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演出家:小山ゆうなさん、劇作家:長田育恵さんに演出と劇作について聞いてみた(全2回)その1

演出家:小山ゆうなさん、劇作家:長田育恵さんに演出と劇作について聞いてみた(全2回)その1

【山下】皆さん、こんにちは。TFCラボ プレゼンツ Podcast Station「ブレインドレイン」のお時間です。「みんなで語る小劇場演劇」ということで、今回はついに! このお二人にきていただきました。はい! このお二人でございます。先ほどまで一緒に話していた劇作家の長田 育恵(おさだ いくえ)さんです。

【長田】宜しくお願いします。

【山下】お願いします。そして演出家の、先月もきてくれました。小山ゆうなさんです。

【小山】宜しくお願いします。

【山下】カメラあっちですからね。

【小山】あ、すみません。

【山下】はい。こっちです。

【小山】お願いします。

【山下】ということで、今日は3人で。実は小山さんと長田さんは、この前まで福岡公演をやっていたのですよね?

【長田】あ、はい! そうですね。

【山下】ロボットインザガーデンという劇団四季さんのミュージカルの作品を一緒にされていたので、それのプロダクションについてと、あとは演出家と劇作家の違いとか役割とかそういったことも含めてお話をしていただきたいと思いますけれども。
そもそも、ロボットインザガーデンをお二人でやることになったのはどういう、経緯があったのですか?

【長田】最初にロボットインザガーデンのオファーをいただいて「演出家は誰か」という話になったときに、ちょうど小山さんのチックが

【山下】あ、チックね。

【長田】シアタートラム
(※三軒茶屋のキャロットタワー内にある、約600人を収容可能の劇場。1997年に開場。オープン形式とプロセニアム形式の劇場に変化可能)
で上演されていて。それで私は本当にこのチックを見たときに「この方を逃したらロボットインザガーデンは上映がもう無理だろうと思い(笑)。

【山下】それは、すごい確信ですね。

【長田】その場ですぐに劇団四季の皆さんに連絡して、もう本当に千秋楽まででとにかく、全員、関係者の方が見に来てくれて。それで、すぐに小山さんにオファーをしてくれという。

【山下】そのとき、チックをやっていたころですか?

【小山】再演だったと思います。

【山下】はいはい。再演の?

【小山】はい。2回目の。

【山下】では、それを四季の皆さんが見にいらっしゃった?

【小山】そうですね。見てくださって。社長も含めて。

【山下】社長も含めて?

【小山】はい。もう、即見にきてくださって。

【山下】なるほどー。

【長田】すごくチックがロードムービーというのもあって。それでロボットインザガーデンもロードムービーに類するお話だったのと

【山下】あ、そうなのですね。

【長田】あとは、その旅の時間と、舞台上にいる俳優たちのリアルな時間がすごく心地よく一致していて。今、私たちが作ろうとしているミュージカルはたぶん、何か大きな「地面から離れた外連」を作るというよりは、ちゃんと生きたリアルなものをささやかでもしっかりつくっていきたい。だからもう、この演出家さんでないとダメだというのを本当に力説しました。

【山下】なるほど。面白いですね「地面から離れた外連」ね。外連味(けれんみ)の「外連」ですよね?

【長田】そうです。

【山下】そんな作り物とか大げさなものではなくていいんだという。地に足の付いたことからやるという。

【長田】それより、もうちょっと今は確かなものをちゃんと作りたいという趣旨の作品だったので。

【山下】これのオファーがきたのは何年ですか? 2020年? 2019年?

【長田】え……いつですかね?

【小山】いや、でも長田さんに最初、話がきたの、結構前じゃないですかね? 2018年とか。

【長田】うーん。8(2018)年とかかなあ……。
吉田社長が、てがみ座の「対岸の永遠」という。

【山下】はいはい。「対岸の永遠」ね。

【長田】はい。風姿花伝でやった。すごい小さなところでやったやつを

【山下】面白かったですね。

【長田】観にきてくださって。

【山下】私も視ています。

【長田】あっ! それで、本当に……最初に、そのときに「四季の社長が、この小劇場に視にきてくださるなんて」とてもびっくりした記憶があって。

【山下】これですね。冊子をお出しします。こんなやつですね。

【長田】(頷く)たぶん、そのあたりから新作を作る準備を。たぶん四季は始めていたとおもうのですよね。

【山下】なるほど。

【長田】はい。

【山下】だからコロナのもう以前ということですね。

【長田】もう、だいぶ前ですね。

【山下】だから「オリジナルを何か作りたい」という思いだったんですね。

【長田】(そういう)ことだと思います。

【小山】そうですね。なにか16年ぶりのいわゆる

【山下】16年ぶり? オリジナル?

