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【PODCAST書き起こし】谷さんの「観劇日記2021年7月」全3回(その2)

【PODCAST書き起こし】谷さんの「観劇日記2021年7月」全3回(その2)

【山下】続いてKawai Project『ウィルを待ちながら ~インターナショナル・ヴァージョン』、こまばアゴラ劇場と。こんなチラシでございます。

【谷】こちらですね。裏は?

【山下】裏はこんなです。2人芝居。

【谷】2人芝居です。この作品は、観終わったあとに博報堂の人とたまたま一緒になって、観終わったあとにすぐ山下さんに「絶対観たほうがいい」ってLINEを送って。「それでもつまらなかったら僕が払う」というふうに送ってたぐらい感銘を受けた作品です。

【山下】なので、チケットを取って行きました、私も。
私が一番驚いたのは、これ、シェイクスピアの翻訳をされてる河合祥一郎先生が演出もされてるんですけど。

【谷】作・演出:河合祥一郎さん。

【山下】劇場に行ったら、もう劇場のこまばアゴラの受付にいらして、もう全てを仕切ってたというのが格好いいなあと思って。
東大の教授をされてる河合先生がフェイスガードを付けて「あっちだ、こっちだ」とか「皆さんここで少しお待ちください」とかね、やってるのがすごく格好いいと思いました。

【谷】中でもやってましたよね。

【山下】そう! 中でも客入れのお手伝いをしたりとか、作・演出で翻訳までしてるのにここまでやるかというですね。

【谷】完全に仕切ってました。

【山下】いや、すごいですよ。御年もう60過ぎてらっしゃると思いますけど格好いいなあってすごく思いました。

【谷】シェイクスピアって全部で40作品って言われてるんですけれども。

【山下】僕、37作だと思ってたら40作なんですね。

【谷】3作何かとかぶってるものがあるらしい。

【山下】埼玉の芸術劇場では37作品コンプリートしましたとかね。この前『終わりよければすべてよし』で最後の作品をやってましたけど。知りませんでした、40作品。

【谷】全40作品から名ゼリフを集めて1本の芝居に仕上げた作品であって。

【山下】すごいですね。

【谷】本当は2018年だから3年前に初演して、そのあとにシビウってどこだっけな、海外の。

【山下】海外ね、東欧じゃなかったかな、調べたら。
(※「シビウ国際演劇祭」はルーマニアで毎年実施されている大規模なパフォーミングアーツのフェスティバル)

【谷】特に国際演劇祭の招聘作品になったんですね。でもコロナで延期になって一応来年の演劇祭に参加ということで。

【山下】それはシビウに行くんですか。

【谷】シビウでやるらしいです。それで今回再演しといたと。
で、初演もやってたわけで、それの台本に手を入れてバージョンアップしたということだそうです。
2人が自らのいろんな体験を交えながら、まさにみんな知ってるようなシェイクスピアの名ゼリフを(今、ここで何か言えと言われてもなかなか出てこないですけど)これを紡いでタイトルは『ウィルを待ちながら』ですけど。

【山下】これ、『ゴドーを待ちながら』ですね。

【谷】ゴドーの代わりにウィルを待ち続ける。

【山下】ウィルはウィリアム・シェイクスピアのウィルかな? ですよね。

【谷】だと思います。書いてないです、それはどこにも。

【山下】いや、でも絶対そうですよね。

【谷】2人の役者さんというのが田代隆秀さんと高山春夫さん。

【山下】僕、初めて見ました、このお2人。

【谷】でも、この人、よく見るとよく出てるんですよね、劇団四季で。

【山下】シェイクスピア・カンパニーとかの、最初。

【谷】シェイクスピア・シアターの創立メンバーで。

【山下】それを立ち上げたらしいですね。

【谷】今も劇団四季所属でレ・ミゼとかにも今、出てるのかな、初代ので出てましたよね。
あと、高山春夫さんというのがもう本当にいい歳の方なんですけれども、この人はいろんな芝居に出てるんですけど、最後のほうは蜷川さんのシェイクスピアにほぼ出てた方。

