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【PODCAST書き起し】谷さんの観劇日記2021年10月(全3回)その2

【PODCAST書き起し】谷さんの観劇日記2021年10月(全3回)その2

【山下】続いて6個目ですけど、ぐうたららばい。『海底歩行者』という、全く私は、見たことも聞いたこともないんですが、こまばアゴラ劇場で行われた作品で、チラシがふわっとしたやわらかいタッチのイラストですが。

 

【谷】これは、山下さんは知らないと言いつつも、知ってる人がやってて。糸井幸之介さんが作・演出・音楽をやってて。出演は、伊東沙保さんって、木ノ下歌舞伎とかにも出てる方と、韓国の方なのかな、キムユスさんって、日本語ペラペラなんですけど。

 

【山下】これ、糸井さんの別ユニットなの?

 

【谷】そうです。ぐうたららばいっていうんですけど、FUKAIPRODUCE羽衣の座付きでである、糸井さんの個人ユニット。

 

【山下】そんなのあるんですね。

 

【谷】その名のとおり、ぐうたらな大人にララバイを届けるという、静かなミュージカルという新たなスタイルで創作をしてると。

 

【山下】ミュージカルなんですね。

 

【谷】ミュージカルですね。囁き声と吐息による音楽劇ということで、初日に観劇しましたけど、初日から完璧でした。伊東さんがけっこう感情移入されてたと思うんですけど、本当に涙ボロボロ流しながら歌ってましたね。

 

【山下】どんなお話なんですか?

 

【谷】2人しか出てないので、夫婦の話と小さな子どもがいたんですけど、2歳半で子どもを失っちゃうんですよね。だから、3人家族の話なんですけど、2人で3人の喜怒哀楽を緩やかに、本当にスローに、本当、海底歩行者ってまさにそういう。

 

【山下】そういうことか。ゆっくりになっちゃうから、動きが。動きとかはゆっくりなの?

 

【谷】ゆっくりです。スピーディーさはないですね。

 

【山下】じゃあ、喋り方もゆっくり?

 

【谷】いや、喋り方は普通ですね。

 

【山下】なるほど、動きがスローなんだ。

 

【谷】だから、これは糸井さんの言葉だと思うんですけど、「人間は心の生き物です。心の酸素もほとんど無くなり、心の日光もほとんど当たらない、海底を歩いているような、夫婦のお話です」という、1時間25分の作品で、これ評判よかったんですよ。

 

【山下】90分くらいの作品って、わりといいのあったりしますよね。

 

【谷】こっちも集中できるんですよね。

 

【山下】逆にね、90分とかの作品が、わりと減ってきている気がしてて。

 

【谷】最近、2時間、2時間10分とかありますよね。

 

【山下】入場料のもとを返せとか言わないから、短くてもね。

 

【谷】本当ね、75分でもいいし。それでもきちんと物語を見せてくれれば、それでいいんじゃないかなって思いますね。

 

【山下】自省を込めて創作は冗長にしない。とにかくビシッと切っていくことが大事ですね。

 

【谷】これは、こまばアゴラ劇場の支援会員ということで拝見させていただいたということでございます。そうでなかったら出会わなかっただろうということです。

 

【山下】コロナでね、支援会員が延長されて、それもよかったですね。

続いては、同じロロのやつなんですけど、2回目は私も行きまして。その後、僕は上で『ロミオとジュリエット』を見たんですけど。

 

【谷】そうですね。これは2回見たんで、先ほどご説明済みです。

 

【山下】8番目が、ヨルノハテの劇場、バックストリート コメディシアター in YOKOHAMA『寡黙と饒舌』、若葉町ウォーフということで、こういうチラシでございますが。私も大好きな清水宏さんが出てらっしゃるということで、どんなやつだったんでしょうか?

 

【谷】僕、清水宏さんっていうのは、山下さんから聞いてて、なんとなく喋りの芸人だろうっていうのは知ってたんですけど。それで、なんで知ったのかな? チラシだ。1枚のチラシで、「あ、取ってみよう」って。

 

【山下】横浜だし、地元だからね。

 

【谷】近いので、京浜急行でスッと行けるので。

 

【山下】清水さんアジテーションしてませんでした? 「オラオラオラ」っとかって、やるじゃないですか。

 

【谷】本当に、すごいです。

 

【山下】同じだ。変わらないんだ、そこは。

 

【谷】汗だくでね。すごいですよ。

 

【山下】すごい熱量ですよね。

 

【谷】今回は、清水宏さんとケッチさんっていうのが、これが静、だから寡黙なんですよね。饒舌が清水さん、寡黙がケッチさん。

ケッチさんっていうのは、元「が~まるちょば」。

 

【山下】ああ、あのオリンピックの開会式で有名になった。

 

【谷】それが、前から有名なんですけど。

 

【山下】そうなんですね。僕、オリンピックで初めて知りました。

 

【谷】パントマイム系ですごく有名なんですけど。その赤毛のほうかな。黄色と赤毛、今はもうないので、モヒカン刈りなんですけどね。

 

【山下】この人は、パントマイマーとしてやってるから、寡黙なのか。

 

【谷】そうです。で、2人は基本的に別々のコーナーで。最初、清水さんがイギリスのエディンバラだったかな? での体験を。

 

【山下】突撃ね。路上とかでやるんじゃなかったですか?

