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【PODCAST書き起こし】劇作家の長田育恵さんに聞いてみた(全4回)その1

【PODCAST書き起こし】劇作家の長田育恵さんに聞いてみた(全4回)その1
【山下】皆さん、こんにちは。
東北新社のTFC LAB PRESENTS Podcast『BRAIN DRAIN』のお時間です。
『みんなで語る小劇場演劇』という番組でして、私がプロデューサーとMCをしている山下と申します。
今日は、先月小山ゆうなさんに来てもらったんですけど、小山ゆうなさんと劇団四季で『ロボット・イン・ザ・ガーデン』という作品の劇作をされている劇作家の長田育恵(おさだ・いくえ)さんに来ていただきました。
長田さん、よろしくお願いします。

【長田】よろしくお願いします。

【山下】長田さんについていろいろと聞いていきたいと思いますが、答えたくないことを聞くかもしれませんので、そのときは「答えたくありません」と普通に言っていただいて大丈夫です。

【長田】分かりました、はい。

【山下】いつも私は生い立ちからいろいろとお伺いするような感じで、編年体でクロニクル形式でお伺いしていっておるんですが、まず、長田さんは東京のご出身だと。

【長田】はい、そうです。東京生まれです。

【山下】東京のどちらなんですか。

【長田】大田区ですね、はい。

【山下】ああ、なるほど。じゃあ蒲田とか、あの辺の。

【長田】そうですね。その辺というか。

【山下】昔、撮影所があった。

【長田】はい、そうですね。

【山下】ずっとその辺なんですか。

【長田】はい。もう実家も。

【山下】ああ、いいですね。僕なんか大阪から出てきたので、すごく東京にね、出稼ぎに来てる感じがあるんです。

【長田】あ、そうですか。

【山下】そう、逆にすごく聞きたいんですけど、東京に生まれて東京にずっと住んでる人っていうのはどういう感じなんですか。地元でずっとやれてるっていう感じなんですか。

【長田】そうですね。そういう意味で言うと、ほんとに生活圏というかは山手線でずっと円周上にいるって感じではあるんですけど。

【山下】私などは、移民してきたみたいな感じがすごくあるんですけど。

【長田】でも、やっぱり子どものころとかは、故郷っていうのが感覚的にもっと知りたいなって、もがいてた時もありますね。

【山下】ああ、ふるさとですね。

【長田】やっぱり、里帰りする場所っていうのも特になかったりするので、でも今、大人になってからは、ちょうど私の実家が馬込の文士村っていう辺りなんですけれど、すごく古い家が多くて。

【山下】昔からの。

【長田】そうなんです。で、私も子どものころ祖父と同居してて。

【山下】あ、そうなんですか。いいですね、3世代同居。

【長田】そうなんですよね。東京といっても結構のんびりした地域なんですけど、大人になってからそういうことが分かるようになりましたかね。

【山下】じゃあ、いわゆる馬込辺りのところでずっと住んでるから、そこからあまり引っ越しはされたことないんですか。

【長田】結婚して目黒区に移動したんですけど。

【山下】でもほぼ近い、隣ですね。

【長田】ほぼ、そうですね。隣ですね。

【山下】なるほど。幼稚園、小学校とかは地元の学校へ行ってらっしゃったんですか。

【長田】そうですね。

【山下】なるほど。この前、長田さんとオンライン会議をやって、この『テアトロ』の5月号ですね、長田さんと西堂先生の対談が掲載されていると伺って、昨日、拝読させていただいたんですが。
これを読むと長田さんのことがいろいろ書いてあるんですけど、割と小さいころのことが書かれていなかったので、そこはちょっと聞かせていただきたいなと思ってるんですが。そこに書いてあるのが、中高一貫のミッションスクールに通っていたと。

【長田】そうですね。

【山下】それは、お受験されたんですか。

【長田】もう普通の中学受験ですね。

【山下】中学受験をして。

【長田】で、港区にある新渡戸稲造が創った「普連土学園高校」ってとこに中高があるんですけど。

【山下】普連土学園。

【長田】普通の普に連なるに土っていうふうに書くところで、キリスト教のクエーカーってところの宗派に連なる学校なんですけれど。

【山下】クエーカー教徒。

【長田】1学年120人だけで6年間ずっとなんですよ。

【山下】じゃあ、仲が良くなりますね。

【長田】もうすごく密接な学校でしたね。

【山下】120人ってことは3クラス?