【山下】シェイクスピア劇の経験者なんですね。

【谷】だから、その人たちがやるから良いんですよね。
字幕付きでやったり。

【山下】英語のセリフもありましたよね。

【谷】初演はね、なかったらしいんですよ。

【山下】でも、あれ、良かったと思います、英語を入れて。

【谷】本当にね、刺激的でしたしコミカルでもありましたしね。
2人芝居にうってつけのこまばアゴラ劇場でね、本当に楽しい芝居で。

【山下】あれはあの濃密な空間だからこそというのも。
劇場の中にね、海外で上演されたやつかな、シェイクスピアのポスターばっかりが貼ってありましたね。あれ、どうしたんですかね。

【谷】あれ、河合さんの自前じゃないかな。たぶん、そうだと思いますよ。

【山下】でも河合祥一郎さんの訳がやっぱり一番現代的で。埼玉は全部松岡和子さんの訳だったらしいんですけど。
河合先生の訳でね、シェイクスピアの新しい解釈のやつをすごく観てみたいなと思いました。

【谷】ということで『ゴドーを待ちながら』ならぬ『ウィルを待ちながら』でした。

【山下】いやいや、もう河合先生をすごく尊敬しました。格好よかったです。

【谷】これね、ちなみに、Kawai Projectというのは6作品目だそうで。

【山下】河合先生は6作をやってるってことか。すごいですね、この先生は。

【谷】今まで、だから『ゴドーを待ちながら』も、やってるんですよ、河合さん。

【山下】じゃあ、ベケットも翻訳したのかな、自分で。

【谷】それは分かんないんですけど、それを客でいた田代さんが「ウィルにしてみたら面白いんじゃない」って言ってこれができ上がったらしいですよ。

【山下】なるほど、それをやったことによって、よくやろうと。あれね、ああやってセリフを再構成してね、ストーリーを作っていくのがよくできるなと思って。しかも途中で英語を入れてね。

【谷】すごいですね、構成力が。やっぱり全作品に携わってるからできる。

【山下】しかも英語も分かるしね。これ、河合先生以外はできないですね。
河合先生、まいりました。

【谷】まいりました。

【山下】というような『ウィルを待ちながら』でした。

で、続いてserial numberの『Hedge1-2』の『hedge』と『insider』というのと、『trust-hedge3-』という、これは2本立てですかね。

【谷】そうですね。2本立てで池袋の「あうるすぽっと」でやった作品です。

【山下】詩森ろばさんの作・演出なんですけど、詩森さんのチラシもしゃれてるんですよね。

【谷】1枚の紙なんですけど。

【山下】1・2・3と美しくできてます。よく見えてます。
これは私も『hedge3』だけ観に行ったんですけど、1と2はこのキャストではないんですけど初演を下北で観せていただきました。

【谷】小さいところでやってたんですけどね。

【山下】すごく印象的でした。

【谷】これ、経済演劇って言われてるんですけど。

【山下】ヘッジファンドのヘッジですかね。

【谷】詩森ろばさんって、昔serial numberって風琴工房って言ってたんですけどその頃にやった作品が1・2で。

【山下】そうか、1・2のころはまだ風琴工房だったのか。

【谷】そうです。『hedge』と『insider』という2作品を今回一つにしたのを1幕、2幕でやったんだ。
それで今度『trust』というのは『hedge3』として別作品としてやったと。
2013年に最初の作品はやったようですね。

【山下】そうか、2013年に観てるのか、『hedge』を。スズナリだったんじゃないかな、1は。

【谷】企業の再生ファンド・バイアウトファンドというのかな。マチュリティーパートナーズの創設とクレーン会社「カイト」の再生を描いた『hedge』。

【山下】2013年ということは、リーマンショックが2008年だから、それの影響がちゃんと残ってるところですよね。

【谷】その3年後の2016年にマチュリティーパートナーズの創設メンバーのエリートがインサイダー取引をやったりして、それを巡って証券取引委員会の人たちと調査を巡っていろいろ攻防していくというのが『insider-hedge2-』でした。