【小山】そうですね。子ども向けではないミュージカル。新作ミュージカルを劇団四季の方たちが作るということで。

【山下】すごい、思いがあったのですね。

【小山】(頷く)四季の方たちの準備は相当。ね?

【長田】うん。なんか……

【小山】なんか何年っておっしゃっていたか忘れちゃったけど。

【小山・長田】相当早かった。

【長田】と思いますね。

【小山】頷いている。

【山下】なんか、これって原作ものらしいですが、原作は何か小説なのですか?

【長田】そうですね。イギリスの。

【山下】SF小説? SFじゃないですか?

【長田】いや、SFではないと思うのですけどね。

【山下】児童文学? じゃないのか。

【長田】まあ、一般向け。ロボットが出てくる一般向け小説だとは思うのですけど (笑)。
舞台は近未来なのですが。

【山下】でもSFではないと?

【長田】(頷く)

【山下】なるほどー。

【長田】でもSFではないと思います。

【山下】それを、では、あれですか。長田さんは「これです」と言って。

【長田】はい!

【山下】「これを舞台にしたいのです」というところから始まった?

【長田】そうです。渡されたところからですかね。

【山下】で、それを読みながら「どうしようかな……」と考えたのですか? 最初は。

【長田】考えて……最初、正直「ミュージカルになるかな? これは」と……思っていて。

【山下】やはり、そういうのがあった?

【長田】(頷く)その主人公が、とても内向的な人物で。いわゆる、これまでの劇団四季がやってきたミュージカルの主人公とも違うし、日本のオリジナルミュージカルの文脈にもあまりいないタイプのキャラクターが主人公で。これが果たしてミュージカルかと言うと、感情を歌にしなければいけなかったりとか日本人のお客さんがオリジナルミュージカルで期待する主人公というのが、たぶん音楽座とか少し前の劇団四季からずっと文脈であるなかでは、この小説は違うタイプだなとは思っていて。果たしてこの主人公は大丈夫なのだろうか。という疑問をまず持っていて。でも逆に取り組んでみると、彼の人物設定だったり彼を取り巻く人々の奥さんだったりの人物設定が非常に現代的で、それがすごく共感できる人物だなと思いました。

【山下】なるほど。そこが、だから逆に言うと、外連味を廃したことによって地の足に付いた共感レベルのものになっていったのでしょうか。

【長田】(頷く)すごく、今のこの時代にも何か、ピッタリくるミュージカルになりましたね。主人公がいわゆるヒーローではなくて。何でもできる人ではないのですよ。その代わりに少ーしだけ、手のひらの中に残っている自分ができることとか、守りたいことだけは守るという。それだけはせめて、やるという。

【山下】なるほど。自分の手のひらにある大切なものをちゃんと守っていると。

【長田】そうなんです。何もできないかもしれないけれど、これだけはやるという。

【山下】今の時代にぴったりですよね。

【長田】そうなんですよね。そういう人物でした。

【山下】何か話が全然違うのですけど。「鬼滅の刃」みたい。

【長田】あっ! そうですね。

【山下】彼(竈門 炭治郎 かまど たんじろう)は家族と禰豆子(竈門 禰豆子 かまど ねずこ)を守るためだけに、戦いたくもないのに戦っていて。僕、今の話を聞いて「あ、これ。炭治郎と一緒やん」と。

【長田】あー。確かに(笑)。

【小山】一緒に笑っている。

【山下】というのは、なんでかと言うと。この炭治郎の話を、コルクの佐渡島さんとかGOの三浦さんとかがしていて。なぜ、これが今の時代ウケるのかということを因数分解したときに、その話を聞いて。それで今の長田さんの話とつながってしまったのです。

【長田】炭治郎。

【小山】うーん。あー!