【長田】3クラスだけ。

【山下】じゃあ、長田さんも6年間ずっと。

【長田】ずっと。

【山下】じゃあ、いまだに同級生とかとは、あれですか。

【長田】もうやっぱり、つながりが深くて。
しかも、中高一貫校なので中学2年生ぐらいのときにできたグループのままで
今も一番仲が良いです。

【山下】なるほど。そうか、6年間も一緒だと。
あれですか。クラブは何かされてたんですか。

【長田】そのときは6年間ずっと剣道をしてました。

【山下】ああ、書いてありましたね。
剣道を。割と、他のこともやりたいって書いてあったけど。

【長田】はい、ちょと。最初は弓道とかに憧れてたんですけど。

【山下】弓道部があったんですか。

【長田】なかったんです。

【山下】ああ、なるほど。

【長田】それで、似てるかなと思ったら、やっぱり全然違っていて。でも入ってから、部活も中高一貫で6年分の学年が全て揃ってやるので。

【山下】そうか、高校の先輩も一緒にやるってことなんだ。なるほど。

【長田】そうなんです。で、上の先輩が早めにいなくなってしまって、6年間全部の部長に割と早めになっちゃって、辞められなくなっちゃったんですよ。

【山下】なるほど。何人ぐらいいたんですか、部員は?

【長田】えー、今、正式には覚えてないんですけど、学年は最大では13人ぐらいはいて、都大会とか、やったりとか。でも、ほんと面白かったですね。
校長先生とかが変わったときに、外国の方が校長先生になられるんですけど、「ミッション系のスクールに、戦いの部活はいりません」って、やっぱりおっしゃって。それで「戦いではなく武道とか精神を学ぶためにやっています」って直談判をしに行ったりとかしてましたね。

【山下】そうですよね、武士道ですからね、なるほど。さっきご紹介した編成メンバーの吉武さんがですね、『道』っていう番組作って、何とか道。で、踊りの先生がメインキャストで、ほんとに今度、弓道の先生とかも来てほしいなとか言ってたんです。まさに剣道の。

【長田】そうなんです。やってました。

【山下】ね。で、あれですか。部活以外は小中高、中高特にそうですかね、何か思い出深いことはありますか。

【長田】でもやっぱり図書館ですかね、すごく……

【山下】充実してた。

【長田】ほんとに小さいころから、とにかく物語が好きで、どっちかっていうと、ほんとに子どものころはちょっと入院とかしてることも多かったんで、外で遊ぶっていうよりはずっと本を読むほうが好きだったんですよね。
それで、小学生のときとかは、いわゆるアルセーヌ・ルパンとか、あの辺の。

【山下】ああルパンね、あのシリーズのね、あのイラスト。僕も読んでました。

【長田】乱歩とか、あの辺のを全部読んでいくみたいなことをやって。

【山下】はい。江戸川乱歩とか。ポプラ社だ、ポプラ社。思い出した。

【長田】中高に入ってからは……何ていうのかな、中高のときに出合うような、あの辺の本がほんとに好きで。で、あとは図書館の先生とかも、小さい学校なのですごく仲良くなって、例えば、買う前に何か読みたいのがあるかとか。

【山下】えっ、図書室の人が?

【長田】聞いてくれるの、司書の先生が。

【山下】すごいじゃないですか。

【長田】それでリクエストとかを言っておくと。

【山下】買ってくれるんですか。

【長田】それも買ってくれたりとか。

【山下】むちゃくちゃ良いですね。

【長田】で、「入ったよ」っていうふうに言ってくれたりとか。

【山下】もうなんか本のお小遣いがそこにあるみたいな感じですね。

【長田】そりゃあもう親切で。
あとはほんとに栗本薫さんの『グイン・サーガ』っていう、100巻ぐらいある。

【山下】『グイン・サーガ』のシリーズね。あの長編の。

【長田】それとかを、1、2時間目終わった後に10分休みがあって、その後に3、4時間目があって昼休みがあって5、6時間目とかがあるんですけど、1、2時間目で1冊読んで、10分休みの間に取り換えに行って、3、4時間目と5、6時間目に、1日3冊ペースで。

【山下】それは、授業はどう……聞きながら?