【山下】すごく面白かったです。

【谷】下北の住宅地にあるようなところでやってましたよ。

【山下】すごく覚えてるなあ。

【谷】蚊に刺されたのを覚えてます。

【山下】あのころちょうど僕も投資会社のお仕事をさせていただいて、すごく興味を持ち始めたところだったので、さらに面白かったですね、個人的に。

【谷】で、今回は3を作りまして、そのインサイダー取引で失墜しちゃったわけですね。それの信用(trustですね)を取り戻すべく『trust-hedge3-』を加えて、総合タイトル『Hedge1-2-3』として連続上演したと。意外と期間は1週間ぐらいで短かったですよね。

【山下】谷さん1日で観たんですか、これ。

【谷】1日で観ました。

【山下】結構大変だった。5時間ぐらいかかったんじゃないですか。

【谷】いや、そんなかかってないかな。1と2がね、1時間45分と15分と休憩で50分。そのあと3が長くて2時間10分。

【山下】3は長かったですね。

【谷】そうだね、5時間ぐらいは観てますね。間が完全に客入れ替えなんで。

【山下】そうか、消毒もしないといけないから。

【谷】今回ね、配役がいろいろ変わってて、珍しいのが吉田栄作さんが舞台に出てきたというのが。
詩森さんも喜んでましたけどね。「吉田さんが、なんと出てくれるの」って書いてありました。

【山下】自分で?

【谷】自分でです。

【山下】スーツが似合う男と。

【谷】女性も何人かね、4人出てきて、3だけは出てくるんですよね。

【山下】観ました。

【谷】それはコーヒーのフェアトレードの関係とさっきのマチュリティーパートナーズとの絡み合いというような感じです。

【山下】僕は1と2は過去作しか観てないんだけど、1と2と3でやっぱり時代によって経済の状況が変わってきてるなとすごく思いました。で、『trust-hedge3-』ってフェアトレードで割と今でいう途上国の人たちも豊かにするためにやっていかないと、この格差がどんどん広がっていっても結果的には誰も幸せにならないぞというような流れがあって。

【谷】それは企業に求められる視点がそうですからね。

【山下】そうなんですよ。ESG投資という言葉もこの2、3年ですから。だからそうやって視点が変わってきてるんだなというのはすごく分かった。

【谷】だからちょっと1・2というのは結構尖ってたんですよね。

【山下】そうそう、割と企業を買収したりM&Aしたりとかって言って、その利ザヤで稼ぐとかということをしてたんで。

【谷】だからちょっとマイルドさがいろいろあって。

【山下】だから僕ね、それはいい意味で時代をうまく捉えながら、詩森さんも割とこの時代だからこれをこういうことにしていかないと日本の経済も資本主義社会も終わっていかないよねというような仮説があったと思うんですよ。だからそれをコーヒーのフェアトレードと置き換えてやって起業というかたちに(アントレプレナーの起業ですけど)変えてたっていうのは僕は「ああ、なるほどな」って思って。3しか観てないですけどね。通しで観るとまた印象が違うのかなというのもちょっと思ったんですけど。

【谷】オープニングが詩森さんらしくてすごかったですね。

【山下】ちょっと動いたりね。アクションシーンもあったりとか。

【谷】動いて、いきなりみんな脱いじゃうじゃないですか。

【山下】はい、後ろ姿ですけどね。

【谷】びっくりしちゃいました。

【山下】ここで着替えるんだと思って、ああいうのは。

【谷】1・2は最初のところで男性がスーツに着替えてくんですけども。

【山下】3は女性だったからびっくりされたんですね。

【谷】「えっ?」と思いましたね。

【山下】すごくライティングとかもちゃんと工夫されてて、でもこれをこの時期に3つ連続で公演したというのはある種の意義深さもあるんじゃないかなというふうに思いますけどいかがでしょうか。
ということでserial number『Hedge1-2-3』と。

続いて、私は観れなかったんですけど、チケットが全然取れなくて。プレミアチケットだった『物語なき、この世界。』。三浦大輔さんですよね。

【谷】浜の番長ならぬ、今ベイスターズの監督、じゃない三浦さんですね。

【山下】同姓同名なのかな?