【長田・小山】なるほど! (笑)。

【山下】僕もまだ、作品を見せていただいていないので分からないのですけど。何となくそれが、たぶん今の時代に。

決して強い者が正義でもないし、大切なものが小さくてもいいから守っていかないといけないような時代になっていると。それで本当に我々、失われた20年をどうやって生きていくのかということで。本当にデフレ・スパイラルに入ったところで、やっていくと本当にこの目の前のことが特にコロナで、何か道ばたの小さい草花を見て愛でるとか猫を飼いたくなるとか、そういう気持ちが芽生えてくるのはたぶん、そのことだったというような気が。

【長田】そうなのですよ。本当に、その気持ちを凝縮したかのような。

【山下】えー。そういうやつなんだー! (笑)。

【長田】(頷く)(その)くらい、できあがっていて。これは本当に、ご覧いただかないと分からないのですけど。私が作った文脈は最初そうだったのです。でも小山さんが舞台として立ち上げて今、できあがっているものは本当にもう、奥底にある愛おしさを表面化して形にしたのがこれだという。すごい、いいものができています。

【山下】おー。面白いねえ。

【小山】なんか本当に。ね?

【長田】頷いている。

【小山】私も福岡。久しぶりに見て。まあ、どんどん、これが成長していて。

【山下】えー!

【小山】これが珍しいことに。ね?

【長田】頷いている。

【小山】講演って長く、特に地方とか講演を重ねていくと、ちょっとずつ摩耗していったりとか。なんかまあ、みんな俳優たちが飽きてきてしまったりとかということが起こると思うのですけど。なんか一切それがなく、どんどん進化していて。

【山下】へー。すごいですね。

【小山】劇団四季の方の真面目さだと思うのですけど。

【山下】なるほど。

【小山】頷いている。

【山下】それは本当に?

【小山】そうですね。

【山下】必ず、あるレベルのことをちゃんとやり続けるという。

【小山】(頷いている)それで、すごい温かい。カンパニーもすごく。まあ奇跡的に何か良くて。なので、繊細な表現を積み重ねていくということを皆さんがされていて。見ると。ね?

【長田】(頷いている)いい!

【小山】ああ。いい作品(笑) もう全然自分のことは置いておいて。いい作品だなあ。という。

【長田】いやー。あとは、ロボットインザガーデン。なんかロボットが出てくるのですけど。

【山下】あ、それ。小山さんに聞きました。

【小山】はい。

【長田】このねえ。可愛いのですよ!

【山下】可愛らしいですね。なんか「戦火の馬」というやつを見てくれと言われて。You Tubeで見たのですけど。もう、あれ。作り物ではなく本当の馬のように見える。

【小山】はい。

【長田】いやー。もう本当に。

【山下】で、ロボットもその人が作っていると聞いて「あ、これは面白そうだな」とすごく思いました。

【長田】これが本当に写真とかでは伝わらない。

【山下】動いた物を見ないと伝わらないですね。

【長田】いや、伝わらない。

【小山】そう!

【長田】その光の宿り方だったり

【山下】光ね。

【長田】その動き方とか体重のかけ方とかとか、首の角度1つですごく、こちら側が読み取る情報量がすごい。すごいのですよ。必ず、いろいろな人。特にこの世代の人とかは例えば、子どもだったりだとか。私の場合は犬とかなのですけど(笑) うちの犬とか。何か自分にとっての愛おしいものを想起させる振る舞いだったり。

【山下】なるほど。けなげさがあるんだ。なんか分かるなあ。それ。

【長田】(頷く)表情だったりがあるんですよ。それとか私たち自身は、誰かの息子だったり娘だったりする記憶がちゃんとあるから。そういうふうに両親のこととかも思い出したりするし、すごく、いろいろな大事なものが詰まった作品で。これはね。本当ネタバレになるから言えないのですけど。もう小山さんの演出がねえ。本当にすてきなのですー!(笑)。

【小山】(笑)いやいや。

【長田】……言えない……けど。

【小山】……言えないか。

【長田】すばらしい!