【長田】授業中に読んでたりとかして。

【山下】すごいですね。

【長田】そうすると、やっぱり図書館の先生とかは怒らないで貸してくれましたね、なんか。

【山下】いや、そりゃそうですよね。1日3冊読むってすごいわ。

【長田】だから、そのころに読んでた本とか、あとは出合ったものっていうのがすごく印象深くて。

【山下】でも、それが肥やしになってますよね、絶対。

【長田】だから子どものころからずっと作家になろうとは思っていて、あとはほんと、湯本香樹実さんって方の『夏の庭』っていう本がほんとに忘れがたくて。

【山下】湯本香樹実『夏の庭』。

【長田】香樹実さんっていう、寺山修司さんのお弟子さんだった女性の。

【山下】へえー。それはその人の小説ですか。

【長田】小説なんですけど、児童文学っていうジャンルなのかな。

【山下】ああ、そうなんですね。

【長田】児童文学って、子どものころに読んだものが人生で何度も出合い直して読んでもらえるから、人生の最初のうちに出合う本を書ける作家はなんて素敵な職業なんだろうと思うんで、そういう作家になりたいなと思ってましたね。

【山下】あれですか、僕はよく言うんですけど、小学校の5、6年のころに好きだったことがやっぱり自分の一番やりたかったことに近い。なんて。
それは、作家になろうとしたのはいつぐらいですか。

【長田】やっぱり、そのぐらいだと思いますね。

【山下】じゃあ、初志貫徹ですね。

【長田】すごく……個人的な話をしちゃうんですけど。

【山下】いやいやそれを聞きたい。そのためのPodcast!

【長田】小学校のときもそんなに器用にいろいろできるほうではなくて、友達とかを作るのも結構考えちゃったりとか。
あとは、ほんとに忘れられないのが算数なんですけど。

【山下】算数の授業?

【長田】算数のときに、小学校のときのクラス分けって結構重要じゃないですか。
それで1年生から2年生に上がるときにクラス分けがあって、あとは2、3、4年生までの3年間が定年間際の女性の先生で、3年間ずっと一緒だったんですよ。
それで、最初の算数の繰り上がりの掛け算か何かの授業のときにテストがあって、やってる最中に、私1個考えだしちゃうとなんか釈然としないとダメなんですよね。それで50問のテストの内の、ほんと忘れられないんですけど17問目あたりで。

【山下】止まっちゃった。

【長田】繰り上がりについて疑問を。何か釈然としなくなっちゃって。

【山下】ああ、なるほど。なぜ繰り上がるのかというそもそもの。

【長田】そうそうそう。そもそもがテスト最中に分かんなくなっちゃって。

【山下】哲学者ですね。

【長田】それで50問のテストの内の17問目までは全部マルで18から50問目までは全部バツっていうテストの成績になって。
したら、その先生が「このクラスの中で1人だけ繰り上がりを理解できなかった子がいます」っていうふうに言われて、ほんとに「ああ、私はバカなんだ」って思ったんです、そのときに。
それで、考えちゃうこととかも、みんなは考えなくてもいろんな答えが分かるのかな、それってすごいことだなって思って、自分だけが違うんだろうかって思ってたんですよね。
そうしたら5年生のクラス替えになったときに、東京都の国語とかを監修してるような感じの若くて研究熱心な先生で、そうしたら最初の作文の授業のときにその先生が私の作文をものすごく褒めてくれて。で、5年生の私に「あなたは作家になりなさい」って言ってくれたんですよ。

【山下】5年生のときにその先生が。その先生は担任の先生じゃなかったんですか?

【長田】担任の先生で。

【山下】じゃあそこがまた転機だったんですね。

【長田】そこがもう転機ですね。その先生が簡保の作文コンクールとか。

【山下】簡保って簡易保険?