【谷】同姓同名です。字も一緒です。

【山下】三浦大輔さんという劇作家で演出家で映画監督もされていらっしゃって、その方の。

【谷】3年ぶりの舞台だそうです。だから間が空いていて結構みんな待ってた感じですかね。

【山下】去年、僕ね、オンライン配信で浅草の九劇でやったやつ、(作・演出:三浦大輔)を観たのよ、俳優の。あれ面白かったですよ。フェイクドキュメンタリーかな。それは覚えてる。すみません、脱線しました。
(※「役者の証」三浦大輔WS試演会 2020年8月8日~10日)

で、『物語なき、この世界。』。これ、すごいキャストですね、本当に。

【谷】これ、キャストは主演がダブルで岡田将生さんと銀杏BOYZの峯田和伸さん。

【山下】朝の連ドラにもね、出ていらっしゃって。

【谷】で、柄本時生さんと内田理央さんって最近売り出し中の。
大人計画の宮崎吐夢さん。米村亮太朗さんはよく三浦大輔さんに出てくる。

【山下】ポツドールのころから出てますね。

【谷】星田英利ってほっしゃんですね。

【山下】ほっしゃんが出てるの。ほんまかいな。ほんまや。すごいやないですか。
ほっしゃん、どうでした?

【谷】これが結構ね、キーパーソンなんです。

【山下】ほっしゃん、なかなか良い。お笑いの人って演技うまい人多いですよね。

【谷】だけど、すぐ死んじゃうんですけどね。

【山下】そうなんや。じゃあ、スケジュールが。

【谷】あっ、出ないんだ。死んでない。

【山下】死んでへんの?

【谷】死んだと思っちゃうの。

【山下】あと、寺島しのぶさんも出てらっしゃるじゃないですか。

【谷】はい。

【山下】シアターコクーン、これ、チケットが全然取れなかったらしいですね。よく取れましたね。

【谷】これは全然ね。私はコクーンの会員枠で。だけどあれも抽選ですから。

【山下】コクーンの会員ってお金かかるんですか。

【谷】かからないです。

【山下】じゃあ、それでコクーンの会員で抽選で申し込むんだ。

【谷】昨日からもまた松尾さんの作品で抽選始まりましたから。

【山下】松尾さん、谷さんの好きな。

【谷】松たか子さんが出るやつなんです。

【山下】松尾さんで。すごいですね。

【谷】すごいんですよ。

【山下】どんなんになるんだろうね。

【谷】すごく楽しみなんですけど。取れるかどうか分かんないですけどね。

【山下】これ、会員枠の抽選というのは第1候補、第2候補とか。

【谷】第3まで入れられます。しかもね、席種も選べたんじゃないかな。コクーンシートも選べたと思うから。コクーンシートって一番安いんですね。これだといくらかな。

【山下】コクーンシートがいいな。お金がないから。5500円ですね。

【谷】コクーンシートは斜めなんでちょっと疲れちゃうんですけどね。

【山下】でも半額じゃないですか、S席の。

【谷】僕、これね、すごく良い席で観たんですよ。

【山下】コクーンシート?