【小山】えへへ(笑)。

【山下】そう。ネタバレになると嫌ですよね。

【小山】(頷いている)でも私も。なんか、これ。ネタバレになってもいいよねと思いつつ、1個だけ言うのだけど。

【長田】でもねえ。言っても、すごさが分からないと思う。

【小山】まあね。すごさね。
でも1個、原作にない創作と言うのかな。長田さんの戯曲にしかないことが、いくつかあるのですけど。その中で本当に秀逸で。まあ、なんか、こんなずっと褒めていてもしようがないのだけど(笑) 自分たちの作品。四季のちょっと偉いおじ様方も、お稽古場とかきて見ると、いつも泣いているというシーンがあって。

【長田】(笑)

【山下】へー。

【小山】それが、まさに犬のロボット。犬が出てくるシーンなのですけど。それを……

【山下】ロボットではなくて?

【小山】ロボット。犬の。何て言うの?アイ……

【長田】なんだろう? 昔、アイボみたいな。アイボみたいな感じの犬型ロボットが出てくるのですけど。

【小山】そう。

【山下】へー。

【小山】というシーンを。まあ、そのロボットは原作にも出てくるのですけど、全然、違う出てき方をするのを、そのロボットを飼っている? 共に暮らしている女性がいるという設定に書き換えて。すごく感動的なシーンを書いていて。そのロボットもパペットなのですけど(笑)これも本当すごい。

【長田】強く頷いている。

【山下】あ、そうなのですね。パペットが何頭か出てくるのですね?

【小山・長田】そうですね。

【山下】楽しみですね! それは。

【小山】はーい。もうぜひ、見てもらいたいです。

【山下】12月に東京に戻って来るらしいですので、ぜひ、見たいです!

【長田】はい。ぜひ! もうねえ。エンディングが……。本当にすばらしい。

【山下】あ、そうですか。

【長田】日常を生きているときに、なんか日常、生きていることへ、ささやかな祝福があるといいなあ。と思うじゃないですか。

【山下】(頷く)思いますね。

【長田】その、ささやかな祝福が舞台で目に見える形で表現されていて。

【山下】なるほど。形になっていると。

【長田】それが本当にささやかな一手をそれぞれがやっているだけなのですけど。なぜ、こんなにも感動するのだろうという。

【長田・小山】笑う。

【山下】へー。

【長田】はい。

【小山】頷いている。

【山下】すばらしい作品ができたのですね。

【小山】頷いている。

【山下】あれですか。チックを皆さん、四季の人が見て。小山さんにオファーがあって。それで、そのときは、まだ戯曲はできていなかったのですか? 脚本は。

【小山】……初稿ができていたくらいですね。

【長田】そうですね。

【山下】それは、小山さん、まず読んだのですね?

【小山】私が最初に読ませていただいたのは、プロット的な?

【長田】頷いている。

【山下】あ、プロットね。

【小山】だったのですね。それで、そこから割とすぐに初稿が。という流れでしたね。

【山下】そのときに、あれですか。演出家と劇作家である長田さんと小山さんは、そこで何か対話をしながら、創作をしていったとかというものはあるんですか?

【長田】たぶん、その戯曲の形ができてから小山さんがちゃんと決まり引き合わせがあってみたいなかたちだったので、ゼロから1ではなくて1になってから実際、本当の本物の1にするために話し合いを始めるという感じでしたか。ねえ。

【小山】頷いている。

【山下】それは、まだ俳優などが入る前、稽古をする前の話なのですか?

【長田】(頷く)だいぶ前。

【小山】その時間はすっごい長かった (笑)。

【長田】そうですね (笑)。

【山下】長い? どれくらい長い?

(*二人同時に話始める)

【小山】だって、打ち合わせの時間も1回打ち合わせ、なにか1個のシーンの打ち合わせを始めると、何時間もずっと話しているみたいな印象。

【長田】ずーっと何時間も。ワンシーンの話しをずーっと。

【山下】何時間も話す。ワンシーンで?

【小山】そう!