 

【谷】路上じゃなくて劇場で。

 

【山下】劇場でやったんですか。

 

【谷】劇場でやった話をして。

 

【山下】面白いですよね。突撃の体験ばなし。

 

【谷】で、はけてから、ケッチさんがパントマイムの新作も含めて。

 

【山下】それは、別々にやったんですか。

 

【谷】そうです。で、最後は2人で、清水さんが解説をしながら、ケッチさんが演技するっていう感じ。「おっと、なんとかだ。なんとかだ」みたいな、古舘伊知郎みたいな感じですよ。

 

【山下】清水宏さんがね。面白いじゃないですか。アドリブでね。

 

【谷】すごい汗だくでね。すごかったですね。

 

【山下】清水さんは、本当に面白いですよね。

 

【谷】若葉町ウォーフって、初めて行ったんですけど、横浜では普通あんまり行かないところなんですよね。

 

【山下】伊勢佐木町と黄金町の間くらいだもんね。

 

【谷】日ノ出町と黄金町って言ったほうが正しいのかもしれないですけど。大岡川っていうのがあって、そこの中に入ったウォーフって波止場ですよね。で、築50年の小さなビルを改装して、3階がドミトリー形式の宿泊所で、2階がスタジオで、1階が小劇場と。まさに小劇場ですね。

 

【山下】アートスペースっていう体みたいですね。

 

【谷】民間アートセンターとうたってますけども。歩いて歓楽街の野毛にも行ける、僕にとってはやみつきになる場所ですね。

 

【山下】多様な人がたくさんいますからね。

 

【谷】そうですね。

で、2人の即興コラボがさっきのやつで、2人の紹介をするトークもありまして。ケッチさんが、「が~まるちょば」を辞めてからのいろいろな動きも。

 

【山下】「が~まるちょば」っていうのは、だいぶ前に辞めちゃったんですか?

 

【谷】2、3年くらい前かな。

 

【山下】そうなんですね。

 

【谷】それで、2時間以上やってくれまして。休憩は10分くらいありましたけど、2500円ですから。

最後出たら清水さんが外にいて、次の講演のチラシを「よろしく」って言って。

 

【山下】あの、腰の低さが素晴らしいですよね。

 

【谷】矢沢永吉みたいな、感じなんですけど。

 

【山下】雰囲気がね。矢沢永吉を小さくして、ぎゅっと圧縮したような感じの雰囲気。

でも、身体能力高いですよね。

 

【谷】すごいですね。本当にびっくりしました。僕は初めて見て感激しました。

 

【山下】また、じゃあ、ぜひ次回も。

 

【谷】次回、今月11月19日とかにも、またここであるんですよね?

 

【山下】演劇作品のね。三島由紀夫と、もう1個なんだっけ? 『ワーニャ叔父さん』を、清水宏が解釈して、独特な語りをするらしいですが。私、まだ行ってないですけど、機会があればぜひ。

 

【谷】ぜひ、と思います。

 

【山下】で、続いてですね。ヌトミック『ぼんやりブルース』、こまばアゴラ劇場ということで。谷さんは、このロロとかヌトミックとかの系統をけっこう見てらっしゃいまして、少しアーティスティックな感じのものでもあるんですが。これも、こまばアゴラ劇場で支援会員で行かれたのかな?

 

【谷】そうですね。

 

【山下】どんなやつだったんですか?

 

【谷】ヌトミックって、音楽が好きな人だったらおわかりだと思うんですけど。

 

【山下】音楽のほうのあれなんですか。

 

【谷】額田大志さんという、東京塩麹っていうバンドやってるんですけど。

 

【山下】なんか、食べ物屋さんみたいだね。

 

【谷】6人編成かな。ブラスも入れた、「そうだ京都、行こう」のチャララララララ、あれもCMでやってまして、東京塩麹が。

 

【山下】あれ毎回、アレンジ変わってますもんね。贅沢ですよね。

そうなんですか。東京塩麹っていうバンドがあるんですね。

 

【谷】そうですね。この『ぼんやりブルース』って、僕は非常に難しかったですね。僕にとっては。

 

【山下】ぼんやりしてたの?