【谷】いえいえ、違います。ちゃんとS席。平日S席です。

【山下】さすがですね。

【谷】平日じゃないと取れないと思ったんで。
で、第2候補を平日のコクーンシートにしといたんです、その日の。

【山下】それって、でも第1候補が。

【谷】いや、もちろん、1が当たれば。

【山下】そうか、コクーンシートで第1、第2、第3というのもできるのか。

【谷】できます、できます。

【山下】じゃあ、わたし、これからそうやって申し込んでみます。

【谷】今から会員になれば。メルアド会員、メルアドで会員何番になりますか。

【山下】もうなります。

【谷】ぜひ。

【山下】コクーンとPARCOは行けないものになってきて、だんだん。

【谷】だけどPARCOは全部値段一緒ですからね。

【山下】そうなんだ。PARCOも取れないんですよね、なかなか。

【谷】取れないですね。

【山下】あれ? 昨日PARCO行かれたんでしたっけ。

【谷】昨日行きました。

【山下】いいですね。まあ、どうでもいいような話なんで。

【谷】それは来月お話しすることにしたいと思います。

【山下】かしこまりました。
で、どんな話だったんですか、そもそも。

【谷】岡田さんが売れない役者で峯田さんが売れないミュージシャンで、2人は実は高校の同級生だったんですね。
歌舞伎町の風俗店で夜から朝までの話なんですけど。

【山下】風俗ってファッションヘルスとか? キャバクラとか?

【谷】最初に行ったのはおっぱいパブで、「おっパブ」って言ってましたけど。

【山下】ああ、そういう感じか。

【谷】そのあとに行ったのがキャバクラか。そこの店長が宮崎吐夢。
【山下】いいですね。宮崎吐夢さん、キャバクラの店長が似合いそうですね。

【谷】それで10年ぶりに会うんですよ、そこで。

【山下】店で?

【谷】店で出会っちゃう。

【山下】そうしたら「おー、どうしたの?」みたいな感じで?

【谷】そこから、まあ、いろいろ始まって。

【山下】三浦さんのセリフはむちゃむちゃリアルですもんね、そういうとこは。

【谷】それでこの演劇って
彼らにとっては日常なんですよね。日常が描かれてるわけなんですけど、それがいくつかの出来事が起きて、まあ、人々が。それとね、映画を対比していたんですよね。

【山下】どういう意味ですか。映画と人間との対比。

【谷】映画って人が観に行く。まあ、劇場もそうなんだけど、でも映画は物語があるんだ。

【山下】演劇はないの。

【谷】この演劇は、これは日常なんですよ、だから。演劇じゃないから。舞台上は日常なんですよ。

【山下】面白いです、その仮説。

【谷】だから日常はただの出来事でしかないと。
たぶん、そういう意味で『物語なき、この世界。』というのがタイトルになってるんじゃないかなと僕は思う。

【山下】面白いですね。この前ね、かすがいさんとばったり映画館で会ったんですけど、そのときに
『愛がなんだ』の監督の。

【谷】今泉さん?

【山下】そう、それの映画ですごく面白いよというのをやってて、名前ちょっと忘れちゃったんですけど。
それもその場を聞き取ってるだけのような映画で、それがね、なんかこの舞台に似てるんじゃないかなと思いました、今。
(※ 「街の上で」今泉力哉監督 作品)

【谷】だから、言ってみれば誰もが主人公であったり脇役であったり、そこに物語を求めるわけじゃないですか。
でも結局は出来事の積み重ねでしかないと。

【山下】面白いねえ。

【谷】それが物語のない世界。

【山下】三浦大輔の考察ですね。

【谷】と、谷解釈ですよね、これは。

【山下】いや、それ、僕、すごく今ね、『スペキュラティヴ・デザイン』というのを読んでいて、この前スプツニ子! さんのイベントやった、あのときに彼女が紹介してたんで、借りて読んでいるんですけどね、スペキュラティヴ・デザインって「思索的にどういうふうに芸術をやっていくのかってその思索の仮説を提示するんだって。」で、これ、まさにそうじゃないかなと思ったんですね。

【谷】美術もそういう意味では歌舞伎町の美術なんですよ。

【山下】そういうリアリティーなんだ、しかも。
【谷】回転舞台で回転してスナックが出るとそこに寺島しのぶさんがスナックのママに。

【山下】それは歌舞伎町なの?