【長田】頷いている。

【山下】終わらないではないですか。1日で。もしかしたら (笑)。

【小山・長田】終わらないです。

【小山】終わらない。打ち合わせが四季の制作サイドの方と、時には音楽監督さんが入られたりとか。

【長田】はい。

【山下】ああ。そうですよね。ミュージカルですからね。

【小山】(頷く)いろいろな方たちが入っての話し合いがずっと行われて。その時間すごかったし。

【長田】いやー。すごい……。

【小山】長田さんは、それを常になにか直していらっしゃるのですけど。直すというか……

【山下】長田さんは現場にいって、いろいろ常になおしていないといけないから。

【小山】そう。直してまた出して。

【長田】まあ、そうですね。打ち合わせなのでね。

【山下】なるほど、なるほど。

【小山】それで、また、それがなくなったりとか。

【長田】そう! そう! (笑)。

【山下】なるほどー。

【小山】(笑)なんか、あっという間に。本当にすてきなセリフとか歌詞もいっぱいあったのですけど。まあ、いろんな事情でなくなって。また新たに違うものがきたりとかという。そのお仕事を割と目の当たりにさせていただいたという感じですね。

【山下】なるほどね。それは、やはり、てがみ座でのプロダクションとはまた違う感じですか?

【長田】まあ完全にお仕事ですね。劇作家としての仕事ですね。

【山下】なるほどー。でも、直すのはやはり、自分で納得してから直さないと、直せないですよね? 作家だから。

【長田】(頷く)まあ、でも、そこは……すごく

【山下】そこは話し合いが、そこで行われる?

【長田】(頷く)話し合いをさせてもらえたし。プロデューサー側も、劇団四季のプロデューサーサイドも、音楽監督も必ずいたし、振り付けの方も同席されていたし。すごく、ゼロから1の段階というのは、相談相手が自分以外いないのですよ(笑)。

【山下】そうですね。

【長田】もう、自分でやるしかないのですけど。そこから先はみんながこの作品を作るということに、ひたすら向かっているので。

【山下】そこは救われていますか?

【長田】全然、孤独ではないの。

【山下】なるほど。ゼロ1は、やはり孤独なのですか?

【長田】ゼロ1はもう孤独ですよね (笑)。

【山下】ああ。でも何となく分かるなあ。企画ゼロから立ち上げるときは孤独だものなあ。本当に。

【長田】まだ本当、プロダクションも固まっていない時期だったので。「私は今、一人で書いているけれど……これは大丈夫なのだろうか」という(笑)。

【小山】なんか、そのゼロの、いちばん……私そこは、実はすごい大事に持っていて。「長田さん初稿」というやつ。なにかあったときに稽古でも。

【山下】そこに立ち返る?

【小山】(頷く)実は立ち返っていて。

【山下】(頷く)大事ですよねえ。

【小山】全然違うのですけど(笑) なんか、そっちのほうがよかったのではないかと思うこともいっぱいある。

【山下】ゼロ稿にあった魂みたいなものを、なにか拾おうとしているのではないですか?

【小山】うーん。(そう)だし。なんか「私もいろいろ思いついて言っちゃったけど、間違えていたんじゃないかな」と思う瞬間はいっぱいあって。

【長田】(小声で言う)あー。

【山下】なるほど、なるほど。

【小山】やはり一人の作家さんの中でつながって書かれている物が正解なんじゃないかなって基本的には常に思っているので。うーん……。だから、そうですね。その、おっしゃっていた魂なのか。なにかその要素。本当は、どういう意味があって書かれていたシーンだったのかなということに、立ち返る物だった。

【山下】そして、そのゼロ稿というか、初稿を持ってらしたのですね。

【小山】はい。

【長田】はあー。(感動しているため息をつく)

【小山】もう、すごく大事で (笑) バイブルみたい。

【山下】そこがちょっと。なるほど、なるほど。

【長田】でも本には上書きしちゃうから(笑) 記憶はあまり……。

【山下】上書きしないと書けないですものね。

【長田】上書きしたかどうかも覚えていないのだけど(笑)。

【小山】そうですよねえ。

【長田】まあ、でもなんか、いろいろ。例えばオープニングをどう始めるかでも、いろんなパターンがありましたし、もう正解がないから。あらゆるパターンが書けてしまうから。だから、いろんな紆余曲折があって今の形にたどり着いているという。

【山下】なるほど。正解がないというのは、僕もよく分かっているのですけど。でも、もう正解をこれというふうに、決めないといけないのではないですか? それは、ちゃんと決める?

【長田】やがて、決めるときがやってきますよね。

【山下】そのとき、どういうふうに決めているのですか? やはり、それは小山さんが演出だから小山さんが「これでいこう」というふうに。みんなで1回、話し合いしながら決めるのですか?