【長田】そうですね。そういうのの小学生の部の審査員とかをされてる先生で。

【山下】そうだったんですね。

【長田】私を呼んで、下読みじゃないけど「他の人の作文を読んでどれが良いと思うか言ってみて」って聞いたり、すごく「あなたは文章を書いていきなさい」ってことを5年生の最初のクラス替えとかのときから言ってくれて。

【山下】いや、すごいですね。

【長田】それがなかったら私はやっぱり。

【山下】繰り上がりの分からない女の子として。

【長田】もうみんなが分かることを1人だけ分からないんだっていうふうに植え付けられたまま生きていくところでしたね。

【山下】それが小学校ほんとに5年のときだったんですね。

【長田】そうですね。

【山下】長田さんもやっぱり「じゃあ、やろうか」っていうのが、ちょっとだけやっぱり育っていったんですか。

【長田】はい、もう。もともとほんとに物語だけはずっとやりたくて、それで読んでたんですけど、もうそこからは「ああ、じゃあ、読んでていいや」って思うようになりました。

【山下】ああ、なるほどね。でもね、今の時代の教育について、二つ今の話で言いたいことがあって、1個は先生。僕も高校のときに先生が「山下君は教育大とかに行ったほうがええんちゃうか、人にものを教えることがええんちゃうか」って。で、僕は全然違う結局プロダクションに行ったんですけど、制作会社に。
でも、今ここの教育事業の部署に来て教えるようになって、で「あっ、俺、教育するの好きなんだな」ていう。やっぱりその、先生はなんとなく生徒を見てるんだなっていうのをこの歳になってですけどね、もう晩年ですが、ほんとに痛感して。
だからその先生も長田さんのそれをちょっとだけ読んだり見たりして分かるっていうのが。

【長田】はい。やっぱり、ほんとに人生はいろいろね、変わりますよね。

【山下】いやあ、それはその先生との出会いと、大きく人との出会い。

【長田】大きかったですね。

【山下】もう1個思ったのは、繰り上がりがなんでこうやって繰り上がるんだろうっていうことを考えること。それは公式をそのまま丸暗記するとできるんだけど、今の教育はそれじゃダメだっていう話にはなってきていて、「自分の頭で考えてますか?」っていうのが主流になってきてるじゃないですか。
そうすると、今だと長田さんのこれを「こうなんだけど、みんなどう思う?」っていうふうに僕なんかだと授業するけどなあ。

【長田】いや、でも、ほんとに今はそうですよね、そういうふうになったのって。

【山下】そう。だからそれは早すぎたのかもしれないし、よく考えることをやっぱり、それをね、ちゃんとしていかないとリッチに生きれないよっていうかね、幸せに生きていくことが考えることによってできてくるじゃないですか。ほんとの幸せとかっていうのはやっぱり、幸福論じゃないけど。

【長田】そうですね。

【山下】だからそれが、当時は欠けてたのかもしれないですね。

【長田】でも、今思うとそのときの2、3、4年生のころの先生とかも、大人になってから親に聞いたんですけど、私、たぶん4年生の最後のほうとか、もうなんか学校行くのが嫌になっちゃって、しばらく学校行かなかったんですけど。

【山下】でも、それもそれでいいじゃないですか。

【長田】そうなんです。それで、親も「まあ、行きたくないんなら家にいればいいよ」って言ってくれて。

【山下】いいですね。素晴らしいですね。

【長田】でも大人になってから聞いたら一応親は先生に相談に行ったそうなんですね。
そうしたら、私はほんとに知らなかったんですけど、
その先生は「長田さんはやっぱり他の人よりもいろんなことを考えていて、5年生、6年生になったら同じように考えたりとかするような友達も増えてくると思うから、今は全然焦らなくていいですよ」みたいに言ってくださったそうで、だからちょっと大人になってから2、3、4年生のときの先生にも誤解が解けました、はい。

【山下】おおおおおお、でも、すごく大切な話ですよね。

【長田】いやあ、すごく大人が一応見守ってくれてたんだなって思う。

【山下】そう。よく言うんだけど、「1人でも理解者がいれば、それについて行けばいいよ」って、よく言うんですね。
そうしたらもう道は開けるんじゃないかなっていうふうに思って。

【長田】いやあ、ほんとに。もうその5年生のときの先生が「あなたは文章を書いていきなさい」って言ってくれなかったら今の自分はないだろうなって、ほんとに思います。

【山下】そうですよね。で長田さんね、このあといろいろお話ししますけど、これを読むとどうやってこの今、劇作家になっていくかというね、長田さん結構割と覚悟を持ってね、なられたっていうのが。

【長田】そうです。

【山下】このあと聞けると思いますけど、もう1回ちょっと中学とか高校の話に戻すと、さっき栗本薫さんの『グイン・サーガ』シリーズをずっと読んでて、中島梓さんですよね。