【谷】歌舞伎町。

【山下】全部、歌舞伎町の話なんだ。

【谷】歌舞伎町の話で、内田理央さんとかは岡田君の彼女なんですね。
で、柄本時生君は峯田さんの後輩。
呼ばれていた4人が1つの塊としていて、言ってみりゃ岡田君と峯田さんがタバコを吸う喫煙場所で喧嘩しちゃうんですよ、ほっしゃんが酔っぱらってからんできて。

【山下】対立構造ですか、ほっしゃんと。

【谷】それでガーンってやって、そうだ、最終的に死ぬんだ。

【山下】ほっしゃんが。殺されるの?

【谷】いや、自殺じゃなかったかな。

【山下】面白そう。

【谷】ちょっとそういう重たいとこもあるんだけども。

【山下】三浦さんはそこが良いとこじゃないですか。

【谷】これ、どこかでやるかもしれないですね。

【山下】これ、でも本当にもうちょっとロングランでやってくれないとチケットが取れないんですよね。

【谷】それで、これね、すごくかわいそうだったのが、8月3日で終わったんですけども最後の金・土・日ぐらいが。

【山下】なんか上演できなかったと。

【谷】関係者で陽性者が出ちゃって、結局やったんですけど何日間かできなかったんですね。

【山下】そうすると払い戻しですね。

【谷】そうですね、そうするとその分は。いや、だから払い戻しよりも観たいんですよね。

【山下】そりゃそうですよね。そうか、また再演してほしいですね。

【谷】だけど再演しないんじゃないかな。三浦さんは、たぶん。
それでね、もう1つ裏話があって、僕も今まで気づかなかったんですけどね、三浦さんの戯曲って主人公が結構、菅原裕一という名前らしいんですよ。

【山下】それは決まってるの?

【谷】多いんですって。

【山下】でも分かるんですけど。

【谷】今回の岡田さんは10代目ぐらいらしいです。

【山下】10代目・菅原裕一。「菅原屋、菅原屋」ですね。「10代目」。

【谷】村上春樹さんが渡辺昇という名前をよく使われてるんですけど、だからそれと似たようなものだと思います。

【山下】いや、それはすごく良いと思います。

【谷】そんな良い作品でした。

【山下】観たかったです。

【谷】休憩はさんで2時間45分の作品でした。

【山下】今度から登録します、シアターコクーン。

【谷】高いですけどね。

【山下】いや、でもコクーンシート、第3希望までにトライします。

で、続いて『反応工程』、これは私も行きました。

【谷】『反応工程』は新国立劇場の小劇場でやった作品でございまして。

【山下】こんなチラシでございます。

【谷】作者は、宮本研さんといって昔の方ですね。

【山下】昔と言っても戦後に書かれた戯曲ですよね。

【谷】演出が千葉哲也さんって俳優さんですよね。演出もいろいろやられてますけど。

【山下】今回は演出に専念されてましたね。

【谷】で、宮本さんが1958年に書かれた作品で通常(先ほどのって言っちゃうとあれだから言わないけれども)タレント先行で作品がだいたい組まれていくけれども。

【山下】出演者のスケジュールがね、取れないからね。

【谷】これはですね、フルオーディションで14人を選んで千葉さんが演出した作品なんですけれども。

【山下】新国立劇場のプロダクションらしい仕事ですね。

【谷】その第2弾だったのかな。第1弾が『斬られの仙太』がフルオーディションでしたから。
昨年もこれ、組んでたんですよね。座組がもう練習もしてたんですけど。

【山下】昨年、これを公開するはずだったんですよね。

【谷】昨年、コロナで流れちゃって、先日、7月の末の25日にようやく、オーディション開始からなんと2年半をかけて幕を閉じたという作品で。

【山下】でも同じキャストがみんな集合できてよかったですね。

【谷】1人も欠けることなく。そういう意味では有名な方はそんなにいないんですよ。
名前を言ってもたぶん、僕は名前を知ってたのは天野はなさんと神農直隆さん、このお2人ぐらいでしたけれどね。
太平洋戦争の敗色の濃い終戦の年の8月ですから。