【長田】うーん。でも話し合いはしましたね。

【小山】四季の場合は本当そう。すごく民主的に作ろうとされていて。まあ浅利(浅利 慶太)先生いらっしゃったときは違ったと思うのですけど。

【山下】ああ。でも、それはそれで、また新しいプロダクションが生まれるかもしれないですね。

【小山】そうですね。すごい新しいやり方だった。だから時間がかかる。

【山下】ああ。でも時間はかかるけれど、なんかいい。面白いね。それは、いいかもしれないね。

【小山】(頷く)そうですね。

【長田】すごく、チームも同世代でみんな揃えてくださって。

【小山】あ、そうですね。

【山下】あ、そうなのですか!?

【小山】頷いている。

【長田】振り付けとかプロデューサーサイドも、振り付けの方たちも本当にみーんな同世代で。

【山下】なるほど。いいですね。

【長田】このチームで何を作るのかというのを完全に対等に。

【長田・小山】頷いている。

【山下】なんか一心同体となっている。

【長田】深く頷く。

【山下】なんか会社で言うと全員経営みたいな感じだね。

【小山】そうですね。

【長田】深く頷いている。

【山下】全員経営で、全員が責任を持ってやっていくというのは、これからのスタイルだと思いますよ。本当に。

【長田】本当にそういう感じでしたね。

【山下】(深く頷いている)なるほどー。そうすると、打ち合わせに1人が欠けると「どうしたの?」みたいな感じになってしまうのです? やはり。

【小山】そう。だから欠けると、できないから。

【山下】できない (笑)浅利先生がきてないとか。

【小山】欠けない日をセッティングするという。

【山下】スケジュール調整大変ですねえ。

【小山】また、これも。

【長田】スケジュール大変ね?

【小山】そう。スケジュール調整の四季の方たちもすごかったし(笑)。

【山下】それ、大変でしたね。

【長田】うーん。

【小山】でも、まあなんだ、かんだ言って、振り付けの方も音楽家のみんなで言っていたのはやはり、そうは言っても本に立ち返る。俳優もそうだし。それが劇団四季の教えでもあって。「本に書いてあることをそのままやればいいのだ」という浅利(浅利 慶太)先生の言葉があるのですけど、稽古場のときに。

【山下】基本は、その本に立ち返ると。

【小山】(頷く)なので、そうですね。長田さんのしっかりした、きちんとした本というか。というものがベースにあって。そこに、みんないくという感じでしたね。

【山下】なるほど。横浜のほうでしたっけ? あざみ野でしったっけ? 稽古場。

【長田】稽古場が。はい。

【山下】そこでやっていたのですか?

【長田】そうですね。

【山下】あそこに、みんなでいって、何時間もぶっ通して。

【小山】うーん(笑)。

【長田】でも、やはり最高の環境でしたね。稽古場も恵まれていたし。

【山下】いやー。稽古場もすごいねえ。僕もビデオでしか見たことがないけど、すごく広くてね。本当に。

【小山】そうですね。

【長田】あと、本当にキャストさんもね。ちゃんとオーディションさせてもらって。本当にこう……

【山下】オーディションでゼロから選んでいったのですか?

【長田・小山】頷いている。

【山下】はー!

【長田】もう、すてきなキャストさんを選ばせていただいて。16年ぶりの新作だから、その新作を作った覚えがある人も

【山下】いなくなってきていると。

【長田】あまりいないのですよ。やはりディズニーものに出ている方とかが、初めて新作に挑戦するという方も多くて。あとは本当に例えば、これまではディズニーものとかだと、いかに新作、コピーするか。私、最初、劇団四季に話しを聞きにいったときに、プロデューサーの方が自嘲気味に「劇団四季は日本一の物真似劇団です」というふうにおっしゃっていて。

【長田・小山】笑っている。

【山下】えー。そうなんだ(笑)。

【長田】うん。そんな自嘲。自嘲しなくてもいいのに。とは思ったのですけど。でも、やはり、ある意味そのときは本音だったのかなとは思っていて。でも今回は、そのオーディションで、その中でも新しい物作ろうと思っている人たちが集まってくれて。ね?