【長田】そうですね。

【山下】僕らの世代は彼女は超有名で知ってるんですけど。すごい、あの人は小説っていうか物語を書くのと評論と二足の草鞋だったじゃないですか。

【長田】すごい枚数で。

【山下】僕、中島梓さんの評論が好きですごい読んでたんです。
あの長い連続者の小説は僕の友達が読んでました。
他に、何か印象に残ってるやつってあります? 赤川次郎とかいろいろいたじゃないですか。

【長田】ああ、赤川次郎もそうですね。

【山下】やっぱりそうですか。

【長田】あと田中芳樹とか、父が家の中でファンタジーを結構読むんで。

【山下】あ、お父さん。そうなんですね。

【長田】うつのみこっていう『宇宙皇子』って書くやつがあるんですけど。

【山下】なんか、字は見たことあります。

【長田】すごいあれも巻数があって。あと『銀河英雄伝説』とか『創竜伝』とか、そういうのとか全部もう父が買って読んだりするもので。で「面白いの出たよ」って貸してくれたりとかしてました。

【山下】へえー、それじゃ、お父さんと本をシェアしてたり。

【長田】そうです、そうです。

【山下】へえー、羨ましいですね。

【長田】はい。そんな感じでやってましたね。

【山下】じゃあ、割とそういう物語系の強い小説を読むのが多かったんですね。

【長田】そうですね。もうほんとに完全に物語を読んでました。

【山下】なるほど。私はですね、幼児のとき漫画だけ読んでて、漫画はものすごく。床屋に行って、漫画をただで読んでいて、親が「悪いから、そのあと髪の毛を刈ってきなさい」って言うんで、髪の毛を刈らされてたんですけど。
私は、小学校は漫画だけ読んで育ったようなところがあって。
長田さんはどうですか。他にそういう漫画とかアニメとか結構……。

【長田】漫画は、すごい量を読んでます。

【山下】読んでる。

【長田】漫画とアニメもすごい見てます。

【山下】じゃあ、物語の吸収量が圧倒的じゃないですか。

【長田】全部、ほんとに、ありとあらゆる物語って感じです、もうゲームも。

【山下】そう。じゃあ、物語系のあるものが好きなんですね。

【長田】一家を挙げて、一家というか、母は結構入院してた時期が多いんですけど、もう父と私と弟が。

【山下】物語大好き家族。

【長田】物語をシェアするってことで家族のつながりを保つみたいな。

【山下】お金もね、割と節約できるじゃないですか、シェアするから。

【長田】そうですね。少女漫画とかはあんまり読まなかったんですけど。

【山下】僕は結構好きでした。妹とかいとこがいたので。

【長田】そうなんですよ。うちは弟がそれこそジャンプ系を全部網羅していたりとか。
普通に『ジョジョの奇妙な冒険』とかは弟が途中で買わなくなったら、続きは自分で買ってたりとかしてて。

【山下】ジョジョね、荒木飛呂彦さん。

【長田】だから、ほんとにもう最新まで全部読んでたりとか。
あとは弟もRPG(ロール・プレイング・ゲーム)があのころすごく全盛だったので。

【山下】はいはい。ロール・プレイング・ゲームはまさに物語ですからね。

【長田】弟と私でやっていたりとか。

【山下】どんな、『ドラクエ』とかですか。

【長田】弟は『ドラクエ』で、私は『ファイナルファンタジー』で、はい。

【山下】なるほど、なるほど。メジャーな二大ゲームと。

【長田】もう『ファイナルファンタジー』の新作が出るたんびにプレステ本体ごと買い替えるみたいな。

【山下】ああ、そうですよね。それも物語を学ぶと。

【長田】物語、もうとにかく好きで、はい。

【山下】僕はね、テレビゲームは糸井重里さんの『MOTHER』っていう。

【長田】ああ、ちょっと怖いやつですかね。

【山下】怖くない。

【長田】怖くないですか。

【山下】それがね、最後どうしても勝てない、戦うときに。
それで、最後、戦うんじゃなくて「祈る」っていうのが出てくるんですよ。で、祈ると勝てたっていうね。これはね、感動しました。

