来ていたのだが もう10日は姿を見せていない。
暁飛(こうひ)は毎日 谷でミリーを探したが、今日も来ていないようだった。

日当たりの良い石の上に、ゆみんが来ていた。

「ゆみん。」

暁飛は声を掛けた。

「あら、暁飛。あなたから声をかけてくるなんて珍しいわね。」

初対面の時あんなに怖がってい

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【お話し】月光~妖精と龍~(11)

【お話し】月光~妖精と龍~(11)

ミリーの気持ち

 あれから何日経っただろう。
ミリーは毎日毎日 花々を見て回っている。
そんなに頻繁に見回らなくても良いのだが、ミリーはじっとしていられなかった。

『施しなどいらん!』
暁飛(こうひ)の声が繰り返し心の中に響いた。
施しなんてそんなつもりは全くなかった。
枯れ草を敷いてある暁飛の寝床。
寒くないのかな、痛くないのかな、と思っていた。
土の上に寝るより、空布を敷いて寝た方が気持ち

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【お話し】月光~妖精と龍~(12)

【お話し】月光~妖精と龍~(12)

2人の気持ち

 次の朝、ミリーは夜明け前に目が覚めた。
一晩考えた。
暁飛(こうひ)への気持ち。
私は暁飛が好きなんだ。
アウルやゆみん達を好きなのとは違う。
私は暁飛を愛してる。
種が違っても 大きさが違っても 私は暁飛といたい。
心は決まった。

朝露が降りていると、羽が湿って上手く飛べない。
もう少し明るくなるのを待って谷へ行こう。
気持ちを伝えて、暁飛がなんと言うか分からない。
でも大丈

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