【小山】(頷く)そう。すごい人数。もう、たくさん受け手くださって。しかも、なんかそこも平等で(笑) なんていうか、例えば歌を。課題があったときに、ほかのオーディションとかだと、もう途中で切っちゃったりとか。もう全部聞かないで、この人はないね。みたいなこととかも起こるのですけど、基本的なルールとして全部ちゃんと聞く、全員聞く。それで一次とかもないので、もう全員、受けたい方を私たちが全員で見るという。それで、そのあと、みんなで話し合う。「この方だと」

【長田】頷いている。

【山下】もう学校みたいですね。

【小山】そう! すごーく。そうですね。

【長田】全員にチャンスを平等にという。

【山下】すごいですねえ。

【長田】でも本当、俳優の皆さんとかは、演出家に「こうしなさい」と言われた経験が多かったので。ゆうなちゃんみたいに俳優がまず何をやりたいかというのを。

【山下】聞いていくのですね?

【長田】そう。汲み出していくというのを俳優たちは最初、たぶん。

【山下】戸惑ったかな?

【長田】うん! (笑)。

【小山】笑っている。

【長田】そのやり方が分かるまでは。

【山下】なるほど。

【長田】(戸惑いが)あったと思いますよ。

【山下】でも、俳優さんもいい勉強になりましたね。自分で「こうしたい」と考えなければいけない。
さっき長田さんが「小学校のときに、かけ算の繰り上がりが分からない。なんでだろうと考え出したら考え出したときに、それまでは全部、丸だったのだけど、考え出したあとは全部ペケになっていた」というエピソードを聞いて。今、自分の頭で考えることを求められる時代になったではないですか。そのときは、そうではなかったのかもしれないと。
何を言いたいかというと、さっきの俳優さんも「あなた、どうしたいのですか?」と言ったときに、やはり答えられる俳優になっていたほうが、たぶん良くて。そうすると、俳優だけど、クリント・イーストウッドみたいに監督ができるようなクリエーターになっていけるし。僕はよく、ここの声優科の生徒に言うのだけど、あなたたち、みんなクリエーターだしアーティストだよ。そういう人はやはり、自分の頭で考えなければいけないし、正解はどこにもない。Aが正解だと言ったらAが正解だし、Bが正解だと言ったらBが正解。どちらも評価されるし結果は分からないのだけど。でも、それを自分の頭で検証しながらやっていく、そうやって生きていくことが皆さんの仕事ですよ。という話しをするのですね。
それで、まさに小山さんはそれをおやりになっているのではないかな。

【小山】私が学んだ。フランスから帰ってきて教えてくれていた演劇学校の先生が
彼が「俳優は演出家と同じくらい考えていないとダメだ」と言っていて。

【山下】うーん。やはり、おっしゃっていたのですね。

【小山】なので、だから。

【山下】それは、あったのですね。小山さんの中に。

【小山】(頷いている)なんか、そこって。そういう俳優さんと一緒にやると、すごい大変なのだけど(笑) よく喧嘩になるし。

【長田】一緒に笑っている。

【小山】でも楽しいので。それで四季の方たちも皆さん、それで何かアイデアがないかというと、全然そんなことはなくて。

【山下】そうですよね。

【小山】うん! 「持ち込んでください」と言ったらもう全然。

【山下】逆に最初はやってはいけないのかなと思ったかもしれないね。

【小山】うん! そうそう!

【長田】大きく頷いている。

【山下】「あ、やっていいんだ!」となったかもしれないね。

【小山・長田】そうそう!

【小山】すごい。ね? いろんなユーモアのセンスも。まあね? やはりすごい方たちなので皆さん。それは楽しい。私、でもなんか最初、稽古場にいく稽古初日の前、何日か悪夢にうなされていて。

【長田】えー! (笑)。

【小山】そう(笑)なんか。

【山下】なに? 取り調べ?

【長田】そうなのー!? (笑)。

【小山】なんか四季に稽古場にいったら「いや、あなたがやるようなことは別に求めていませんから私たちは。もう出ていってください」と言われるという悪夢を(笑)。

【長田】具体的(笑) 悪夢、具体的。

【山下】それを夢で見たのですね?

【小山】夢で毎晩のように見て。

【山下】なるほど。それはプレッシャーだったのですね。

【小山】すごい怖くて……。劇団四季。

【長田】うん……・。

【山下】初めてのことって怖いですよね。

【小山】(大きく頷いている)でも全然そんなことはなく、皆さん温かかったんですけど。

【長田】やはり、なんか浅利慶太さんという存在が。ねえ? 私たちにとっても大きかったし。ねえ?