【長田】へえー、すごいですね。

【山下】ああこうやって、糸井重里、やっぱりすごいなって思って。

【長田】すごいですね。

【山下】じゃあ、あれですね。長田さんもチャンスがあったらゲームの本とか書きたいんじゃないですか。

【長田】うん、書きたいですね。でもね、今は仕事になっちゃうと楽しめなくなっちゃうかもしれないから、私の聖域を。

【山下】なるほど。逆にお伺いしますが、仕事になると楽しめなくなるんだけど、今は作家の仕事をされてるわけじゃないですか。それはどうなんですか。なりたいものになれたけど、仕事なので純粋に楽しめないとかっていうの、あるんですか。

【長田】やっぱり仕事をすればするほど……私、書かなくても生きてはいけると思うんですけど、物語に触れないと生きていけないんですよ。

【山下】ああ、分かる。

【長田】だから、1日書く仕事をしたら物語に接することでリセットしないとならなくて。

【山下】インプットですよね。インプットとアウトプットのバランスがないと死んでしまう感じ?

【長田】そうなんです。例えば、だから1日仕事をしたあとにお風呂で必ず漫画読んだりとかしないとダメだとか。全然違う物語に触れないとダメだとか。
あと、すごく弱ってるときとかは、ものすごく面白い物語に接すると元気が出たとか。

【山下】ああ、分かります。
それは、私とか谷さんが演劇に定期的に触れないとなんとなく気持ちがリセットしないっていうのと同じかもしれない。

【長田】そうかもしれないです。

【山下】いやあほんとに、なるほどね。そうするとあれですか、ちょっと脱線するけど、長田さんは自分で「これ、読みたいな、見たいな」っていうものがストックされているわけですよね、絶対。家の中のどこかに置いてあったり。

【長田】読みたいのはすぐ読んじゃうんで、逆にないんです。いつも足りないんです、読むものが。

【山下】足りないんだ。

【長田】仕事の本はすごい積まれてるんですが。

【山下】仕事は仕事でね、資料として調べないといけないから。

【長田】仕事に関係する本はものすごく積まれてるんですけど、読むものは1日1冊とかでも足りなくて、Kindleが導入されてからはほんとにすぐ買えるんで。

【山下】ああ、そうなんですか。

【長田】うん、すぐ買っちゃう。

【山下】すごい。桜庭一樹さんっていうね、作家さんもすごい読まれますけど、ほんとに桜庭さんと同じような感じの圧倒的な読書量なんですね。

【長田】やっぱり……そうですね、どれに接しても尊敬するんです、心の底から。
漫画だったら、登場人物の作り方から、あとはストーリーを運ぶ演出とか小回りとか、あとはもう大きな見せ方とか小さな箸休めみたいなコマとかの全部のバランスに感動しますし。ゲームとかだと、どういうシステムでこのゲームが作られているかとかにも、ほんとに。

【山下】そこはちょっとだけ引いて見ることでそういう、面白いですね。

【長田】でもやっぱり感動しちゃうんですけど。

【山下】分かります、分かります。僕もそんな感じです。

【長田】最新の『ファイナルファンタジー』はフィフティーンで15だったんですけど、あれ、歴代の『ファイナルファンタジー』好きの人には不評だったんですけど。

【山下】ああ、そうなんですか。

【長田】もう私はすごく斬新で。

【山下】感動した。

【長田】うん。旅の思い出を作るっていう何でもないシーン。

【山下】今までやってない新しいことを始めたんですね。

【長田】そうなんです。でもそれはね、終わってから3年ぐらい経っちゃったんですけど。

【山下】ああ、そうなんですか。
今までと同じことを求める人と、そうでないのを喜ぶ人がいますよね。

【長田】やっぱり『ファイナルファンタジー』は全作やっているんですけど、1作作るのにものすごい開発の年数があって出てくるじゃないですか。

【山下】そうですよね。何年もしかも何十億もかけてますからね、あれは。

【長田】「今回のコンセプトはこういうことで、これに挑戦します」っていう打ち出しがちゃんとあるじゃないですか。すごくそれを納得しながらやる感じですね。

【山下】ありがとうございます。
実は、うちの会社は『ファイナルファンタジー』とかのゲームの声の吹替の演出をしてるんですよ。

【長田】ああ、いいですね。

【山下】あれはやっぱり声とかで特徴が変わってきますか。

【長田】もう変わってきます。

【山下】それでね、ちょっと脱線してもいい? ここに「清水洋史」って書いてあるんですけど、これ、うちの清水洋史ですか、もしかして。
共作で清水洋史さんって書いてある。