 

【谷】ぼんやりしてるっていうか。

 

【山下】観劇後が。

 

【谷】なんて言ったらいいのかな? 事実とフィクションが混ざったような言葉とか、生演奏も入って。

 

【山下】生演奏もあるんですか。

 

【谷】ギターですけどね。主にギター。それで、ようは新作のパフォーマンス作品。

 

【山下】パフォーミングアートみたいなものか。

 

【谷】で、本当は、兵庫県の豊岡と、東京の。

 

【山下】豊岡演劇祭の一環で?

 

【谷】だったんですけど、2都市ツアーだったんですけど、コロナで豊岡演劇祭は中止になっちゃったんで。僕は、アゴラ入ってびっくりしたのが、通常見て下手側に客席があったんですよ。横使いというのかな。

 

【山下】たまにありますよね。エレベーターのほうを見てやる感じでね。

 

【谷】そう。役者さんたちの出入りはしやすい感じになってて。その配置で、ワイドの。

 

【山下】奥行きがね。横に広いということよね。

 

【谷】奥行きは逆になくって、あと、高さを、あそこ、ちょっと狭いながらも高いんですけども。高さを上手く使って、雑然と置かれた楽器とかモニターとか、加工物、自然物、石ですね。石とかいろいろ。

 

【山下】石?

 

【谷】石で叩いて、やるんですよ。

 

【山下】音を。面白いね。

 

【谷】劇場内が、本当にアートに溢れていて、演者はパフォーマーかつアーティストですよね。

これはもう、本当に額田さんの音楽家としての力なんじゃないかなと。もちろん、演者の皆さんのパフォーミングがあってこそのものだと思いますけど。

僕の解釈が合ってるかはわからないですけど、言葉と動きと音楽が、コラージュのような感じで劇が進んでましたね。

 

【山下】ということは物語っていうようなものではないのかな?

 

【谷】たぶん、額田さんの中では物語はあるんだと思います。

 

【山下】すごい抽象化されたんでしょうね。

 

【谷】そうですね。

 

【山下】ロロにも似た、現代アーティスティックな。

 

【谷】ただ、ロロのほうはストーリーがけっこうわかりやすいので。

 

【山下】そこは違うんだ。なるほどね。

 

【谷】ちょっと、やっぱりそこはシナリオっぽくないんですよね。

 

【山下】なるほどね。

 

【谷】だから、戯曲買えばよかったなって。でも、買って読んでも普通の人じゃわからないと思いますね。

 

【山下】見てないと絶対わからないだろうね。

 

【谷】見てないとわからないと思いますね。

 

【山下】なるほどね。多様な演劇があるということで。

 

【谷】これがね、さっきいったように1時間15分で、適度なぎゅっとしまった作品でした。

 

【山下】これが3時間だったら、大変なことになってたでしょうね。

ということで、ヌトミック『ぼんやりブルース』でした。

で、3本目が、ala Collectionシリーズということで。

 

【谷】3本目じゃないですよね?

 

【山下】10本目。

 

【谷】そうか、10本目。

 

【山下】ala Collectionシリーズ『紙屋悦子の青春』。吉祥寺シアターということで。『紙屋悦子の青春』というと、原田知世ちゃんが出演した映画で有名ですが。元々、松田正隆さんの演劇の作品で、それを藤井ごうさんが演出されて。

 

【谷】そうですね。先ほどたまたまお会いしました。

この収録、新宿の映像テクノアカデミアでやってるんですけど、映像テクノアカデミアの声優科の講師ですよね?

 

【山下】そうです。講師をしていただいています。ありがとうございます。

 

【谷】それで、たまたまいらっしゃったので。

 

【山下】今日授業だったんだ。すごいタイミングですね。

 

【谷】それで、名刺をお渡しして、「感動いたしました」と、言いましたけど。

 

【山下】素晴らしい。

 

【谷】このala Collectionというのは、岐阜の可児市で、アーティスト・イン・レジデンスを基軸として、第一線で活躍する俳優、スタッフを可児市に滞在させながら、作品を制作するという。

 

【山下】可児市に文化センターっていう劇場みたいなのがあるんですよね。

 

【谷】そうです。「ala」っていうのは、その略なんですよ。

で、地域の公共ホールが連携を組んで、創作ノウハウを共有しながら、新たな演劇の波を地方からおこしていこうというプロジェクトで、もう12回やってるらしいんですよ。

 

【山下】可児文化センターでやってるのは、わりと見てるけど、ala Collectionっていう名前が付いてるのは知らなかったな。

 

【谷】僕も初めてなんですけどね。で、松田正隆さんって、90年代、静かな演劇の金字塔なんですけど。

 

【山下】正統派な、当時としては。今は前衛的だけど。

 

【谷】今回の中身は、庶民のささやかな日常ですね。戦争の不条理をあぶり出すということで、庶民の戦争史っていう感じですかね。

 

【山下】じゃあ『この世界の片隅に』みたいな感じかな?