【小山】本当に。

【山下】まあカリスマですものね。ある種のね。本当に。自分でも戯曲を書かれていましたからね。浅利さんは。

【長田・小山】大きく頷いている。

【山下】なるほどー。それで、あれですか。俳優とかが決まって稽古をするのだけど、その稽古の現場にも長田さんは毎回、参加されていたのですか?

【長田】私はそこまで、べた付きではなかったですね。

【山下】何か小山さんが演出をするときに「こうしよう」というのは、俳優と対話しながらやっていくのだけど。もちろん、小山さんがやりたいものもあるわけではないですか。こんなふうにしたいという。それは、どういうふうにやって、作っていっていたのですか?

【小山】どうなのだろうなあ。まあ「こうやりたい」もそうだし。できる、限られる、やれることとかがあるので、その中で何ができるかなということを、いろんな美術のスタッフさんとか皆さんと相談をしながらいくので。その骨組みは最初にもちろん、決まっていて。あとの細かいことは、その劇団四季の俳優さんがどこまで、それこそ「アイデアを出してください」と言ったときに出してくださるのかなとか、そういうこと嫌な方もいらっしゃるかなとか分からなかったので。

【山下】ああ。そうか。そこは、ちょっと様子を見ながらですね。

【小山】(頷く)やってみながらという部分も結構、大きかったですね。試してみるという。そういう時間を稽古時間も長かったので、作ってくださっていたということが大きいかもしれない。

【山下】稽古はどれくらいやったのですか? 2カ月くらい?

【小山】2カ月はありましたね。

【長田】でも本当に私、本のところしか知らないから本の作業しかしらないですけど。やはり衣装とかパペットデザインとか美術とか本当に、多岐に渡る。ミュージカル1本作り上げることの多岐に渡ることを。

【山下】ミュージカル。そこは多いですよね。

【長田】全部。ね? ゆうなちゃんと、それぞれのセクションの方たちが作り上げていって。

【山下】連携しながらね。

【長田】だから私とかはもう、小道具とか細部に至るまですごい魂が宿っていて。本だけ書いていると舞台にいってから、そういうものを初めて知るので、すごい感動しました。

【山下】そうですよね。

【長田・小山】一緒に笑う。

【小山】ありがたい作家さんです。

【長田】いやー。もう本当に。もう、書き上がったら本当に、あとはもう、お客さんの一員みたいな気持ちになってしまっていて。

【山下】分かります、分かります。

【長田】「えー。なんか、こんなところに、こんな魂が宿っている」みたいなのを発見しては、発見しては嬉しく報告をするみたいな(笑)。

【小山】(笑)そう。なんか、そういうふうに温かく稽古場も。割と度々、本読みとあと通しになってからかもしれないけど、きてくれて。そういう温かいコメントをみんなに残していってくれるから。それもカンパニーにとってはすごい、よかったと思うし。

【山下】言葉の力はありますからね。

【小山】(頷く)本当に。あとはね。私はまあ、ちょくちょく、なんかずっとLINEとか電話とかで「どうしよーう」とか(笑)。

【山下】コミュニケーション取りつつ。

【小山】そう! あとはもう本当に具体的にせりふこうしてもいい?」もそうなのですけど。結構もう、頻繁にやり取りをして。

【山下】セリフの変更があるとね。ちゃんと聞かないといけないから。

【小山・長田】頷いている。

【小山】すぐにコミュニケーション取れたの。コミュニケーションが取りやすかったというのは、すごい大きかった(笑) そこがねえ。なかなか、いつも難しいので……。

【長田】(笑)そうかなあ!

【小山】そうなのです……(笑)。

【山下】なるほどねー。


-------------ここまで

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)
担当は松田昌美でした!
このたびは、ご依頼をありがとうございます!
日常生活の中で演劇家さんや、作家さんの話を聞く機会がないので最後まで興味津々で作業を行いました。長田さんと小山さんがどれだけ密にやり取りを重ねて作品を作り上げてきたのか、短い音源でしたが伝わってきて続きがとても気になります。記事が公開されたらぜひ、お知らせください。
またのご依頼をお待ちしております!!

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