【長田】ああ! それ、高校演劇の本で読んだ方なんで。

【山下】清水洋史はうちの社員で、まさに吹替のディレクターをやっていて、演劇やってたんです。

【長田】へえー、じゃあ、高校演劇のもし書かれていたら、その方かもしれないですね。

【山下】聞いときます。全く同姓同名なんです。

【長田】はい。その本がなかったら劇作家っていう職業を認知しなかったです。

【山下】今度、清水さんがアカデミアに教えに来たら、これ見せます。

【長田】ありがとうございます。

【山下】それはすごい聞いてみたいなと思って。
で、清水さんの部署は当時、『ファイナルファンタジー』とかの声のアフレコっていう仕事をしていて、うちの会社で。

【長田】すごくやっぱり人生の一部になってますね。ただのゲームっていうよりかは自分の記憶に深く根付いてるんで。

【山下】そうですよね。体の中に染み込んでる。

【長田】染み込んでます。

【山下】ちなみに、今までやったゲームとか、そういった読んだものとかは家に持っていらっしゃるんですか。

【長田】だいたい家にあるかと思いますね。実家にあるのもあると思いますけど。

【山下】でも一応捨てずに置いていらっしゃるんですね。

【長田】そうですね。でも言っても、プレステが4とかハードが換わっちゃうと、なかなか前のはもうやらないんですけど。

【山下】ハードが古くなっちゃうと使えなくなっちゃう。なるほど。
あともう1個だけ質問です。Kindleはやっぱりすごくいいですか、たくさん本を読む人には。

【長田】私、仕事で使うものは線を引かないとダメなんで。

【山下】それはKindleで線を引くの? 紙がいい?

【長田】だから紙にするんですけど。漫画とかはKindleがあるとすごく楽になりましたね。

【山下】そうですよね。肩こっちゃいますもんね。

【長田】例えば『キングダム』とか55、56巻ぐらいまであるものは、もう今、家のどこにも収納できないんで。

【山下】漫画は買うと収納できなくなっちゃうんだよね、ほんとに。

【長田】でもほんとに劇作家は1作書くごとにダンボールで3、4箱分資料本を読むんですよ。

【山下】3、4箱。ってことはもう50冊、60冊って感じ?

【長田】はい、もうだから捨てられないんですけど、床がなくなっていくんですよ、家の。

【山下】床がなくなるって、それは抜けるかもしれないですね、ほんとに。

【長田】とっくに本棚とかはもう全然ダメで、積んでるけど、もう部屋にも入れなくなっていき、資料が多くて。
で、あのダンボールのあの辺に入ってるっていうのは分かるんですけど、すごい締め切りとかに追われて資料を探しているときって疲れの極みにいるので、このダンボールをこうやってどけて、そこから探すっていうことができなくて。

【山下】移動して、そこから発掘できなくなっちゃう。

【長田】あそこにあるって分かってるのに、Kindleでまた買って。

【山下】速いからね。題名は分かってるし。

【長田】もう今すぐ参照。題名も分かってるし、この本のこの辺に線を引いたっていう記憶はあるんですよ。

【山下】そういうの、やっぱり残ってるんですか。それは紙でやってるから残るんですかね。

【長田】そうなんです。写真みたいな感じで。この辺のめくった感じのここら辺にあったっていうことがあって、あれを参照したいっていうのがあって。もうKindleで買って。

【山下】またKindleで印つけて。

【長田】こうやって。

【山下】なるほど。
あれですよね。だからさっきお風呂で読んでたっていうのはKindleの防水のやつで読んでいらっしゃる。

【長田】ああ、もう防水のでもないです。普通のiPadでこう読んじゃってます。

【山下】なるほど、なるほど。
いやいや、今度僕もKindle買います、じゃあ。ありがとうございました。
ちょっとすごい脱線が長くなってすみませんでした。
(※ その後、KINDLE PAPER WHITEを購入しました)

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)

文字起こしの担当者:高橋倫花
コメント:このたびは、ご依頼いただき誠にありがとうございました。
長田さんの子どものころのお話を聞いて、私も周りの人たちの長所を引き出せるような言動や行動をしていきたいと思いました。焦って結果を求めすぎないようにしたいです。
それでは、またのご依頼をお待ちしております。

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