【山下】北九州の話ですね。8月のだって5日とか6日とか7日、8日の辺りですもんね。

【谷】九州の中部かな、大分ぐらいなのかな。

【山下】広島に新型爆弾が落ちた。

【谷】三池か、一応。三井財閥の。

【山下】三井グループだから筑豊ですよね。あの辺ですよね。
(※ 福岡県 大牟田市でした)

【谷】で、軍需指定工場で、染料製造工場がロケット砲の推進薬を作り出す反応工程を。

【山下】反応工程液は爆弾の材料ですよね。

【谷】反応工程の場所になってる。

【山下】化学工場ですよね。

【谷】化学工場で、そこの美術がまた見事に当時を再現した。

【山下】素晴らしかったですね、本当に。美術は誰だ、伊藤雅子さん。素晴らしいですね。

【谷】すごくリアルで、きれいでしたね。清潔ですし。工場として古めかしいんだけど、すごく清潔。

【山下】いや、すごいです。やっぱり手入れをしてるんですよね。昔のちゃんとした工場はね。

【谷】動員学徒が若手が3人ほどいて、その人たちと工員が日夜お国のために働くと。

【山下】一緒に働くというね、工員のプロフェッショナルなベテランの人たちと、学徒動員した学生が勤労奉仕で来てるのが一緒になってるんですね。

【谷】お風呂に入って汗かいて流してという感じで。で、そこに左翼思想の人がいたり、それを取り締まる人がいたり。

【山下】官憲ですね。

【谷】召集令状が届いたり、それを回避して逃げちゃったり。あと、さっき言った神農さんの役が教官だったり、憲兵さんがいたりということで、その物語なんですけどね。
そこから最終的には終戦を経て翌年の3月に後日談を。組合を設立するんですよね。

【山下】1946年の3月に組合を設立する、その決起集会の日が最後のシーンですよね。

【谷】そのときには美術がちょっと変わって後ろの壁がとれて光が差してるという感じで未来が見えている。

【山下】戦後復興の光が差していると。

【谷】という美術が本当にきれいでしたね。
で、田宮というのが主人公の役で、久保田響介さんというこの方なんですけど、この子がすごく生き生きしててね、良かったですね。

【山下】青春ですよね、本当。

【谷】真っ直ぐな人でね。
というお話で、これは結構長くて休憩はさんで2時間50分だったんで久しぶりに10時ぐらいの終演で。

【山下】夜だったからね。僕は昼間の公演に行ったので。

【谷】ちょっとさすがにあの時期だったんで怖かったです、帰りが。
最近ちょっと初台行きの電車が止まることが結構多いんで、僕。2回あったんで。

【山下】これ、宮本研の作品なので、宮本研って『美しきものの伝説』とかというのを書いてて。

【谷】僕、初めてです、観たの。

【山下】割と高貴な、毅然と現実に立ち向かって、割と心をきれいに保とうとする人が出てくる物語が多くて。「あっ、また宮本研らしいな」という感じがしましたね。
だからそこはもう、あとはいろんな状況にぶれずに真っ直ぐに前へ向かって突き進んでいくみたいのが宮本さんの中にあるんでしょうね。

【谷】これはね、僕はB席で観ました。

【山下】そうなんですか。僕はB席は取れなかった。チケットが完売して。

【谷】B席は半額でした。ちょうどそう、緊急事態宣言が出て売り止めになっちゃったんです。

【山下】僕のときは全部満席だったかな。

【谷】じゃあ、B席から埋まったんですね。結構B席って半額なんで先に行っちゃうんですね。

【山下】そうなんですよ。で、空いてるところがあったんでというので。
とても意欲的な取り組みだと思いました、本当に。

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)

文字起こしの担当者:高橋倫花
コメント:このたびは、ご依頼いただき誠にありがとうございました。
演劇にも世の中の動きが反映していたり、人々の日常を演劇で観たりしているのは面白いと思いました。
またのご依頼をお待ちしております。

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