 

【谷】ちょっと似てるかもしれない。

 

【山下】似てる?

 

【谷】昭和20年のだから。

 

【山下】戦後すぐ?

 

【谷】いや、20年の春だから。

 

【山下】戦争が終わる直前だ。

 

【谷】そうですね。鹿児島が舞台で。

 

【山下】空襲がひどかったころですか?

 

【谷】3月30日から4月12日の間の話なんですよ。

で、東京大空襲で両親を失っちゃって、お兄さん夫婦の家で、紙屋悦子さん。文学座の平体まひろさんっていう役者さんが演じてたんですけど。そこに縁談話が持ちかかって、相手は整備工の永与さんっていうんですけど。

 

【山下】整備工って飛行機の仕事?

 

【谷】飛行機ですかね。

 

【山下】知覧かなんかのあれかな。

 

【谷】それがなんと、オフィスPAC所属の方です。

 

【山下】チラシに書いてて、オフィスPACの人だなって。その人が整備工の人だったんだ。

 

【谷】それを紹介したのが、本当は悦子さんが密かに思いを寄せてた飛行兵の。

 

【山下】その人のことが好きなのに、その人に他の男を紹介されたわけね。

 

【谷】そうです。で、ぎこちないお見合いなんですよね。お見合いの話なんですけど、次第に心を通わせていくと。で、その相手は、特攻隊に志願しちゃうと。

 

【山下】知覧の特攻隊。

 

【谷】時期的には3月くらいですから、そういう感じです。

 

【山下】鹿児島だから、まさにですよね。

 

【谷】本当にね、この平体さんという方が健気で、すごい感情移入できちゃうんですよね。すごいいい子で。

 

【山下】じゃあ、本当に『この世界の片隅に』の主人公の女性みたいな感じなんだ。

 

【谷】で、本当に、僕、妻と行ったんですけど、行ってよかったって感じですね。心に響く演劇っていうのは、こういうものだなと。

 

【山下】その人を、今回はこれでよかったけれども、この紙屋悦子をのんが演じるとどうなるんでしょうかね? なぜかというと、『この世界の片隅に』の声をのんがやってるじゃないですか。仮説ですが、これは。

 

【谷】でもね、ちょっと。

 

【山下】違うのか。

 

【谷】ちょっと、落ち着いてるんですよね、この子は。バタバタしてるようで落ち着いてるんで。

 

【山下】知世ちゃんみたいなほうが近いんだ。なるほどね。面白いですね。こうやって空想キャスティング、面白いですよね。時々よくするんですけど。

 

【谷】平体さんなんか、すごいキャスティングよかったんじゃないかなと。あとは、枝元萌さんが、なぜか同級生というね。

 

【山下】キャラクターの強い。1回見ると忘れないという枝元さん。

 

【谷】横山さんの作品にいろいろ出てくる方ですけど。

 

【山下】すごくいいと思います。

 

【谷】で、終演後、これは毎度みたいなんですけど、可児市の名産がバラらしいんですよ。

 

【山下】バラ?

 

【谷】バラの花。で、バラの花1輪をいただきまして。

 

【山下】さすがですね、可児市。やりますね。

 

【谷】素敵でしたよ。

 

【山下】吉祥寺シアターから、皆バラを持って出てくるんだ。かっこいいじゃないですか。

 

【谷】素敵なおやじと、って感じでしたよ。

 

【山下】素晴らしいじゃないですか。1人1本ずつもらえるんですか?

 

【谷】えぇ、これ、2時間のお芝居でしたけど。

 

【山下】ala Collection、今度行ってみよう。

 

【谷】これはなんとなく地味な感じはしますけど、すごく芯のある。脚本がいいっていうのもあると思いますけど。という作品でした。

 

【山下】もし興味があれば、映画は見られると思いますので。

 

【谷】そうですね。永瀬さんでしたね、相手が。

 

【山下】知世ちゃんと永瀬さんということですね。

ということで、『紙屋悦子の青春』でした。

 

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/

 

担当者:江頭実里

ご依頼、ありがとうございました。

私の住む地域には劇場がなく、舞台演劇に触れられる機会は限られているのですが、生のお芝居というものがとても好きで、お2人のお話に心を躍らせながら作業しておりました。

どれも素敵な作品であることが伝わってきました。私も『紙屋悦子の青春』の映画をみてみようと思います。

改めて、ご依頼いただきまして、本当にありがとうございました。ぜひ、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

 

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